【連作】漫画版×アニメ版MIX
漫丈目とアニメ十代の話②
デュエルの開始が宣言されると、カードの発動もしていないのにデュエルフィールドが黒い霧に包まれた。万丈目は驚きそれを見上げたが、対するデイビット・ラブは不気味に笑っている──。
「オイ、待て! 闇のデュエルならオレが相手になってやる!」
通路から観戦していた十代がステージへ駆け寄る。
「YOUはレッドボーイ……この闇が見えるのか?」
「ああ、見えるぜ。闇には少少縁があってね」
十代は万丈目が初めて聞く低い声で言った。その表情は万丈目からは見えない。
「YOUとのデュエルも面白そうだが、マンジョウメの精霊のカードを手に入れる方が先なんでな」
「精霊賭けたいんならこっちにもいるぜ」
ユベルが姿を現す。自らユベルを賭けカードにしようというのか? それほどにこのデュエルを十代は止めたがっている──。
「ほう……? YOUもその精霊もタダモノじゃなさそうだが……Meの獲物はもう決まっているんでね」
デイビットはユベルを興味深げに見たものの、欲しくはないようだった。《光と闇の竜》が彼にとってなんの意味があるのだ?
「それにもうデュエルは始まっている──そうでしょうセンセイ?」
デイビットは審判の響を見た。
「十代くん、ステージから離れて。妨害するなら失格もあり得るわよ」
「でも先生も見えるだろ、この黒い霧! これは普通のデュエルじゃない! 今すぐ中止してくれ!」
「……確かに気になったけど……照明やソリッドビジョンの不具合じゃ……?」
響も黒い霧を見回す。
「おやセンセイも見えるのか……このアカデミアにはおかしな連中が多い……」
デイビットは喉の奥で笑い観覧席を見上げた。そこには、白い羽の精霊を連れたブルー寮の生徒がいる。彼にも黒い霧は見えるようで、精霊と共に睨むようにステージを見つめていた。
「……一旦デュエルを──!?」
中止を宣言しようとした響が喉をおさえた。闇が輪のようになり響を取り囲む。
「響先生!」
「YOUも黙って見ていろ」
十代にも同じく闇が迫ったが、ハネクリボーが飛び出しその闇を払った。
「その精霊は!」
デイビットが目を見開く。しかしその後ニタリと笑った。
「……そんな小さな精霊が本命とは……てっきりあの美しいドラゴンかと思ったのに……」
「本命? ハネクリボーに何かあるのか?」
「ククク……」
デイビットのイヤリングから黒い影が出てくる。
「そいつに取り憑いてンのか!? 何者だ!?」
「何者、はこちらの台詞だ。二体の精霊を連れ……キサマも何か力を宿している……」
「オレはオシリス・レッドの遊城十代だ! 本命がハネクリボーってんならオレとデュエルしろ!」
「面白い……ならばキサマを闇の生贄にしオレの復活の祝いとしよう」
「闇の生贄になるのはテメエの方だ」
十代は万丈目がぞっとするほど低い声と剣呑な雰囲気で言った。
「待て遊城十代!」
万丈目はステージに上ろうとした十代を止める。
「これはオレとデイビットの準決勝だ! オマエの出る幕はない!」
「万丈目! これは闇のデュエルだぞ!」
万丈目の方を振り向いた十代は、先程の刺刺しい雰囲気はなかった。ただの友達を心配する少年だ──。
「ああ……そういえばトーナメントの真っ最中だったな」
影は意外にもおとなしく姿を消した。十代に決勝戦で対戦するまで待つと言い残し──。
「デイビット! 目的がハネクリボーなら万丈目との闇のデュエルは必要ないだろ! 普通にデュエルしろ!」
「断る。Meは闇のデュエルが好きなんだ。相手が苦しむ姿を見るのがたまらなく楽しいんだよ!」
デイビットはまるで悪魔のように笑う。このデュエルが通常のものにはならないと、デイビットと十代は理解している。万丈目も何が起きるか完全には理解していない。しかし。
「オレは精霊と共に闘う覚悟はできている。このデュエル、必ず勝つ!」
十代は大きな瞳を悲しげに揺らしたが、一度目を伏せるとその悲しみを抑え込み万丈目をまっすぐに見た。
「絶対勝てよ!」
万丈目はデイビットを見据えた。
◇◆◇
「万丈目! 大丈夫か?」
デュエルが終わるなり十代はステージに駆け上がった。
「あ……ああ」
闇のデュエル──万丈目はソリッドビジョンにはあり得ない痛みを感じた。あの時流れたように見えた血も今は消えている。
「遊城十代、オマエ──」
闇のデュエルの何を知っている? 万丈目はそう聞こうとしたが、十代の視線が万丈目から逸れる。デイビットが床へと倒れた。
「お、おいまさか──」
「命は取られちゃいない」
顔を青くした十代にユベルが言った。
「担架を持ってきて!!」
響が素早く指示した。デイビットに奪われた声はもとに戻ったようだ。
「十代くんたちはここにいなさい、次は決勝よ!」
響はそう言いデイビットを運ぶ担架に同行し医務室へ向かった。
