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七月になった。
この二週間はあっという間に過ぎ去って、いよいよ今日は期末テストの返却日。
最初に数学、次に英語が返ってきて、今ちょうど俺の苦手な古文で最後だった。
休み時間、俺と谷地さんはまるで会議のように向かい合って座っている。
「只野くん……全教科出そろいましたが、その、結果の方は……?」
『谷地さん。俺……合宿行けます!!』
「おおー!」
ぱちぱち、と谷地さんが拍手をしてくれる。かわいい。
『谷地さんも、もちろん?』
「うん、行けます!」
見せてもらった答案の数字は、全て八割以上。
谷地さん、ものすごく勉強ができる。
ちなみに谷地さんは、一週間前に正式にうちの部員になった。
「楽しみだね、合宿!」
『……そう、だね』
その太陽みたいな笑顔がまぶしい。
話す機会が増えたら、慣れると思っていた。
けど全然そんなことはなくて。
むしろどんどん谷地さんのことを好きになっている自分がいた。
谷地さんのことが気になり始めて、もう一ヶ月。
俺は、谷地さんと付き合いたいのだろうか。
考えてみたけれど、自分でもよくわからなかった。
放課後、山口と月島に無事赤点がなかったことを伝える。
「良かったー! 無名の苦手な古文も、大丈夫だった?」
「……そう、良かったね」
月島は最近、俺にそっけない態度を取るようになった。
あれから、月島の好きな人についての情報は何も手に入っていない。
山口と協力してあれこれ探ってみたけれど、いつもうまくかわされてしまう。
そもそも好きな人がいない可能性のほうが高い。
……でもあの引っ掛かりだけが、ずっと気がかりだった。
そのとき、どたどたと足音が近づく。
バンッ、と部室のドアが勢いよく開いた。
日向と影山だ。
見るからに落ち込んでいる。
まさか。
二人とも赤点を取ってしまっていた。
日向に至っては、あんなに月島に教えてもらっていた英語で、だ。
「……は? 僕、英単語くらいは自分でやりなよって、言ったよね?」
月島が冷たく言う。声が低い。こわい。
なぐさめようと日向を撫でていた時、またドアが勢いよく開いた。
倒れるように入ってきたのは田中さん。
『……え、田中さん?』
うなだれた田中さんが俺に差し出した答案には、27の数字がしっかりと刻まれていた。
烏野の主力三人、そろって不在の東京合宿。
……どうしよう!?
そんな俺の願いも虚しく、あっという間にその日はやってきて。
「みてよ無名! 校章が梟だ、かっこいいね」
『本当だ……、さすがは私立校』
東京、梟谷学園についた。
どこか都会を感じさせる校舎と、眩しく光る体育館。
これから試合をするのは、これが当たり前の東京の強豪校。
烏野が完全な部外者というのもあって、空気が重い。
「_よっ、只野くん」
最初に声をかけてきてくれたのは、黒尾さんだった。
『お久しぶりです! 黒尾さん』
「元気してた? また一段と男前になっちゃって〜」
相変わらず、この人は距離を詰めるのが上手い。
猫のようにニッと笑って肩を叩いてくる黒尾さんにつられて、思わず笑みがこぼれる。
張り詰めていた緊張が、ふっと溶けた。
知っている人がいるだけで、こんなにも心が軽くなるなんて。
「……よかったね無名。黒尾さんに会えて!」
『え? ……うん、まあ?』
後ろで山口が、拳を握りしめて震えていた。
月島といい、山口といい、最近どこか様子が変だ。
日向も影山もいないから、なんとなく落ち着かない。
二人と田中さんは、補習が終わったら合流できる_それを聞いて少しだけ肩の力を抜いた。
「俺の予想だと、梟谷にものすごい攻めがいると思うんだよね!」
『ちょっ山口、近いって……ん?』
刺すような視線を感じて振り返ると、月島がふいと目をそらした。
気のせいだろうか。
俺、なんかした?
