イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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大也が仕事から戻って来ると、ガレージで未来と柚葉が顔を突き合わせていた。机に置いた何かを見つめ、未来が時折赤鉛筆を滑らせている。
「うん、大丈夫!満点だよー!」
「!良かった…ありがとう、未来」
「柚葉って頭すっごく良いんだね、教えたら何でも吸収してるのが凄く伝わってくるよ!」
「べ、別に…。算数は苦手じゃなかったし…」
「楽しそうだな、二人とも」
机の上を見ると、そこには「数学ドリル」と書かれたものが置かれていた。ルーズリーフには沢山の数式が書かれており、至るところに消した跡や消すのを面倒くさがって二重線を引いているのが見られる。どうやら、未来が柚葉に中学生レベルの数学を教えていたようだ。
「あ、大也!おかえり~」
「お帰り、大也」
「勉強してたのか?」
「うん!柚葉の勉強を教えていたの。で、今日はあたし!」
「へえ」
大也は含みのある目線を柚葉に向けた。彼女はその視線に気付くとぷいとそっぽを向き、シャープペンシルを置いた。
「…仲間外れにしてた訳じゃないから」
「え、大也聞いてなかったの?」
「ああ、初耳だ」
「……未来だけじゃなくて、錠や玄蕃…射士郎もたまに教えてくれるわ。手分けして勉強を教えてもらっていたの。私、攫われた時点で勉強止まってるから」
彼女が攫われたのは小学生の時だ。つまり、今中学の問題を解いているということはこの短期間で相当な量を学んだ証拠である。歳を重ねるにつれ自然と理解できるようになった部分もあったかもしれないが、それでも彼女の理解力は大したものだった。
「それに私…走り屋だから。少しでも…追い付きたくて」
「……柚葉は走り屋じゃない。頑張り屋だ」
「………ありがと…」
「それに、とびっきりの寂しがり屋だ」
「っ、う、うるさい…!」
顔を真っ赤にして大也にクッションを投げつける柚葉。それを楽々とキャッチして楽しそうに笑う大也を見て、未来が「本当に仲良いんだね二人とも」と微笑ましそうに目を細めた。
「幼馴染だからな。考えていることは何となくわかるさ」
「私は大也のことよくわかんないけど…」
「大也って自分のことはあんまり話さないもんね~。シャーシロとか玄蕃、も……」
玄蕃、と名前を改めて言葉にした瞬間未来の顔が曇った。ブンブンジャーから彼が脱退したことに誰よりも傷付いているのは未来だ。錠も心配はしていたが、彼は「玄蕃の分まで戦う」と決めて自分のハンドルを握った。反対に未来は、まだ些か気持ちの整理がついていない。
明らかにしょげる未来を見て柚葉は焦った。元々交友関係が狭かったことや、同年代と交流する機会を奪われた彼女からすればどう声を掛ければいいのか分からないのである。慰めるべきか、叱咤するべきか。おろおろしている彼女を、大也は敢えて助け舟を出さずに見ていた。
「み、未来……お、落ち込まないで」
「うん…」
「…大丈夫よ。だって、彼強いもの。早々負けることはないわ」
「…」
「…生きてさえいれば、また会えるから」
「……そうだよね、絶対、また…」
鼻をすする未来の手を握り、柚葉は慰めるようにふっと微笑んだ。彼女自身もまた、生き延びたからこそ大也と再会できた。流石に言葉の重みが違う。
未来は涙を流しそうになるのを堪え、ぎゅっと柚葉の手を握り返した。
「ありがとう、柚葉」
「…私、人を慰めるのは得意じゃないのだけれど」
「そんなことないよ。柚葉の言葉、ちゃんとあたしに届いたよ」
