イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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大也が浴室から出たのを確認し、柚葉は彼の部屋を訪ねた。部屋に置いてあるドライヤーで丁度髪を乾かし終えた大也が彼女を迎え入れ、ソファに座るよう促す。しかしそれをやんわりと断り、柚葉は彼の胸に封筒を押し付けた。
「め、メリークリスマス…大也」
「!」
ブンドリオに渡したものとは違い、赤いリボンが巻かれていた。ここで読むのは野暮だろうと判断した彼は「ありがとう」と言ってそれを受け取り、机の上に置きに行く。
「も、もう一つ、あるの」
「もう一つ?」
「…こっちは、その。本当に……どうしようもない程、困った時にだけ読んで」
ミントグリーンのリボンが施された小さな封筒だった。大也から目を逸らし、叱られるのを恐れている子供のように表情を曇らせている。
しかし、大也は敢えて何も指摘しなかった。ただ頷いてそれを受け取り、こちらは引き出しの奥へ入れる。
「ありがとう、柚葉」
「……い、いっぱい書いたから…長かったら、ごめん…」
「長くても短くても、柚葉が書いたものなら何でも良いさ」
「……プレゼントは私、の方が良かった?」
「は」
耳まで赤くしてそっぽを向く柚葉。大也は暫しの間フリーズしていたが、彼女なりの勇気に気付いて「ええっと」と口を開く。
「俺は…どっちでも嬉しい、かな」
「そ、そう…」
「…柚葉は?」
「え?」
大也は彼女の手を握り、自分の手と擦り合わせた。悪戯っぽく微笑み、にぎにぎと指を絡めにいく。そのまま踊るようにソファまで移動し、二人で腰掛けた。
「俺が用意したクリスマスプレゼントと…俺自身、どっちが欲しい?」
「………答えないと、ダメ?」
「ダメだな」
顔を真っ赤にし、既に逃げ腰の彼女を逃がそうとしない。
「…私、ワガママだから…どっちも欲しい」
「…」
「ダメなら…ダメって言って、いいから……」
「…いいや、ダメじゃないさ。柚葉が握ったハンドルなら、俺は否定しない」
彼は立ち上がると、赤いリボンで包まれた箱を持って来た。メリークリスマス、と言って柚葉に手渡す。
「届け物は、俺からのクリスマスプレゼントだ」
「…開けても、いい?」
「もちろん」
丁寧にリボンを解き箱を開けると、そこには木箱のようなものが入っていた。横には取っ手のようなものが付いてある。
「……オルゴール…?」
「正解」
くるくるとレバーを回していく。限界まで回して手を離すと、優しい音色がゆっくりと響き始めた。彼女が地球で一番よく知っている曲だ。
「にじ……」
「簡単に作れる物だけど、俺が一から作ったんだ」
「…大也って、本当にモノ作りが上手かったものね」
「今も現役さ」
「ふふ、そうだったわね」
ゆっくり、ゆっくりと音を紡いでいく。眠たくなりそうな音色に感化されたのか柚葉は大也に寄りかかった。
「ありがとう、大也。すっごく嬉しい」
「喜んでもらえて良かったよ」
「……それで?大也自身の方は、何が貰えるの?」
顔を上げる柚葉。鼻先がぶつかりそうな距離だった。
無垢だな、と大也は愛おしげな目をして彼女の頬を撫でた。ぴく、と柚葉の体が緊張と羞恥心で強張る。しかし逃げずに向き合った。
「…こういうのはどうだ?」
彼女を横抱きにし、ベッドの方まで移動して放り投げる。ぽふ、とベッドに落とされた柚葉は目を丸くした後また顔を真っ赤にした。
「えっ、それって、その、」
「俺と一緒に寝る権利だ」
「ね、寝る!?寝るってどっちの!?」
あわあわとグルグル目になっていく彼女を横目に、いそいそと大也は布団に入って来た。掛け布団を彼女にも掛け、無理矢理ベッドに身を預けさせる。
「そりゃあ、おやすみなさい、の方だろ」
「……」
「それとも…それ以外があるのか?」
勿論完全に分かっている人間の問いかけである。無知を装い、彼女を罠に嵌めたのだ。
「ッ~……!!た、大也のバカ……」
「それも、そろそろ耳だこだな」
「…エッチ。むっつりスケベ。玄蕃と一緒よ、あなた」
「何があったんだ、玄蕃…」
はあ、と溜め息を吐いて呆れつつも彼女は満足していた。手を伸ばせば、そこに範道大也がいる。それは勿論、大也にとっても同じだ。手の届く場所に、愛しい柚葉がいる。お互いの体温を分かち合うことができる。声が、届く。駆け付けられる。
