2008〜2012.09.25
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へえ、存外人間みたいな顔をするんだな、と、思った。
御前との会合が終わり、石盤の間を出た草薙が見たのは、第七王権者がどこか見覚えのある女の出迎えを受けていた光景だった。
「お疲れ様でした、一言様」
「ありがとう、君も待たせてすまなかったね」
「いいえ、いつものことですもの。もう慣れっこですよ。それよりも御前とはもう宜しいので?」
「ああ、また大覚さんの雑事が終わったら一度こちらに戻るけれど」
「一先ず休息なさいますか」
「そうだね、じゃあお言葉に甘えようか」
穏やかに労う彼女の言葉に無色の王の年齢の分かりづらい顔が、先程二人の王に向けていたさながら菩薩のような達観した笑みでなく人間臭い笑みに変化していた。
彼女もまた、草薙と同じく王に仕えるクランズマンであるのだろう。無色のクランズマンがいるという話は噂で聞いていたがまさか自分くらいの若い女だったとは、草薙は少し意外に思いながら彼らの様子を横目で観察した。
女が七王の調停人を見る眼差しは、臣下が主君に対するそれとはどこか違っていて、ただの女が恋人に向けるような、妻が夫に向けるようなそういう眼差しであった。
(もしかして、つまりそういうことなんか)
年頃で言えば周防と同じくらいの妙齢の佳人の前に立つ仙人めいた男は、先程見た予言の王とは違う空気を醸し出していた。研ぎ澄まされた刀身をしまい込んだ刀のような、静謐なそれから、ただの男になってしまったような。
(意外なところを見てしもうたな)
「では私はこれで失礼するよ」
一言は草薙ーー正確に言えばその後ろで手持ち無沙汰にポケットから煙草を取り出していた周防ーーーに挨拶をして去っていった。その無色の王から三歩下がった距離にいる女もまた言葉を発さず典雅に一礼し、草薙達の横を通り過ぎた。
さて、あの着物美女はどこかで見覚えがある気がするが。
「なあ、あのべっぴんさん尊は見覚えあるか?」
その草薙の問いかけに新たな煙草に火をつけた周防は、再び煙草を落としかけて草薙を見やった。
「あれ百井だったろ」
その一言に草薙は固まる。
混乱と驚愕と僅かな疑念、色々な思考をかけ巡らせてから草薙もまた煙草に火を付けて大きく吸って、紫煙を溜息と共に吐き出した。
「世間ってホンマに狭いなぁ…」
御前との会合が終わり、石盤の間を出た草薙が見たのは、第七王権者がどこか見覚えのある女の出迎えを受けていた光景だった。
「お疲れ様でした、一言様」
「ありがとう、君も待たせてすまなかったね」
「いいえ、いつものことですもの。もう慣れっこですよ。それよりも御前とはもう宜しいので?」
「ああ、また大覚さんの雑事が終わったら一度こちらに戻るけれど」
「一先ず休息なさいますか」
「そうだね、じゃあお言葉に甘えようか」
穏やかに労う彼女の言葉に無色の王の年齢の分かりづらい顔が、先程二人の王に向けていたさながら菩薩のような達観した笑みでなく人間臭い笑みに変化していた。
彼女もまた、草薙と同じく王に仕えるクランズマンであるのだろう。無色のクランズマンがいるという話は噂で聞いていたがまさか自分くらいの若い女だったとは、草薙は少し意外に思いながら彼らの様子を横目で観察した。
女が七王の調停人を見る眼差しは、臣下が主君に対するそれとはどこか違っていて、ただの女が恋人に向けるような、妻が夫に向けるようなそういう眼差しであった。
(もしかして、つまりそういうことなんか)
年頃で言えば周防と同じくらいの妙齢の佳人の前に立つ仙人めいた男は、先程見た予言の王とは違う空気を醸し出していた。研ぎ澄まされた刀身をしまい込んだ刀のような、静謐なそれから、ただの男になってしまったような。
(意外なところを見てしもうたな)
「では私はこれで失礼するよ」
一言は草薙ーー正確に言えばその後ろで手持ち無沙汰にポケットから煙草を取り出していた周防ーーーに挨拶をして去っていった。その無色の王から三歩下がった距離にいる女もまた言葉を発さず典雅に一礼し、草薙達の横を通り過ぎた。
さて、あの着物美女はどこかで見覚えがある気がするが。
「なあ、あのべっぴんさん尊は見覚えあるか?」
その草薙の問いかけに新たな煙草に火をつけた周防は、再び煙草を落としかけて草薙を見やった。
「あれ百井だったろ」
その一言に草薙は固まる。
混乱と驚愕と僅かな疑念、色々な思考をかけ巡らせてから草薙もまた煙草に火を付けて大きく吸って、紫煙を溜息と共に吐き出した。
「世間ってホンマに狭いなぁ…」