中編(二万字以上)

スキャンダル〔後編〕

 万丈目は高校生の頃から意地っ張りで、素直に好きだなんて言ってくれない。友達だって言うだけで「友達じゃない」と否定する。でもそんなところが面白くて、今思うと可愛かった。
 万丈目はひねくれてるけど、デュエルに勝ちたいって気持ちだけはいつもまっすぐで、真っ正面からぶつかってきてくれるところが本当に大好きだったんだ。
「キングになるのはこのオレだ!」
 高校生の時、万丈目がそんな風に言った声をまだ覚えてる。その頃は、「いや、オレだ」なんて返したっけ。
 あの頃は夢見てた。いつか武藤遊戯と海馬瀬人みたいに、たったひとつの栄冠をかけてお前とデュエルする日が来るんだって。
 でも、違った。
「なんでプロにならなかった?」
 卒業してから、万丈目以外にも何人も言われた。惜しむように、羨むように、時に憎むように。
 うーん、だって、無理じゃない? オレって授業も遅刻と居眠りばっかりで。プロデュエリストの仕事なんて、一分一秒遅れたらたくさんの人に迷惑がかかって、赤字が発生しちゃうんだろ?
 今年なんて、キングを決めるためのトーナメントが何回も延期して、大赤字になるかもってみんなやきもきしてるんだろ? 風で飛んできた新聞の見出しを見ただけで、詳しいことは知らないけど。
 やっぱりオレはプロには向いてないよ。何億円もかかったデュエル、ジェネックスみたいにすっぽかせないし。世界が滅んじゃうからちょっと延期してよなんて、おエライ人の血管が切れちゃうかも。
 人の命とお金どっちが大事かなんて野暮は言わない。オレだってもう子供じゃないんだから、お金の大切さだってわかるよ。何億って赤字が出たら、何万人も従業員をクビにしなきゃいけなくなるかもしれない。失業から餓死するかもしれないし、餓死の前につらくてクビを括ってしまうかもしれない。失業しなくても責任を感じて、なんて場合もある。命と金の天秤はそう単純じゃなくて、どっちにしたって人の命は関わるんじゃないの?
 プロデュエリストって、やっぱりオレがいるべき世界じゃないと思うんだよな。
 万丈目にはすごく似合うと思うよ。お前は責任感があって、ちゃんと時間も守るし。何より見ている人を魅了する、そんなデュエルをするだろう? お前のデュエルはおもちゃ箱とびっくり箱を合わせたみたいなんだ。強くてかっこいいドラゴンやロボットが出たと思ったら、不気味で可愛い(キモカワって言うのかもな)おジャマたちが飛び出してくる。すごくわくわくしてどきどきして最高だ! きっと世界中の人が見るのを楽しみにしてるよ。
 でも今年はやっとキングになれそうなのに、何回もデュエルは延期されて、ちょっとタイミングが悪かったよな。今は異世界と人間界の力が引き合ってしまう時期なんだ……いつもならそんなこと起きないけど、精霊が迷い込んじゃったりして……。
 たぶんずっと昔に人間界に迷い込んだ精霊は「神様」と呼ばれた。今はただ「災い」と呼ばれる。誰も精霊なんて見えないし、現象としては大嵐だ。でもわざと大嵐を起こしてるわけじゃないんだ、突然知らない場所に来てびっくりして走り回ったり、帰りたくて泣いたりしてるだけなんだ。巻き込まれる人間にはそんなこと関係ないんだけど。
 万丈目がキングになるかもしれない日にそうなったのは本当に残念だな。お前がキングになる瞬間を見たかった。でも、お前がデュエルできなくなるのはもっと嫌だよ。オレだけじゃなく、きっとたくさんの人が悲しむ。大赤字だって起きちゃうし。
 デュエルスタジアムの近くに精霊が来たのは偶然なのかな。キングを決めるほどの闘志みたいなものに引き寄せられたのかもしれない。今までのトーナメントもそうだったのかも。もっと早く気づいてたら延期回数も減ったのかな。周期からすればたぶんこれから減っていくし、今更気づいても遅いんだけど。
「さて……試合はどうなったのかな」
 嵐がおさまれば、雲一つないいい天気になった。オレはずぶ濡れだし、雷にやられてまだちょっと身体がびりびりするし、なんか頭もくらくらするけど。万丈目サンダーは今ごろサンダーコールをされてたりするのかな?
「ま、お前の家に帰ろうか」
 今はオレの魂の中で大人しくなった精霊に声をかける。ひとりで知らないところにいるのは寂しいもんな。
 精霊を本来の居場所に返して、また人間界に戻る。号外によれば新しいキングは万丈目サンダーだった。
 いつだったかに、覇王様は世界を救うのに忙しくてプロのデュエルなんてどうでもいいんだろうなんて言われたけど、そんなことない。本当はすごく見たかったよ。
 第一、別に世界を救うなんてエラそうなことしたいんじゃないんだ。人間にも精霊にも、どっちにも傷ついてほしくない。大好きなひとたちに笑っていてほしい。そのために十二次元を駆け回るのは大変だけど、誰かがやらなきゃいけないし、オレの力だってきっとそのためにある。
 だからオレの職業は……旅人? 宿なし、根なし草、呼び方はなんかいろいろ。
 万丈目におめでとうって連絡したかったけど、濡れたせいか電池切れか携帯電話は動かなかった。もう直接言えばいいか。最後に教えてもらった住所から、まだあいつが引っ越してなければだけど。
 万丈目に会えたのはすっかり夜になってからだった。お祝いするつもりが、誕生日だからって逆に祝われてしまったけれど。
 久しぶりにゆっくり過ごした日は本当に楽しかった。デュエルも最高で、本当は眠りたくないくらいだった。でも、疲れてたのも本当で、そんなこと気づかれたくなかったな。料理まで作ってくれて、気を遣わせちゃったかな。でもやさしくされるのは心地よくて、いつまでもここにいたいななんて思うくらい。今日が終わらないでほしい──そのくらい最高の一日だった。
 終わるのは寂しいけど、笑顔で別れたいな。またなって何気ない風に言いたい。いつかそれが来るのかわからなくても……。
 ──なんて思っていたのに、万丈目から家の合鍵を渡されてしまった。
 こういうのって、友達に渡すものかな。セキュリティがよくて、なくしても大丈夫だっていうけど、本当にいいのかな。
「どうせお前は宿なしだろうが。いつでも来い」
 いつでも来い──それは、デュエルアカデミアを卒業する時に、寄せ書きに書いてくれた言葉だった。あれから何年も経ったけど、まだそう思ってくれるんだな。
 オレはお前の言う通り粗忽者だけど、絶対なくさないようにするよ。絶対また会いに来る。まだデュエルだってし足りないしな。

