賢者の石編
/* 017 - 白金髪の少年
キングス・クロス駅は、既に朝の喧騒に包まれていた。
高いガラス屋根から差し込む陽光が、磨き込まれた床へ白く広がっている。幾本ものプラットホームには列車が並び、蒸気とブレーキ音が絶え間なく交錯していた。電光掲示板には発車時刻が目まぐるしく切り替わり、構内放送が反響する。旅行鞄を引く家族連れ。新聞を片手に足早に歩く会社員。制服姿の学生。誰もが自分の行き先だけを見つめ、立ち止まる者はいない。
その流れの中を、イザークは一定の歩幅で歩いていた。
黒いスーツ。右手には使い込まれたキャンバス地の旅行鞄。肩を揺らすこともなく、人波を縫うように進んでいく。
行き交う人々は誰一人として彼を気に留めない。
それでよかった。この十年間、そうやって生きてきた。目立たず。騒がず。誰の記憶にも残らない。土木作業員として各地の現場へ向かい、仕事を終えれば何事もなく部屋へ帰る。ただそれだけの生活だった。
駅構内へ漂う匂いが鼻を掠める。
焼き立てのパン。淹れたての珈琲。機械油。濡れた鉄。旅行鞄へ染み付いた革の匂い。様々な匂いが混ざり合い、この場所だけの空気を作り上げている。
イザークは歩みを緩めた。
視線の先には、九番線と十番線を隔てる煉瓦の壁がある。一見すれば、どこにでもある駅の壁だった。煉瓦は長い年月を経て角が丸くなり、目地の白い漆喰は所々黒ずんでいる。壁際には清掃用のカートが置かれ、その脇を旅行者達が忙しなく通り過ぎていく。
誰も壁を見ない。見る理由がない。
彼らにとっては、ただの壁だからだ。
イザークは立ち止まる。
十年前、自分もここを通った。
その時は、この先へ戻ってくることなど考えもしなかった。魔法界とは決別したつもりだった。だが、人の人生は案外思い通りには進まない。
胸ポケットから煙草を取り出しかける。
そこで手が止まった。構内は禁煙だった。小さく息を吐き、煙草を再びポケットへしまう。口寂しさだけが残る。その代わりにジャケットの内側へ手を滑らせた。指先が黒檀の杖へ触れる。冷たい木肌。その感触だけを確かめるように軽く握り、すぐ手を離した。それで十分だった。
その時、不意に幼い笑い声が聞こえた。
視線を向ける。赤毛の少女が、荷車を押す母親の後ろを小走りについて来ていた。ふと立ち止まり、不安そうに煉瓦の壁を見上げる。母親は優しく微笑みかけ、何かを囁いた。少女は一つ頷く。助走をつけることもなく、そのまま壁へ歩いていく。その身体は煉瓦へ触れることなく、静かに吸い込まれて消えていった。続いて、母親の姿も壁の向こうへ溶ける。
周囲を歩くマグル達は、誰一人として気付かない。
新聞を読みながら歩く男。珈琲を片手に電話をする女。走り去る駅員。
世界は何事もなかったかのように流れ続けていた。
たった一枚の壁。
その向こうとこちらでは、まるで違う世界が広がっている。
イザークは静かに鞄を握り直した。
靴音を一つ鳴らす。そして、煉瓦の壁へ向かって真っ直ぐ歩き始めた。煉瓦へ向かって踏み出した足はそのまま速度を変えることなく前へ進む。次の瞬間、その感触を覚えることなく、身体は壁の中へ溶け込んでいった。
耳へ飛び込んできたのは、甲高い汽笛だった。
腹の底まで響く重低音に続き、蒸気を吐き出す轟音がプラットホーム全体を震わせる。白煙は勢いよく立ち昇り、高い天井へ届く前に幾筋もの陽光を飲み込みながら薄く広がっていった。
九と四分の三番線。
赤く塗られた蒸気機関車が、堂々とホームへ横たわっている。黒く磨き上げられた車輪。真鍮の金具は陽光を受けて眩く輝き、車体の側面へ刻まれた文字は、十年という歳月を経ても少しも色褪せていなかった。
ホグワーツ特急。
その姿だけは、記憶の中と何一つ変わらない。
ホームは活気に満ちていた。期待に待ちきれず黒いローブを纏った子供と、その親子が荷車を押しながら談笑している。檻の中では梟が翼を震わせ、不満そうな鳴き声を漏らしていた。足元を猫が悠然と横切り、少し離れた場所では蛙チョコレートを抱えた幼い少年が母親へ何かをせがんでいる。
色とりどりの旅行鞄。積み重ねられたトランク。箒を抱えた上級生。友人との再会を喜ぶ笑い声。別れを惜しむ家族の抱擁――様々な声が重なり合い、ホームは一つの喧騒を形作っていた。
石炭の燃える匂いが鼻を掠める。
