2004〜2009
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舞い散る桜の花びらのような、あるいは夜空に瞬く星屑のような、淡く儚い、けれども確かにここにあるのだと証明できる色の無い色によって静かに依子の世界は満ちていく。
体の奥から力が満ち溢れるようなこの温かさは展開された一言の
不意に依子が空を見上げると、夕暮れの空に桃色の光に染まったダモクレスの剣が天空に浮かんでいた。
一言の剣には色が無い。
けれどもガラスのような質感をしているから、彼の剣はいつもその時の空の色に染まる。
完全な透明度のガラスではないので、空の色をその剣の中で屈折させながら、儚さすら覚える刃紋の陰影を浮かび上がらせる。
その剣はいつも一言のように温かな色の無い光で依子を包み込む。
昂揚と苦悩を、その胸に与えながら。
湧き上がる力とは裏腹に、依子の心は痛みを叫ぶ。
己の王の素晴らしさを感じながら、愛する男の背負うものを思い依子は苦しむ。
どうして、虫も殺せないような優しいあの人が、大好きな大好きなあの人が、こんな恐ろしい力を背負わねばならないのだ。
けれども一言が予言の力を持つ、黄金の王の懐刀である「王権者」でなければ依子と出会うことはなかった。
石盤がなければ、依子は生まれることもなかったし、今こうして一言と結ばれることもなかっただから、依子の心は臣下とただの女の二つに引き裂かれて煩悶する。
相反する感情に揺さぶられながら、依子は暖かな光の花びらの中、再び己の剣を取った。