 カードキーをもらってから初めて家に帰るときは、連絡したけど返事は来ないし、もうカードキーが無効になってて入れなかったらどうしよう、なんて思った。普通に使えて、久しぶりに入った万丈目の家は相変わらずきれいで……あいつが読まなさそうなゴシップ誌が置いてあった。
 そういえば前にもゴシップ誌が楽屋に置かれてた話をしてたなと思い出した。開いてみると、またオレと万丈目の写真だった。オレの顔はぼかしがかかっていたけれど。

 キング万丈目サンダー 結婚間近!? コンビニデート

 コンビニの買い物はデートって言わないと思う。二人並んでりゃとりあえず熱愛なんだ、という万丈目の言葉を思い出す。
 でも、この写真の万丈目はなんだか……笑い方なんてすごく幸せそうな感じで、すごくいいものを見ているような視線の先にいるのは、オレなわけで……。
 そういえばあの日の万丈目はよく笑って、ときどきじっとオレのこと見つめて、白い肌を耳まで赤くしたりして……ただの友達よりライバルより好きなのかもって思うのは思い上がりなのかな。
 キングになったばかりで、機嫌がよかっただけかも。ご飯を作ってくれたのも、カードキーをくれたのも、キングたるもの宿なしの友人にはやさしくしよう、みたいな……。
 頭の中でごちゃごちゃ考えたって仕方ない。早く万丈目帰ってこないかな?
 やっと万丈目から来た連絡は、今日は遅くなって夕食はいらないと書いてあった。
 待ってる。
 すぐさまそう返事をした。早く会いたいな。お前がどんな気持ちか知りたい。
 でも。
 同じ気持ちだったとして、フツウの人間じゃないオレでもいいのかな。
 たぶん、年を取らないことはもう気づかれてる。でもこの身体のことはたぶんまだ……。
 一人で考えたってらちがあかない。そもそも考えるのは得意じゃない。デッキを調整しよう。夜になったら、万丈目が入れるように風呂を用意して。プレゼントも渡さなくちゃ。最高のとはいえないけど。

◇◆◇

遊城十代:今日帰れると思う!

 万丈目のスマホにメッセージが届いた。
 帰れる──『帰れる』? 『行ける』ではなく『帰れる』?
 万丈目はしばらく頭の中でそのメッセージについて考えた。帰るというのは、何も家に対してだけかかるものとは限らない。異世界から人間界に帰るとか、外国から日本に帰るとか、幅広く使われる言葉だ。
 万丈目は返事を考えていたが、打ち合わせのためにすぐに返信できなかった。一仕事終えて戻ると、十代からはさらにメッセージが届いていた。

遊城十代:帰った。万丈目は何時に帰る? 夜ご飯食べる?

