イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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「ブンブンジャーを返しなさい!!」
調がブンブンワゴンを操作し、苦魔獣を挟んだ。すると、悲鳴を上げた苦魔獣の体から泡が噴き出て、消えた筈のブンブンジャー達が飛び出してくる。…何故か全員、顔だけ変身した状態で。
何これ~!?と全員が自分の顔をぺたぺた触っている様子を見て安心したのか、大也は少しだけ表情を緩めた。
「大也……」
せめて血だけでも拭ってやろうと駆け寄りハンカチを当てていると、ブンブンワゴンから調が出て来た。フラフラとおぼつかない足取りで、相当体にダメージを負っているのが見ただけでわかった。調さん、と全員が駆け寄り彼女を支える。
「ブンブンスーツも着ないでブンブンカーに乗り込むなんて無謀だ」
「どうしてこんな無茶を…」
満足げな表情をしている彼女は、大也に歩み寄ってブンブンチェンジャーを差し出した。
「お届け…物です」
そのまま大也に凭れ掛かり、彼女を受けとめた大也はボロボロになった体で、それでも笑顔を見せて言った。
「ありがとう、調さん。最高のバクアゲだ!」
しかし、そんな和やかな雰囲気を壊すかのように苦魔獣が復活する。戦意を見せて来る苦魔獣を見た大也は調を先斗に託した。俵担ぎにでもするのかと思いきや意外にも扱いには慣れているようで、横抱きにし「姐さんは俺が引き受ける。暴れて来い!」と大也を激励した。
「柚葉も帰るぞ。流石にこれ以上の戦闘は無理だろ」
「…ええ。大也、無理はしないで」
「…ああ。必ず、勝ってくる」
大也達とすれ違った。ブンブンチェンジをする音が後方から聴こえる。今の彼らなら、きっと負けはしないだろう。
*
戦闘を終えて戻って来たブンブンジャー達に調は告げた。ISA、特に本部長は調べる必要があると。
怯える錠にハシリヤンの恐ろしさを話し、気を引き締めさせる先斗。故郷をそういった手段で奪われたのだろうか、玄蕃は少し暗い顔をしていた。
「油断するなよ、姐さん」
「勿論です。信頼できる同期の調査官の協力を仰ぎます」
彼女は自信ありげにそう言った。しかし、その同期とやらも信頼に値する人物かどうかは分からないあたりが怖い。気が付けば四面楚歌、なんてことは是が非でも避けたい。
「…なあ、柚葉」
「ん?何?」
「…スピンドーに何か言われてただろ?その……」
ブンドリオは歯切れが悪かった。スピンドーの「お気に入り」だったが故に、話を出し辛いのだろう。
「ああ…あれね。大丈夫よ、部下の前でスピンドーの面子ぐちゃぐちゃになるくらい断ってきてあげたから」
「そ、そっか…」
「私は実力もお金もある男が好きなの。でも、あんな外道は論外。あんなのとつるむなんて、死んでも御免よ」
「……柚葉は、強いな…」
「……嘘でも強く振る舞わないと、何も守れないもの」
すると、顔に大きなガーゼを貼り腕を組んで傍観していた大也が「柚葉」と言った。
「?」
「…ちょっと来てくれ」
言われるがままに付いて行く。ガレージを出た少し薄暗い場所。大也がちょいちょいと手招きをするので懐に入りに行くと、まだ体が痛むだろうに私をそっと抱き寄せた。消毒液のにおいが鼻をつく。
「ど…どうしたの…?」
「……大丈夫だからな。スピンドーの言葉なんか気にするなよ、柚葉。今度は絶対に、俺が守るから…」
「え…?」
「……アイツ、お前のことを”走り屋の才能がある”って言っていただろ」
どきりと心臓が跳ねた。
どうやら、彼に隠し事は出来ないらしい。確かに私は、あの時あの場で彼に言われた言葉を正直引き摺っていた。
”走り屋の才能”。”強欲な目”。”影のある奴”。
自分の中にある仄暗い部分を見透かされたようで怖かった。自分は結局ハシリヤンから逃げられないのかと、ショックを受けていた。
気丈に振る舞っていたが、大也には丸分かりだったらしい。
「柚葉は走り屋じゃない。少し寂しがり屋だけど、頑張り屋だ」
「…うん」
「……お願いだから、俺の傍から離れないでくれ…」
縋るような声だった。守る側の人間なのに、置いて行かれるのを恐れる人間のような声だった。
──大也は、何が怖いの?何をそんなに恐れているの?