愛おしいから、何よりも離れがたい。人はこれを共依存と呼ぶのか、それとも愛と呼ぶのか。
その答えは、宇宙すらも知らない。
「め、メリークリスマス…大也」
「!」
ブンドリオに渡したものとは違い、赤いリボンが巻かれていた。ここで読むのは野暮だろうと判断した彼は「ありがとう」と言ってそれを受け取り、机の上に置きに行く。
「も、もう一つ、あるの」
「もう一つ?」
「…こっちは、その。本当に……どうしようもない程、困った時にだけ読んで」
ミントグリーンのリボンが施された小さな封筒だった。大也から目を逸らし、叱られるのを恐れている子供のように表情を曇らせている。
しかし、大也は敢えて何も指摘しなかった。ただ頷いてそれを受け取り、こちらは引き出しの奥へ入れる。
「ありがとう、柚葉」
「……い、いっぱい書いたから…長かったら、ごめん…」
「長くても短くても、柚葉が書いたものなら何でも良いさ」
「……プレゼントは私、の方が良かった?」
「は」
耳まで赤くしてそっぽを向く柚葉。大也は暫しの間フリーズしていたが、彼女なりの勇気に気付いて「ええっと」と口を開く。
「俺は…どっちでも嬉しい、かな」
「そ、そう…」
「…柚葉は?」
「え?」
大也は彼女の手を握り、自分の手と擦り合わせた。悪戯っぽく微笑み、にぎにぎと指を絡めにいく。そのまま踊るようにソファまで移動し、二人で腰掛けた。
「俺が用意したクリスマスプレゼントと…俺自身、どっちが欲しい?」
「………答えないと、ダメ?」
「ダメだな」
顔を真っ赤にし、既に逃げ腰の彼女を逃がそうとしない。
「…私、ワガママだから…どっちも欲しい」
「…」
「ダメなら…ダメって言って、いいから……」
「…いいや、ダメじゃないさ。柚葉が握ったハンドルなら、俺は否定しない」
彼は立ち上がると、赤いリボンで包まれた箱を持って来た。メリークリスマス、と言って柚葉に手渡す。
「届け物は、俺からのクリスマスプレゼントだ」
「…開けても、いい?」
「もちろん」
丁寧にリボンを解き箱を開けると、そこには木箱のようなものが入っていた。横には取っ手のようなものが付いてある。
「……オルゴール…?」
「正解」
くるくるとレバーを回していく。限界まで回して手を離すと、優しい音色がゆっくりと響き始めた。彼女が地球で一番よく知っている曲だ。
「にじ……」
「簡単に作れる物だけど、俺が一から作ったんだ」
「…大也って、本当にモノ作りが上手かったものね」
「今も現役さ」
「ふふ、そうだったわね」
ゆっくり、ゆっくりと音を紡いでいく。眠たくなりそうな音色に感化されたのか柚葉は大也に寄りかかった。
「ありがとう、大也。すっごく嬉しい」
「喜んでもらえて良かったよ」
「……それで?大也自身の方は、何が貰えるの?」
顔を上げる柚葉。鼻先がぶつかりそうな距離だった。
無垢だな、と大也は愛おしげな目をして彼女の頬を撫でた。ぴく、と柚葉の体が緊張と羞恥心で強張る。しかし逃げずに向き合った。
「…こういうのはどうだ?」
彼女を横抱きにし、ベッドの方まで移動して放り投げる。ぽふ、とベッドに落とされた柚葉は目を丸くした後また顔を真っ赤にした。
「えっ、それって、その、」
「俺と一緒に寝る権利だ」
「ね、寝る!?寝るってどっちの!?」
あわあわとグルグル目になっていく彼女を横目に、いそいそと大也は布団に入って来た。掛け布団を彼女にも掛け、無理矢理ベッドに身を預けさせる。
「そりゃあ、おやすみなさい、の方だろ」
「……」
「それとも…それ以外があるのか?」
勿論完全に分かっている人間の問いかけである。無知を装い、彼女を罠に嵌めたのだ。
「ッ~……!!た、大也のバカ……」
「それも、そろそろ耳だこだな」
「…エッチ。むっつりスケベ。玄蕃と一緒よ、あなた」
「何があったんだ、玄蕃…」
はあ、と溜め息を吐いて呆れつつも彼女は満足していた。手を伸ばせば、そこに範道大也がいる。それは勿論、大也にとっても同じだ。手の届く場所に、愛しい柚葉がいる。お互いの体温を分かち合うことができる。声が、届く。駆け付けられる。
愛おしいから、何よりも離れがたい。人はこれを共依存と呼ぶのか、それとも愛と呼ぶのか。
その答えは、宇宙すらも知らない。