第一話 井伊谷にタイムスリップ!?
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「ついた~、ここが浜松市か」
浜松駅に到着して駅構内から出て一人の女性がそう零した。彼女の名前は鬼童世都奈、都内の大学に通う学生だ。専攻は考古・日本史で、特に中世・近世あたりに興味があった。そんな彼女が戦国時代に興味がないはずがない。
今日彼女が訪れている場所は静岡県浜松市。静岡と言えば、今川や徳川のことを思い浮かべる人が多いだろうが、彼女のお目当てはそのどちらでもなかった。
「えっと、浜松駅からは確かバス移動だよね?どこにあるんだ?」
ここからバスで一時間ほどの場所に彼女のお目当てのものがあった。
「どの順番で回っていこうかな、最初は龍潭寺かな…あ、バス停あった」
時間もありるしバスの中で考えようかなと決めた世都奈。初めて訪れる場所にワクワクを隠さずバスに乗り込んだ。
1時間程で目的地に着き、じっくりと龍潭寺内を見て回る。厳かな雰囲気に感銘を受ける世都奈。気が済むまで次のお目当てであるドラマで「御初代様の井戸」ような感じで呼ばれていた井戸に来た。
「…マジで田んぼの中じゃん…」
本当に田んぼの真ん中に井戸があった。彼女は観光するにあたってGoo○leマップでどこら辺か調べていたから、何となくわかっていたが…。ドラマだと山の中のような森の中のような場所にあったから何となく本物も、という先入観があった。
「まぁ、そこはドラマだから、ね」
デジカメを手に黄金色の景色を背景に写真を撮る。何枚か撮った写真を見る。その時、あの大河で記憶に残った言葉を彼女は思い出す。
「『百尺竿頭に一歩を進む。大死一番絶後再び蘇る』…か」
あの大河での井伊家の奮闘をそのまま言い表したようなもの。語呂が良かったからなのか世都奈の耳によく残った。そして最終回の黄金色の稲穂は見事ものだった。
-われはやったぞ、せつな-
「え?」
振り向いてもそこには誰もいなかった。空耳にしてはやけにはっきりと聞こえたそれに少し気味悪く感じながらも彼女は井戸を後にした。蟹淵などドラマに出てきたところだったり、お墓を見て回ったりして大体3時頃に最後の場所に行った。
「ここが最後だね、井伊谷城跡!」
彼女が最後に来たのは、井伊谷城という城があった場所だ。大河ドラマのおかげか道が綺麗にされていて、詳しい内容の書かれた看板も立っていた。
「よし、最後に頂上からの景色を眺めて写真に収めて帰ろっと」
小高い丘のようでそんなに苦にならずにおぼることができた。世都奈は綺麗な黄金色に染まっている田んぼをみて感嘆の声をあげる。
「うわー、めっちゃ綺麗!最高じゃん!写真撮ろ!」
ベンチが置いてあるところから少し前にでて写真を撮る。撮れた写真を見ながら地元の風景を思い出す。一回でもいいから帰ろうかなとそんなことを思っていると草を踏みしめる音が聞こえる。振り返ると、キリッとした目つきをした女性が立っていた。
「綺麗じゃろ?」
「え、あ、はい」
横目にこちらを見る姿に少しドキッとして思わず目を逸らして、その女性と同じように景色を見る。フフと少し笑い声を零すが、私が目を逸らしたことはまったく気にしている様子はなかった。
「昔とだいぶ変わってしまったが、根本は全く変わっていない。私が愛して止まない井伊谷だ」
「……」
あまりにも感情の入った言い方に世都奈は女性の方を見る。今度はちゃんとあった目に嬉しそうに笑う女性。そんな女性を見て何とも言えない気持ちになる。世都奈は思い切って女性に聞く。
「…あの、どこかで私に会ったことありますか?なんだか、その…」
キリッとした目を柔らかく細める女性に若干の違和感を感じた。何だか微笑ましいものを見るかのように視線にほんの少しこそばゆしさに体がムズムズする。
「会ったことがあるかもしれないし、ないかもしれない…だが、そんなものは重要ではない。私たちが今出会ったということに意味がある」
「出会ったことに…意味がある」
噛みしめるように先ほど女性が言った言葉を零す。スピリチュアルのような話だが心に落ちてくるものがあるなと世都奈は感じた。アニメとかである偶然のような必然に何だか既視感があり、これはきっと何かの縁なんだと感じて世都奈は女性に名前を聞こうとしたが、隣にいた筈の女性の姿はここにはもうなかった。辺りを見渡したが、見当たりはしなかった。
「もう帰っちゃったのかな…名前だけでも聞きたかったな。まぁ、けど」
またどこかで会える、世都奈はそんな気がした。世都奈は最後に一枚の写真を撮って下山をした。元来た道を下りて浜松駅に向かうバス停に向かおうとした時、自分の目を疑った。
「へ…どこよ、ここ…」
井伊谷城跡にあった看板や舗装された道はなく、見渡す限り田んぼと畑しかない。どう考えてもさっきと同じ場所だったとは思えない。背後には木が鬱蒼と生えている山があった。
「マジでどこだよ、ここ」
どうしたらいいのかも分からず、立ち尽くしていると声をかけられた。
「おい、そこのお前そんなところで何をしている。もうすぐ日が暮れるぞ」
「え?」
声のした方を見れば、20歳前後ぐらいで顔の整った着物を着た人が立っていた。え、着物?とただでさえ自分がどんな状況に置かれているのかもわからないのに次から次へと情報が完結しない。
「見慣れぬ恰好をしているが、どこの子だ?名前は?」
「名前?…えーと、鬼童世都奈って言います。」
なんとか自分の名前を答えた。すると、二人は驚いたような顔をしてお互いに目を合わせた。私の顔に何かついているのか男性の方が近寄ってきて私の肩をつかんだ。
「そなた、せつなっていうのか!?」
「え、あ、はい…」
「そうか、そうか!せつなと言うのだな、今日はもう日が暮れるわしの居城で休むがよい!」
ワハハッと典型的な笑い方をする男性に戸惑いを隠せない世都奈。そんな彼女に助け舟を出すように一緒にいた女性が助け船を出す。
「この方のお名前は、鬼童遠江守晴景殿。この辺りを取りまとめている武家の者だ」
「へ?」
「そして私はこの方の妹の“みね”だ。皆からは“おみね”と呼ばれている」
「…へ、ちょっと待って…」
“〇〇守”って確か戦国時代と江戸時代の武家の人が名乗っているあれだよね!?え、じゃあもしかしてここって、戦国時代ー-!!ととんでもない事実に思わず顔面を蒼白させる世都奈。あまりの様子に二人は彼女に声をかけるがそんなものは耳には入っていないらしく言葉にならない声を漏らすばかりでまともに話ができない状況だ。
どうやら世都奈は戦国時代にタイムスリップしてしまったようだ。
次回!
『前途多難!?某協奏曲って、ま??』
お楽しみに♪
『前途多難!?某協奏曲って、ま??』
お楽しみに♪
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