イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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ブンドリオという家族を失い、柚葉さえも手から零れ落ちてしまった範道大也はボロボロだった。
頭の中で事象の整理が付かないまま、必死に手だけを動かしている。機械の仕組みについては、体が覚えていた。玄蕃が調達してきたパーツを繋ぎ合わせ、ブンドリオを復活させようと血眼になっている。何日も飲まず食わずで動いている大也を心配し、おにぎりを与えようとした未来を大也は振り払った。
「行ってしまうんだ…ブンブンが…!」
一心不乱に作業を続けていた大也はようやく手を止めた。そしてレバーに手をかけ、下に引く。一瞬ブンドリオの体に光が戻ったが、すぐにそれは失われてしまった。
現実を受けとめられない大也は何度もレバーを引く。何度も、何度も、何度も。荒い吐息とレバーを引く音だけがこだまする隠れ家。見ていられなくなった玄蕃が「よせ、大也」と口を開いた。
「もう少しなんだ…動くはずなんだ!」
ガチャガチャと、まるでゲームのコントローラーを乱暴に扱う子供のようにレバーを何度も動かす。吐息、動作音、吐息、動作音。壊れた玩具を無理矢理直そうとするかのような大也を目の当たりにして、玄蕃はぎゅっと目を瞑った。
「ブンドリオは帰ってこない!」
「決め付けるな!!」
玄蕃に掴みかかる大也。頭に血が上ったことでむしろクールダウンしたのか、「パーツの選択をミスしたに違いないんだ」と力なく呟いた。
「大也が一番分かっている筈だ。ブンドリオはロボットじゃない。我々と同じ魂を持った生き物。魂はパーツの交換で治せるものじゃないだろう…?」
「…俺なら、やれる……」
「…傲慢だよ、大也」
動かないブンドリオを見下ろす大也。顔に幾つもの傷を作り、そこに絆創膏を貼っている未来が休むことを促す。
「すぐにパーツの指定をするから玄蕃は…」
「こっち向け範道大也!!!」
隠れ家に未来の大声が響いた。
「今一番自分のハンドル握ってないの大也だよ!自分の悲鳴聞こえてないでしょ!?」
大也を無理矢理自分の方に向け、彼女はそう叫んだ。ハンドルも悲鳴も、いつも大也が言っていた言葉だった。
*
「食べなさい。お腹いっぱいにして、話はそれから!…ブンちゃんに教えてもらったとおりに作ったの。大也が余裕ないと、助けたい人のこと誰も助けられないよ」
テーブルに置かれた、ブンドリオが作るカレーに酷似したもの。スプーンで一口分を掬い、未来は大也にスプーンを持たせた。
震える手でカレーを口に運ぶ。一口食べた彼の脳内にはカレーを振る舞ってくれるブンドリオの姿が駆け抜けていく。その中には、ブンドリオと共に作ったカレーを披露する柚葉もいた。
「ブンブンの味だ…」
僅かながら笑みが見えた。泣きながら大也はガツガツとカレーを食べ始め、未来、錠、玄蕃の三人は「良かった」と言いたげな表情でそれを見守っている。
「よしっ。あたし達も食べよっか!」
「はい!」
「まずは腹ごしらえといったところだねえ」
未来は手際よく三人分のカレーを注ぎ、大也と同じテーブルについて「いただきます!」と三人も並んで食べ始めた。
「…確かに、ブンドリオの味だねえ」
「…はい。凄く…美味しいです」
「よかった!」
あっという間に四人はカレーを食べ終わり、各々顔を見合わせた。カレーを完食した大也は、また少し塞ぎ込んでしまっている。
「また何もできなかった…。すぐそばにいたのに…声が聞こえてたのに…」
「”また”って…何があったんですか?」
「…話してよ、大也」
「いつも言っている”余裕”に関係あるのでは?」
三人の言葉を聞き、ポツポツと大也は語り始めた。彼が小学生の頃、隣の部屋から聞こえていた悲鳴に何も出来なかった過去だ。壁の向こう側は愛のない世界だったと大也は語り、今でも救えなかった子供の悲鳴が響いていると彼は言う。決して多くは語らなかったが、恐らく「そういうこと」なのだろうと皆が理解していた。