煙草とは違う、乾いた熱を帯びた煙だった。
イザークは立ち止まり、静かに辺りを見渡す。
懐かしいとは思わなかった。だが、忘れていたわけでもない。ただ、自分がここから十年間遠ざかっていたという事実だけが、妙にはっきりと胸へ落ちてくる。鞄の持ち手を握り直す。その時だった。
背後から、低く抑えられた男の声が聞こえた。
「……イザーク」
聞き間違えるはずのない声だった。
足が止まる。ホームの喧騒だけが、二人の間を流れていく。
僅かな沈黙のあと、再び声が響いた。
「……まさか。イザーク、お前なのか」
イザークは僅かに目を細め、ゆっくりと振り返る。
白金の髪を肩まで流した男が、蛇頭の杖を片手に立っていた。端正な顔立ちで貴族らしい気品を纏った佇まい。その瞳だけが、珍しく驚愕に揺れている。
ルシウス・マルフォイ。
その隣には、父親の様子を不思議そうに見上げる、まだ幼さの残る金髪の少年が立っていた。
「久しいな。そいつはお前のガキか」
イザークの視線が少年へ向く。
灰色の瞳と目が合った瞬間、少年の肩がびくりと震えた。
父のローブを小さく掴み、その身体を半歩後ろへ隠す。
「ドラコ」
ルシウスが静かに名を呼ぶ。
それだけで少年は姿勢を正したが、それでもイザークから視線を逸らすことはできなかった。イザークは僅かに目を細める。
「ドラコ。失礼だ。挨拶なさい」
「……ドラコ・マルフォイ。あなたは?」
「イザーク・クレイヴン。お前の父とは昔、同じ連中とつるんでいた」
ドラコは意味が分からないまま父を見上げた。
ルシウスは小さく息を吐き、静かに口元を緩める。
「お前はもう死んだものとばかり思っていたのだ。また会えるとは」
「フン……死ぬような奴だと見られていたとはな」
皮肉とも冗談ともつかない口調だった。
ルシウスは首を横へ振る。
「姿を消した人間は、いずれ死んだものとして扱われる。それだけの話だ」
「そうか」
イザークは短く答える。
それ以上、その話を続ける気はなかった。十年という歳月は、説明するには長すぎる。ルシウスもまた、それを察したのか追及はしなかった。
「ここへは何用で来た。まさか、乗るわけではあるまい」
「……そのまさかだ。マグル学の教授としてな」
ルシウスは一瞬、言葉を失った。
ホームへ響く汽笛が二人の間を横切る。白煙が立ち昇り、石炭の匂いが風に乗って流れてきた。駅員が発車時刻を告げる声。梟の鳴き声。子供達の歓声。それらは絶え間なく耳へ届いていたが、イザークには妙に遠く聞こえた。
やがてルシウスがゆっくりと口を開く。
「……今、何と言った」
「聞こえなかったか。マグル学だ」
ルシウスの瞳が細くなる。
驚きではない。理解できないものを見る目だった。
「マグル学、だと」
その四文字を確かめるように、ゆっくりと繰り返す。
ルシウスは眉を顰めた。瞳はイザークを値踏みするように見据えたまま動かない。沈黙だけが続く。何を考えているのかは分からない。だが、すぐに理解できる話ではないことだけは、その表情が物語っていた。
やがて、ルシウスは薄い笑みを浮かべた。
「なるほど――マグルとは何たるものかを教える、と。彼らの醜悪さを教える教材としてなら、お前ほど適任な者もいまい」
イザークは僅かに肩を竦めた。
「さあ……どうだかな」
その声音には肯定も否定もなかった。
ルシウスは数秒、イザークを見つめた。
やがて、小さく笑う。
「相変わらず本心を見せん男だ」
「昔から変わらねぇよ」
「違いない」
甲高い汽笛がホーム全体へ鳴り響いた。
蒸気機関車が腹の底から唸るような音を立て、勢いよく白煙を噴き上げる。駅員達が一斉に声を張り上げ、別れを惜しむ家族の声が慌ただしさへ飲み込まれていった。荷車の車輪が石畳を転がり、梟が檻の中で羽をばたつかせる。
発車が近い。イザークはホームの時計を一瞥すると、それ以上話を続けることなく旅行鞄を持ち直した。
「時間だ」
それだけ言い残し、踵を返す。
革靴が石畳を規則正しく打った。
黒いスーツの裾が歩調に合わせて僅かに揺れる。その背中には迷いがなかった。久方ぶりに足を踏み入れた魔法界であるにもかかわらず、周囲を見回すこともなく、真っ直ぐホグワーツ特急へ向かって歩いていく。
真鍮の手摺へ左手を掛ける。
