イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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「これは?」
「露出が多い」
「これどう?」
「体のラインが出る」
「じゃあこっち」
「可愛すぎるから駄目だ」
「あ~~~もう!何なら良いのよ!?」
高級ドレスショップの試着室は所謂庶民的なアパレルショップとは違い完全な個室だ。カーテンの向こう側に出ては大也から駄目出しを食らい、一向にドレスが決まらない。こんな横暴が許されているのは、大也がそもそも百貨店でも数少ないVIP中のVIPであるからだ。着替えている間に飲む用のお茶まで出されている。
「大也は文句多過ぎよ。似合ってたら何でも良いでしょ?」
「駄目だ。男だって何人も来るんだから、柚葉の可愛い姿は見せたくない」
「じゃあすっぴんノーセット部屋着で行けってワケ?」
「それも可愛すぎるからな…」
「バカップルしてる場合じゃないのよ今は!?私は可愛いドレスが着たいし!大也にそれを見てもらいたいの!」
「柚葉…」
大也にデコピンをし、私はカーテンの奥に入った。「残りの2着見て決めるから」と彼に釘を刺し、試着していたドレスを脱いだ。本来ならスタッフが脱ぐのを手伝うのだが、実験と改造のせいで傷が山ほどある姿は流石に見せられない為「見せたくない傷がある」と伝えて理解を得てもらった。一応大也の方にはスタッフが付き添っている。
ミントグリーンにエンパイアラインが優雅なドレスを纏い、カーテンを開けた。
「どうかしら」
「…綺麗だな」
好感触だ。お世辞だと思うがスタッフも「お似合いですよ」とニコニコ笑っている。
「じゃあ次がラストだから」
再び戻り、今度は赤いAラインのドレスを試着した。こっちは少し幼さがあるが、それでも品があり可愛らしい。
カーテンを開けて出ると、大也の顔付きが明らかに変わった。花火が映ったように目に光が宿り、「可愛い」と呟く。
「俺は…こっちの方が好きだな」
「わかった。じゃあこれでお願いします」
「柚葉はどう思うんだ?」
「私は好きなものばっかり選んで持って来たから良いわよ。後は大也が決めるだけだったから」
カーテンを閉めてもう一度鏡に映った自分を見る。色味は抑えられているが、赤色のドレス。大也──ブンレッドの色だ。
もしかしたら自分の色だから選んでくれたのかも、と思うとちょっとだけ嬉しくなった。それは何だか、大也が私に独占欲を見せてくれたような気がして。
「ふふ」
*
帰り道はキッチンカーでアイスクリームを買い食いした。大也は片手運転なんて勿論しない。彼の分も私が持っており、赤信号になる度差し出している。
「溶けそう」
「全部食べていいぞ」
「太る…」
「それくらいで太らないさ」
「私はイヤなの。頑張って食べきって」
「はいはい」
餌付けをするように差し出す。大也はかぶりつき、口の端についたアイスを舌で舐めた。妙に色っぽいその仕草につい見惚れてしまい、慌てて反対を向く。
「美味いな…あのキッチンカーも買うか…」
「大也って気に入ったもの買わないと気が済まないの…?」
「……自分の手の中にあると、安心するだろ」
少しだけ声のトーンが落ちた。ビックリして振り向くと、前を向いて運転している彼がいる。
「……私は、大也の手の中?」
「…さあ、どうだろうな。柚葉のハンドルを握るつもりはないさ」
「…」
手の中にあると安心すると言うくせに、人のハンドルは決して握ろうとしない。掌握するのは、あくまでも「物」なのか。いや、掌握というのは言葉が悪いが…。
幼い頃の大也ではない、ブンレッドでもない。私の知らない「範道大也」がいた。
「…私、大也の手の中でも良いわよ」
「……柚葉…」
「……でも、大也のポリシーじゃないのよね」
範道大也は他人のハンドルを、少なくとも意識して握ろうということは決してしない。あくまでもその人に委ねており、仲間については信頼という言葉で関係を築いている。だからきっと、私のことも掌握しようとなんてしない。
