イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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あの騒動から、数カ月後。
「あー終わった終わった。今回は調さんがトップだから、仕事が早くて良かったわ」
ISA本部で洗脳を受けていた際についての取り調べを受けていた私は、一仕事終わったと言わんばかりに腕を回し自分のベッドに寝転がった。ふかふかで太陽の匂いがする布団に迎えられ、今にも寝てしまいそうになる。
「お疲れ様、柚葉。ケーキ食べるか?」
「食べる!」
ケーキは話が違ってくる。即座にベッドを飛び出してソファに移り、大也の隣に腰掛けた。皿にのせられたショートケーキは、超有名店で取り扱われている一日数量限定のものだ。
鼻歌を歌いながら紅茶に砂糖を入れていると、大也が隣から熱い視線を送ってきた。
「ん?何?」
「…いや、本当に終わったんだなって思ってさ」
「終わってないわよ。むしろこれからでしょ、あなた達の戦いは。ハシリヤンの残党はまだいるし、玄蕃の故郷だって奪還できてないんだから」
「…そうだな」
「何よ、歯切れ悪いわね。一時的とはいえ世界を救ったんだからもっとシャンとしなさいよ」
「うん…」
何だか様子の可笑しい大也に私は首を傾げたが、「もしかして内藤のことを引き摺っているのだろうか」と身構えた。何せ、中学生の頃からの恩師だ。そんな人物が逮捕されれば、いくらいつもバクアゲな彼でも元気を失くすのは当然だろう。
「…まあ、大也の気持ちも分からなくはないけど。抱え込むくらいならもっと…私やみんなを頼ってほしい」
「柚葉…」
「言いたいことがあるならちゃんと言って。私はずっと、あなたの味方だもの」
「……俺が、」
大也は珍しく私の肩に寄りかかって来た。ふわふわの髪が頬に当たり、少しくすぐったい。少しだけ車のにおいと、シャンプーの匂いがする。
「俺が……もっと余裕のある人間だったら、柚葉のこと、またハシリヤンに洗脳されるなんてこと、」
「大也」
今にも泣き出しそうだった彼と向き合い、コツン、と額を合わせた。そのまま唇を奪い、すぐに離れる。呆然とする彼の頭をわしゃわしゃと撫で、抱きしめた。
「大也のせいじゃない。私が浅はかだっただけなの」
「でも…!」
「守りたかったの、あなたのこと。ずっと助けられてばっかりで、傷だらけの大也を見ているだけなのが辛くて。でも、それって凄く傲慢なんだってようやく気付けた」
赤子をあやすように大也の背中を撫でる。大きな背中だ。私は何度、この背中に守られてきたのだろう。
「だって私には、仲間がいるんだもの。大也がピンチなら、みんなと駆け付ける。みんながピンチなら、もっと沢山の仲間に手を貸してもらう。だって私達は、愛で繋がっているんだもの」
「……俺は…」
「私、大也と出会えて…みんなと出会えて、世界がカラフルになった。私、今凄く幸せなの。私をブンブンジャーの一員にしてくれてありがとう、大也」
そう言って微笑むと、大也が私の背中に手を回してくれた。ぎゅうと抱き寄せ、「柚葉」と泣きそうな声で呼ばれた。
「これからも……俺達と、走ってくれるか?」
「ええ」
「もう、無茶なことはしないって約束してくれるか?」
「わかった」
「ファーストキス、やり直してもいいか?」
「もちろん。……え?」
肩が離れた。大也と目が合った。
私達は、もう一度ファーストキスをした。
*
「準備オッケー!」
「こっちも準備オッケーです!」
未来と錠の声が通信で聞こえてきた。隣の席に座っている私は大也と目を合わせ、笑い合う。バトルスーツの強度をブンブンスーツと同程度まで強化してもらっているのが、まさかここで活きるとは思いもしなかった。
「行くぞ、ブンブン!」
「オーライ!」
「出発だ!」
「ブンブンジャー発進!」
*
「ビッグバングランプリ第一ステージまもなくスタート!初参戦で予選トップのチームブンブンジャー、初優勝への期待が高まります!」
ヘルメットを持って一列に並ぶ彼らを、傘を差して後ろから見守っていた。私は彼らの応援や支援を行うレースクイーンだ。レースに参加できなくとも、仕事は山程ある。
「ファーストドライバーは範道大也!」
「頼むぞ、大也!」
「みんな、頑張って!」
「…ああ。バクアゲでいくぞ!」
「「オーライ!!」」
エンジン音が鳴り、ブンブンジャーは走り出していく。それを見送っていると、先頭を走って行った大也がちらりとこちらを振り返った。
「柚葉!」
「え、何!?忘れ物!?」
「一緒にバクアゲになってくれ!君の分まで、俺が絶対に届けてみせる!」
「…オーライ!」
範道大也は確かに私のヒーローで、恋人で、幼馴染で、届け屋だった。いや、きっとこれからもずっとそうなのだろう。彼が自分のハンドルを握り続ける限り、彼は彼で在り続ける。その優しさは、勇気は、決して失われない。