金属は朝の空気を吸い込んでいる。靴底が鉄製のステップを踏み締める。鈍い金属音が足元から響き、そのまま車内へ身体を滑り込ませた。
鼻を掠めたのは、古びた木材と石炭の匂いだった。通路は磨き込まれた木の壁に挟まれ、長年使い込まれた飴色の艶を帯びている。窓から差し込む朝日が床へ細長い帯を落とし、その上を生徒達の影が絶え間なく横切っていた。
コンパートメントの扉が次々と開閉する。
笑い声。梟の鳴き声。荷物を網棚へ押し込む音。友人を呼ぶ甲高い声。発車前の車内はホーム以上に騒がしかった。
イザークは通路をゆっくりと歩き始める。
一つ目の扉を横目で覗く。既に四人掛けの座席は埋まり、子供達が菓子袋を広げて騒いでいた。二つ目。家族が別れの言葉を交わしている。三つ目。梟が一羽、止まり木の上で神経質そうに羽繕いをしていた。
どこも落ち着けそうには見えない。
そのまま歩を進める。革靴が床板を一定の調子で鳴らしていく。その音へ、もう一つ、小さな靴音が混じっていた。一定の間隔を保ちながらも、途切れることなく続いてくる。イザークは振り返らない。誰かが偶然同じ方向へ歩いているだけなら、そのうち途切れる。四つ目のコンパートメントを通り過ぎる。まだ続く。五つ目。やはり離れない。イザークは僅かに目を細めた。
気配は軽い。敵意も殺気もない。
隠そうという気配すら感じられなかった。子供だ。
そう判断すると、自然と心当たりは一人しかいなかった。
六つ目のコンパートメントの前で、不意に足を止める。車内の喧騒だけが耳へ流れ込んできた。数歩後ろで、小さな靴音もぴたりと止まる。イザークは溜息にもならないほど浅く息を吐き、ゆっくりと振り返った。
数歩先。
通路の中央へ取り残されるように、小さな金髪の少年が立っていた。ドラコだった。両手は身体の脇でぎこちなく握られ、背筋だけは妙に真っ直ぐ伸びている。イザークを見上げていたが、目が合った途端、僅かに肩を震わせた。
逃げる気配はない。だが、何か用件を切り出す様子もなかった。
通路の脇では一年生らしい生徒達が荷物を抱えて行き交っている。梟籠を抱えた少女が「すみません」と小さく声を掛けながら二人の間を抜けていった。車体が微かに軋み、窓ガラスが震える。少年を見下ろしたまま口を開く。
「……何の用だ」
低い声だった。責める響きはない。
ただ理由を尋ねているだけだった。ドラコは口を開きかける。
「ぼ、僕は……」
言葉が続かない。
付いてきた理由を問われて初めて、自分でも答えを持っていなかったことへ気付いたようだった。視線が泳ぐ。
革靴の爪先を見下ろし、またイザークを見る。
「その……パパがあんなふうに話す人、見たことがなかったので」
それだけだった。
父は誰に対しても堂々としている。誰にも驚かない。誰にも歩み寄らない。その父が、死んだと思っていた男の名を呼び、昔を懐かしむように言葉を交わした。そんな姿は初めて見た。だから気になった。それだけのようだった。
イザークはしばらく黙っていた。
やがて小さく鼻を鳴らす。
「お前が知らないだけで、案外ああいう反応をするものだ。奴はな」
興味を失ったようにそれだけ答えると、再び前を向く。
ちょうど一つのコンパートメントの扉が開いていた。中には誰もいない。窓際へ日が差し込み、赤い座席の布地を柔らかく照らしている。網棚にも荷物はなく、発車前の静けさだけが残っていた。
イザークは旅行鞄を持ち上げ、何の躊躇もなく中へ入る。
そしてそのまま、通路へドラコを残し、扉を閉めた。扉が閉じると同時に、通路を行き交う生徒達の声が僅かに遠のいた。
完全に遮られたわけではない。薄い木製の扉を隔て、笑い声や足音は絶えず伝わってくる。それでも、先ほどまでの喧騒に比べれば、コンパートメントの中は随分と静かだった。イザークは扉の向こうを一度だけ見た。磨き込まれた曇りガラス越しに、小さな影が立ち尽くしている。しばらく動く様子はなかったが、やがて遠くから誰かが名を呼ぶ声が聞こえた。
「ドラコ!」
少年の影が僅かに揺れる。振り返ったらしい。
続いて、通路の奥から別の少年達の声が重なった。言葉までは聞き取れなかったが、ドラコは短く返事をすると、ようやく扉の前を離れた。
小さな靴音が、通路の喧騒へ紛れて遠ざかっていく。