大也にはきっと、独占欲なんて無いのだろう。ドレスを選んだときは彼の独占欲に期待して浮足立ったが、本当にただの期待で終わってしまった。
「露出が多い」
「これどう?」
「体のラインが出る」
「じゃあこっち」
「可愛すぎるから駄目だ」
「あ~~~もう!何なら良いのよ!?」
高級ドレスショップの試着室は所謂庶民的なアパレルショップとは違い完全な個室だ。カーテンの向こう側に出ては大也から駄目出しを食らい、一向にドレスが決まらない。こんな横暴が許されているのは、大也がそもそも百貨店でも数少ないVIP中のVIPであるからだ。着替えている間に飲む用のお茶まで出されている。
「大也は文句多過ぎよ。似合ってたら何でも良いでしょ?」
「駄目だ。男だって何人も来るんだから、柚葉の可愛い姿は見せたくない」
「じゃあすっぴんノーセット部屋着で行けってワケ?」
「それも可愛すぎるからな…」
「バカップルしてる場合じゃないのよ今は!?私は可愛いドレスが着たいし!大也にそれを見てもらいたいの!」
「柚葉…」
大也にデコピンをし、私はカーテンの奥に入った。「残りの2着見て決めるから」と彼に釘を刺し、試着していたドレスを脱いだ。本来ならスタッフが脱ぐのを手伝うのだが、実験と改造のせいで傷が山ほどある姿は流石に見せられない為「見せたくない傷がある」と伝えて理解を得てもらった。一応大也の方にはスタッフが付き添っている。
ミントグリーンにエンパイアラインが優雅なドレスを纏い、カーテンを開けた。
「どうかしら」
「…綺麗だな」
好感触だ。お世辞だと思うがスタッフも「お似合いですよ」とニコニコ笑っている。
「じゃあ次がラストだから」
再び戻り、今度は赤いAラインのドレスを試着した。こっちは少し幼さがあるが、それでも品があり可愛らしい。
カーテンを開けて出ると、大也の顔付きが明らかに変わった。花火が映ったように目に光が宿り、「可愛い」と呟く。
「俺は…こっちの方が好きだな」
「わかった。じゃあこれでお願いします」
「柚葉はどう思うんだ?」
「私は好きなものばっかり選んで持って来たから良いわよ。後は大也が決めるだけだったから」
カーテンを閉めてもう一度鏡に映った自分を見る。色味は抑えられているが、赤色のドレス。大也──ブンレッドの色だ。
もしかしたら自分の色だから選んでくれたのかも、と思うとちょっとだけ嬉しくなった。それは何だか、大也が私に独占欲を見せてくれたような気がして。
「ふふ」
*
帰り道はキッチンカーでアイスクリームを買い食いした。大也は片手運転なんて勿論しない。彼の分も私が持っており、赤信号になる度差し出している。
「溶けそう」
「全部食べていいぞ」
「太る…」
「それくらいで太らないさ」
「私はイヤなの。頑張って食べきって」
「はいはい」
餌付けをするように差し出す。大也はかぶりつき、口の端についたアイスを舌で舐めた。妙に色っぽいその仕草につい見惚れてしまい、慌てて反対を向く。
「美味いな…あのキッチンカーも買うか…」
「大也って気に入ったもの買わないと気が済まないの…?」
「……自分の手の中にあると、安心するだろ」
少しだけ声のトーンが落ちた。ビックリして振り向くと、前を向いて運転している彼がいる。
「……私は、大也の手の中?」
「…さあ、どうだろうな。柚葉のハンドルを握るつもりはないさ」
「…」
手の中にあると安心すると言うくせに、人のハンドルは決して握ろうとしない。掌握するのは、あくまでも「物」なのか。いや、掌握というのは言葉が悪いが…。
幼い頃の大也ではない、ブンレッドでもない。私の知らない「範道大也」がいた。
「…私、大也の手の中でも良いわよ」
「……柚葉…」
「……でも、大也のポリシーじゃないのよね」
範道大也は他人のハンドルを、少なくとも意識して握ろうということは決してしない。あくまでもその人に委ねており、仲間については信頼という言葉で関係を築いている。だからきっと、私のことも掌握しようとなんてしない。
大也にはきっと、独占欲なんて無いのだろう。ドレスを選んだときは彼の独占欲に期待して浮足立ったが、本当にただの期待で終わってしまった。