「万丈目、本当に大丈夫か? お前も医務室に……」
「平気だ。それより十代、闇のデュエルとはいったい──」
「まァ一言で言えば命なりなんなりを賭けたゲームさ。さっきキミがそうだったようにデュエルの痛みが現実になったりね。人間が生半可に首を突っ込むもんじゃない」
ユベルが言った。これ以上の万丈目の関わりを阻止しようとしているようだ。しかし。
「もうオレは無関係じゃない。知っていることがあるなら話せ」
「そう言われても、オレだってあんなのとは知り合いじゃないぜ。ユベルは?」
「ボクも知らない。知り合いなのはハネクリボーの方だろ。おい、キミ、ダンマリか?」
ユベルが声をかけたがハネクリボーは答えなかった。
「まったく、昔っからこうだ。が、ヤツは光と闇の竜を見てマアトの羽と言ってたな。マアトってのは確か古代エジプトの神だ。ヤツもハネクリボーもそっちの方の精霊だろう」
「エジプトの神様がなんで日本にいるんだァ?」
十代の質問にユベルはあきれた顔をした。
「神様がいるわけじゃない。キミ話聞いてた?」
「マアトは神様なんだろ?」
「マアトは神だがあいつの言ってたのは『マアトの羽』だ。羽は神様じゃない」
「ともかく」
万丈目は十代とユベルの会話を遮った。
「『マアトの羽』『神官共の亡霊』、アレはそう言って消えた。神官もおそらく古代エジプトの神官を指すのだろう。だが光と闇の竜が古代エジプトと関係しているとは……」
「マアトと友達とか?」
「そんな馬鹿げたことがあるか」
万丈目は十代をにらんだ。
「そお? でもユベルとハネクリボーだってもともとは無関係だけど今は友達だ」
「友達かは置いといて、なんらかの形で関係があるんだろう。キミはマアトやエジプトとは無関係なのか?」
ユベルが万丈目に訊ねた。
「古代エジプトの神などよく知らないしエジプトに行ったこともない」
「光と闇の竜とはどこで知り合ったんだ?」
今度は十代が聞く。
「買ったカードパックにたまたま入って……オマエたちこそどこで知り合ったんだ?」
どこで「知り合った」のか、という質問をするならば、ユベルやハネクリボーはカードパックから手に入れたわけではないということか?
「どこって……」
十代はユベルを見た。十代と目を合わせた後、ユベルは万丈目を見てニヤニヤと笑う。
「ボクと十代の愛の物語を聞きたいのかい? キミってやっぱり結構野次馬だね」
「そんなものが聞きたいとは言っていない」
「そうか、なら話さないよ。今はっきりしたのはヤツは古代エジプト関係ってことと、デイビットはそいつに取り憑かれてたことだな。おそらくだけど、イヤリングの石が媒介じゃないかな。ボクにはあれから影が出てきたように見えたよ。それに光と闇の竜の攻撃で砕けた」
二人のことについてははぐらかされてしまった、と万丈目は思う。
「イヤリング……レジー・マッケンジーが同じものをしていなかったか?」
「そうなのか? マッケンジーは……」
十代は観覧席を見回したがマッケンジーはいなかった。
◇◆◇
決勝戦の後、十代はハネクリボーに導かれ廃寮に入った。そこでは響とマッケンジーの闇のデュエルが行われており、響はマッケンジーに敗北し倒れた。
マッケンジーは続いて十代とも闇のデュエルをしたが十代が勝利し、彼女もまた意識を失った。しかしイヤリングから吹き出した闇をハネクリボーが吸収し、二人は目を覚ました。
「マッケンジーは操られてただけか……これじゃあデイビットが目覚めても記憶がないかもしれないな」
記憶を失ったマッケンジーが吹雪と共に去ったあとに十代は言った。一度姿を消していたユベルが再び姿を現す。
「それどころか目覚めるか怪しいよ。あの影の課した闇のデュエルの敗北の代償が紅葉と同じ昏睡状態なのかもしれない」
「じゃああの影の本体をブッ倒したら紅葉さんは目覚めるのか!?」
「可能性はある。だが本体がどこにいるのか……キミはわかんないのかい?」
ユベルはハネクリボーを見たが、彼は答えなかった。
「アメリカ・アカデミア……二人の共通点はそこよね? 一週間後にもアメリカ・アカデミアの生徒が数名来るわ」
響が言った。毎年行われる交流大会にまぎれ、ハネクリボーを狙う影の本体やそれに操られた者が来るかもしれない──。
「じゃあ、操られたやつなら記憶が消える前に話を聞き出さないといけないな」
「操られた人間がどれだけ情報を持ってるかは怪しいけどね。少なくともデイビットは最初ハネクリボーじゃなく光と闇の竜を狙っていたし、精霊を探せと言われただけで詳しく知らなかったんじゃないか? マッケンジーの方は何か言ってたか?」
ユベルは響に訊ねた。
「十年近く前に紅葉と闇のデュエルをしたと……」
「十年!? そんな子供の頃から取り憑かれてたのかよ……」
「どうして取り憑かれたとか、そんな話はしなかったわ。こちらを挑発するようなことばかり……」
