その他二次創作小説

愛している、と明確に伝えるにはどうしたらいいのだろう。直接その脳に伝えてしまおうか。そうしたらきみは、僕の愛と憎しみと嫉妬と羨望と焦燥と恐怖と……他にも自覚しない小さな感情の欠片まで、全部を知ることになるだろう。きっときみにとって忘れられない一瞬になる。そのあともきみが生きてる保障もしかねるけれど。



愛している、と明確に伝えるにはどうしたらいいのだろう。その力で直接この脳を覗いてもらおうか。そうしたら、きっと俺の愛も憎しみも恐怖も羨望も嫉妬も、自覚しない些細な想いまでなにもかも見えてしまうのだろう。もしかしたら、愛よりも憎悪や嫌悪が深いことまで。──なるほど、人類には心を読む能力よりも言語という上澄みを掬い取る能力が必要なのだろう。



伝えたい想いのすべては人間の脳にはちょっと過負荷かな

その命かけられるなら見せようか 『愛』と名付けたこの沼の底

泥沼の上に蓮が咲くように 言葉に変えたらきれいだろうね

頭から耳まで隠してしまったら ないしょ話はもうできないね

今はまだ遠すぎるのか見えないよ きみと僕とが手を取り合う日

今消えるきみと手を取るこの世界 悔いはないけど少し寂しい

願わくは未熟な僕らが脅威などなくても共に歩める明日を

この勝負勝ったらきみに伝えよう 「待った」「待ったなし」「もう一勝負!」

以上、2020年『アステロイド・ベルト』寄稿分より

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受け取ってくれないか、と渡されたのは、金属の指輪だった。彼の手作りだという。飾りはないが、彼が丁寧に作ってくれたのはわかる。いつの間に調べたのか、サイズも薬指にぴったりだ。ああ、ならば私の返事は一つしかない。 「プラスチック製にしてくれ」

2019/10/20

2025/06/04 当サイト掲載
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