イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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思いがけない人物の登場に柚葉は動揺した。しかし、ここがISAの管轄内の建物であることと射士郎の言葉を思い出し納得する。──ISAとハシリヤンは繋がっている。
「…やっぱり、黒だったのね………」
「この世界に完全な黒などいない」
「自分は白だとでも?」
「そうではない。黒からは白しか見えず、白からは黒しか見えないのだ」
常槍はそう言い、ワインで真っ赤に染まった柚葉を見て鼻で笑った。
「ブンブンジャーは白よ。悪なんかじゃない」
「それは君の視点でしかない。我々としては、彼らの存在は看過できない」
「あなた達が公に出来ないようなことをしてるからでしょ。レッサーパンダもビックリの腹黒ね」
「…君は少し、自分の立場を理解した方がいい。君の命に価値など無いのだ。人質がいなくとも、我々はブンブンジャーを御することができる」
人質にすらならないと告げられ、彼女はキッと常槍を睨んだ。事実が故に反論できなかった。生きていれば人質になるが、殺しても計画に支障は出ない。柚葉がハシリヤンとISAの手中に陥ること自体はイレギュラーだったが、彼女の存在が無くなっても計画はそのまま進むだけなのだ。
「…ああ、良いこと思い付いたわ」
スピンドーは柚葉が近付かれたことにすら気付かないうちに首に付けられたナンバープレートもといネックレスを撫でた。ハシリヤンのマーク、目のような部分が一瞬赤く光ると彼女の肩がぴくりと跳ねる。
「あ…………」
「これなら、アタシが直々に管理してやってもいいだろ?」
「…リスクは少なくなったかと、思われます」
「悲鳴を上げなくなるってのはデメリットだが、こっちの方が面白そうだわ」
バッテリーが無くなったロボットのように目から光を失い、後ろに倒れそうになった彼女をスピンドーが支える。すると、虚ろな目をした柚葉が口を開いた。
「スピンドー様……申し訳、ございません…」
「範道大也。あいつからはたっぷりギャーソリンを搾り取ってやらねえとな」
「範道大也……」
「覚えてるか?お前が命を賭けてでも守りたかった相手だ」
「…わかり、ません……」
彼女が自分で起きると、スピンドーは笑った。今の柚葉は、スピンドーにとって都合の良い操り人形と化している。
「私は…誰……?」
「あんたはクイーン。ハシリヤンのレースクイーンさ」
「レースクイーン…」
「そう。で、アタシのかわいいお人形ってワケだ」
「…恐悦至極、です」
「ブンの字殺っちまったから、丁度楽しみが減って困ってたんだわ。こういうの、地球ではマリオネットって言うんだろ?」
「日本では、傀儡とも言いますわね」
常槍と共に入室していた舞美がそう言い、柚葉を一瞥した。平静を装っているが、スパイである彼女だけがこの空間で焦っていた。仮にも今は一般人である柚葉をスピンドーの傀儡にしてしまった。状況は更に悪化したのだ。
「クイーン、戦いはできるか?」
「はい…」
「なら──ブンブンジャーと戦え。世界にとって害でしかないブンブンジャーという存在を排除する正義の味方として、戦いな」
「承知いたしました」
「ただし、戦い方はアタシが決める。お前はそれに従え」
スピンドーは、柚葉を傀儡として使い潰した後に正気を取り戻させるところまでが作戦だった。彼女とブンブンジャーが敵対すればする程、記憶と正気を取り戻した彼女の悲鳴は大きくなるだろう。そしてそれは、スピンドーのエネルギーになる。
「地球人としてのあんたも、好みだったんだけどさ…やっぱり、惚れたものは手元に置いておきたいだろ?」