 続いたメッセージは、帰るという言葉を家に対して使っていることを確定させた。だが、遊城十代は落第寸前のドロップアウトボーイだったのだ。言葉の使い方にたいした意味はないのかもしれない。十代の使う言葉ひとつに心乱されてどうする? 十代がいつまでも名前の通り子供っぽくても、万丈目はもう大人なのだ。
 万丈目が返事を送ると、すぐさま十代からの返信が届いた。

遊城十代:待ってる

 なんで今日に限って夜まで仕事なんだ!?
 ほんの数秒前「十代の言葉ひとつに心を乱されるべきではない」と思ったのに、万丈目は今日のスケジュールを一瞬恨み、仕事が終わり次第早く帰ろうと決めたのだった。
「おかえり!」
 家に帰ると、もう風呂は済ませたのかグレーのスウェットの上下を着た十代が出迎えた。あれから初めて来たくせにずいぶんくつろいでいるようだった。
「……ただいま」
「お疲れさまー。お風呂さ、すぐ入れるよ」
「そうか、わかった」
 なんでこんなドラマの夫婦みたいな会話してるんだろうか。いや、十代は帰りの遅い万丈目がすぐに寝支度を終わらせられるように気を遣っただけで深い意味はない……。
 万丈目が風呂から上がると、十代はソファでゴシップ誌をめくっていた。すっかり忘れていたが、ローテーブルに置きっぱなしにしていたのだ。
「あ、お疲れ。また熱愛だって」
 十代はへらりと笑った。
「これ、一緒にコンビニ行った時だな。笑ってるし誤解されちゃうかな」
「別に構わん。……誤解でもない」
 声の小さくなった万丈目に、十代は何? と聞き返す。
「だから……別に、誤解ではない」
 十代は不思議そうに万丈目を見返した。この馬鹿に遠回しな言葉が通じるわけがない。
「その……熱愛という言葉では齟齬があるだろうが間違ってはいない……というか……」
 はっきりと言うべきだ──頭ではわかっているのに、口からはなかなかそんな言葉が出ない。十代の顔も見られなくなり、万丈目は十代がゴシップ誌を持つ指を見ていた──その指から、ゴシップ誌が滑り落ちた。
 十代はゴシップ誌を拾うためにかがんで、その際に万丈目の視界には赤くなった十代の顔が見えた。
「……オレも好きだよ」
 十代はゴシップ誌をローテーブルに置いた。
「……万丈目語は結構わかるから」
 十代は赤い顔ではにかんで笑う。
「それに目は口ほどにものを言うっていうけど、目だけじゃなくて顔全体そうだよな……お風呂が熱すぎたんじゃなきゃ……」
「お前だって顔が真っ赤だぞ!」
 好きだとは言えないのに、文句ならばすんなりと口から出た。
「万丈目ほどじゃないぜ、見えないけど」
「鏡を持ってきてやる」
「お前が鏡を見ろよ」
 告白はロマンチックにはほど遠く、レッド寮で過ごした日のように二人は言い合った。
「そうだ、鞄に手鏡が……」
「見せなくていいッ」
「いや可愛いから見ろって」
「可愛いとか言うな!」
 十代を止めようと必死になった万丈目は、間近になった十代の顔が気まずそうになって、やっと自分が十代をソファに押し倒すような形になったことに気がついた。
「……すまん」
 万丈目はすぐさま十代から離れ、ソファの端に座った。
「……レッド寮の頃、結構こんな感じだったよな」
 十代が言った。確かに万丈目と十代は、学生時代に取っ組み合いの真似事だってしたし、購買のワゴンの最後のドローパンを取り合って腕や顔がくっついたって何も思わなかった。
「……あの、嫌だったわけじゃなくて、オレ今下着着てなかったなって思い出しちゃて」
「は?」
 予想外のことを言われ、万丈目の声は裏返った。
「……予備がなくなったのか? 貸すか?」
 新品の下着ならあったように思う。万丈目のものでもサイズなら合うのではないか……。
「や……下は履いてるよ? 上が……寝るだけだからいっかなーって」
「上?」
 着てないことをそんなに気にするか?
「……付き合うんなら言わないとなって思ったんだけどさ……右だけ女性型というか……」
 先程の悪ふざけから一転、十代は不安そうな顔をした。
「異世界でのことでオレがいろいろ変わったのはお前も知ってると思うけど、身体もいろいろ変わった。年は取らないし、死んだりしないし……男でも女でもないし、男でもあれば女でもある……みたいな……」
 十代は少し視線を迷わせた。年を取らないことは万丈目も察していた。ただの人間ではないと以前にも思った。だがそれは不老であることや不思議な力を持つことだと思い、よもやそのように身体が変化しているとは……。
「……見る?」
 十代はスウェットの裾をつまんだ。
「見っ……今はいい」
 緊張した万丈目とは反対に、十代からは不安の色が薄くなり、微笑んだ。抱えていた秘密を話して少し楽になったのかもしれない。
「それでも大丈夫?」
「今更だろうが。お前が規格外なことくらい、とっくの昔に知ってる」
「規格外? そりゃいいな」
 十代はその言葉を気に入ったようだった。ソファのそばに置いていたショルダーバッグから何か取り出す──カードだ。
「規格外のプレゼント。最高のとはいかないけど」
 裏面の模様からして、それはデュエルモンスターズのカードだった。万丈目は十代に向き直ってそれを受け取る。
