その他二次創作小説
歪な微笑み
黙黙とペンを走らせる彼の目は虚ろだ。いつも勝ち気な輝きを灯していた彼の瞳とは似ても似つかない。生意気に動いた唇も、今はなんの感情もこもらず引き結ばれている。
「フライデー」
そう呼べば、彼は顔を上げ虚ろな瞳にわたしを映す。それはただ次の命令を待っているだけだ。
「きみは、少し笑うといいね」
そんなせんないことを呟く。フライデーは律儀にそれを書き記す。屍者に表情はない。兵力や労働力として必要とされる彼らに、それは必要ないからだ。
でも、わたしはそんな理由で彼を蘇らせたわけじゃない。
「フライデー」
彼の頬に両手を添える。乾燥した肌と冷たい屍者の温度。
「これが、笑う」
わたしは親指で頬をつまみ彼の唇の両端を上げる。なんとも歪な微笑みが出来上がる。その間にもフライデーは、手元を見もせずにペンを走らせ続けている。
「さあ、笑ってみろフライデー」
手を離して、そう命じる。フライデーはノートとペンを置き、両手を上げた。
そして。
……しばらくその虚ろな目を見返してしまった。
頬には冷たく乾いた指の感触。痛くはない程度の力で頬がつまみ上げられている。
なるほど、彼はわたしが教えたことをそのまま実行したのだ。なぜこんな当たり前のことを予想しなかったのか、三十秒ほど前の自分を殴りたくなった。
残念ながら、時間を逆行する技術はまだ存在しない。
2015/10/13に書いたものに加筆修正
2025/12/23
黙黙とペンを走らせる彼の目は虚ろだ。いつも勝ち気な輝きを灯していた彼の瞳とは似ても似つかない。生意気に動いた唇も、今はなんの感情もこもらず引き結ばれている。
「フライデー」
そう呼べば、彼は顔を上げ虚ろな瞳にわたしを映す。それはただ次の命令を待っているだけだ。
「きみは、少し笑うといいね」
そんなせんないことを呟く。フライデーは律儀にそれを書き記す。屍者に表情はない。兵力や労働力として必要とされる彼らに、それは必要ないからだ。
でも、わたしはそんな理由で彼を蘇らせたわけじゃない。
「フライデー」
彼の頬に両手を添える。乾燥した肌と冷たい屍者の温度。
「これが、笑う」
わたしは親指で頬をつまみ彼の唇の両端を上げる。なんとも歪な微笑みが出来上がる。その間にもフライデーは、手元を見もせずにペンを走らせ続けている。
「さあ、笑ってみろフライデー」
手を離して、そう命じる。フライデーはノートとペンを置き、両手を上げた。
そして。
……しばらくその虚ろな目を見返してしまった。
頬には冷たく乾いた指の感触。痛くはない程度の力で頬がつまみ上げられている。
なるほど、彼はわたしが教えたことをそのまま実行したのだ。なぜこんな当たり前のことを予想しなかったのか、三十秒ほど前の自分を殴りたくなった。
残念ながら、時間を逆行する技術はまだ存在しない。
2015/10/13に書いたものに加筆修正
2025/12/23
