イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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あの後ディスレースを倒し、一先ず当面の問題は少しだけ解決した。玄蕃はブンブンジャーのスポンサーになる夢を語り、ブンドリオとビュンディーは和解し、みんなでブンドリオのカレーをお腹いっぱいになるまで食べた。
そして翌朝。朝食を終えた矢先に大也が私を助手席に誘った。
「少し付き合ってくれないか?」
「…いいけど、どこに行くの?」
「学童」
大也はさらりと言ってのけるが、私は正直「マジか」という思いが強かった。
そう。当面の問題は解決した。つまりそれは、同窓会の時に大暴走した時のツケが返ってくる訳で。しかもそのツケを、学童で返そうとしているのである。とんでもない男だ。
*
「あら、大也君。今日はどうしたの?」
「園長先生。今日は懐かしい友達を連れて来たんです」
気持ちよく大也と私を迎えてくれた園長は、手で示された私の方を見た。勿論私は園長のことを覚えているが、流石にこの歳では──
「…もしかして、柚葉ちゃん?」
「…え」
「本当に…柚葉ちゃんなの?」
「…はい。巴柚葉です」
「あらあら…まあまあ…こんなに大きくなって…!」
私の手を両手で包み込むように握り、今にも泣きそうな顔で園長は出迎えてくれた。少し戸惑っていると、「最近再会したんです」と大也がフォローする。そういえば、私は世間では生死不明で行方不明の扱いだった。
「そう…無事で本当に良かったわ…!私、あなたのことがずっと心残りだったの…!」
「…ごめんなさい。心配をかけてしまって…」
「何言ってるの!あなたが無事ならそれでいいのよ。もうどこにも行かないで頂戴ね、柚葉ちゃん」
「…はい。出来るだけ、努力します」
「もう。ダメよ、約束してくれなくちゃ」
うふふ、と涙を一筋零して彼女は微笑んだ。その笑顔を見ると、地球にはまだ自分のことを想ってくれている人がいたのかと改めて感じさせられ、胸が熱くなった。大也や親以外にも、私を待ってくれている人がいた。
──なんだ。居場所って、案外すぐ近くにあるのね。
「顔だけ見せたかったんです。俺達はあの公園にいるので、何かあったら呼んでください」
「ええ。お邪魔はしないわ、二人でゆっくりお話してらっしゃい」
大也は私の手を掴み、学童を出た。公園の方に連れて行かれながら学童を見るが、やはり昔と同じだ。ここまで来て、何故クイーンの時に記憶が蘇らなかったのか不思議なくらいである。それ程キャノンボーグの洗脳が強かったのだろうか。
公園に着くと、ベンチに腰を下ろした。大也は持参したギターを弾きながら、「にじ」を歌う。それを黙って聴いていると、演奏が終わった大也はふうと息を吐いて「みんなには言ってなかったんだけどな」と話を切り出した。
「まひろ先生…亡くなったんだ」
「……そうだったの」
「…詳しくは言えない。でも、俺と柚葉にとっても大事な先生だから、その事実だけは共有しておきたかったんだ」
「…ありがとう」
小鳥のさえずりがよく聴こえる。気を抜いているとうたた寝でもしてしまいそうな穏やかな空気だ。
「…大也って、まひろ先生のこと好きだったわよね」
「……」
「…図星?」
「…良いだろ、別に。幼い子供が年上の人に憧れるなんてよくある話だ」
「……今も好きなの?」
沈黙。
視線をベンチに落としたまま、彼は口を噤んでいる。
ベンチに置いていたお互いの手が、重なった。大也の手が上から覆い被さるように乗り、やがて指の間に己の指を通してくる。それを許し、受け入れた。
「…大也、ありがとう。小さい時、一人だった私に声を掛けてくれて」
「俺はまひろ先生のアドバイスに従っただけだよ」
「それでもいいの。大也は…一人遊びばかりしてる不愛想な私が、本当は寂しがっているって見抜いてた」
「…」
「…嬉しかった。あの時、声を掛けてくれたから…攫われるまでの間、私はずっと楽しい日々を送ることが出来た。あなたは…昔から、私の恩人」
本当は、まひろ先生にヤキモチを妬いている自分だっている。しかし恋のライバルが故人ではどうしようもない。それなら、自分の道を自分のハンドルで進むしかない。
「……どうしよう。言いたいのに…言葉、出てこない」
「…俺から言った方がいいか?」
「…ううん。私から言わせて。まずはちゃんと言いたいの、自分の言葉で」