「あれから毎日、同じような事件のニュースを追いかけた。それで、あの子よりもっとひどいケースが世界中で起きていると知った。…柚葉だって、そうだ。俺に何が出来るのか、そればかり考えていた…」
大也は子供ながらに大きなものを背負ってしまっていた。そして多くの悲劇や大人の世界を知り、覚悟した。誰よりも余裕のある大人になると。
「悲鳴を上げていた子供達が安心できて夢を見られる場所を作る。…俺が死んだ後も、その世界がずっと続くようにしたいんだ。俺は…ブンブンと走ると決めたことを後悔なんかしない。失ったものは…また作り上げるだけだ。柚葉も、絶対に取り返して見せる」
ブンドリオのボディを優しく撫でる。彼の背中を見つめ、錠が立ち上がった。
「俺は綺麗事だなんて思いません」
「一人で戦うには、大きすぎる敵だねえ」
「そうだよ。一人で抱えないで。私達が…仲間がいるんだよ」
状況は未だに変わっていない。ブンドリオは機能を停止したままで、柚葉も戻ってきていない。
苦しい状況の中で、大也は少しだけ笑みを浮かべて「ありがとう」と三人に告げた。
「君達が仲間で良かった」
「…やっと自分のハンドル、取り戻してくれた」
未来の目から涙が零れ落ちる。一滴の涙が二コーラのペンダントに落ちると、ペンダントから映像が投影され始めた。
「えっ!?」
「二コーラ姫…!」
「妾は今、同志を集め惑星トリクルを解放する戦いの最中。このような連絡となってしまったことを許してたも。宇宙開闢を伝える我が宝玉が、そなた達の危機を予見し妾に伝えてきたのじゃ。さらに見よ」
二コーラの視線の先には、ブンドリオと共に落ちてきたという光る円形の物体があった。
「これなるものが危機を打ち破る鍵となると我が宝玉は伝えている。乗り越える為に最も必要な力をその鍵に示せ、と。互いに良き知らせを交わせるように妾も戦う。そなた達も、どうか武運を」
そこで映像は途切れた。
危機と聞いて大也が真っ先に見つめたのはブンドリオだった。視線の先にいるブンドリオの体からは、少しずつ砂のようなものが溢れ始めていた。
頭の中で事象の整理が付かないまま、必死に手だけを動かしている。機械の仕組みについては、体が覚えていた。玄蕃が調達してきたパーツを繋ぎ合わせ、ブンドリオを復活させようと血眼になっている。何日も飲まず食わずで動いている大也を心配し、おにぎりを与えようとした未来を大也は振り払った。
「行ってしまうんだ…ブンブンが…!」
一心不乱に作業を続けていた大也はようやく手を止めた。そしてレバーに手をかけ、下に引く。一瞬ブンドリオの体に光が戻ったが、すぐにそれは失われてしまった。
現実を受けとめられない大也は何度もレバーを引く。何度も、何度も、何度も。荒い吐息とレバーを引く音だけがこだまする隠れ家。見ていられなくなった玄蕃が「よせ、大也」と口を開いた。
「もう少しなんだ…動くはずなんだ!」
ガチャガチャと、まるでゲームのコントローラーを乱暴に扱う子供のようにレバーを何度も動かす。吐息、動作音、吐息、動作音。壊れた玩具を無理矢理直そうとするかのような大也を目の当たりにして、玄蕃はぎゅっと目を瞑った。
「ブンドリオは帰ってこない!」
「決め付けるな!!」
玄蕃に掴みかかる大也。頭に血が上ったことでむしろクールダウンしたのか、「パーツの選択をミスしたに違いないんだ」と力なく呟いた。
「大也が一番分かっている筈だ。ブンドリオはロボットじゃない。我々と同じ魂を持った生き物。魂はパーツの交換で治せるものじゃないだろう…?」
「…俺なら、やれる……」
「…傲慢だよ、大也」
動かないブンドリオを見下ろす大也。顔に幾つもの傷を作り、そこに絆創膏を貼っている未来が休むことを促す。
「すぐにパーツの指定をするから玄蕃は…」
「こっち向け範道大也!!!」
隠れ家に未来の大声が響いた。
「今一番自分のハンドル握ってないの大也だよ!自分の悲鳴聞こえてないでしょ!?」
