特別の日
.
ガヤガヤ…
「どうしたんだろう?」
アシㇼパが外の騒ぎに気づき外を見る。
「どうした、アシㇼパ?」
刀の手入れに集中していた私は外の騒ぎに全く気づいていなかった。
「姉上!姉上!」
「どうした?そんなに慌てて」
「外に妖怪がうじゃうじゃと!」
「!!」
何!?マズイ、このままだとコタンのみんなが!!
「今、佐一たちと村の男たちが足止めをしてくれています!急ぎましょう!」
「わかった!すぐに向かう」
私は鉄砕牙を手に取り外へと飛び出る。
「杉元!大丈夫、か………?」
外に出れば、杉元が小熊と子どもたちとじゃれているだけだった。私の切羽詰まった声に驚いたのか、みんなが私の方を見ていた。
「ん…?妖怪、は?」
パシパシと瞬きをする。杉元たちもパシパシする。
「妖怪…?そんなのいねぇよ?」
キョトンとした顔で杉元が言う。何が起きているのか分からず、私はしばらくの間フリーズした。そんな私の様子を見てか、さっき私がいたチセからクスクスとふたつの笑い声が聞こえてきた。
杉元たちになんでもないと言ってチセの中に入り笑っている二人を見る。二人は腹を押えながらひいひい言いながら笑っていた。
「桂寿郎、妖怪は?」
「ひぃ、あれ?姉上、妖怪は、いなかったの、ですか?…ブフ」
「いや、アカリが妖怪を…ブッ、倒してくれたんだろ」
おい、笑いが隠せてないぞ。こちらとしては随分と心臓に悪い嘘をつかれたもんだ。私の気を知ってなのか知らないのかは分からないが笑い続ける二人。そんな彼らに私は非常にイラついていた。
なぜって?
私は嘘がつかれるのが非常に 嫌いだからだ。
「姉上、今日は何の日か知っていますか?」
私はこの日が非常に嫌いだ。嘘をついてもいいとされているからだ。さらに私の機嫌は悪くなる。
「………エイプリール、フール…」
「正解です!姉上!」
「ケイジュロウ!エイプリールフールって面白いな!」
目をキラキラさせながら言うアシㇼパ。どこが面白いんだ…これのどこが。
「アシㇼパさ〜ん、ってどういう状況?」
...
「なるほど〜だからさっき切羽詰まったような声をさせて来たのか」
さっき起こったことを全て杉元に話した。うんうんと頷きながら納得していた。始末には俺もそう言うの誰かにやってみたいなと言い出した。
「頼むから私にはするな」
「おう、わかった」
本当にわかってくれたんだろうな…若干疑いの目を持って杉元を見る。本人はそれには気づいておらずどんなのがいいんだろとウキウキしていた。マジで勘弁してくれ。
「そろそろ、食事にしよう。今朝取れたエゾハナカジカをだしにキナオハウを食べよう」
アシㇼパの一声で私も食事の支度を始めた。手際がよくキナオハウはすぐにできた。みんなに汁を配り一足先に私と桂寿郎は食べていた。
「そう言えば…杉元」
「ん?なに?」
「キナオハウには隠し味がある事を言ってなかった」
「隠し味…それってどんなのだい?」
キナオハウに隠し味か…私も聞いたことがないな。どんなものだろうか。
「それはな」
少し間を空けるアシㇼパ。私も桂寿郎も隠し味が気になり耳を傾ける。
「オソマ だ」
「「ブフーーー!!!!」」
口に入っていた汁を桂寿郎とほぼ同時に吹き出す。キ、キナオハウにはオソマが入っていたのか!?オソマの匂いだなんてこれっぽっちもしなかったぞ!桂寿郎はあまりにも衝撃的だったのか顔を真っ青にさせて「オソマ全部食べてしまった」と言っていた。私は内心ざまぁみろと思ってしまった。嘘なんかつくからバチが当たるんだ。だが、私は嘘をついてないのにバチが当たっている…何故だ??
「ほ、本当?」
「あぁ、嘘だ!」
「なーんだ良かった…」
「だが、昨日のには入っているかもな」
「ウソ!!」
杉元の顔色が真っ青から元に戻ったかと思えばまた真っ青になった。桂寿郎はもう真っ青を通り越して色のない顔をしていた。そうか、私は別で食事を取っていたから食べずに済んだのか。
「大丈夫だ、杉元!普段からオソマを食っていたのだろう?」
「いや、俺ウンコなんか食ってなんだけど!?…もしかしてアシㇼパさんの言うオソマって味噌のこと?あれはウンコじゃないって!味噌だよ、味噌!」
「いや、あれはオソマだ。絶対に」
また、味噌はオソマじゃないという言い合いが始まった。私は我関せずでキナオハウを食べる。桂寿郎は相変わらず魂が抜けたままだ。
「アカリ!」
ひとりの男の子がチセに飛び込んできた。
「どうした?」
「コタンの外になんか変なでかいのがいる!!」
「変なの?…はぁ、どうせまた嘘だろう」
「ホントだよ!?早く来て!」
目尻に涙を少し貯めて言う男の子。嘘、じゃない?まさか、本当に?
「我が名は邪鬼 !煉獄明黎、今日こそ貴様を殺して食ってやろう!手始めにまずは人間からだ」
「ひぃ!」
今度こそは本物と判断して鉄砕牙を手に取る。そして邪鬼のもとに向かって奴を一刀両断にする。そして、またチセに戻って私は言った。
「もう嘘をつくのは禁止な」
とニッコリと効果音がつきそうな感じで笑う。その笑顔にみんなが苦笑い。
やっぱりエイプリールフールは嫌いだ。
.