イザークはそれ以上気に留めることなく、旅行鞄を肩の高さまで持ち上げ、頭上の網棚へ押し込もうとしたところで、一瞬だけ手を止める。魔法を使えばこんな荷物は指先一つ動かす必要もない。杖を取り出し振りかざせば、呪文を唱えることなく浮かせられる。だが、そのまま両腕で鞄を持ち上げた。
重みが肩と背へ掛かる。網棚の金具が僅かに軋み、キャンバス地の底が木枠へ擦れた。奥まで押し込み、落ちないことを確かめてから手を離す。この程度の荷物を持ち上げるために、わざわざ杖を抜く気にはなれなかった。
十年前のイザークなら、そうは考えなかっただろう。
魔法使いが手を使って物を運ぶなど、非効率で、無意味な行為だとでも思っていたかもしれない。今となっては、その考えの方がよほど面倒だった。
イザークは窓際の座席へ腰を下ろした。
赤い布張りの座面が体重を受け、古いばねが低く鳴る。背凭れへ身体を預けると、長年染み込んだ埃と古布の匂いが微かに立ち上った。
窓の外には、まだ大勢の家族が残っている。
母親へ何度も手を振る少年。娘の襟元を直している父親。涙を堪えきれず、目元を押さえる女。何かを言い忘れたのか、窓越しに大声で叫んでいる老人。
列車の中から見れば、どれも似た光景だった。
別れを惜しみ、再会を約束し、不安を隠すために笑う。
イザークには、そのどれも縁遠いものに思えた。
座席の横へ取り付けられた窓枠へ手を伸ばす。
真鍮の留め具へ親指を掛けて押し上げると、硬い抵抗が返ってきた。長く使われてきた窓らしく、金具は僅かに錆びついている。もう一度力を込める。乾いた音とともに留め具が外れ、窓が数寸ほど持ち上がった。
外の空気が一気に流れ込んでくる。石炭の煙。蒸気。焼けた鉄。ホームへ落ちた雨の名残。人々の衣服から漂う香水や革の匂い。それらが狭い室内へ押し寄せ、古びた木材の匂いと混ざった。
イザークはジャケットの胸ポケットへ手を入れた。
指先に触れた紙箱を引き抜く。角は潰れ、表面には細かな皺が寄っていた。キングス・クロス駅へ入る前から吸えずにいた煙草だ。
一本を唇へ咥える。続いてポケットから銀色のライターを取り出した。蓋を弾く。澄んだ金属音が、小さなコンパートメントへ響いた。親指で石を擦る。一度目は火花だけが散った。二度目で、青みを帯びた小さな炎が立ち上がる。煙草の先端へ近づけ、ゆっくりと息を吸い込んだ。紙と葉が焼ける微かな音。先端が赤く灯り、薄い煙が立ち上る。肺へ流れ込んだ熱と苦味に、ようやく身体の力が僅かに抜けた。煙を数秒留め、開いた窓へ向けて細く吐き出す。
白い煙は風に攫われた。機関車が吐き上げる蒸気と重なり、どちらが煙草の煙だったのか、すぐに分からなくなる。
その時、車体が大きく震えた。
連結器が次々と引かれ、前方から重い衝撃が伝わってくる。頭上の網棚が軋み、窓硝子が細かく震えた。ホームでは駅員が声を張り上げ、最後まで車外に残っていた者達が慌てて列車から離れていく。
甲高い汽笛が鳴った。
車輪が鉄路を噛む。最初はゆっくりと、重い車体を引き摺るように、景色が横へ流れ始める。窓の外にいた人々が手を振る。その中に、先ほど見た白金の髪を見つけた。ルシウスは蛇頭の杖へ両手を重ね、動き出した列車を見送っている。手は振らない。声も上げない。ただ静かに立ち、こちらへ向けた視線だけを動かさなかった。イザークも何の合図も送らない。
距離は瞬く間に開いていく。
やがてルシウスの姿は、噴き上がる白煙の向こうへ呑まれた。
列車は徐々に速度を上げていく。
ホームの柱が次々と窓の外を横切り、家族達の姿は長く連なった色の帯へ変わった。やがて赤煉瓦の壁が視界を塞ぎ、薄暗い構内へ入る。車輪の音が反響した。規則正しい振動が座席から背中へ伝わってくる。
煙草の灰が僅かに伸び、列車の揺れに合わせて震えた。
イザークは窓枠へ片肘を置き、暗い硝子へ映る自分の顔を眺める。
銀色の髪。灰色の瞳。頬へ残る古い傷。
十年前と変わらないものもあれば、変わったものもある。
列車が暗がりを抜けた。
窓の外へ、朝の光が一斉に戻ってくる。ロンドンの建物が後方へ流れ、煤けた煙突と煉瓦造りの家々が次第に遠ざかっていった。
行き先はホグワーツ魔法魔術学校。
かつて自分が学び、そして二度と戻らないと決めた場所。
イザークは煙草を深く吸い込んだ。
先端が赤く燃える。吐き出した煙は、開いた窓から吹き込む風に巻かれ、列車の後方へ消えていった。