「……白紙?」
 そのカードの表は白紙だった。ミスプリントか?
「それは特別なカードだ。デュエルには使えないけど、できたらいつも持ってて。お守りみたいな」
「お守り?」
「それは一回だけ、お前の必要なものに変わる。怪我したらディアン・ケトになるとか……」
 つまりこのカードは、万丈目の必要なものに変化しこの人間界でカードの力を現実のものにするという、とんでもないシロモノだ──。
「こんなカード気軽に渡していいのか? 悪用するかもしれんぞ」
「お前は悪用しないよ。それに、お前が望むものじゃなくて必要なものになるんだ。悪いけどお前にはどんなカードになるか選べない」
「だからお守り……か」
 おそらく十代は万丈目が何か事故などに遭った時、このカードが怪我を治療したりすることを期待しているのだろう。
「わかった。ありがとう」
「お前が欲しいものじゃなくてオレが渡したいものになっちゃった。最高のプレゼントはまた今度、ちゃんとお前が欲しいものにする。でもお前はお金で買えるものは自分で買えちゃうからな」
「わざわざ用意しなくても……」
 お前がここにいるだけで最高のプレゼントだ──などという台詞が万丈目の頭に浮かんだ。
「プレゼントはオレ! とか言った方がよかった?」
「いらん!」
「いらないの?」
「軽軽しくそんなことを言うな!」
 十代は万丈目の顔を見て楽しそうに笑う。また顔が赤くなっているのだろう。
「オレは万丈目語に詳しいから……」
「翻訳せんでいい!」
 何が万丈目語だ! だが万丈目は、素直な言葉ではまだ何も言えていないのは事実だった。十代はそのことも楽しんでいるのかもしれない──それはつまり、十代に遊ばれているということではないか?
「翻訳などしなくてもな──オレはお前がすっ……」
 喉が詰まる。十代の茶色の目がじっと万丈目を見ている。 
 言うぞ! オレはキングなんだからな!
 己を鼓舞し万丈目は続きを言う。
「好きだから、自分のこと大切にしろっ……」
 茶色の瞳に涙が溜まる。
「……うん」
 なんで泣く? 予想外の反応だった。てっきりへらへら笑って万丈目をからかうのかと思ったのに。
「ありがとう、万丈目……」
 十代は涙を流すことはなかったものの、湿っぽい声で礼を言った。
「……どうした」
「……へへ、泣くとこじゃないよな……」
 涙をごまかすように十代は笑う。
「……言いたくないなら言わなくていい」
「えっと、嬉しいのと……びっくり? なんか……大切って言われたら急に……へへ」
 目を潤ませながら、十代は恥ずかしそうに笑った。そんな風に泣かれるほど、大切にできているだろうか? 万丈目はいつも素直になれないというのに。
「この前も誕生日祝ってくれただけじゃなくて、ちゃんと寝ろって言ってくれたり、ご飯も作ってくれて、カードキーくれて……今だって……」
 仕方ないだろう? お前は疲れた顔をしてたし、ほっておいたら本当にちゃんと飯を食ったり寝たりするのか? 宿なしで不摂生な生活をしてるに決まってる! 今だって、お前が馬鹿げた冗談を言うのを止めただけなんだ!
 万丈目の頭には言い訳のような言葉が溢れてくる──十代に言わせれば「万丈目語」だ。
 翻訳するとどうなる?
 心配で仕方ない。ちゃんと食べれているか? 休めているか? 宿なしならどうかオレのところに来てくれ。オレはお前のことが好きなんだ──。でも、好きな相手にだって軽軽しいことは言うんじゃない。自分の身はもっと大切にするべきだ。オレが大切だと思う人をお前自身が蔑ろになんてしないでくれ……。
 そんなことを口にするには、おそらく修行が必要だ……万丈目にとっては。
「万丈目」
 ぐるぐると考えてしまう万丈目を十代が呼ぶ。
「あのさ、お前が嫌じゃないなら、だけど……ハグ、したらだめかな……」
 十代は万丈目の様子をうかがっている。高校生の頃、十代は気軽に抱きついてきたり肩を組んできたりしてきた。深い意味のない、友人同士の戯れだ。今はそれと違う──。
「嫌ならいいけど」
「別にそうは言ってない」
 口から出る言葉はいつもひねくれている。万丈目は同意の意思表示に少し腕を広げた。十代は微笑み、万丈目に抱きつく。
「本当に大好き」
 十代は、たぶんあの頃の記憶と変わらない、人間の温度をしている。
 老いない身体、男でも女でもない身体、おそらくそれに伴う苦悩は多い。十代はこれまでそれを話すことはなかった。これからもそうなのか? 万丈目は──十代が話したいと思える存在になれるのか?
「十代、オレは……」
 万丈目は十代の身体を抱きしめる。
「オレはただの人間で、お前にとっては頼りないかもしれないがな……それでも、守りたいとか、支えたいとか……力になりたいと、オレは思ってる」
 分不相応な願いだ。
「な……何ができるんだというものでは、あるが……」
「万丈目、オレは本当に──」
 十代の声は湿っぽい。
「本当にもうたくさんもらってる。もらいすぎだ」
「世界を何回も救ったやつが何言ってる」
「はは。でも、オレ」
 ともだちひとりまもれなかったよ。
