1999.07.11〜2004.05
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弟弟子の狗朗の髪はするすると、指通りが滑らかで癖のない絹のような黒髪。
対して兄弟子の紫は、名の通り鮮やかな紫色の豪奢なウェーブヘアをしていて妖しげな美貌を一層際立たせる。
「色々なものが負けている気がする……」
しかも男の兄弟弟子二人にだ、これは由々しき事態ではないだろうか。
二人の兄弟弟子が稽古をしている光景を障子を開け放った居間から、ちらちらと眺めつつ二人のどちらかが交代するのを待ちながら、梨を剥く依子は口を尖らせ独りごちる。
依子の色素の薄い癖毛など、目が覚めたらあっちこっちに飛び跳ねて、櫛を梳かすのも一苦労だ。
それなのに二人の髪は素のままでも十分に惚れ惚れするほど綺麗なのだ。
正直すごく羨ましい。是非とも秘訣を聞いてみたい。
「でも私は好きだよ、依子の髪が」
ちゃぶ台を挟んで依子の向こう側に座り、切り分けた梨を手際よく四人分の小皿に並べながら彼らの稽古を眺める一言は、爪楊枝を切り分けた梨に一つ刺して依子の独り言に愉快げに答えた。
「その気持ちがすごく嬉しいです一言様」
一言は不貞腐れながら応える依子に、爪楊枝に刺した梨を差し出す。
「うん、猫みたいにふわふわしていて撫でると気持ちいいんだ」
「猫………ですか」
差し出された梨を受け取り、しゃくしゃくと複雑な顔で咀嚼する依子の様子を見て一言は目を細める。
一言様がそう言うならば、こんな風に愛でられ喜ぶ猫でもいいやと思う気持ちと一緒に、依子は瑞々しく甘い梨の欠片を飲み込んだ。