「ふぅん……キミが負けるなんてって思ったけど、それで冷静さを失ったわけか」
「ユベル!」
「いえ、事実よ。冷静じゃなかった……」
響は目を伏せた。十代が慰めるように声をかける。
「普通の人が闇のデュエルで冷静でいられないよ」
「キミも大概冷静じゃないからな。みどりでさえ冷静さを失えば負ける。キミならなおさらだ」
「オレにお説教すんのにみどりさん引き合いに出すなよ」
「マッケンジーに負けそうになってたろ! もっと反省しろ!」
「う……はい……」
ユベルと十代のやりとりを見て、ずっと暗い顔をしていた響が吹き出した。
「ふふっ……ごめんなさい……あの頃から変わらないのね、あなたたち」
「ほら、成長してないって響先生も言ってる」
「今のはそういう意味じゃないだろ!?」
響は二人の様子に目を細めた。彼らが紅葉の見舞いに来ると、たびたびこんな姿を見たものだ。
「あなたたちは……ずっと二人で闇のデュエルに関わって来たのね?」
響に問われ、二人は黙り込んだ。ユベルは響を見返したが、十代は目を逸らした。
「紅葉はそれであなたの先生を買って出た? ただ精霊が見える者同士だからじゃなく」
その問いに十代は響の目を見て答えた。
「闇のデュエルの話はしてないけど……オレとユベルには大事な役割がある、だから強くなりたいって話をした。そしたら……勝たなくちゃと思い詰めるより楽しいデュエルをできるようにって……ああ、だから……さっきは紅葉さんに教えてもらったことも守れてなかったね……」
十代は悲しげに視線を落とした。
「その反省をちゃんと忘れないでほしいなァ。キミは教えられたことをすぐ忘れるんだから」
ユベルは触れられない手で十代の頭を撫でた。
「しかもボクが言うよりみどりが言う方が効くんだからさァ……」
「悪かった、悪かったって」
響は二人を見て微笑む。闇のデュエルなんて恐ろしいものに、十代を関わらせたくはなかった。しかし、響が知らないだけで十代はそれに関わり続けてきた。きっと幼い頃から──ユベルと二人で。
「十代くん、ユベル。あなたたちの役割というのは、あの影に関係があるの?」
「直接にはない……と思う。まだ影の正体はわかんないけど」
「影の関係者はハネクリボーの方だ。まあ、そのことについてボクらに話す気はないようだが……易易話すものではない、と彼が考えているなら尊重するよ」
「あなたたちもそう考えているから?」
「そうなる」
ユベルは多くを話す気はないようだ。
「ともかく、あの影をブッ倒せば紅葉さんは目覚めるかもしれないってわかったのは前進だ。あいつが闇の力を操るのもわかった。それなら……」
十代はデュエルディスクからデッキを外した。
「みどりさん、紅葉さんに預かったデッキは返すよ。紅葉さんのデッキに闇のデュエルなんて本当はやってほしくない」
十代はデッキを響へと差し出す。
「影のことはオレが絶対にブッ倒す。それで紅葉さんが目覚めないなら目覚める方法を探しに行く。この世界になくたって、どこまでも探しに行く。だから、紅葉さんの目が覚めたらこれを返してほしいんだ」
十代の目はまっすぐだ。それが正しいと信じている。しかし。
「いいえ、受け取れない。紅葉はあなたの役割のことも含めてそれを託したはずよ」
響がそう答えると十代は目をみはった。茶色の瞳が迷いに揺らぐ。
「私には言えなくても紅葉には話したのでしょう? 紅葉はあなたの役割にそれを使うななんて言ってないのよね」
「……うん」
「あなたがそのデッキを使わないのは自由よ。でも、託された以上、自分のその手で返しなさい」
十代はデッキに目を落とす。しばしそれを見つめ、響を見返した。
「はい」
そう答えた十代の瞳に、もう迷いはなかった。
◇◆◇
港の倉庫──そこは、万丈目にとって忘れられない場所だった。
ここで相棒と最後のデュエルをした。
「よお、未来のプロ。こんなとこで油売ってていいのか?」
倉庫の前、遊城十代が海に釣糸を垂らしていた。
「オマエこそ。下級生がレッド寮を探してたぞ。響紅葉の一番弟子」
響紅葉がプロに復帰し、当然彼はエースカードの《E・HERO ジ・アース》を用いて瞬く間に休職前の栄光を取り戻した。世界に一枚しかないカードをなぜかつて遊城十代が持っていたのか? それについてデュエルアカデミア生たちは、遊城十代は響紅葉の一番弟子で、病気で休職する間はそのデッキを預かっていたのではないかと噂した。
「先生になってもらったのは事実だけど、弟子なんてほどかな。オレはE-HEROだし」
遊城十代本来のデッキはE・HEROとE-HERO、そしてユベルをも混ぜたデッキだ。ユベルのことはなかなかお目にかかれないが。
「あのデッキも見事だったと思うがな」
「そりゃ紅葉さんのだもん」
使い方の話なのだが。まあ、わざわざ褒めてやることもないかと万丈目は思う。
「あれも──もう二年前か」