ガヤガヤ…
「どうしたんだろう?」
アシㇼパが外の騒ぎに気づき外を見る。
「どうした、アシㇼパ?」
刀の手入れに集中していた私は外の騒ぎに全く気づいていなかった。
「姉上!姉上!」
「どうした?そんなに慌てて」
「外に妖怪がうじゃうじゃと!」
「!!」
何!?マズイ、このままだとコタンのみんなが!!
「今、佐一たちと村の男たちが足止めをしてくれています!急ぎましょう!」
「わかった!すぐに向かう」
私は鉄砕牙を手に取り外へと飛び出る。
「杉元!大丈夫、か………?」
外に出れば、杉元が小熊と子どもたちとじゃれているだけだった。私の切羽詰まった声に驚いたのか、みんなが私の方を見ていた。
「ん…?妖怪、は?」
パシパシと瞬きをする。杉元たちもパシパシする。
「妖怪…?そんなのいねぇよ?」
キョトンとした顔で杉元が言う。何が起きているのか分からず、私はしばらくの間フリーズした。そんな私の様子を見てか、さっき私がいたチセからクスクスとふたつの笑い声が聞こえてきた。
杉元たちになんでもないと言ってチセの中に入り笑っている二人を見る。二人は腹を押えながらひいひい言いながら笑っていた。
「桂寿郎、妖怪は?」
「ひぃ、あれ?姉上、妖怪は、いなかったの、ですか?…ブフ」
「いや、アカリが妖怪を…ブッ、倒してくれたんだろ」
おい、笑いが隠せてないぞ。こちらとしては随分と心臓に悪い嘘をつかれたもんだ。私の気を知ってなのか知らないのかは分からないが笑い続ける二人。そんな彼らに私は非常にイラついていた。
なぜって?
私は嘘がつかれるのが
「姉上、今日は何の日か知っていますか?」
私はこの日が非常に嫌いだ。嘘をついてもいいとされているからだ。さらに私の機嫌は悪くなる。
「………エイプリール、フール…」
「正解です!姉上!」
「ケイジュロウ!エイプリールフールって面白いな!」
目をキラキラさせながら言うアシㇼパ。どこが面白いんだ…これのどこが。
「アシㇼパさ〜ん、ってどういう状況?」
...
「なるほど〜だからさっき切羽詰まったような声をさせて来たのか」
さっき起こったことを全て杉元に話した。うんうんと頷きながら納得していた。始末には俺もそう言うの誰かにやってみたいなと言い出した。
「頼むから私にはするな」
「おう、わかった」
本当にわかってくれたんだろうな…若干疑いの目を持って杉元を見る。本人はそれには気づいておらずどんなのがいいんだろとウキウキしていた。マジで勘弁してくれ。
「そろそろ、食事にしよう。今朝取れたエゾハナカジカをだしにキナオハウを食べよう」
アシㇼパの一声で私も食事の支度を始めた。手際がよくキナオハウはすぐにできた。みんなに汁を配り一足先に私と桂寿郎は食べていた。
「そう言えば…杉元」
「ん?なに?」
「キナオハウには隠し味がある事を言ってなかった」
「隠し味…それってどんなのだい?」
キナオハウに隠し味か…私も聞いたことがないな。どんなものだろうか。
「それはな」
少し間を空けるアシㇼパ。私も桂寿郎も隠し味が気になり耳を傾ける。
「
「「ブフーーー!!!!」」
口に入っていた汁を桂寿郎とほぼ同時に吹き出す。キ、キナオハウにはオソマが入っていたのか!?オソマの匂いだなんてこれっぽっちもしなかったぞ!桂寿郎はあまりにも衝撃的だったのか顔を真っ青にさせて「オソマ全部食べてしまった」と言っていた。私は内心ざまぁみろと思ってしまった。嘘なんかつくからバチが当たるんだ。だが、私は嘘をついてないのにバチが当たっている…何故だ??
「ほ、本当?」
「あぁ、嘘だ!」
「なーんだ良かった…」
「だが、昨日のには入っているかもな」
「ウソ!!」
杉元の顔色が真っ青から元に戻ったかと思えばまた真っ青になった。桂寿郎はもう真っ青を通り越して色のない顔をしていた。そうか、私は別で食事を取っていたから食べずに済んだのか。
「大丈夫だ、杉元!普段からオソマを食っていたのだろう?」
「いや、俺ウンコなんか食ってなんだけど!?…もしかしてアシㇼパさんの言うオソマって味噌のこと?あれはウンコじゃないって!味噌だよ、味噌!」
「いや、あれはオソマだ。絶対に」
また、味噌はオソマじゃないという言い合いが始まった。私は我関せずでキナオハウを食べる。桂寿郎は相変わらず魂が抜けたままだ。
「アカリ!」
ひとりの男の子がチセに飛び込んできた。
「どうした?」
「コタンの外になんか変なでかいのがいる!!」
「変なの?…はぁ、どうせまた嘘だろう」
「ホントだよ!?早く来て!」
目尻に涙を少し貯めて言う男の子。嘘、じゃない?まさか、本当に?
「我が名は
「ひぃ!」
今度こそは本物と判断して鉄砕牙を手に取る。そして邪鬼のもとに向かって奴を一刀両断にする。そして、またチセに戻って私は言った。
「もう嘘をつくのは禁止な」
とニッコリと効果音がつきそうな感じで笑う。その笑顔にみんなが苦笑い。
やっぱりエイプリールフールは嫌いだ。
.
1/1ページ