彼はひどく楽しそうに笑った。常槍は柚葉を哀れみの目で見たが、「流石はミスター・スピンドー」とスピンドーを賞賛した。完全な服従をした訳ではない彼だったが、これは本音の一部だった。柚葉を陥れ、ブンブンジャーに社会的にも精神的にも肉体的にも圧をかける。そして、最後には自分の力へと変える。間違いなく「走大将」の手腕だった。
「…やっぱり、黒だったのね………」
「この世界に完全な黒などいない」
「自分は白だとでも?」
「そうではない。黒からは白しか見えず、白からは黒しか見えないのだ」
常槍はそう言い、ワインで真っ赤に染まった柚葉を見て鼻で笑った。
「ブンブンジャーは白よ。悪なんかじゃない」
「それは君の視点でしかない。我々としては、彼らの存在は看過できない」
「あなた達が公に出来ないようなことをしてるからでしょ。レッサーパンダもビックリの腹黒ね」
「…君は少し、自分の立場を理解した方がいい。君の命に価値など無いのだ。人質がいなくとも、我々はブンブンジャーを御することができる」
人質にすらならないと告げられ、彼女はキッと常槍を睨んだ。事実が故に反論できなかった。生きていれば人質になるが、殺しても計画に支障は出ない。柚葉がハシリヤンとISAの手中に陥ること自体はイレギュラーだったが、彼女の存在が無くなっても計画はそのまま進むだけなのだ。
「…ああ、良いこと思い付いたわ」
スピンドーは柚葉が近付かれたことにすら気付かないうちに首に付けられたナンバープレートもといネックレスを撫でた。ハシリヤンのマーク、目のような部分が一瞬赤く光ると彼女の肩がぴくりと跳ねる。
「あ…………」
「これなら、アタシが直々に管理してやってもいいだろ?」
「…リスクは少なくなったかと、思われます」
「悲鳴を上げなくなるってのはデメリットだが、こっちの方が面白そうだわ」
バッテリーが無くなったロボットのように目から光を失い、後ろに倒れそうになった彼女をスピンドーが支える。すると、虚ろな目をした柚葉が口を開いた。
「スピンドー様……申し訳、ございません…」
「範道大也。あいつからはたっぷりギャーソリンを搾り取ってやらねえとな」
「範道大也……」
「覚えてるか?お前が命を賭けてでも守りたかった相手だ」
「…わかり、ません……」
彼女が自分で起きると、スピンドーは笑った。今の柚葉は、スピンドーにとって都合の良い操り人形と化している。
「私は…誰……?」
「あんたはクイーン。ハシリヤンのレースクイーンさ」
「レースクイーン…」
「そう。で、アタシのかわいいお人形ってワケだ」
「…恐悦至極、です」
「ブンの字殺っちまったから、丁度楽しみが減って困ってたんだわ。こういうの、地球ではマリオネットって言うんだろ?」
「日本では、傀儡とも言いますわね」
常槍と共に入室していた舞美がそう言い、柚葉を一瞥した。平静を装っているが、スパイである彼女だけがこの空間で焦っていた。仮にも今は一般人である柚葉をスピンドーの傀儡にしてしまった。状況は更に悪化したのだ。
「クイーン、戦いはできるか?」
「はい…」
「なら──ブンブンジャーと戦え。世界にとって害でしかないブンブンジャーという存在を排除する正義の味方として、戦いな」
「承知いたしました」
「ただし、戦い方はアタシが決める。お前はそれに従え」
スピンドーは、柚葉を傀儡として使い潰した後に正気を取り戻させるところまでが作戦だった。彼女とブンブンジャーが敵対すればする程、記憶と正気を取り戻した彼女の悲鳴は大きくなるだろう。そしてそれは、スピンドーのエネルギーになる。
「地球人としてのあんたも、好みだったんだけどさ…やっぱり、惚れたものは手元に置いておきたいだろ?」
彼はひどく楽しそうに笑った。常槍は柚葉を哀れみの目で見たが、「流石はミスター・スピンドー」とスピンドーを賞賛した。完全な服従をした訳ではない彼だったが、これは本音の一部だった。柚葉を陥れ、ブンブンジャーに社会的にも精神的にも肉体的にも圧をかける。そして、最後には自分の力へと変える。間違いなく「走大将」の手腕だった。