「そうだな」
古代エジプトから三千年の因果があの倉庫の中で決着した。ほんの数年、正体すら知らずに共にいた相棒も姿を消した──。
「結局、一緒にいたのにあいつのことあんまりわかんなかったな。お前は?」
「さあな。寡黙なやつだった」
「マスターに似たわけだ」
「オマエも肝心なことは何も話さない。そっくりだ」
「そーかもな」
十代は竿を引いた。小さな魚が一匹釣り上がる。十代は釣り針を外すと隣で寝ていた猫にその魚をやった。猫は跳び跳ねる魚にかぶりつく。
「その猫は?」
「ファラオっての。中等部の頃の先生が飼ってた猫」
「飼ってた?」
「ああ。もう亡くなった」
「……そうか」
万丈目は中等部のことをよく知らない。
「でも幽霊ならいる」
「幽霊?」
「ファラオのお腹の中に先生の幽霊がいる」
突拍子もない話だが、遊城十代が言うなら真実なのだろうと万丈目は思った。
「……プロ入りの話を全部断ってるそうだな」
「オレのことなんかどこで聞きつけてくるんだか。なんの成績もないのに」
確かに遊城十代は校内の大会さえ一度も優勝していなかった。二年生のジェネックス大会も途中までは好成績をおさめていたのに決勝戦に来なかった。全校生徒とプロを交えた大会で勝ち抜き続けた者のみが優勝するというその大会に、勝ち残っていたはずの遊城十代と斎王琢磨が決勝戦の時間に規定場所に現れず、二人は不戦敗となった。万丈目と三沢大地で決勝戦を行い万丈目が優勝したが、もし十代がいたら結果はどうなっていたのだろう。
十代は決勝戦の時刻、斎王琢磨とデュエルしていたらしい。斎王琢磨は当時学園を騒がせた光の結社の中心人物だったが──十代はそれについて多くを語ろうとしない。
「オマエがなにかといざこざの中心にいるからじゃないのか」
中等部の頃にあったという三幻魔騒ぎ──この学園は三幻魔という化け物を封印した遺跡の上に建てられたのだという。以前その封印が解けてしまい遊城十代が三幻魔を倒したのだ──と、入学しその噂を聞いた時には眉唾ものだと思ったが、つい最近にもその三幻魔を狙いこの島にやってきた男がいた。その騒動の中心にはやはり遊城十代がいた──。
「中心はオレじゃない。その中心とデュエルしただけ」
「──そうかもしれないな」
万丈目も、あの倉庫でデュエルした時に自分が中心だったわけではない。
「ここではおかしなことに巻き込まれた」
「そういう場所だ。場所の問題だから、これからは普通の人生が送れるさ。……未来のプロに普通も失礼か。でももうおかしなことには巻き込まれないよ」
たぶんな、と十代は言い添える。
「……オマエは?」
「オレにはこっちが普通。昔からな」
「だからプロにならないのか?」
「オレが関わるべき世界じゃない」
「オマエが関わるべき世界とはなんだ」
「聞かなくても知ってるだろ」
細められた目が二色に輝いた。
「なら、お前は」
もう人間の世界からはいなくなってしまうのか? あの精霊たちのように──。
「準優勝のままだな」
「言われてみりゃあそうだな。一年の時に負けたままだ」
十代はもう一匹釣り上げた魚をまた猫に与えた。それから釣竿は片付けに入る。
「やるか? まだ卒業デュエルしてないもんな」
「勝てると思うか?」
「こっちの台詞だ」
万丈目と十代はデュエルディスクを構えて向き合った。十代の後ろにユベルが姿を現す。
「キミ、情けない結果は残すなよ」
「言われなくとも」
ユベルは万丈目を見て微笑み再び姿を消した。埠頭には二人だけが──いや、猫が魚を食べているが。ともかく、このところまとわりついていた下級生たちのざわめきもなく、潮騒だけが辺りを包んでいた。
「デュエル!」
赤と青の制服の生徒として二人が向き合うのは、きっとこれが最後だった。
2025/10/20
デュエルの開始が宣言されると、カードの発動もしていないのにデュエルフィールドが黒い霧に包まれた。万丈目は驚きそれを見上げたが、対するデイビット・ラブは不気味に笑っている──。
「オイ、待て! 闇のデュエルならオレが相手になってやる!」
通路から観戦していた十代がステージへ駆け寄る。
「YOUはレッドボーイ……この闇が見えるのか?」
「ああ、見えるぜ。闇には少少縁があってね」
十代は万丈目が初めて聞く低い声で言った。その表情は万丈目からは見えない。
「YOUとのデュエルも面白そうだが、マンジョウメの精霊のカードを手に入れる方が先なんでな」
「精霊賭けたいんならこっちにもいるぜ」
ユベルが姿を現す。自らユベルを賭けカードにしようというのか? それほどにこのデュエルを十代は止めたがっている──。
「ほう……? YOUもその精霊もタダモノじゃなさそうだが……Meの獲物はもう決まっているんでね」
デイビットはユベルを興味深げに見たものの、欲しくはないようだった。《光と闇の竜》が彼にとってなんの意味があるのだ?