大也の目を見つめた。黒曜石のような瞳だ。優しくて、カッコいい。たまに、凄く可愛い。少し天然で、キザで、罪な男。意地悪な時もあるけど、いつだって私の味方。いつだって、私のヒーロー。
「私、大也のことが好き。大好き。どうしようもないくらい、あなたに惚れてる」
そして翌朝。朝食を終えた矢先に大也が私を助手席に誘った。
「少し付き合ってくれないか?」
「…いいけど、どこに行くの?」
「学童」
大也はさらりと言ってのけるが、私は正直「マジか」という思いが強かった。
そう。当面の問題は解決した。つまりそれは、同窓会の時に大暴走した時のツケが返ってくる訳で。しかもそのツケを、学童で返そうとしているのである。とんでもない男だ。
*
「あら、大也君。今日はどうしたの?」
「園長先生。今日は懐かしい友達を連れて来たんです」
気持ちよく大也と私を迎えてくれた園長は、手で示された私の方を見た。勿論私は園長のことを覚えているが、流石にこの歳では──
「…もしかして、柚葉ちゃん?」
「…え」
「本当に…柚葉ちゃんなの?」
「…はい。巴柚葉です」
「あらあら…まあまあ…こんなに大きくなって…!」
私の手を両手で包み込むように握り、今にも泣きそうな顔で園長は出迎えてくれた。少し戸惑っていると、「最近再会したんです」と大也がフォローする。そういえば、私は世間では生死不明で行方不明の扱いだった。
「そう…無事で本当に良かったわ…!私、あなたのことがずっと心残りだったの…!」
「…ごめんなさい。心配をかけてしまって…」
「何言ってるの!あなたが無事ならそれでいいのよ。もうどこにも行かないで頂戴ね、柚葉ちゃん」
「…はい。出来るだけ、努力します」
「もう。ダメよ、約束してくれなくちゃ」
うふふ、と涙を一筋零して彼女は微笑んだ。その笑顔を見ると、地球にはまだ自分のことを想ってくれている人がいたのかと改めて感じさせられ、胸が熱くなった。大也や親以外にも、私を待ってくれている人がいた。
──なんだ。居場所って、案外すぐ近くにあるのね。
「顔だけ見せたかったんです。俺達はあの公園にいるので、何かあったら呼んでください」
「ええ。お邪魔はしないわ、二人でゆっくりお話してらっしゃい」
大也は私の手を掴み、学童を出た。公園の方に連れて行かれながら学童を見るが、やはり昔と同じだ。ここまで来て、何故クイーンの時に記憶が蘇らなかったのか不思議なくらいである。それ程キャノンボーグの洗脳が強かったのだろうか。
公園に着くと、ベンチに腰を下ろした。大也は持参したギターを弾きながら、「にじ」を歌う。それを黙って聴いていると、演奏が終わった大也はふうと息を吐いて「みんなには言ってなかったんだけどな」と話を切り出した。
「まひろ先生…亡くなったんだ」
「……そうだったの」
「…詳しくは言えない。でも、俺と柚葉にとっても大事な先生だから、その事実だけは共有しておきたかったんだ」
「…ありがとう」
小鳥のさえずりがよく聴こえる。気を抜いているとうたた寝でもしてしまいそうな穏やかな空気だ。
「…大也って、まひろ先生のこと好きだったわよね」
「……」
「…図星?」
「…良いだろ、別に。幼い子供が年上の人に憧れるなんてよくある話だ」
「……今も好きなの?」
沈黙。
視線をベンチに落としたまま、彼は口を噤んでいる。
ベンチに置いていたお互いの手が、重なった。大也の手が上から覆い被さるように乗り、やがて指の間に己の指を通してくる。それを許し、受け入れた。
「…大也、ありがとう。小さい時、一人だった私に声を掛けてくれて」
「俺はまひろ先生のアドバイスに従っただけだよ」
「それでもいいの。大也は…一人遊びばかりしてる不愛想な私が、本当は寂しがっているって見抜いてた」
「…」
「…嬉しかった。あの時、声を掛けてくれたから…攫われるまでの間、私はずっと楽しい日々を送ることが出来た。あなたは…昔から、私の恩人」
本当は、まひろ先生にヤキモチを妬いている自分だっている。しかし恋のライバルが故人ではどうしようもない。それなら、自分の道を自分のハンドルで進むしかない。
「……どうしよう。言いたいのに…言葉、出てこない」
「…俺から言った方がいいか?」
「…ううん。私から言わせて。まずはちゃんと言いたいの、自分の言葉で」
大也の目を見つめた。黒曜石のような瞳だ。優しくて、カッコいい。たまに、凄く可愛い。少し天然で、キザで、罪な男。意地悪な時もあるけど、いつだって私の味方。いつだって、私のヒーロー。
「私、大也のことが好き。大好き。どうしようもないくらい、あなたに惚れてる」