 十代の顔は見えない。あの頃の記憶は今も十代に暗い影を落としている──。万丈目は何もしてやれなかった。十代も、万丈目も、あの頃はあまりに子供だった。
「お前でそうならオレの立つ瀬がない。できなかったことばかり数えやがって。算数もできないのかお前は」
「さんすう?」
 十代の声が少し笑う。
「数学以前だ」
「足し引きなんてできないよ」
「だったらそんな風に自分を責めるのもやめろ」
 十代が身じろぐ。逃げ出したいのかもしれない。あの時から、こんなことを話したことはなかった。十代にとっては避けたい話題だったろうし、あの頃の万丈目はかける言葉を持たなかった。どうしてやればいいのかわからなかった。でも。
「……自分のしたことを無価値だと貶めるな。お前はよくやってる。この前だって嵐を止めたんだろ? あのままだったらスタジアムにいた何万人て観客が、スタッフたちが、周辺の住民がどうなった? お前がかつてしたことと足し引きできないなら、誰かを助けたことも引き算するなよ」
 今は昔ほど言葉を持たないわけではない。十代もきっとあの頃のように聞く耳を持たないわけではない……。
「……やっぱりもらいすぎてるよ、オレ……」
 十代は小さな声で言った。万丈目は抱きしめていた腕をゆるめて十代の顔を見る。相変わらず涙をこらえて、目も頬も鼻も赤くなっている。
「お前、話聞いてたか? 底抜けのバケツかお前は」
「バケツ?」
 十代は目を丸くする。万丈目はなるべくやさしい言い回しをしたかったが、怒りから出る言葉の方が口がよく回った。
「馬耳東風でもいい。オレが何言っても聞いてないだろ」
「……聞いてるよ」
 十代は少しだけ顔をしかめて万丈目を見返す。
「音を聞いてるだけだ。オレは今なんて言った?」
「馬耳東風?」
「その前だ、前!」
「底抜けバケツ」
「違う! 自分のしたことを無価値だと思うな、引き算するなって言ったろ!」
「聞いてた」
「聞いてたなら、なんで『もらいすぎ』って言葉が出てくる!」
 茶色の目は不可解そうに万丈目を見る。
「一グラムももらいすぎてないだろうが!」
「グラムなの?」
「そこに反応するな間抜けッ! グラムでもなんでもいいが、お前はオレを助けたろうが! アカデミアの頃から、ついこの間も! そのことを思えばもらいすぎはこっちの台詞だ!」
「でも」
「聞け! オレは感謝してる、してるがお前に恩返しなんかするつもりはないからな!」
「うん」
「だからお前は何ももらいすぎてない!」
「……うん? でも、カードキーとかさ」
「あれはお前が好きだから渡したんだ! そのくらいバケツ頭でも理解しろ! オレだってひねくれ者だがな、お前こそ好意を素直に受け取ったらどうだ!」
 十代はしばらく万丈目を見つめた。
「……ごめん、そうだよな」
 ようやく少しだけ、十代のバケツの底を塞げたのかもしれない。万丈目は声のトーンを落とす。
「自分が好きな相手の話くらい聞いてくれ。もらいすぎだとか、そういう言葉で拒絶するな」
「拒絶なんて」
「してる。お前はとにかく、ちゃんと受け取れ。いいか」 
 万丈目は拳で十代の肩を叩く。ロマンチックな仕草ではない。デュエル前のライバルに気合を入れているみたいだ。
「オレは……お前が好きだし、大切だし、力になりたい」
 十代はまた泣きそうな顔をする。たぶん、十代は好きだという感情の表面だけなら笑顔で受け取るのだ。でも、その奥側にある大切にしてるとか力になりたいとか、そういう感情に怯えている。おそらくそれは万丈目のかつての失敗がそうさせた──力になると無理矢理十代についていったのに、結局何もできなかった。それどころか、敵に利用され十代を傷つけた。十代のバケツの底に穴を空けたのは万丈目だ──。
「……まずはこれだけ受け取ってくれ」
 万丈目は十代を見つめる。赤くなった顔は泣くのをこらえたまま、十代の手が万丈目の拳に重ねられた。 
「……受け取った」
 十代は小さく頷く。ようやく本当に十代に届いたのだと思う。届けたいものはまだいくらでもあるが、今はこれで充分だ。
「……お前って、本当にオレが大好きなんだな」
「やっと理解したか」
「……うん」
 十代は万丈目の手をそっと離した。それから苦笑いする。
「……フツウのカップルはこんな会話しないんだろうな」
「お前は規格外だし、このキングを普通なんて言葉に当てはめる気か?」
「そーだったな、キング。……って、キング、明日は仕事ないの?」
 十代ははっとしたような顔をした。
「あるぞ。まあ、朝は少し遅いから気にするな」
「するよ、寝なきゃだ。疲れてるのにごめんな」
 先程までの湿っぽさは、日常の中に消えていく。
「お前は──どうなんだ?」
 また旅立ってしまうのだろうか? そう思った万丈目に、十代は微笑んだ。
「しばらくいるつもりだから……またゆっくり話そうぜ。デュエルもしたいし」
「……ああ」
 二人はおやすみと挨拶をして、それぞれの部屋へと行った。 
 一人になると、万丈目は少し後悔した。言い過ぎてしまっただろうか。だが、これからきっとこんなことを何度も繰り返す。怒ったり、泣かせたり、喧嘩したり……そしてその度に日常に戻る──。
 たぶん、それがふたりで生きていくということだ。