「それにもうデュエルは始まっている──そうでしょうセンセイ?」
デイビットは審判の響を見た。
「十代くん、ステージから離れて。妨害するなら失格もあり得るわよ」
「でも先生も見えるだろ、この黒い霧! これは普通のデュエルじゃない! 今すぐ中止してくれ!」
「……確かに気になったけど……照明やソリッドビジョンの不具合じゃ……?」
響も黒い霧を見回す。
「おやセンセイも見えるのか……このアカデミアにはおかしな連中が多い……」
デイビットは喉の奥で笑い観覧席を見上げた。そこには、白い羽の精霊を連れたブルー寮の生徒がいる。彼にも黒い霧は見えるようで、精霊と共に睨むようにステージを見つめていた。
「……一旦デュエルを──!?」
中止を宣言しようとした響が喉をおさえた。闇が輪のようになり響を取り囲む。
「響先生!」
「YOUも黙って見ていろ」
十代にも同じく闇が迫ったが、ハネクリボーが飛び出しその闇を払った。
「その精霊は!」
デイビットが目を見開く。しかしその後ニタリと笑った。
「……そんな小さな精霊が本命とは……てっきりあの美しいドラゴンかと思ったのに……」
「本命? ハネクリボーに何かあるのか?」
「ククク……」
デイビットのイヤリングから黒い影が出てくる。
「そいつに取り憑いてンのか!? 何者だ!?」
「何者、はこちらの台詞だ。二体の精霊を連れ……キサマも何か力を宿している……」
「オレはオシリス・レッドの遊城十代だ! 本命がハネクリボーってんならオレとデュエルしろ!」
「面白い……ならばキサマを闇の生贄にしオレの復活の祝いとしよう」
「闇の生贄になるのはテメエの方だ」
十代は万丈目がぞっとするほど低い声と剣呑な雰囲気で言った。
「待て遊城十代!」
万丈目はステージに上ろうとした十代を止める。
「これはオレとデイビットの準決勝だ! オマエの出る幕はない!」
「万丈目! これは闇のデュエルだぞ!」
万丈目の方を振り向いた十代は、先程の刺刺しい雰囲気はなかった。ただの友達を心配する少年だ──。
「ああ……そういえばトーナメントの真っ最中だったな」
影は意外にもおとなしく姿を消した。十代に決勝戦で対戦するまで待つと言い残し──。
「デイビット! 目的がハネクリボーなら万丈目との闇のデュエルは必要ないだろ! 普通にデュエルしろ!」
「断る。Meは闇のデュエルが好きなんだ。相手が苦しむ姿を見るのがたまらなく楽しいんだよ!」
デイビットはまるで悪魔のように笑う。このデュエルが通常のものにはならないと、デイビットと十代は理解している。万丈目も何が起きるか完全には理解していない。しかし。
「オレは精霊と共に闘う覚悟はできている。このデュエル、必ず勝つ!」
十代は大きな瞳を悲しげに揺らしたが、一度目を伏せるとその悲しみを抑え込み万丈目をまっすぐに見た。
「絶対勝てよ!」
万丈目はデイビットを見据えた。
◇◆◇
「万丈目! 大丈夫か?」
デュエルが終わるなり十代はステージに駆け上がった。
「あ……ああ」
闇のデュエル──万丈目はソリッドビジョンにはあり得ない痛みを感じた。あの時流れたように見えた血も今は消えている。
「遊城十代、オマエ──」
闇のデュエルの何を知っている? 万丈目はそう聞こうとしたが、十代の視線が万丈目から逸れる。デイビットが床へと倒れた。
「お、おいまさか──」
「命は取られちゃいない」
顔を青くした十代にユベルが言った。
「担架を持ってきて!!」
響が素早く指示した。デイビットに奪われた声はもとに戻ったようだ。
「十代くんたちはここにいなさい、次は決勝よ!」
響はそう言いデイビットを運ぶ担架に同行し医務室へ向かった。
「万丈目、本当に大丈夫か? お前も医務室に……」
「平気だ。それより十代、闇のデュエルとはいったい──」
「まァ一言で言えば命なりなんなりを賭けたゲームさ。さっきキミがそうだったようにデュエルの痛みが現実になったりね。人間が生半可に首を突っ込むもんじゃない」
ユベルが言った。これ以上の万丈目の関わりを阻止しようとしているようだ。しかし。
「もうオレは無関係じゃない。知っていることがあるなら話せ」
「そう言われても、オレだってあんなのとは知り合いじゃないぜ。ユベルは?」
「ボクも知らない。知り合いなのはハネクリボーの方だろ。おい、キミ、ダンマリか?」