幼い頃私に手を差し伸べてくれた男の子は、こんなにも沢山の色で満ち溢れた世界を教えてくれた。
きっと、私達ならどこまでも走って行ける。
「あー終わった終わった。今回は調さんがトップだから、仕事が早くて良かったわ」
ISA本部で洗脳を受けていた際についての取り調べを受けていた私は、一仕事終わったと言わんばかりに腕を回し自分のベッドに寝転がった。ふかふかで太陽の匂いがする布団に迎えられ、今にも寝てしまいそうになる。
「お疲れ様、柚葉。ケーキ食べるか?」
「食べる!」
ケーキは話が違ってくる。即座にベッドを飛び出してソファに移り、大也の隣に腰掛けた。皿にのせられたショートケーキは、超有名店で取り扱われている一日数量限定のものだ。
鼻歌を歌いながら紅茶に砂糖を入れていると、大也が隣から熱い視線を送ってきた。
「ん?何?」
「…いや、本当に終わったんだなって思ってさ」
「終わってないわよ。むしろこれからでしょ、あなた達の戦いは。ハシリヤンの残党はまだいるし、玄蕃の故郷だって奪還できてないんだから」
「…そうだな」
「何よ、歯切れ悪いわね。一時的とはいえ世界を救ったんだからもっとシャンとしなさいよ」
「うん…」
何だか様子の可笑しい大也に私は首を傾げたが、「もしかして内藤のことを引き摺っているのだろうか」と身構えた。何せ、中学生の頃からの恩師だ。そんな人物が逮捕されれば、いくらいつもバクアゲな彼でも元気を失くすのは当然だろう。
「…まあ、大也の気持ちも分からなくはないけど。抱え込むくらいならもっと…私やみんなを頼ってほしい」
「柚葉…」
「言いたいことがあるならちゃんと言って。私はずっと、あなたの味方だもの」
「……俺が、」
大也は珍しく私の肩に寄りかかって来た。ふわふわの髪が頬に当たり、少しくすぐったい。少しだけ車のにおいと、シャンプーの匂いがする。
「俺が……もっと余裕のある人間だったら、柚葉のこと、またハシリヤンに洗脳されるなんてこと、」
「大也」
今にも泣き出しそうだった彼と向き合い、コツン、と額を合わせた。そのまま唇を奪い、すぐに離れる。呆然とする彼の頭をわしゃわしゃと撫で、抱きしめた。
「大也のせいじゃない。私が浅はかだっただけなの」
「でも…!」
「守りたかったの、あなたのこと。ずっと助けられてばっかりで、傷だらけの大也を見ているだけなのが辛くて。でも、それって凄く傲慢なんだってようやく気付けた」
赤子をあやすように大也の背中を撫でる。大きな背中だ。私は何度、この背中に守られてきたのだろう。
「だって私には、仲間がいるんだもの。大也がピンチなら、みんなと駆け付ける。みんながピンチなら、もっと沢山の仲間に手を貸してもらう。だって私達は、愛で繋がっているんだもの」
「……俺は…」
「私、大也と出会えて…みんなと出会えて、世界がカラフルになった。私、今凄く幸せなの。私をブンブンジャーの一員にしてくれてありがとう、大也」
そう言って微笑むと、大也が私の背中に手を回してくれた。ぎゅうと抱き寄せ、「柚葉」と泣きそうな声で呼ばれた。
「これからも……俺達と、走ってくれるか?」
「ええ」
「もう、無茶なことはしないって約束してくれるか?」
「わかった」
「ファーストキス、やり直してもいいか?」
「もちろん。……え?」
肩が離れた。大也と目が合った。
私達は、もう一度ファーストキスをした。
*
「準備オッケー!」
「こっちも準備オッケーです!」
未来と錠の声が通信で聞こえてきた。隣の席に座っている私は大也と目を合わせ、笑い合う。バトルスーツの強度をブンブンスーツと同程度まで強化してもらっているのが、まさかここで活きるとは思いもしなかった。
「行くぞ、ブンブン!」
「オーライ!」
「出発だ!」
「ブンブンジャー発進!」
*
「ビッグバングランプリ第一ステージまもなくスタート!初参戦で予選トップのチームブンブンジャー、初優勝への期待が高まります!」
ヘルメットを持って一列に並ぶ彼らを、傘を差して後ろから見守っていた。私は彼らの応援や支援を行うレースクイーンだ。レースに参加できなくとも、仕事は山程ある。
「ファーストドライバーは範道大也!」
「頼むぞ、大也!」
「みんな、頑張って!」
「…ああ。バクアゲでいくぞ!」
「「オーライ!!」」
エンジン音が鳴り、ブンブンジャーは走り出していく。それを見送っていると、先頭を走って行った大也がちらりとこちらを振り返った。
「柚葉!」
「え、何!?忘れ物!?」
「一緒にバクアゲになってくれ!君の分まで、俺が絶対に届けてみせる!」
「…オーライ!」
範道大也は確かに私のヒーローで、恋人で、幼馴染で、届け屋だった。いや、きっとこれからもずっとそうなのだろう。彼が自分のハンドルを握り続ける限り、彼は彼で在り続ける。その優しさは、勇気は、決して失われない。
幼い頃私に手を差し伸べてくれた男の子は、こんなにも沢山の色で満ち溢れた世界を教えてくれた。
きっと、私達ならどこまでも走って行ける。