◇◆◇

 前は、好きなひとに好きだって言われたら、ただ嬉しいんだと思ってたよ。
 でも、違った。誰かに好かれるってことを、ちゃんと考えたことがなかった。
 大切だって言われて、泣きたくなった。
 オレのことなんか、大切にしなくていいよ。だって、別に死んだりしないんだし。
 力になりたいって言われて、怖くて仕方なかった。
 力になんてならなくていいよ。だって、オレは強いし、ユベルだって強いし、ネオスたちだっているんだから。
 だけど、愛するってそういう気持ちだ。すごく大切に想って、お前が困ったりつらかったりしたら、支えたいし力になりたい。
 大切にしなくてもいいとか、力にならなくてもいいとか、そんなこと言われたら悲しいよな。だってそんなの、愛さなくていいって言われてるみたいだ。
 そういうわけじゃないんだよ。ただ、怖いんだ。大切とか守りたいとか言わないでほしい。だってオレのために何かしようとしたひとは、みんな傷ついてしまったじゃないか!
 きっとオレは底抜けバケツを自分で使ってたんだ。なのに底抜けなことに気づいてないくらいに馬鹿だった。気づいてないからいろんなものをこぼしてしまって、誰の言葉もちゃんと聞けなかった。罪悪感ばかり持って走り回って、誰かの笑顔見てもすぐにこぼしちゃって。プラスになるはずのものをゼロにしてた。
 本当に馬鹿だよな。
 でも、バケツが底抜けなことに気づけただけよかったのかな。底抜けだとわかれば塞ぐことだってできる。……万丈目は、塞ごうとしてくれる。
 まあ、せいぜいが底抜けバケツから穴あきバケツにしかならないんだけど。オレってやっぱり、馬鹿なんだし。