ユベルが声をかけたがハネクリボーは答えなかった。
「まったく、昔っからこうだ。が、ヤツは光と闇の竜を見てマアトの羽と言ってたな。マアトってのは確か古代エジプトの神だ。ヤツもハネクリボーもそっちの方の精霊だろう」
「エジプトの神様がなんで日本にいるんだァ?」
十代の質問にユベルはあきれた顔をした。
「神様がいるわけじゃない。キミ話聞いてた?」
「マアトは神様なんだろ?」
「マアトは神だがあいつの言ってたのは『マアトの羽』だ。羽は神様じゃない」
「ともかく」
万丈目は十代とユベルの会話を遮った。
「『マアトの羽』『神官共の亡霊』、アレはそう言って消えた。神官もおそらく古代エジプトの神官を指すのだろう。だが光と闇の竜が古代エジプトと関係しているとは……」
「マアトと友達とか?」
「そんな馬鹿げたことがあるか」
万丈目は十代をにらんだ。
「そお? でもユベルとハネクリボーだってもともとは無関係だけど今は友達だ」
「友達かは置いといて、なんらかの形で関係があるんだろう。キミはマアトやエジプトとは無関係なのか?」
ユベルが万丈目に訊ねた。
「古代エジプトの神などよく知らないしエジプトに行ったこともない」
「光と闇の竜とはどこで知り合ったんだ?」
今度は十代が聞く。
「買ったカードパックにたまたま入って……オマエたちこそどこで知り合ったんだ?」
どこで「知り合った」のか、という質問をするならば、ユベルやハネクリボーはカードパックから手に入れたわけではないということか?
「どこって……」
十代はユベルを見た。十代と目を合わせた後、ユベルは万丈目を見てニヤニヤと笑う。
「ボクと十代の愛の物語を聞きたいのかい? キミってやっぱり結構野次馬だね」
「そんなものが聞きたいとは言っていない」
「そうか、なら話さないよ。今はっきりしたのはヤツは古代エジプト関係ってことと、デイビットはそいつに取り憑かれてたことだな。おそらくだけど、イヤリングの石が媒介じゃないかな。ボクにはあれから影が出てきたように見えたよ。それに光と闇の竜の攻撃で砕けた」
二人のことについてははぐらかされてしまった、と万丈目は思う。
「イヤリング……レジー・マッケンジーが同じものをしていなかったか?」
「そうなのか? マッケンジーは……」
十代は観覧席を見回したがマッケンジーはいなかった。
◇◆◇
決勝戦の後、十代はハネクリボーに導かれ廃寮に入った。そこでは響とマッケンジーの闇のデュエルが行われており、響はマッケンジーに敗北し倒れた。
マッケンジーは続いて十代とも闇のデュエルをしたが十代が勝利し、彼女もまた意識を失った。しかしイヤリングから吹き出した闇をハネクリボーが吸収し、二人は目を覚ました。
「マッケンジーは操られてただけか……これじゃあデイビットが目覚めても記憶がないかもしれないな」
記憶を失ったマッケンジーが吹雪と共に去ったあとに十代は言った。一度姿を消していたユベルが再び姿を現す。
「それどころか目覚めるか怪しいよ。あの影の課した闇のデュエルの敗北の代償が紅葉と同じ昏睡状態なのかもしれない」
「じゃああの影の本体をブッ倒したら紅葉さんは目覚めるのか!?」
「可能性はある。だが本体がどこにいるのか……キミはわかんないのかい?」
ユベルはハネクリボーを見たが、彼は答えなかった。
「アメリカ・アカデミア……二人の共通点はそこよね? 一週間後にもアメリカ・アカデミアの生徒が数名来るわ」
響が言った。毎年行われる交流大会にまぎれ、ハネクリボーを狙う影の本体やそれに操られた者が来るかもしれない──。
「じゃあ、操られたやつなら記憶が消える前に話を聞き出さないといけないな」
「操られた人間がどれだけ情報を持ってるかは怪しいけどね。少なくともデイビットは最初ハネクリボーじゃなく光と闇の竜を狙っていたし、精霊を探せと言われただけで詳しく知らなかったんじゃないか? マッケンジーの方は何か言ってたか?」
ユベルは響に訊ねた。
「十年近く前に紅葉と闇のデュエルをしたと……」
「十年!? そんな子供の頃から取り憑かれてたのかよ……」
「どうして取り憑かれたとか、そんな話はしなかったわ。こちらを挑発するようなことばかり……」
「ふぅん……キミが負けるなんてって思ったけど、それで冷静さを失ったわけか」
「ユベル!」