こんなに強いのに、どうしてこんなにも儚さを携えているのだろう。
こういう時の大也は、ブンブンジャーを離脱し迷走していた玄蕃に似た雰囲気になる。捨てられた子犬のように、潤んだ瞳で見つめてくる。
──私が守らなくちゃ。大也のこと、私が守ってあげないと。
「…大丈夫よ、大也」
「……何もできなくて、ごめん…」
「大丈夫…大丈夫だから。私の方こそ…役に立てなくてごめんなさい。今度はちゃんと…あなたを守るから」
物陰に隠れて強く抱き合った。一瞬だけ大也が顔を近付けてきたが、私達はロマンチックなキスなどしなかった。ただお互いを見つめ合い、目を閉じて体温を分かち合った。
調がブンブンワゴンを操作し、苦魔獣を挟んだ。すると、悲鳴を上げた苦魔獣の体から泡が噴き出て、消えた筈のブンブンジャー達が飛び出してくる。…何故か全員、顔だけ変身した状態で。
何これ~!?と全員が自分の顔をぺたぺた触っている様子を見て安心したのか、大也は少しだけ表情を緩めた。
「大也……」
せめて血だけでも拭ってやろうと駆け寄りハンカチを当てていると、ブンブンワゴンから調が出て来た。フラフラとおぼつかない足取りで、相当体にダメージを負っているのが見ただけでわかった。調さん、と全員が駆け寄り彼女を支える。
「ブンブンスーツも着ないでブンブンカーに乗り込むなんて無謀だ」
「どうしてこんな無茶を…」
満足げな表情をしている彼女は、大也に歩み寄ってブンブンチェンジャーを差し出した。
「お届け…物です」
そのまま大也に凭れ掛かり、彼女を受けとめた大也はボロボロになった体で、それでも笑顔を見せて言った。
「ありがとう、調さん。最高のバクアゲだ!」
しかし、そんな和やかな雰囲気を壊すかのように苦魔獣が復活する。戦意を見せて来る苦魔獣を見た大也は調を先斗に託した。俵担ぎにでもするのかと思いきや意外にも扱いには慣れているようで、横抱きにし「姐さんは俺が引き受ける。暴れて来い!」と大也を激励した。
「柚葉も帰るぞ。流石にこれ以上の戦闘は無理だろ」
「…ええ。大也、無理はしないで」
「…ああ。必ず、勝ってくる」
大也達とすれ違った。ブンブンチェンジをする音が後方から聴こえる。今の彼らなら、きっと負けはしないだろう。
*
戦闘を終えて戻って来たブンブンジャー達に調は告げた。ISA、特に本部長は調べる必要があると。
怯える錠にハシリヤンの恐ろしさを話し、気を引き締めさせる先斗。故郷をそういった手段で奪われたのだろうか、玄蕃は少し暗い顔をしていた。
「油断するなよ、姐さん」
「勿論です。信頼できる同期の調査官の協力を仰ぎます」
彼女は自信ありげにそう言った。しかし、その同期とやらも信頼に値する人物かどうかは分からないあたりが怖い。気が付けば四面楚歌、なんてことは是が非でも避けたい。
「…なあ、柚葉」
「ん?何?」
「…スピンドーに何か言われてただろ?その……」
ブンドリオは歯切れが悪かった。スピンドーの「お気に入り」だったが故に、話を出し辛いのだろう。
「ああ…あれね。大丈夫よ、部下の前でスピンドーの面子ぐちゃぐちゃになるくらい断ってきてあげたから」
「そ、そっか…」
「私は実力もお金もある男が好きなの。でも、あんな外道は論外。あんなのとつるむなんて、死んでも御免よ」
「……柚葉は、強いな…」
「……嘘でも強く振る舞わないと、何も守れないもの」
すると、顔に大きなガーゼを貼り腕を組んで傍観していた大也が「柚葉」と言った。
「?」
「…ちょっと来てくれ」
言われるがままに付いて行く。ガレージを出た少し薄暗い場所。大也がちょいちょいと手招きをするので懐に入りに行くと、まだ体が痛むだろうに私をそっと抱き寄せた。消毒液のにおいが鼻をつく。
「ど…どうしたの…?」
「……大丈夫だからな。スピンドーの言葉なんか気にするなよ、柚葉。今度は絶対に、俺が守るから…」
「え…?」
「……アイツ、お前のことを”走り屋の才能がある”って言っていただろ」
どきりと心臓が跳ねた。
どうやら、彼に隠し事は出来ないらしい。確かに私は、あの時あの場で彼に言われた言葉を正直引き摺っていた。
”走り屋の才能”。”強欲な目”。”影のある奴”。
自分の中にある仄暗い部分を見透かされたようで怖かった。自分は結局ハシリヤンから逃げられないのかと、ショックを受けていた。
気丈に振る舞っていたが、大也には丸分かりだったらしい。
「柚葉は走り屋じゃない。少し寂しがり屋だけど、頑張り屋だ」
「…うん」
「……お願いだから、俺の傍から離れないでくれ…」
縋るような声だった。守る側の人間なのに、置いて行かれるのを恐れる人間のような声だった。
──大也は、何が怖いの?何をそんなに恐れているの?
こんなに強いのに、どうしてこんなにも儚さを携えているのだろう。
こういう時の大也は、ブンブンジャーを離脱し迷走していた玄蕃に似た雰囲気になる。捨てられた子犬のように、潤んだ瞳で見つめてくる。
──私が守らなくちゃ。大也のこと、私が守ってあげないと。
「…大丈夫よ、大也」
「……何もできなくて、ごめん…」
「大丈夫…大丈夫だから。私の方こそ…役に立てなくてごめんなさい。今度はちゃんと…あなたを守るから」
物陰に隠れて強く抱き合った。一瞬だけ大也が顔を近付けてきたが、私達はロマンチックなキスなどしなかった。ただお互いを見つめ合い、目を閉じて体温を分かち合った。