よろず二次創作小説

花冠

「ほら」
 青い空を見つめていた視界に、ロイドの笑顔が割り込んできた。嬉しそうに、さっきまで編んでいた花輪をゼロスの頭に載せる。
「……なにこれ」
「花冠!」
 元気よく答えたけれど、ゼロスの疑問はそっちではない。
「それは見りゃあわかるけどさ。男にかぶせるかな」
「似合ってるぞ」
「俺さまはどんな花も似合ういい男だけどさ」
 そういえば、皆で旅していた頃もロイドはこんなことをしていたなと思い出す。コレットに花冠を被せて似合うと褒め、しいなに髪飾りを作って綺麗に見えると赤くさせ、プレセアにネックレスを作り微笑ませた。
「ハニーは俺より罪作りだよね」
「何が?」
 次の花を摘みながらロイドは聞き返した。
「そういやリーガルに腕輪まで作ってたな」
「そうだな」
 まだそれほどは経っていないはずなのに、もう遠い昔のことのように思える。
 あの時も、ゼロスはこうして寝転んでいたのではなかったか。こんな青空ではなくて、ほんのりと朱く染まり行く空を眺めて。
 そう、確か──息を切らせていた。走り回って、笑い転げて。
 鬼ごっこをしようと言い出したのは、いったい誰だっただろうか。ロイドか。コレットか。案外ジーニアスだったろうか。プレセアを誘う口実なら言い出しそうだ。
 ゼロスもやろうと誘ったのは、確かロイドだったと思う。やろうやろうとコレットはやけに乗り気で、手を引かれたのを覚えている。コレットにお願いされたら断れないと、嫌嫌ながら参加した。でも、走るうちにいつの間にか楽しんでいた。逃げて、捕まって、捕まえて、逃げて。馬鹿みたいに笑って走り回っていた。
 おーにさん、こーちら。
 やった! しいな、つかまーえた。
 ははっ、コレット早いねえ。じゃあ行くよ、じゅーう、きゅーう ……。
 タッチ。次、ゼロスくんですよ。
 わあっ。また僕かあ……。
 今でも鮮やかに思い出せる、声。それは街の子供たちと遊んでやった時とは違う楽しさだった。本当に鬼ごっこで「遊んだ」のは、それが初めてだったのかもしれない。
 可愛らしい赤い花を咲かせる花畑を見つけて鬼ごっこは自然とお開きになった。ロイドは花飾りを作り始め、女の子たちがそれを囲む。走り疲れたゼロスは、寝転んで空を見ていた。
 そういえば、あの時は自分だけ何もロイドにもらっていなかったかもしれない。ジーニアスには栞に向いた花を見繕っていたし、その場にいないリフィルとリーガルにも何か作っていたのに。
「なんで今冠作ったの?」
「黄色が髪に映えるだろ」
 ──男に花をもらっても、別に嬉しくないけど。
 そんなに屈託なく笑いかけられたら、こっちにも笑顔がうつってしまう。
「……罪作りだねえ」
「ん?」
「作り方教えて。俺もロイドくんみたくモテる男目指すわ」
「今でもモテてるだろ」
「うん、だから更に上を目指す」
「上じゃなくて子供にしかモテないけどな。まずはこうやって何本か束にして……」
 ロイドは慣れた調子で説明する。きっとこれまでにも何度も子供たちに教えてきたのだろう。
 目の前で実演と共に説明されても、ゼロスの作った花冠はやはり歪だった。
「実際やると難しいな」
「良くできてるし何度かやれば上手くなるさ」
「だといいけど」
 ──これじゃお返しにはならないな。
 でも、いつか綺麗に作れるようになったら、何色で冠を作ろうか。茶の髪に似合う色か、赤い服に映える色か。
 どうせしばらくかかるだろうから、ゆっくりと考えることにしよう。

2017/03/29 pixiv掲載
2025/05/25 当サイト掲載
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