「いえ、事実よ。冷静じゃなかった……」
響は目を伏せた。十代が慰めるように声をかける。
「普通の人が闇のデュエルで冷静でいられないよ」
「キミも大概冷静じゃないからな。みどりでさえ冷静さを失えば負ける。キミならなおさらだ」
「オレにお説教すんのにみどりさん引き合いに出すなよ」
「マッケンジーに負けそうになってたろ! もっと反省しろ!」
「う……はい……」
ユベルと十代のやりとりを見て、ずっと暗い顔をしていた響が吹き出した。
「ふふっ……ごめんなさい……あの頃から変わらないのね、あなたたち」
「ほら、成長してないって響先生も言ってる」
「今のはそういう意味じゃないだろ!?」
響は二人の様子に目を細めた。彼らが紅葉の見舞いに来ると、たびたびこんな姿を見たものだ。
「あなたたちは……ずっと二人で闇のデュエルに関わって来たのね?」
響に問われ、二人は黙り込んだ。ユベルは響を見返したが、十代は目を逸らした。
「紅葉はそれであなたの先生を買って出た? ただ精霊が見える者同士だからじゃなく」
その問いに十代は響の目を見て答えた。
「闇のデュエルの話はしてないけど……オレとユベルには大事な役割がある、だから強くなりたいって話をした。そしたら……勝たなくちゃと思い詰めるより楽しいデュエルをできるようにって……ああ、だから……さっきは紅葉さんに教えてもらったことも守れてなかったね……」
十代は悲しげに視線を落とした。
「その反省をちゃんと忘れないでほしいなァ。キミは教えられたことをすぐ忘れるんだから」
ユベルは触れられない手で十代の頭を撫でた。
「しかもボクが言うよりみどりが言う方が効くんだからさァ……」
「悪かった、悪かったって」
響は二人を見て微笑む。闇のデュエルなんて恐ろしいものに、十代を関わらせたくはなかった。しかし、響が知らないだけで十代はそれに関わり続けてきた。きっと幼い頃から──ユベルと二人で。
「十代くん、ユベル。あなたたちの役割というのは、あの影に関係があるの?」
「直接にはない……と思う。まだ影の正体はわかんないけど」
「影の関係者はハネクリボーの方だ。まあ、そのことについてボクらに話す気はないようだが……易易話すものではない、と彼が考えているなら尊重するよ」
「あなたたちもそう考えているから?」
「そうなる」
ユベルは多くを話す気はないようだ。
「ともかく、あの影をブッ倒せば紅葉さんは目覚めるかもしれないってわかったのは前進だ。あいつが闇の力を操るのもわかった。それなら……」
十代はデュエルディスクからデッキを外した。
「みどりさん、紅葉さんに預かったデッキは返すよ。紅葉さんのデッキに闇のデュエルなんて本当はやってほしくない」
十代はデッキを響へと差し出す。
「影のことはオレが絶対にブッ倒す。それで紅葉さんが目覚めないなら目覚める方法を探しに行く。この世界になくたって、どこまでも探しに行く。だから、紅葉さんの目が覚めたらこれを返してほしいんだ」
十代の目はまっすぐだ。それが正しいと信じている。しかし。
「いいえ、受け取れない。紅葉はあなたの役割のことも含めてそれを託したはずよ」
響がそう答えると十代は目をみはった。茶色の瞳が迷いに揺らぐ。
「私には言えなくても紅葉には話したのでしょう? 紅葉はあなたの役割にそれを使うななんて言ってないのよね」
「……うん」
「あなたがそのデッキを使わないのは自由よ。でも、託された以上、自分のその手で返しなさい」
十代はデッキに目を落とす。しばしそれを見つめ、響を見返した。
「はい」
そう答えた十代の瞳に、もう迷いはなかった。
◇◆◇
港の倉庫──そこは、万丈目にとって忘れられない場所だった。
ここで相棒と最後のデュエルをした。
「よお、未来のプロ。こんなとこで油売ってていいのか?」
倉庫の前、遊城十代が海に釣糸を垂らしていた。
「オマエこそ。下級生がレッド寮を探してたぞ。響紅葉の一番弟子」
響紅葉がプロに復帰し、当然彼はエースカードの《E・HERO ジ・アース》を用いて瞬く間に休職前の栄光を取り戻した。世界に一枚しかないカードをなぜかつて遊城十代が持っていたのか? それについてデュエルアカデミア生たちは、遊城十代は響紅葉の一番弟子で、病気で休職する間はそのデッキを預かっていたのではないかと噂した。