大也を無理矢理自分の方に向け、彼女はそう叫んだ。ハンドルも悲鳴も、いつも大也が言っていた言葉だった。
*
「食べなさい。お腹いっぱいにして、話はそれから!…ブンちゃんに教えてもらったとおりに作ったの。大也が余裕ないと、助けたい人のこと誰も助けられないよ」
テーブルに置かれた、ブンドリオが作るカレーに酷似したもの。スプーンで一口分を掬い、未来は大也にスプーンを持たせた。
震える手でカレーを口に運ぶ。一口食べた彼の脳内にはカレーを振る舞ってくれるブンドリオの姿が駆け抜けていく。その中には、ブンドリオと共に作ったカレーを披露する柚葉もいた。
「ブンブンの味だ…」
僅かながら笑みが見えた。泣きながら大也はガツガツとカレーを食べ始め、未来、錠、玄蕃の三人は「良かった」と言いたげな表情でそれを見守っている。
「よしっ。あたし達も食べよっか!」
「はい!」
「まずは腹ごしらえといったところだねえ」
未来は手際よく三人分のカレーを注ぎ、大也と同じテーブルについて「いただきます!」と三人も並んで食べ始めた。
「…確かに、ブンドリオの味だねえ」
「…はい。凄く…美味しいです」
「よかった!」
あっという間に四人はカレーを食べ終わり、各々顔を見合わせた。カレーを完食した大也は、また少し塞ぎ込んでしまっている。
「また何もできなかった…。すぐそばにいたのに…声が聞こえてたのに…」
「”また”って…何があったんですか?」
「…話してよ、大也」
「いつも言っている”余裕”に関係あるのでは?」
三人の言葉を聞き、ポツポツと大也は語り始めた。彼が小学生の頃、隣の部屋から聞こえていた悲鳴に何も出来なかった過去だ。壁の向こう側は愛のない世界だったと大也は語り、今でも救えなかった子供の悲鳴が響いていると彼は言う。決して多くは語らなかったが、恐らく「そういうこと」なのだろうと皆が理解していた。
「あれから毎日、同じような事件のニュースを追いかけた。それで、あの子よりもっとひどいケースが世界中で起きていると知った。…柚葉だって、そうだ。俺に何が出来るのか、そればかり考えていた…」
大也は子供ながらに大きなものを背負ってしまっていた。そして多くの悲劇や大人の世界を知り、覚悟した。誰よりも余裕のある大人になると。
「悲鳴を上げていた子供達が安心できて夢を見られる場所を作る。…俺が死んだ後も、その世界がずっと続くようにしたいんだ。俺は…ブンブンと走ると決めたことを後悔なんかしない。失ったものは…また作り上げるだけだ。柚葉も、絶対に取り返して見せる」
ブンドリオのボディを優しく撫でる。彼の背中を見つめ、錠が立ち上がった。
「俺は綺麗事だなんて思いません」
「一人で戦うには、大きすぎる敵だねえ」
「そうだよ。一人で抱えないで。私達が…仲間がいるんだよ」
状況は未だに変わっていない。ブンドリオは機能を停止したままで、柚葉も戻ってきていない。
苦しい状況の中で、大也は少しだけ笑みを浮かべて「ありがとう」と三人に告げた。
「君達が仲間で良かった」
「…やっと自分のハンドル、取り戻してくれた」
未来の目から涙が零れ落ちる。一滴の涙が二コーラのペンダントに落ちると、ペンダントから映像が投影され始めた。
「えっ!?」
「二コーラ姫…!」
「妾は今、同志を集め惑星トリクルを解放する戦いの最中。このような連絡となってしまったことを許してたも。宇宙開闢を伝える我が宝玉が、そなた達の危機を予見し妾に伝えてきたのじゃ。さらに見よ」
二コーラの視線の先には、ブンドリオと共に落ちてきたという光る円形の物体があった。
「これなるものが危機を打ち破る鍵となると我が宝玉は伝えている。乗り越える為に最も必要な力をその鍵に示せ、と。互いに良き知らせを交わせるように妾も戦う。そなた達も、どうか武運を」
そこで映像は途切れた。
危機と聞いて大也が真っ先に見つめたのはブンドリオだった。視線の先にいるブンドリオの体からは、少しずつ砂のようなものが溢れ始めていた。