キングス・クロス駅は、既に朝の喧騒に包まれていた。
高いガラス屋根から差し込む陽光が、磨き込まれた床へ白く広がっている。幾本ものプラットホームには列車が並び、蒸気とブレーキ音が絶え間なく交錯していた。電光掲示板には発車時刻が目まぐるしく切り替わり、構内放送が反響する。旅行鞄を引く家族連れ。新聞を片手に足早に歩く会社員。制服姿の学生。誰もが自分の行き先だけを見つめ、立ち止まる者はいない。
その流れの中を、イザークは一定の歩幅で歩いていた。
黒いスーツ。右手には使い込まれたキャンバス地の旅行鞄。肩を揺らすこともなく、人波を縫うように進んでいく。
行き交う人々は誰一人として彼を気に留めない。
それでよかった。この十年間、そうやって生きてきた。目立たず。騒がず。誰の記憶にも残らない。土木作業員として各地の現場へ向かい、仕事を終えれば何事もなく部屋へ帰る。ただそれだけの生活だった。
駅構内へ漂う匂いが鼻を掠める。
焼き立てのパン。淹れたての珈琲。機械油。濡れた鉄。旅行鞄へ染み付いた革の匂い。様々な匂いが混ざり合い、この場所だけの空気を作り上げている。
イザークは歩みを緩めた。
視線の先には、九番線と十番線を隔てる煉瓦の壁がある。一見すれば、どこにでもある駅の壁だった。煉瓦は長い年月を経て角が丸くなり、目地の白い漆喰は所々黒ずんでいる。壁際には清掃用のカートが置かれ、その脇を旅行者達が忙しなく通り過ぎていく。
誰も壁を見ない。見る理由がない。
彼らにとっては、ただの壁だからだ。
イザークは立ち止まる。
十年前、自分もここを通った。
その時は、この先へ戻ってくることなど考えもしなかった。魔法界とは決別したつもりだった。だが、人の人生は案外思い通りには進まない。
胸ポケットから煙草を取り出しかける。
そこで手が止まった。構内は禁煙だった。小さく息を吐き、煙草を再びポケットへしまう。口寂しさだけが残る。その代わりにジャケットの内側へ手を滑らせた。指先が黒檀の杖へ触れる。冷たい木肌。その感触だけを確かめるように軽く握り、すぐ手を離した。それで十分だった。
その時、不意に幼い笑い声が聞こえた。
視線を向ける。赤毛の少女が、荷車を押す母親の後ろを小走りについて来ていた。ふと立ち止まり、不安そうに煉瓦の壁を見上げる。母親は優しく微笑みかけ、何かを囁いた。少女は一つ頷く。助走をつけることもなく、そのまま壁へ歩いていく。その身体は煉瓦へ触れることなく、静かに吸い込まれて消えていった。続いて、母親の姿も壁の向こうへ溶ける。
周囲を歩くマグル達は、誰一人として気付かない。
新聞を読みながら歩く男。珈琲を片手に電話をする女。走り去る駅員。
世界は何事もなかったかのように流れ続けていた。
たった一枚の壁。
その向こうとこちらでは、まるで違う世界が広がっている。
イザークは静かに鞄を握り直した。
靴音を一つ鳴らす。そして、煉瓦の壁へ向かって真っ直ぐ歩き始めた。煉瓦へ向かって踏み出した足はそのまま速度を変えることなく前へ進む。次の瞬間、その感触を覚えることなく、身体は壁の中へ溶け込んでいった。
耳へ飛び込んできたのは、甲高い汽笛だった。
腹の底まで響く重低音に続き、蒸気を吐き出す轟音がプラットホーム全体を震わせる。白煙は勢いよく立ち昇り、高い天井へ届く前に幾筋もの陽光を飲み込みながら薄く広がっていった。
九と四分の三番線。
赤く塗られた蒸気機関車が、堂々とホームへ横たわっている。黒く磨き上げられた車輪。真鍮の金具は陽光を受けて眩く輝き、車体の側面へ刻まれた文字は、十年という歳月を経ても少しも色褪せていなかった。
ホグワーツ特急。
その姿だけは、記憶の中と何一つ変わらない。
ホームは活気に満ちていた。期待に待ちきれず黒いローブを纏った子供と、その親子が荷車を押しながら談笑している。檻の中では梟が翼を震わせ、不満そうな鳴き声を漏らしていた。足元を猫が悠然と横切り、少し離れた場所では蛙チョコレートを抱えた幼い少年が母親へ何かをせがんでいる。
色とりどりの旅行鞄。積み重ねられたトランク。箒を抱えた上級生。友人との再会を喜ぶ笑い声。別れを惜しむ家族の抱擁――様々な声が重なり合い、ホームは一つの喧騒を形作っていた。
石炭の燃える匂いが鼻を掠める。
