一次創作小説(短編)

揚げ玉の誕生

『的藤先生のなんでもドキュメンタリー 揚げ玉の誕生』より書き出し。

ナレーション「きつね色の粒々の揚げ玉。みなさんはどのように揚げ玉が生まれるか知っていますか?」

的藤先生「揚げ玉は最初から粒々なわけではありません。なんと、最初は白い液状なんですね」

 映像──白い液状の揚げ玉の素。

的藤先生「揚げ玉は、熱い油の池で誕生します。ご覧ください。一粒ずつ落ちていきます」

 映像──油の池。揚げ玉の素から一粒落ちていく。

的藤先生「おや、最初の一粒はちょっと気が早かったようですね。油の池が温まる前に落ちてしまいました。でも大丈夫です。油の温度が上がれば……はい、泳ぎ出しました。元気に泳いでいます」

 映像──油の池で白い粒が動いている。

的藤先生「兄弟たちも次々飛び込んでいきます。みんな元気ですね」

 映像──油の池に次々と白い粒が落ち、池を泳ぐ。

的藤先生「この揚げ玉たちが元気に泳ぐさまを見ていると、大変に癒されます。大きな揚げ玉も小さな揚げ玉も元気ですね」

 映像──粒がだんだんと色づいてくる。

的藤先生「揚げ玉たちの色が変わってきました。そろそろ旅立ちます。きつね色が目安ですが、たぬき色もよいですね。私はたぬき色が好きですが──あ、旅立ちます」

 映像──網ですくい上げられていく揚げ玉。

的藤先生「池があくと次の揚げ玉たちがまた飛び込んできます」

 映像──油の池に再び次々と白い粒が落ち、池を泳ぐ。

的藤先生「泳ぐさまが本当に可愛らしいですね。ずっと見ていたくなります」

 映像──池を泳ぐ揚げ玉たち。色づいて、また網にすくわれる。

的藤先生「旅立つのが寂しいですね。でも、池があけばまた新しい揚げ玉たちが飛び込んできますよ」

 映像──キッチンペーパーに広がる揚げ玉たち。

的藤先生「さて、揚がった揚げ玉たちはお互いにくっつくことはありませんが、発火する危険がありますので一ヵ所に固めてはいけません。しっかり広げましょう。それにその方が一粒一粒の顔がよく見えて可愛いですよ」

ナレーション「本日の『揚げ玉の誕生』はいかがでしたか。来週は『揚げ玉の未来』をお送りいたします。お楽しみに」

2026/04/20
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