 万丈目と暮らし始めて、ときどき喧嘩したり意見のすれ違いがあったりしながらも、オレたちはなんとかやっている。
 喧嘩というか、ものすごく怒られたのが、万丈目に渡した「必要なものになる」白紙のカードが発動した時だった。
 万丈目サンダーのサイン会があった日だ。万丈目のストーカーが、サイン会に刃物を持ち込み自分の順番が来た時に万丈目へ襲いかかった。しかしストーカーはその場でひっくり返り気絶して、誰も傷つけず逮捕された。万丈目に渡した白紙のカードは《月の書》になって万丈目を守ったようだった。《月の書》は攻擊表示のモンスターを裏側守備表示にする速攻魔法──ストーカーは攻擊表示から裏側守備表示になったんだろう。
「あのカード、今回は《月の書》だったからまだよかったがな、ミラーフォースでも発動したらどうなる!? ストーカーは死ぬのか!? 今回は助かったが、あんなもの二度と渡すんじゃない!」
 帰ってくるなり万丈目はオレに怒鳴りつけた。オレは「万丈目を守る」ことを期待してあのカードを渡したけど、確かに場合によってはそれも有り得ることだった。
「ごめん、そんなつもり……」
 オレは謝ろうとしたけど、万丈目は自分の部屋へ行ってしまった。
「……ちょっと、考えが浅かったな」
 呟く。あれは、オレが持ってる分にはすごく便利なカードだ。突然モンスターに襲われた時《聖なるバリア-ミラーフォース-》になってモンスターを倒してくれたら、助かる。でも人間にそれが使われたら……。
 オレは万丈目にあのカードを渡した時、「人間に襲われる」なんてことまで考えていなかった。階段から落ちたり交通事故にあったり、そういう時に衝撃を和らげるとか、怪我を治してくれたらとか、その程度のことを考えていた。
 人間界にモンスターはいない。でも……そういうことは起こる。
 殺人とか強盗とか新聞やネットニュースで見ても、実感は持てていなかった。根拠なく自分や万丈目は大丈夫だと思っていた。……そんなわけないのに。
 しばらく経つと、万丈目は部屋から出てきた。
「……すまない、お前が悪いわけじゃないのに怒鳴って悪かった。警察とか、結構大変で……疲れてイライラしてたんだ」
 万丈目は申し訳なさそうにしてるけど、そもそもオレが悪い。
「いや、オレがあんなの渡したから……お茶でも飲む?」
 万丈目にお茶を出して、大変だった話を聞いた。
「……もう、人間界にああいうの持ってくるのはやめるな。ちゃんと……線引きしないと」
 オレは人間界と異世界を行き来しすぎて、そこを曖昧にしてしまったのかもしれない。万丈目は人間界の存在で、オレは……。
「十代」
 万丈目がオレを呼んで、手を握った。
「……今回、あれで助かったのは事実だ。もちろん他のカードになってしまったらと思う気持ちもある。でも、異世界の力全てが悪いわけじゃない」
「……うん」
 ときどき、オレは自分が人間界にいない方がいいんじゃないかと思ってしまう。でも、万丈目はそんな時に引き留めてくれる。
「ただ、人間界では人間界のルールを守るとか、そういうのはちゃんと意識しろよ。逮捕されたり……人間じゃないと追われたりするのは、嫌だろ」
「……そうだな。気をつける」
 そうやって失敗したりもしながら、オレと万丈目はなんとかやっている。
 でも、やっぱりときどき、人間として生きるのは難しい気がする。
 ゴシップ記者につきまとわれて、結構疲れてしまった時だった。
 勝手に写真取られたり、お話聞かせてくださいとか、嫌だって言ってもまとわりついてきてさ……。
 異世界だったら、失礼なヤツなんてちょっとにらんだらすぐ大人しくなってくれるし、あんまりうるさいならデュエルで決着つけたらいい。でも人間界じゃそうもいかない。
「じゃあ、あんたがデュエルで勝ったらいいけど、負けたら二度と来るなよ」
 そうやってゴシップ記者に言ったら「さすがキングの恋人ですね!」とか言って笑ってるし。いや、オレは冗談言ってんじゃねえよ。いいからデュエルディスク構えろよ。デュエル申し込まれて無視とか、異世界だったらマジでないぜ。正正堂堂デュエルできないなら尻尾巻いて逃げろよ。
「覇王様も人間界じゃただの人間だな」
 オレが愚痴ると万丈目はそう言って笑った。
「キング万丈目サンダーは異世界でもキング万丈目サンダーなのに……」
 万丈目は、異世界でも小さな精霊たちに大人気だ。デュエルアカデミアで井戸に捨てられたカードでデュエルしてから、精霊たちが異世界で万丈目に使われたことを自慢して、万丈目はいわゆる「雑魚精霊」たちのスターなのだ。キングになったことはもちろん異世界でも噂されている。異世界全体でいったら狭い界隈だけど……。
「巻き込んで悪いな」
「悪ィのはゴシップ誌! たまにお前のいい顔が撮れてる時もあるけど」
 冗談めかして言ったけど、本当たまにはいい写真があるんだよな。だって、デート中にお前が笑ってる顔、なかなか写真に残らないし。もちろん盗撮はダメだし、オレだって迷惑かけられたけどさ。
「元の顔がいいからだ」
「オレはそのいい顔がいつでも見れるから、やっぱりゴシップ誌はなくなってもいいな」
 万丈目の「いい顔」を撫でて、二人で笑い合う。
「……でも、本当に万丈目は大変だよな。オレは異世界行ったら絶対つきまとわれないけど、万丈目は海外行ったってそっちのゴシップ誌に載せられちゃったりさ……」
 一挙手一投足を監視されるっていうの? オレだったら耐えられない。
「まあ、そのへんはプロになってからずっとだからな。新人の頃から、エドのこともあって注目されたし……そういえば、負けが込んでた三年くらい前が一番つきまとわれなかったかもな」
「そうなの? なんか、オレとの写真が撮られたんじゃなかった?」
「一社くらい張ってたんだろ。あの頃は自暴自棄になって何かやらかさないかとでも期待されてたのかもな」
「何かって?」
「酔って喧嘩とか物を壊すとか? そんなことはしなかったが、飲んだくれた姿を『万丈目サンダー 公園で寂しく一人飲み』とかって記事にしようとしたのかもな。お前が来たから熱愛ってことにされたが」
 やっぱりゴシップ誌って嫌だなあ……。
「……まあ、もうそろそろそういうのはなくなると思うぞ」
「あんなのずっとついて回るんじゃないか?」
 オレはそう思ったけど、万丈目は一ヶ月ほど後にゴシップ誌を持ってきた。

 飽きるのは早い? キング万丈目サンダーの元ストーカー「今は興味がない」

 ゴシップ誌に載っていたのは万丈目のストーカーの取材記事だ。ストーカーは、逮捕後に憑き物が落ちたように万丈目に興味をなくしてしまったんだとか……。

「転んだ瞬間に、なんであんなに夢中だったのかわからなくなってしまいました。それまでは、彼の近くに誰かがいると思うだけで許せなかったのに、今は本当に興味がないんです」