煙草とは違う、乾いた熱を帯びた煙だった。
イザークは立ち止まり、静かに辺りを見渡す。
懐かしいとは思わなかった。だが、忘れていたわけでもない。ただ、自分がここから十年間遠ざかっていたという事実だけが、妙にはっきりと胸へ落ちてくる。鞄の持ち手を握り直す。その時だった。
背後から、低く抑えられた男の声が聞こえた。
「……イザーク」
聞き間違えるはずのない声だった。
足が止まる。ホームの喧騒だけが、二人の間を流れていく。
僅かな沈黙のあと、再び声が響いた。
「……まさか。イザーク、お前なのか」
イザークは僅かに目を細め、ゆっくりと振り返る。
白金の髪を肩まで流した男が、蛇頭の杖を片手に立っていた。端正な顔立ちで貴族らしい気品を纏った佇まい。その瞳だけが、珍しく驚愕に揺れている。
ルシウス・マルフォイ。
その隣には、父親の様子を不思議そうに見上げる、まだ幼さの残る金髪の少年が立っていた。
「久しいな。そいつはお前のガキか」
イザークの視線が少年へ向く。
灰色の瞳と目が合った瞬間、少年の肩がびくりと震えた。
父のローブを小さく掴み、その身体を半歩後ろへ隠す。
「ドラコ」
ルシウスが静かに名を呼ぶ。
それだけで少年は姿勢を正したが、それでもイザークから視線を逸らすことはできなかった。イザークは僅かに目を細める。
「ドラコ。失礼だ。挨拶なさい」
「……ドラコ・マルフォイ。あなたは?」
「イザーク・クレイヴン。お前の父とは昔、同じ連中とつるんでいた」
ドラコは意味が分からないまま父を見上げた。
ルシウスは小さく息を吐き、静かに口元を緩める。
「お前はもう死んだものとばかり思っていたのだ。また会えるとは」
「フン……死ぬような奴だと見られていたとはな」
皮肉とも冗談ともつかない口調だった。
ルシウスは首を横へ振る。
「姿を消した人間は、いずれ死んだものとして扱われる。それだけの話だ」
「そうか」
イザークは短く答える。
それ以上、その話を続ける気はなかった。十年という歳月は、説明するには長すぎる。ルシウスもまた、それを察したのか追及はしなかった。
「ここへは何用で来た。まさか、乗るわけではあるまい」
「……そのまさかだ。マグル学の教授としてな」
ルシウスは一瞬、言葉を失った。
ホームへ響く汽笛が二人の間を横切る。白煙が立ち昇り、石炭の匂いが風に乗って流れてきた。駅員が発車時刻を告げる声。梟の鳴き声。子供達の歓声。それらは絶え間なく耳へ届いていたが、イザークには妙に遠く聞こえた。
やがてルシウスがゆっくりと口を開く。
「……今、何と言った」
「聞こえなかったか。マグル学だ」
ルシウスの瞳が細くなる。
驚きではない。理解できないものを見る目だった。
「マグル学、だと」
その四文字を確かめるように、ゆっくりと繰り返す。
ルシウスは眉を顰めた。瞳はイザークを値踏みするように見据えたまま動かない。沈黙だけが続く。何を考えているのかは分からない。だが、すぐに理解できる話ではないことだけは、その表情が物語っていた。
やがて、ルシウスは薄い笑みを浮かべた。
「なるほど――マグルとは何たるものかを教える、と。彼らの醜悪さを教える教材としてなら、お前ほど適任な者もいまい」
イザークは僅かに肩を竦めた。
「さあ……どうだかな」
その声音には肯定も否定もなかった。
ルシウスは数秒、イザークを見つめた。
やがて、小さく笑う。
「相変わらず本心を見せん男だ」
「昔から変わらねぇよ」
「違いない」
甲高い汽笛がホーム全体へ鳴り響いた。
蒸気機関車が腹の底から唸るような音を立て、勢いよく白煙を噴き上げる。駅員達が一斉に声を張り上げ、別れを惜しむ家族の声が慌ただしさへ飲み込まれていった。荷車の車輪が石畳を転がり、梟が檻の中で羽をばたつかせる。
発車が近い。イザークはホームの時計を一瞥すると、それ以上話を続けることなく旅行鞄を持ち直した。
「時間だ」
それだけ言い残し、踵を返す。
革靴が石畳を規則正しく打った。
黒いスーツの裾が歩調に合わせて僅かに揺れる。その背中には迷いがなかった。久方ぶりに足を踏み入れた魔法界であるにもかかわらず、周囲を見回すこともなく、真っ直ぐホグワーツ特急へ向かって歩いていく。
真鍮の手摺へ左手を掛ける。