へへ、と笑って彼女はグッと親指を立てる。元気を出したことを確認し安堵した柚葉はほっと胸を撫で下ろした。
「柚葉も向いてるんじゃない?届け屋」
「そういうのは専門外よ。免許ないし…」
「あたし自転車で届けたことあるよ!大也が車使うのダメって言ったから」
「自転車?近所に配達でも行ったの?」
「ううん、すっごく遠いおばあちゃんの家」
「……ポテンシャル高いわね…流石運転屋……」
流石に恥ずかしいのか、運転免許試験に6回落ちていることは未来も言わなかった。素直に感心する柚葉にふふんと胸を張る。
「柚葉もいつか免許とるの?」
「…まあ、あった方が便利よね」
「じゃあその時は車買うのかな?車って色々あるから面白いよ~」
「柚葉が自分の車を持つようになると、寂しくなるな」
「え?何で?」
ようやく大也が口を開いた。柚葉の隣に腰掛け、彼女の顔を見つめる。いきなり視線を合わされた柚葉は首を傾げた。
「俺の助手席に座る人がいなくなる」
「……大也、それ惚気?」
未来の呆れ気味な言葉に大也は肩をすくめる。
「いや?事実を言っただけだよ」
「……じゃあ、何。あなたは、私がずっとあなたの助手席に座ると思っているの?」
「……そうだったら良いなって思ってる、って言ったら?」
意地悪な問いかけに彼女はまた頬を染めた。少し蚊帳の外の未来は不服そうだが、同時に「どうなっちゃうの!?」という好奇心が抑えきれていない。固唾をのんで見守っている。
「…随分と自惚れた発言ね」
「少し意地悪だったか?」
「いいえ。言っておくけど、私はあなたが耄碌したら即刻免許を返納させるわよ」
「…耄碌するまで付き合ってくれるのか」
「………幼馴染だし、腐れ縁でしょ」
大也のやや踏み込んだ発言には言葉を濁して返した。意気地なしだなと柚葉は自分で自分を責めたが、今の自分には彼と人生のコースを走り切ると言い切る自信がなかった。
何となく交差しているような、すれ違っているような。もどかしい二人を前に、未来は「二人とも素直じゃないなあ」と呟いた。
「うん、大丈夫!満点だよー!」
「!良かった…ありがとう、未来」
「柚葉って頭すっごく良いんだね、教えたら何でも吸収してるのが凄く伝わってくるよ!」
「べ、別に…。算数は苦手じゃなかったし…」
「楽しそうだな、二人とも」
机の上を見ると、そこには「数学ドリル」と書かれたものが置かれていた。ルーズリーフには沢山の数式が書かれており、至るところに消した跡や消すのを面倒くさがって二重線を引いているのが見られる。どうやら、未来が柚葉に中学生レベルの数学を教えていたようだ。
「あ、大也!おかえり~」
「お帰り、大也」
「勉強してたのか?」
「うん!柚葉の勉強を教えていたの。で、今日はあたし!」
「へえ」
大也は含みのある目線を柚葉に向けた。彼女はその視線に気付くとぷいとそっぽを向き、シャープペンシルを置いた。
「…仲間外れにしてた訳じゃないから」
「え、大也聞いてなかったの?」
「ああ、初耳だ」
「……未来だけじゃなくて、錠や玄蕃…射士郎もたまに教えてくれるわ。手分けして勉強を教えてもらっていたの。私、攫われた時点で勉強止まってるから」
彼女が攫われたのは小学生の時だ。つまり、今中学の問題を解いているということはこの短期間で相当な量を学んだ証拠である。歳を重ねるにつれ自然と理解できるようになった部分もあったかもしれないが、それでも彼女の理解力は大したものだった。
「それに私…走り屋だから。少しでも…追い付きたくて」
「……柚葉は走り屋じゃない。頑張り屋だ」
「………ありがと…」
「それに、とびっきりの寂しがり屋だ」
「っ、う、うるさい…!」