 ストーカーへのインタビューにはそんなことが書いてある。キングといえども人気はもう落ち目かもしれないと記事は締めくくられていた。
「実際、オレへの世間的な興味はだんだん下がってきてるんだろう。オレへの正式な取材も一般誌は減ってきてる。今後はデュエル関係ばかりになるだろうな」
「でも、キングになってまだ一年経たないぜ」
「世間の興味なんかそんなもんだ」
「そうなのか? ゴシップ記者につきまとわれないのはいいけどよ……」
 もう人気が落ち目だなんて言われるのはやだなあ……。
「別にデュエリストとしての人気が落ちたという話ではないからな。デュエルに興味がない……というか、オレ自身にだって興味がないんだ。ただ『キング』という話題性だけに興味があって、そこにイケメンとかストーカーとか恋人が可愛いとか二股かけてるとか、ゴシップネタがくっつきゃ読まれるというだけの雑誌だ」
 じゃあ別に万丈目自身の人気が落ちたってわけじゃないのか。それより。 
「二股かけてる?」
「かけてない、たとえ話だ」
「恋人が可愛いはたとえ話?」
「……書いてあったかもな」
「それは見たい」
「あんなのはいちいち見るもんじゃない」
「でも万丈目はチェックしてるだろ?」
「名誉毀損的な内容がないかを見てるだけだ。あることないこと書くからな、あの手の雑誌は」
「ふうん……なんかヤバいのあった?」
「……エドと付き合ってることにされそうになった」
「え、マジ?」
 その記事はちょっと面白そうだな。
「……お前今面白がったろ」
「そんなことないよ?」
 しまった、ちょっと笑っちゃった?
「他人ごとだと思いやがって!」
「ごめんってェ……」
 くだらない喧嘩のタネにもなるし、やっぱりゴシップ誌ってよくないよな。
 万丈目の言う通り、しばらくしたらオレがゴシップ記者につきまとわれることはなくなった。万丈目の方も同じみたいだ。
「これからしばらく大丈夫だろうな」
「じゃあ……デートしやすくなるな」
 オレがそう言ったら、万丈目はちょっと恥ずかしそうに目をそらして、そうだなと言った
 付き合って結構経つけど、万丈目は相変わらず照れ屋だ。好きって素直に言ってくれる時もあるけど。
 オレは……前よりもちゃんとお前の愛を受け取れている気がするよ。
 オレは相変わらず、大切だって言われると泣いてしまいそうで、怖くて、逃げ出したくなってしまう。たぶん逃げちゃったら楽なんだ。異世界が大変なんだよって嘘ついて、カードキーを万丈目に返して、もう二度と会わなかったら、この苦しさはなくなる。万丈目に会えないのは寂しいけど、寂しいだけ。
 でも、それをしたらきっと後悔する。万丈目に二度と会えなくなった後、何十年も、何百年も、何千年も、どうしてオレはあの時、万丈目と一緒にいられたのにそうしなかったんだろうって。
 まだ三十年も生きてないけど、過ぎてしまったら百年だってきっとあっという間だろう。万丈目とはあと何十年一緒にいられる? そのチャンスを逃すなんて、絶対したらいけない。
 そうやって、逃げたくないと思うんだ。底抜けバケツからはちょっと進歩しただろ? 本当にお前と一緒にいたいんだ。穴あきバケツだからすぐ馬鹿なことして喧嘩になったりしちゃうけど、喧嘩したら仲直りしたいし、すれ違ったら話し合いたい。面倒でも、つらくても。
 それで、お前と笑って過ごしたい。
「デート、どこに行く? 最近一緒に行けなかったし、カードショップ行かないか?」
「そうだな。それに、たまにはデュエルフィールドを借りてデュエルしないか。……本気で」
「いいぜ。オレ、キングに勝っちゃうかも」
「そう簡単に行くか」
 いつだったか、翔にデートとかどこ行くのって聞かれて、カードショップとか、たまにデュエルフィールドでデュエルするって言ったら、せっかく恋人なのに友達みたいって言われた。でも、オレたちたぶん、恋人で、友達で、ライバルなんだと思う。それに。
「それと……せっかくゴシップ記者もいないし、少しいいところで食事しないか。夜景の綺麗なところを見つけてな」
「ああ! 楽しみだな」
 ちゃんと恋人らしいところにも、たまには行くし。
 ……もしかして、プロポーズされちゃったりする?
 なーんて、ゴシップ誌にやたら「結婚間近」とか「結婚はいつ?」とか書かれたから、影響されすぎかな。
 結婚なんてしてもしなくてもいいし、万丈目と二人でいられたら、それで……でも、三人になったりすることもあるかもな?
 まあ、なんにしたって、お互い支えあって、たまに喧嘩してすれ違ったりしても仲直りしてさ……お前がおじいちゃんになっても、笑い合って過ごしていたいな。

2026/09/01
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