声をかけようとしたそのとき。
「おー! 烏野だーー!」
体育館の扉がガラッと開いて、元気な声が響く。
「……木兎さん、試合もう始まりますよ」
「なー赤葦ぃ、ちょっとだけ!」
全力で頼み込む木兎さん、の隣で赤葦、と呼ばれた人がため息をついた。
間違いない、これは木赤。
なんて考えながら、大地さんと木兎さんのやりとりを見ていたら。
「おっ、タダノクン、はお前だな!」
ギラッと光る目で、木兎さんが俺のジャージを指して言った。
「……木兎さん、指をささないでください」
赤葦さんの言葉もどこ吹く風。
「黒尾がさ〜、やっと会えるってうるさくてさ_」
「っおま、ばか!」
木兎さんの言葉を黒尾さんが慌てて遮り、口を押さえる。
「むぐっ」と情けない声を上げる木兎さん。
黒尾さんの耳が、ほんの少し赤かった。
何を言おうとしていたのか尋ねても、
「内緒」とだけ笑って、はぐらかされる。
……なんか、黒尾さんも変だな。
でも。不思議と、悪い気はしなかった。
この二週間はあっという間に過ぎ去って、いよいよ今日は期末テストの返却日。
最初に数学、次に英語が返ってきて、今ちょうど俺の苦手な古文で最後だった。
休み時間、俺と谷地さんはまるで会議のように向かい合って座っている。
「只野くん……全教科出そろいましたが、その、結果の方は……?」
『谷地さん。俺……合宿行けます!!』
「おおー!」
ぱちぱち、と谷地さんが拍手をしてくれる。かわいい。
『谷地さんも、もちろん?』
「うん、行けます!」
見せてもらった答案の数字は、全て八割以上。
谷地さん、ものすごく勉強ができる。
ちなみに谷地さんは、一週間前に正式にうちの部員になった。
「楽しみだね、合宿!」
『……そう、だね』
その太陽みたいな笑顔がまぶしい。
話す機会が増えたら、慣れると思っていた。
けど全然そんなことはなくて。
むしろどんどん谷地さんのことを好きになっている自分がいた。
谷地さんのことが気になり始めて、もう一ヶ月。
俺は、谷地さんと付き合いたいのだろうか。
考えてみたけれど、自分でもよくわからなかった。
放課後、山口と月島に無事赤点がなかったことを伝える。
「良かったー! 無名の苦手な古文も、大丈夫だった?」
「……そう、良かったね」
月島は最近、俺にそっけない態度を取るようになった。
あれから、月島の好きな人についての情報は何も手に入っていない。
山口と協力してあれこれ探ってみたけれど、いつもうまくかわされてしまう。
そもそも好きな人がいない可能性のほうが高い。
……でもあの引っ掛かりだけが、ずっと気がかりだった。
そのとき、どたどたと足音が近づく。
バンッ、と部室のドアが勢いよく開いた。
日向と影山だ。
見るからに落ち込んでいる。
まさか。
二人とも赤点を取ってしまっていた。
日向に至っては、あんなに月島に教えてもらっていた英語で、だ。
「……は? 僕、英単語くらいは自分でやりなよって、言ったよね?」
月島が冷たく言う。声が低い。こわい。
なぐさめようと日向を撫でていた時、またドアが勢いよく開いた。
倒れるように入ってきたのは田中さん。
『……え、田中さん?』
うなだれた田中さんが俺に差し出した答案には、27の数字がしっかりと刻まれていた。
烏野の主力三人、そろって不在の東京合宿。
……どうしよう!?
そんな俺の願いも虚しく、あっという間にその日はやってきて。
「みてよ無名! 校章が梟だ、かっこいいね」
『本当だ……、さすがは私立校』
東京、梟谷学園についた。
どこか都会を感じさせる校舎と、眩しく光る体育館。
これから試合をするのは、これが当たり前の東京の強豪校。
烏野が完全な部外者というのもあって、空気が重い。
「_よっ、只野くん」
最初に声をかけてきてくれたのは、黒尾さんだった。
『お久しぶりです! 黒尾さん』
「元気してた? また一段と男前になっちゃって〜」
相変わらず、この人は距離を詰めるのが上手い。
猫のようにニッと笑って肩を叩いてくる黒尾さんにつられて、思わず笑みがこぼれる。
張り詰めていた緊張が、ふっと溶けた。
知っている人がいるだけで、こんなにも心が軽くなるなんて。
「……よかったね無名。黒尾さんに会えて!」
『え? ……うん、まあ?』
後ろで山口が、拳を握りしめて震えていた。
月島といい、山口といい、最近どこか様子が変だ。
日向も影山もいないから、なんとなく落ち着かない。
二人と田中さんは、補習が終わったら合流できる_それを聞いて少しだけ肩の力を抜いた。
「俺の予想だと、梟谷にものすごい攻めがいると思うんだよね!」
『ちょっ山口、近いって……ん?』
刺すような視線を感じて振り返ると、月島がふいと目をそらした。
気のせいだろうか。
俺、なんかした?
声をかけようとしたそのとき。
「おー! 烏野だーー!」
体育館の扉がガラッと開いて、元気な声が響く。
「……木兎さん、試合もう始まりますよ」
「なー赤葦ぃ、ちょっとだけ!」
全力で頼み込む木兎さん、の隣で赤葦、と呼ばれた人がため息をついた。
間違いない、これは木赤。
なんて考えながら、大地さんと木兎さんのやりとりを見ていたら。
「おっ、タダノクン、はお前だな!」
ギラッと光る目で、木兎さんが俺のジャージを指して言った。
「……木兎さん、指をささないでください」
赤葦さんの言葉もどこ吹く風。
「黒尾がさ〜、やっと会えるってうるさくてさ_」
「っおま、ばか!」
木兎さんの言葉を黒尾さんが慌てて遮り、口を押さえる。
「むぐっ」と情けない声を上げる木兎さん。
黒尾さんの耳が、ほんの少し赤かった。
何を言おうとしていたのか尋ねても、
「内緒」とだけ笑って、はぐらかされる。
……なんか、黒尾さんも変だな。
でも。不思議と、悪い気はしなかった。