初夏。

春という季節が終わり、夏に入る頃。

四人の少女たちがある岬から地平線を見つめていた。彼女達は、その国で言う“忍び”という者達で、軽量の“忍装束”を着ていた。

やはり、初夏と言うだけあって日差しがキツイらしい。四人のうち三人は木陰へと避難しており、顔の周りを仰いでいた。

だが一人だけは、ずっーと地平線を見ていた。


『#[#da=2#]#〜。ねぇ、暑いでしょ？倒れる前に木陰を入りなよ？ねぇってば！』

『うん、ほんとにそうした方がいいと思うよ？』

『そうだよう、#[#da=2#]#。今倒れたらあの人に会えないでしょ？』


#[#da=2#]#と言われた少女は、うんともすんとも返さず地平線を見ていた。どうやら彼女たちはある人を待っているらしい。



今は江戸時代、彼女達がまだ産まれる前までは戦国大名達が戦をして領地を広めていた時代があった。その時代に忍び達が活躍して、他の領地の情報や偵察を行うのが仕事だった。

だが、徳川家康が豊臣秀吉の息子である秀頼とその母、茶々のいる大阪城を焼き払って戦国時代の幕を下ろした。

そして、江戸時代の幕開けに彼女たちが生まれた。

勿論、彼女達の母や父はその戦に参加しており、何十回と言う数、聞かされていた。




『ねぇ〜、#[#da=2#]#〜。ねぇってば〜#[#da=2#]#『煩い』…はい』

しょんぼりとする短髪の子。その子の頭を撫でる一つ縛りの子。少女を睨む肩まで髪が伸びてる子。三人は、もう何も言わず、ただ少女を見ていた。


時は既に未の刻(ひつじのこく)を回っており、一番日差しが強い時間帯になっていた。それでも少女は立っていた。同じ場所に。さっきまで全く動かなかった少女が急に動き出して、木陰にいた三人を起こした。


『三人共！来たよ！』


眠たそうに目を擦る三人。いつまでも立ち上がろうとしない三人の手を引っ張って岬の先端まで行った。


『レイカ、ヤヨイ、ミヅキ！あれがこれから私達がお世話になるんだよ！』

『『『……えええーー！！』』』


彼女たちの目の前にあったのは、今まで見たことも無いぐらい大きな船だった。


『この船は、<tusk wolf号>！お父さんの船だよ！』


少女は、目をキラキラ輝かせながら言った。少女から、船の紹介を受けたがあまりの出来事に何も言葉を返せずにいた。


「お父さん!!」


少女は、その場から駆け出し男の腕の中へと飛び込んだ。

「おっとと、ふっ、久し振りだな#[#da=2#]#。元気にしてたか？」

「うん!!私ね、早く海に出たくて修行を普通の子より早く進めたんだよ！」

「それでしっかり習得できたのか？」

「うん！その他にも覚えた事もあるよ！」

「そうかそうか!!やっぱり俺の自慢できる娘だな！」

「エヘへ……」


今までどうすることも出来なかった三人がやっとこっちに歩いてきた。未だに全てを把握出来ていないのかまだ呆気ない顔をしていた。


「お父さん、お父さん！紹介するね！レイカとヤヨイとミヅキだよ！」

『『『こんにちは……』』』

『コンニチハ』

『『『!!!!』』』

『お父さんも挨拶ぐらいなら覚えたってよ！』

『凄いね…#[#da=2#]#のお父さん…』

『『うん……』』


やっぱりついて行けない三人。そんな状態で船に乗った。


これが、彼女達の海の冒険の始まりだった。