「先生になってもらったのは事実だけど、弟子なんてほどかな。オレはE-HEROだし」
遊城十代本来のデッキはE・HEROとE-HERO、そしてユベルをも混ぜたデッキだ。ユベルのことはなかなかお目にかかれないが。
「あのデッキも見事だったと思うがな」
「そりゃ紅葉さんのだもん」
使い方の話なのだが。まあ、わざわざ褒めてやることもないかと万丈目は思う。
「あれも──もう二年前か」
「そうだな」
古代エジプトから三千年の因果があの倉庫の中で決着した。ほんの数年、正体すら知らずに共にいた相棒も姿を消した──。
「結局、一緒にいたのにあいつのことあんまりわかんなかったな。お前は?」
「さあな。寡黙なやつだった」
「マスターに似たわけだ」
「オマエも肝心なことは何も話さない。そっくりだ」
「そーかもな」
十代は竿を引いた。小さな魚が一匹釣り上がる。十代は釣り針を外すと隣で寝ていた猫にその魚をやった。猫は跳び跳ねる魚にかぶりつく。
「その猫は?」
「ファラオっての。中等部の頃の先生が飼ってた猫」
「飼ってた?」
「ああ。もう亡くなった」
「……そうか」
万丈目は中等部のことをよく知らない。
「でも幽霊ならいる」
「幽霊?」
「ファラオのお腹の中に先生の幽霊がいる」
突拍子もない話だが、遊城十代が言うなら真実なのだろうと万丈目は思った。
「……プロ入りの話を全部断ってるそうだな」
「オレのことなんかどこで聞きつけてくるんだか。なんの成績もないのに」
確かに遊城十代は校内の大会さえ一度も優勝していなかった。二年生のジェネックス大会も途中までは好成績をおさめていたのに決勝戦に来なかった。全校生徒とプロを交えた大会で勝ち抜き続けた者のみが優勝するというその大会に、勝ち残っていたはずの遊城十代と斎王琢磨が決勝戦の時間に規定場所に現れず、二人は不戦敗となった。万丈目と三沢大地で決勝戦を行い万丈目が優勝したが、もし十代がいたら結果はどうなっていたのだろう。
十代は決勝戦の時刻、斎王琢磨とデュエルしていたらしい。斎王琢磨は当時学園を騒がせた光の結社の中心人物だったが──十代はそれについて多くを語ろうとしない。
「オマエがなにかといざこざの中心にいるからじゃないのか」
中等部の頃にあったという三幻魔騒ぎ──この学園は三幻魔という化け物を封印した遺跡の上に建てられたのだという。以前その封印が解けてしまい遊城十代が三幻魔を倒したのだ──と、入学しその噂を聞いた時には眉唾ものだと思ったが、つい最近にもその三幻魔を狙いこの島にやってきた男がいた。その騒動の中心にはやはり遊城十代がいた──。
「中心はオレじゃない。その中心とデュエルしただけ」
「──そうかもしれないな」
万丈目も、あの倉庫でデュエルした時に自分が中心だったわけではない。
「ここではおかしなことに巻き込まれた」
「そういう場所だ。場所の問題だから、これからは普通の人生が送れるさ。……未来のプロに普通も失礼か。でももうおかしなことには巻き込まれないよ」
たぶんな、と十代は言い添える。
「……オマエは?」
「オレにはこっちが普通。昔からな」
「だからプロにならないのか?」
「オレが関わるべき世界じゃない」
「オマエが関わるべき世界とはなんだ」
「聞かなくても知ってるだろ」
細められた目が二色に輝いた。
「なら、お前は」
もう人間の世界からはいなくなってしまうのか? あの精霊たちのように──。
「準優勝のままだな」
「言われてみりゃあそうだな。一年の時に負けたままだ」
十代はもう一匹釣り上げた魚をまた猫に与えた。それから釣竿は片付けに入る。
「やるか? まだ卒業デュエルしてないもんな」
「勝てると思うか?」
「こっちの台詞だ」
万丈目と十代はデュエルディスクを構えて向き合った。十代の後ろにユベルが姿を現す。
「キミ、情けない結果は残すなよ」
「言われなくとも」
ユベルは万丈目を見て微笑み再び姿を消した。埠頭には二人だけが──いや、猫が魚を食べているが。ともかく、このところまとわりついていた下級生たちのざわめきもなく、潮騒だけが辺りを包んでいた。
「デュエル!」
赤と青の制服の生徒として二人が向き合うのは、きっとこれが最後だった。
2025/10/20
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