イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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朝を通り越して昼過ぎ。シャワーを済ませて一通り支度の整った柚葉がガレージにやって来ると、ブンブンジャーの面子と調がカレーを食べていた。
「あ…柚葉、おはよう!カレー食べる?」
「おはよ……。ううん、何か気持ち悪くて…遠慮しとくわ…」
二日酔いなのは明らかだった。しかし誰もそこには突っ込まない。それもその筈である。先程まで、ハシリヤンと彼らは戦っていたのだから。大也も昨日の彼女の言動に気を取られている程冷静ではないのか、彼女が出て来ても動揺の色一つ見せなかった。
「ISAの報告によると、昼間の戦闘時振騎玄蕃が現場に来ていたそうです」
「アイツ、なんだかんだ言って本当は戻りたいんじゃねえか」
「そうかもな…」
「……彼は、帰って来るのでしょうか?」
大也は黙ってパソコンの画面を見ていた。今は、色恋に現を抜かしている暇はない。二つの複雑なことを同時にこなせる程、まだ彼は完全な大人でもなかった。
「…来るさ。玄蕃は、自分のハンドルを見失ってるだけだからな」
「…見失ったのなら、また見つければいい。あいつならできる」
「だから、いつ玄蕃さんが戻ってきてもいいように自分達は頑張るだけです!」
「うん。あっでも、ちょっとは文句言っちゃうかもね」
仕方ないなあといった感じで笑い合うブンブンジャー。玄蕃が彼らから信頼され、愛されている何よりの証拠だった。
*
次の日、マッドレックスからの伝言を伝える為にブンブンジャーが出動し誰もいないガレージに音も立てず玄蕃がやって来た。
「いないのか、誰も……」
そこへ、調と柚葉が入って来る。二人は久々に見る玄蕃の姿に驚き、調は「振騎玄蕃!」と目を丸くした。
「…やあ」
「なっ…”やあ”じゃないでしょ!?」
「…マッドレックスからの伝言を届けに来た。大也は?」
「そのマッドレックスと戦っています」
「えっ…?」
調がモニターを操作すると、苦境に立たされているブンブンジャーが映し出された。同時に、意思を奪われ操られるがままのマッドレックスも映る。
「彼はディスレースに全て奪われたんだ。誇りも、夢も、自分のハンドルも…。…私と同じだ」
「…本当にそうでしょうか?」
え、と顔を上げる玄蕃に調は語りかけた。夢や希望は誰にも奪えない。消し去ったりできない。範道大也はそう信じている、と。
「しかし、私は復讐のために…」
「みんなわかっています」
先日の会話が脳裏を過る。言わずとも玄蕃には伝わったのか、「みんな…」と彼は呟いた。そこへ、ブンドリオが遠慮がちにやって来る。
「玄蕃が出て行ったあの時さ…俺のこと、良い奴だよって言ってくれたけど俺別に良い奴じゃないんだ。俺だって…」
「ブンドリオ…」
「だけど…だけどさ、そんな俺を全部ひっくるめてアイツは受け入れてくれた。俺は一人じゃないって…ここで生きていっていいんだって、信じさせてくれたんだ。だから俺は、大也と一緒の夢を持てたんだ。BBGで優勝するってね」
「…そうね。私も、洗脳されていたとはいえ元々はあなた達の敵だった。それでも大也は、全部受け止めてくれた。私にも、こんなに良い居場所を与えてくれた」
「柚葉…」
玄蕃の脳裏を、ブンブンジャー達との思い出が駆けて行く。故郷を追われ、絶望していた自分を助けてくれた大也。未来や錠と協力したこと。先斗と夏祭りを楽しみ、射士郎とくだらないことで戯れたこと。
かけがえのない思い出だった。いや、今もそうだ。
立ち尽くす玄蕃に、チャンピオンジャケットのオレンジを調が持って来た。
「これは…?」
「あなたの分の新しいチームジャケットだそうです」
「私の?」
「どうします?あなたがいらないなら、私が着ますが」
「あら、私が着たっていいのよ」
返事は分かりきっている。だからこそ、あえて少しからかう調と柚葉。調からチャンピオンジャケットを受け取り、玄蕃はその場に膝から崩れ落ちた。
「こんな…こんな私を……!」
涙を流し、嗚咽を漏らす。ブンブンジャーは勿論、それを支える者達も含めた、人々への愛おしさで胸がいっぱいだった。この感情を愛と言わずして、何と言うか。