金属は朝の空気を吸い込んでいる。靴底が鉄製のステップを踏み締める。鈍い金属音が足元から響き、そのまま車内へ身体を滑り込ませた。
鼻を掠めたのは、古びた木材と石炭の匂いだった。通路は磨き込まれた木の壁に挟まれ、長年使い込まれた飴色の艶を帯びている。窓から差し込む朝日が床へ細長い帯を落とし、その上を生徒達の影が絶え間なく横切っていた。
コンパートメントの扉が次々と開閉する。
笑い声。梟の鳴き声。荷物を網棚へ押し込む音。友人を呼ぶ甲高い声。発車前の車内はホーム以上に騒がしかった。
イザークは通路をゆっくりと歩き始める。
一つ目の扉を横目で覗く。既に四人掛けの座席は埋まり、子供達が菓子袋を広げて騒いでいた。二つ目。家族が別れの言葉を交わしている。三つ目。梟が一羽、止まり木の上で神経質そうに羽繕いをしていた。
どこも落ち着けそうには見えない。
そのまま歩を進める。革靴が床板を一定の調子で鳴らしていく。その音へ、もう一つ、小さな靴音が混じっていた。一定の間隔を保ちながらも、途切れることなく続いてくる。イザークは振り返らない。誰かが偶然同じ方向へ歩いているだけなら、そのうち途切れる。四つ目のコンパートメントを通り過ぎる。まだ続く。五つ目。やはり離れない。イザークは僅かに目を細めた。
気配は軽い。敵意も殺気もない。
隠そうという気配すら感じられなかった。子供だ。
そう判断すると、自然と心当たりは一人しかいなかった。
六つ目のコンパートメントの前で、不意に足を止める。車内の喧騒だけが耳へ流れ込んできた。数歩後ろで、小さな靴音もぴたりと止まる。イザークは溜息にもならないほど浅く息を吐き、ゆっくりと振り返った。
数歩先。
通路の中央へ取り残されるように、小さな金髪の少年が立っていた。ドラコだった。両手は身体の脇でぎこちなく握られ、背筋だけは妙に真っ直ぐ伸びている。イザークを見上げていたが、目が合った途端、僅かに肩を震わせた。
逃げる気配はない。だが、何か用件を切り出す様子もなかった。
通路の脇では一年生らしい生徒達が荷物を抱えて行き交っている。梟籠を抱えた少女が「すみません」と小さく声を掛けながら二人の間を抜けていった。車体が微かに軋み、窓ガラスが震える。少年を見下ろしたまま口を開く。
「……何の用だ」
低い声だった。責める響きはない。
ただ理由を尋ねているだけだった。ドラコは口を開きかける。
「ぼ、僕は……」
言葉が続かない。
付いてきた理由を問われて初めて、自分でも答えを持っていなかったことへ気付いたようだった。視線が泳ぐ。
革靴の爪先を見下ろし、またイザークを見る。
「その……パパがあんなふうに話す人、見たことがなかったので」
それだけだった。
父は誰に対しても堂々としている。誰にも驚かない。誰にも歩み寄らない。その父が、死んだと思っていた男の名を呼び、昔を懐かしむように言葉を交わした。そんな姿は初めて見た。だから気になった。それだけのようだった。
イザークはしばらく黙っていた。
やがて小さく鼻を鳴らす。
「お前が知らないだけで、案外ああいう反応をするものだ。奴はな」
興味を失ったようにそれだけ答えると、再び前を向く。
ちょうど一つのコンパートメントの扉が開いていた。中には誰もいない。窓際へ日が差し込み、赤い座席の布地を柔らかく照らしている。網棚にも荷物はなく、発車前の静けさだけが残っていた。
イザークは旅行鞄を持ち上げ、何の躊躇もなく中へ入る。
そしてそのまま、通路へドラコを残し、扉を閉めた。扉が閉じると同時に、通路を行き交う生徒達の声が僅かに遠のいた。
完全に遮られたわけではない。薄い木製の扉を隔て、笑い声や足音は絶えず伝わってくる。それでも、先ほどまでの喧騒に比べれば、コンパートメントの中は随分と静かだった。イザークは扉の向こうを一度だけ見た。磨き込まれた曇りガラス越しに、小さな影が立ち尽くしている。しばらく動く様子はなかったが、やがて遠くから誰かが名を呼ぶ声が聞こえた。
「ドラコ!」
少年の影が僅かに揺れる。振り返ったらしい。
続いて、通路の奥から別の少年達の声が重なった。言葉までは聞き取れなかったが、ドラコは短く返事をすると、ようやく扉の前を離れた。
小さな靴音が、通路の喧騒へ紛れて遠ざかっていく。
