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「え……いない、デス」
顔から湯気が出ている。
日向はピュアすぎて、逆に大丈夫だろうかと不安になる。
でもまあ、俺達の研日計画的にはありがたい。
「じゃあさ日向、好きなタイプは?」
山口が素早く俺の隣に来て、日向に聞いた。
「お、おれ、たくさん笑う人が好きっ!」
『たくさん……。たまに見せる笑顔が素敵な人、は?』
そもそも孤爪さんは笑うんだろうか。
微笑みのような表情は見たことがあるが、満開の笑みなんて思い出せない。
「うーん、でもたぶんおれ、好きになったらその人がどんな人でも好きだ!」
少し考える素振りを見せた後、日向が太陽のようにニカッと笑う。
その純粋無垢さに、俺の心が浄化された。
山口も、いい考えだね、とうなずいている。
「好きって、なんだ」
どーん、と音が聞こえるくらいの勢いで影山が言った。
一瞬で部室の空気が変わるのを感じる。
ずっとバレーボール一筋な影山は、恋なんてしたことなさそうだ。
クラスの恋愛の話題についていけず、頭にハテナを浮かべているのを前に見たことあるし。
好き、とは。
俺の好きは、相手のちょっとした動作をいいな、と思ったり、もう少しだけ一緒にいたい、と思うこと、だろうか。
影山は口を尖らせたまま、少し考えて―
「……俺は、只野が、好き……?」
その場にいる全員が同時に驚きの声をあげた。もちろん俺も。
「……王様もついに乱心かな?」
月島がシャツの袖を通しながら、呆れたように言う。
俺は昔、黒尾さんに壁ドンされたときのように体が固まっていた。
何度も言うが、こういうのはそばで見ているのが良いのであって、
自分が対象となると話は別なのである。
影山が俺を好き。
「只野は優しいし、話してて安心する。いつもノート貸してくれるし、疲れてるときは飴くれるし……なんか、お母さんみたいで、好きだ」
影山は真面目な顔で、まっすぐ言った。
……母。
開いた口が塞がらなかった。
いや、なんとなくそんなことだろうとは思ってたけども。
恋愛じゃないってわかってたけども。
母は想定外だ。
「お、おれも無名のこと好きだし!」
「えっ、……三角関係!?」
謎に張り合う日向に山口の目がきらっと輝く。
月島はただ眉を寄せて黙り込んでいて。
俺は助けを求めて声をかけたがツッコミは放棄したらしく、目もくれなかった。
「ぜんぜん話に乗ってこない月島クン、恋バナとか苦手? だっせー!」
「……好きな人について聞かれただけで赤くなるやつに言われたくないんだけど」
すかさず日向がこりなく月島を煽る。
メモをすばやく準備する山口。
俺達は素早くアイコンタクトを取った。
影山の恋が厳しそうとなると、影月ルートは無理。
つまり俺達が今最優先で手に入れるべき情報は、月島の好きな人について、だ。
情報を引き出さないと。……煽られて不機嫌そうな月島から。
「お前ら、付き合ってるんじゃねえのかよ」
ズバッと影山が言った。
指をさされた山口と月島は、目をパチクリと動かして固まった。
全く、こういうときの影山は頼もしい。
「はぁ? そんなわけないでしょ」
「あはは、そんなことあるわけないよ」
二人の声がピッタリ揃った。
ほんとに付き合っていないのか、とまた聞きたくなるほどに。
「……なんでお前が否定するの、山口」
納得がいかないように月島がぼそりと呟いた。
「? じゃあさツッキー、好きな人はいないの?」
「……いない」
短く応える。
そんな様子の月島に、俺の中で何かが引っかかった。
『その間はいるときの間だろ』
「……いたとしても只野には関係ないでしょ」
ふい、と目をそらされる。なんだそれ。
その言葉に山口の肩がすこし動く。
「というかさ、只野と王様こそしっかりしてよね。恋愛ごとにうつつを抜かしてバレーに手を抜くなんて_」
明らかに話題をそらすように月島が言った、そのとき。
「_そんなこと、あるわけがない」
部室内に広がる、影山の強い圧。空気が一瞬で張り詰めた。
天然でも空気が読めなかろうとも、筋金入りのバレー馬鹿。
こんなやつが恋なんかするわけがなかった。
「……僕、帰るから。おつかれ」
「え、待ってよツッキー!」
低い声でそう言い残し、月島がエナメルバックを肩にかけた。
山口がぱたぱたとその後を追う。
残された俺達の間には、まだ沈黙が残っていた。
あの日向ですら、ぎこちなく学ランのボタンをとめている。
「只野」
『……うん』
視線を上げると、影山がこちらをまっすぐ見つめていた。
「……うつつをぬかす、ってなんて意味だ」
『……うん?』
そのまま真剣な表情で言われてしまった。
何気ない部活終わりの会話。ただの青春の一欠片。