範道大也はリーダーだが、キッカケに過ぎない。ブンブンジャーやその協力者達は皆、自分のハンドルをきっちりと握っている。握った上で、玄蕃を信じ、愛している。
その信頼と愛に応えなければならない、と玄蕃は強く思った。
「あ…柚葉、おはよう!カレー食べる?」
「おはよ……。ううん、何か気持ち悪くて…遠慮しとくわ…」
二日酔いなのは明らかだった。しかし誰もそこには突っ込まない。それもその筈である。先程まで、ハシリヤンと彼らは戦っていたのだから。大也も昨日の彼女の言動に気を取られている程冷静ではないのか、彼女が出て来ても動揺の色一つ見せなかった。
「ISAの報告によると、昼間の戦闘時振騎玄蕃が現場に来ていたそうです」
「アイツ、なんだかんだ言って本当は戻りたいんじゃねえか」
「そうかもな…」
「……彼は、帰って来るのでしょうか?」
大也は黙ってパソコンの画面を見ていた。今は、色恋に現を抜かしている暇はない。二つの複雑なことを同時にこなせる程、まだ彼は完全な大人でもなかった。
「…来るさ。玄蕃は、自分のハンドルを見失ってるだけだからな」
「…見失ったのなら、また見つければいい。あいつならできる」
「だから、いつ玄蕃さんが戻ってきてもいいように自分達は頑張るだけです!」
「うん。あっでも、ちょっとは文句言っちゃうかもね」
仕方ないなあといった感じで笑い合うブンブンジャー。玄蕃が彼らから信頼され、愛されている何よりの証拠だった。
*
次の日、マッドレックスからの伝言を伝える為にブンブンジャーが出動し誰もいないガレージに音も立てず玄蕃がやって来た。
「いないのか、誰も……」
そこへ、調と柚葉が入って来る。二人は久々に見る玄蕃の姿に驚き、調は「振騎玄蕃!」と目を丸くした。
「…やあ」
「なっ…”やあ”じゃないでしょ!?」
「…マッドレックスからの伝言を届けに来た。大也は?」
「そのマッドレックスと戦っています」
「えっ…?」
調がモニターを操作すると、苦境に立たされているブンブンジャーが映し出された。同時に、意思を奪われ操られるがままのマッドレックスも映る。
「彼はディスレースに全て奪われたんだ。誇りも、夢も、自分のハンドルも…。…私と同じだ」
「…本当にそうでしょうか?」
え、と顔を上げる玄蕃に調は語りかけた。夢や希望は誰にも奪えない。消し去ったりできない。範道大也はそう信じている、と。
「しかし、私は復讐のために…」
「みんなわかっています」
先日の会話が脳裏を過る。言わずとも玄蕃には伝わったのか、「みんな…」と彼は呟いた。そこへ、ブンドリオが遠慮がちにやって来る。
「玄蕃が出て行ったあの時さ…俺のこと、良い奴だよって言ってくれたけど俺別に良い奴じゃないんだ。俺だって…」
「ブンドリオ…」
「だけど…だけどさ、そんな俺を全部ひっくるめてアイツは受け入れてくれた。俺は一人じゃないって…ここで生きていっていいんだって、信じさせてくれたんだ。だから俺は、大也と一緒の夢を持てたんだ。BBGで優勝するってね」
「…そうね。私も、洗脳されていたとはいえ元々はあなた達の敵だった。それでも大也は、全部受け止めてくれた。私にも、こんなに良い居場所を与えてくれた」
「柚葉…」
玄蕃の脳裏を、ブンブンジャー達との思い出が駆けて行く。故郷を追われ、絶望していた自分を助けてくれた大也。未来や錠と協力したこと。先斗と夏祭りを楽しみ、射士郎とくだらないことで戯れたこと。
かけがえのない思い出だった。いや、今もそうだ。
立ち尽くす玄蕃に、チャンピオンジャケットのオレンジを調が持って来た。
「これは…?」
「あなたの分の新しいチームジャケットだそうです」
「私の?」
「どうします?あなたがいらないなら、私が着ますが」
「あら、私が着たっていいのよ」
返事は分かりきっている。だからこそ、あえて少しからかう調と柚葉。調からチャンピオンジャケットを受け取り、玄蕃はその場に膝から崩れ落ちた。
「こんな…こんな私を……!」
涙を流し、嗚咽を漏らす。ブンブンジャーは勿論、それを支える者達も含めた、人々への愛おしさで胸がいっぱいだった。この感情を愛と言わずして、何と言うか。
範道大也はリーダーだが、キッカケに過ぎない。ブンブンジャーやその協力者達は皆、自分のハンドルをきっちりと握っている。握った上で、玄蕃を信じ、愛している。
その信頼と愛に応えなければならない、と玄蕃は強く思った。