イザークはそれ以上気に留めることなく、旅行鞄を肩の高さまで持ち上げ、頭上の網棚へ押し込もうとしたところで、一瞬だけ手を止める。魔法を使えばこんな荷物は指先一つ動かす必要もない。杖を取り出し振りかざせば、呪文を唱えることなく浮かせられる。だが、そのまま両腕で鞄を持ち上げた。
重みが肩と背へ掛かる。網棚の金具が僅かに軋み、キャンバス地の底が木枠へ擦れた。奥まで押し込み、落ちないことを確かめてから手を離す。この程度の荷物を持ち上げるために、わざわざ杖を抜く気にはなれなかった。
十年前のイザークなら、そうは考えなかっただろう。
魔法使いが手を使って物を運ぶなど、非効率で、無意味な行為だとでも思っていたかもしれない。今となっては、その考えの方がよほど面倒だった。
イザークは窓際の座席へ腰を下ろした。
赤い布張りの座面が体重を受け、古いばねが低く鳴る。背凭れへ身体を預けると、長年染み込んだ埃と古布の匂いが微かに立ち上った。
窓の外には、まだ大勢の家族が残っている。
母親へ何度も手を振る少年。娘の襟元を直している父親。涙を堪えきれず、目元を押さえる女。何かを言い忘れたのか、窓越しに大声で叫んでいる老人。
列車の中から見れば、どれも似た光景だった。
別れを惜しみ、再会を約束し、不安を隠すために笑う。
イザークには、そのどれも縁遠いものに思えた。
座席の横へ取り付けられた窓枠へ手を伸ばす。
真鍮の留め具へ親指を掛けて押し上げると、硬い抵抗が返ってきた。長く使われてきた窓らしく、金具は僅かに錆びついている。もう一度力を込める。乾いた音とともに留め具が外れ、窓が数寸ほど持ち上がった。
外の空気が一気に流れ込んでくる。石炭の煙。蒸気。焼けた鉄。ホームへ落ちた雨の名残。人々の衣服から漂う香水や革の匂い。それらが狭い室内へ押し寄せ、古びた木材の匂いと混ざった。
イザークはジャケットの胸ポケットへ手を入れた。
指先に触れた紙箱を引き抜く。角は潰れ、表面には細かな皺が寄っていた。キングス・クロス駅へ入る前から吸えずにいた煙草だ。
一本を唇へ咥える。続いてポケットから銀色のライターを取り出した。蓋を弾く。澄んだ金属音が、小さなコンパートメントへ響いた。親指で石を擦る。一度目は火花だけが散った。二度目で、青みを帯びた小さな炎が立ち上がる。煙草の先端へ近づけ、ゆっくりと息を吸い込んだ。紙と葉が焼ける微かな音。先端が赤く灯り、薄い煙が立ち上る。肺へ流れ込んだ熱と苦味に、ようやく身体の力が僅かに抜けた。煙を数秒留め、開いた窓へ向けて細く吐き出す。
白い煙は風に攫われた。機関車が吐き上げる蒸気と重なり、どちらが煙草の煙だったのか、すぐに分からなくなる。
その時、車体が大きく震えた。
連結器が次々と引かれ、前方から重い衝撃が伝わってくる。頭上の網棚が軋み、窓硝子が細かく震えた。ホームでは駅員が声を張り上げ、最後まで車外に残っていた者達が慌てて列車から離れていく。
甲高い汽笛が鳴った。
車輪が鉄路を噛む。最初はゆっくりと、重い車体を引き摺るように、景色が横へ流れ始める。窓の外にいた人々が手を振る。その中に、先ほど見た白金の髪を見つけた。ルシウスは蛇頭の杖へ両手を重ね、動き出した列車を見送っている。手は振らない。声も上げない。ただ静かに立ち、こちらへ向けた視線だけを動かさなかった。イザークも何の合図も送らない。
距離は瞬く間に開いていく。
やがてルシウスの姿は、噴き上がる白煙の向こうへ呑まれた。
列車は徐々に速度を上げていく。
ホームの柱が次々と窓の外を横切り、家族達の姿は長く連なった色の帯へ変わった。やがて赤煉瓦の壁が視界を塞ぎ、薄暗い構内へ入る。車輪の音が反響した。規則正しい振動が座席から背中へ伝わってくる。
煙草の灰が僅かに伸び、列車の揺れに合わせて震えた。
イザークは窓枠へ片肘を置き、暗い硝子へ映る自分の顔を眺める。
銀色の髪。灰色の瞳。頬へ残る古い傷。
十年前と変わらないものもあれば、変わったものもある。
列車が暗がりを抜けた。
窓の外へ、朝の光が一斉に戻ってくる。ロンドンの建物が後方へ流れ、煤けた煙突と煉瓦造りの家々が次第に遠ざかっていった。
行き先はホグワーツ魔法魔術学校。
かつて自分が学び、そして二度と戻らないと決めた場所。
イザークは煙草を深く吸い込んだ。
先端が赤く燃える。吐き出した煙は、開いた窓から吹き込む風に巻かれ、列車の後方へ消えていった。