このちょっとした瞬間が、俺達の運命を静かに変えていった。
顔から湯気が出ている。
日向はピュアすぎて、逆に大丈夫だろうかと不安になる。
でもまあ、俺達の研日計画的にはありがたい。
「じゃあさ日向、好きなタイプは?」
山口が素早く俺の隣に来て、日向に聞いた。
「お、おれ、たくさん笑う人が好きっ!」
『たくさん……。たまに見せる笑顔が素敵な人、は?』
そもそも孤爪さんは笑うんだろうか。
微笑みのような表情は見たことがあるが、満開の笑みなんて思い出せない。
「うーん、でもたぶんおれ、好きになったらその人がどんな人でも好きだ!」
少し考える素振りを見せた後、日向が太陽のようにニカッと笑う。
その純粋無垢さに、俺の心が浄化された。
山口も、いい考えだね、とうなずいている。
「好きって、なんだ」
どーん、と音が聞こえるくらいの勢いで影山が言った。
一瞬で部室の空気が変わるのを感じる。
ずっとバレーボール一筋な影山は、恋なんてしたことなさそうだ。
クラスの恋愛の話題についていけず、頭にハテナを浮かべているのを前に見たことあるし。
好き、とは。
俺の好きは、相手のちょっとした動作をいいな、と思ったり、もう少しだけ一緒にいたい、と思うこと、だろうか。
影山は口を尖らせたまま、少し考えて―
「……俺は、只野が、好き……?」
その場にいる全員が同時に驚きの声をあげた。もちろん俺も。
「……王様もついに乱心かな?」
月島がシャツの袖を通しながら、呆れたように言う。
俺は昔、黒尾さんに壁ドンされたときのように体が固まっていた。
何度も言うが、こういうのはそばで見ているのが良いのであって、
自分が対象となると話は別なのである。
影山が俺を好き。
「只野は優しいし、話してて安心する。いつもノート貸してくれるし、疲れてるときは飴くれるし……なんか、お母さんみたいで、好きだ」
影山は真面目な顔で、まっすぐ言った。
……母。
開いた口が塞がらなかった。
いや、なんとなくそんなことだろうとは思ってたけども。
恋愛じゃないってわかってたけども。
母は想定外だ。
「お、おれも無名のこと好きだし!」
「えっ、……三角関係!?」
謎に張り合う日向に山口の目がきらっと輝く。
月島はただ眉を寄せて黙り込んでいて。
俺は助けを求めて声をかけたがツッコミは放棄したらしく、目もくれなかった。
「ぜんぜん話に乗ってこない月島クン、恋バナとか苦手? だっせー!」
「……好きな人について聞かれただけで赤くなるやつに言われたくないんだけど」
すかさず日向がこりなく月島を煽る。
メモをすばやく準備する山口。
俺達は素早くアイコンタクトを取った。
影山の恋が厳しそうとなると、影月ルートは無理。
つまり俺達が今最優先で手に入れるべき情報は、月島の好きな人について、だ。
情報を引き出さないと。……煽られて不機嫌そうな月島から。
「お前ら、付き合ってるんじゃねえのかよ」
ズバッと影山が言った。
指をさされた山口と月島は、目をパチクリと動かして固まった。
全く、こういうときの影山は頼もしい。
「はぁ? そんなわけないでしょ」
「あはは、そんなことあるわけないよ」
二人の声がピッタリ揃った。
ほんとに付き合っていないのか、とまた聞きたくなるほどに。
「……なんでお前が否定するの、山口」
納得がいかないように月島がぼそりと呟いた。
「? じゃあさツッキー、好きな人はいないの?」
「……いない」
短く応える。
そんな様子の月島に、俺の中で何かが引っかかった。
『その間はいるときの間だろ』
「……いたとしても只野には関係ないでしょ」
ふい、と目をそらされる。なんだそれ。
その言葉に山口の肩がすこし動く。
「というかさ、只野と王様こそしっかりしてよね。恋愛ごとにうつつを抜かしてバレーに手を抜くなんて_」
明らかに話題をそらすように月島が言った、そのとき。
「_そんなこと、あるわけがない」
部室内に広がる、影山の強い圧。空気が一瞬で張り詰めた。
天然でも空気が読めなかろうとも、筋金入りのバレー馬鹿。
こんなやつが恋なんかするわけがなかった。
「……僕、帰るから。おつかれ」
「え、待ってよツッキー!」
低い声でそう言い残し、月島がエナメルバックを肩にかけた。
山口がぱたぱたとその後を追う。
残された俺達の間には、まだ沈黙が残っていた。
あの日向ですら、ぎこちなく学ランのボタンをとめている。
「只野」
『……うん』
視線を上げると、影山がこちらをまっすぐ見つめていた。
「……うつつをぬかす、ってなんて意味だ」
『……うん?』
そのまま真剣な表情で言われてしまった。
何気ない部活終わりの会話。ただの青春の一欠片。
このちょっとした瞬間が、俺達の運命を静かに変えていった。