顔を真っ赤にして大也にクッションを投げつける柚葉。それを楽々とキャッチして楽しそうに笑う大也を見て、未来が「本当に仲良いんだね二人とも」と微笑ましそうに目を細めた。
「幼馴染だからな。考えていることは何となくわかるさ」
「私は大也のことよくわかんないけど…」
「大也って自分のことはあんまり話さないもんね~。シャーシロとか玄蕃、も……」
玄蕃、と名前を改めて言葉にした瞬間未来の顔が曇った。ブンブンジャーから彼が脱退したことに誰よりも傷付いているのは未来だ。錠も心配はしていたが、彼は「玄蕃の分まで戦う」と決めて自分のハンドルを握った。反対に未来は、まだ些か気持ちの整理がついていない。
明らかにしょげる未来を見て柚葉は焦った。元々交友関係が狭かったことや、同年代と交流する機会を奪われた彼女からすればどう声を掛ければいいのか分からないのである。慰めるべきか、叱咤するべきか。おろおろしている彼女を、大也は敢えて助け舟を出さずに見ていた。
「み、未来……お、落ち込まないで」
「うん…」
「…大丈夫よ。だって、彼強いもの。早々負けることはないわ」
「…」
「…生きてさえいれば、また会えるから」
「……そうだよね、絶対、また…」
鼻をすする未来の手を握り、柚葉は慰めるようにふっと微笑んだ。彼女自身もまた、生き延びたからこそ大也と再会できた。流石に言葉の重みが違う。
未来は涙を流しそうになるのを堪え、ぎゅっと柚葉の手を握り返した。
「ありがとう、柚葉」
「…私、人を慰めるのは得意じゃないのだけれど」
「そんなことないよ。柚葉の言葉、ちゃんとあたしに届いたよ」
へへ、と笑って彼女はグッと親指を立てる。元気を出したことを確認し安堵した柚葉はほっと胸を撫で下ろした。
「柚葉も向いてるんじゃない?届け屋」
「そういうのは専門外よ。免許ないし…」
「あたし自転車で届けたことあるよ!大也が車使うのダメって言ったから」
「自転車?近所に配達でも行ったの?」
「ううん、すっごく遠いおばあちゃんの家」
「……ポテンシャル高いわね…流石運転屋……」
流石に恥ずかしいのか、運転免許試験に6回落ちていることは未来も言わなかった。素直に感心する柚葉にふふんと胸を張る。
「柚葉もいつか免許とるの?」
「…まあ、あった方が便利よね」
「じゃあその時は車買うのかな?車って色々あるから面白いよ~」
「柚葉が自分の車を持つようになると、寂しくなるな」
「え?何で?」
ようやく大也が口を開いた。柚葉の隣に腰掛け、彼女の顔を見つめる。いきなり視線を合わされた柚葉は首を傾げた。
「俺の助手席に座る人がいなくなる」
「……大也、それ惚気?」
未来の呆れ気味な言葉に大也は肩をすくめる。
「いや?事実を言っただけだよ」
「……じゃあ、何。あなたは、私がずっとあなたの助手席に座ると思っているの?」
「……そうだったら良いなって思ってる、って言ったら?」
意地悪な問いかけに彼女はまた頬を染めた。少し蚊帳の外の未来は不服そうだが、同時に「どうなっちゃうの!?」という好奇心が抑えきれていない。固唾をのんで見守っている。
「…随分と自惚れた発言ね」
「少し意地悪だったか?」
「いいえ。言っておくけど、私はあなたが耄碌したら即刻免許を返納させるわよ」
「…耄碌するまで付き合ってくれるのか」
「………幼馴染だし、腐れ縁でしょ」
大也のやや踏み込んだ発言には言葉を濁して返した。意気地なしだなと柚葉は自分で自分を責めたが、今の自分には彼と人生のコースを走り切ると言い切る自信がなかった。
何となく交差しているような、すれ違っているような。もどかしい二人を前に、未来は「二人とも素直じゃないなあ」と呟いた。