イニシャルはQ【爆上・範道大也】
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範道大也にとって、巴柚葉は間違いなく特別な存在だ。
しかしそれは、「異性として意識しているから」ではない。勿論、彼女のことを「特別な女の子」とは認識しているが、彼にとっての──少なくとも表層真理では、そこに恋情は存在しない。
巴柚葉の存在は、かつて彼だけが気付いていた子供の悲鳴を想起させる。彼女がハシリヤンに攫われ、何も出来なかった事実は彼に虚無感を与えるのだ。勿論、攫われる際の悲鳴を大也が聞いていた訳ではない。しかしそれでも、彼女を見る度に「身近な存在を失った子供の自分」という現実を突き付けられるのだ。
だから、特別だと感じている。一度は失い、しかし戻って来た少女。もう二度と、誰にも奪われたくなかった。範道大也にとってのトラウマを刺激するには、十分過ぎた。
自分にとってのバクアゲは、柚葉の笑顔。それも、手が届く範囲にいる彼女が奪われることを何より恐れたが故の言葉だった。
「大也、起きて」
ハッとして目が覚める。カーテンの間から朝日が差し込んでいた。ベッドに柚葉が腰掛け、「やっと起きた」と彼の顔を覗き込む。
「おはよ、大也」
「……ああ。おはよう、柚葉」
「あなたって意外と朝寝坊するタイプなのね。もうブンドリオが朝ご飯作っているから、早く支度してきなさいよ」
それだけ告げると、彼女は部屋を出て行った。大也の鼓動は乱れており、寝汗がびっしょりと部屋着のTシャツに張り付いていた。
「……柚葉…」
彼女に惚れていることは彼も昔から自覚している。しかし、あくまでもそれは彼女の人間性についてだ。恋情を含んだ「惚れた」ではないと大也は思っている。
だが、それもあくまで表層真理でのことだった。深層心理──自覚が無いだけで、彼女に間違いなく恋情を抱いている。砂場で彼女に押し倒され、恋人繋ぎをしても不快感を覚えない程、惚れこんでいるのだ。それなのに、自覚がない。柚葉を恋愛的な話や意味でからかうのに、決定的なもの──恋情の自覚だけがない。本当に厄介な男だった。
ベッドから降り、カーテンを開ける。朝日に目が眩んだ。
*
「おはよー大也!」
「おはよう、ブンブン」
「今日はちょっと豪華にフレンチトーストにしてみたよ!」
「凄いな。良い匂いが部屋の外まで漂ってたぞ」
「柚葉のは特別バージョン!」
ホイップクリームや苺、キウイ等のフルーツが大量に乗っていた。朝から胃がもたれそうなメニューだが、柚葉は目を爛々と輝かせていた。
「これ、本当に食べていいの…?」
「もちろん!」
「ハシリヤンにいた時はブロックやゼリー状の食べ物ばかりだったから、本格的な食事をするのは…もう数十年ぶりになるの。いただきます」
切り分けてクリームやフルーツを乗せ、思い切り口に運ぶ。口に入れた瞬間更に目が輝き「んん~…!」と頬に手を当てて目を細めた。
「とにかく甘くて…美味しい…!」
「ホント!?良かったぁ~!」
「ブンブンとは、すっかり打ち解けたようだな」
「大也が起きて来るまでに色々話してたんだ。それから意気投合してさ」
「やっぱり、食事って大事よね…」
「うん、こんな感じで」
「はは、なるほど」
メープルシロップをかけ、大也も「いただきます」とフレンチトーストを食べ始めた。少し彼には甘すぎる味だったが、彼女が嬉しそうならいいかと気にせず黙って食事を進める。
「柚葉、今日会ってもらいたい人がいるんだ」
「?」
「俺の恩師で、Lightning Techの代表を務めている人だ。どうしても柚葉に会いたいらしくてな」
「別にいいけど…」
「良かった」
「大也の恩師って何なの?」
「俺が…中学生の時くらいかな、その時からの付き合いなんだ。俺に色んなことを教えてくれた人だ」
「ふーん…」
柚葉は大也の言葉を聞いていたが、それよりもまずは目の前のフレンチトースト優先といった感じだった。丁寧にクリームを乗せ、口に運ぶ度に幸せそうに口角を緩める。まさに「ほっぺたが落ちる程美味しい」という様子だった。
その様を満足気に大也は見守り、ブンドリオも料理を褒めてもらっているのが相当嬉しいのか終始ニコニコして彼女を見つめていた。
しかしそれは、「異性として意識しているから」ではない。勿論、彼女のことを「特別な女の子」とは認識しているが、彼にとっての──少なくとも表層真理では、そこに恋情は存在しない。
巴柚葉の存在は、かつて彼だけが気付いていた子供の悲鳴を想起させる。彼女がハシリヤンに攫われ、何も出来なかった事実は彼に虚無感を与えるのだ。勿論、攫われる際の悲鳴を大也が聞いていた訳ではない。しかしそれでも、彼女を見る度に「身近な存在を失った子供の自分」という現実を突き付けられるのだ。
だから、特別だと感じている。一度は失い、しかし戻って来た少女。もう二度と、誰にも奪われたくなかった。範道大也にとってのトラウマを刺激するには、十分過ぎた。
自分にとってのバクアゲは、柚葉の笑顔。それも、手が届く範囲にいる彼女が奪われることを何より恐れたが故の言葉だった。
「大也、起きて」
ハッとして目が覚める。カーテンの間から朝日が差し込んでいた。ベッドに柚葉が腰掛け、「やっと起きた」と彼の顔を覗き込む。
「おはよ、大也」
「……ああ。おはよう、柚葉」
「あなたって意外と朝寝坊するタイプなのね。もうブンドリオが朝ご飯作っているから、早く支度してきなさいよ」
それだけ告げると、彼女は部屋を出て行った。大也の鼓動は乱れており、寝汗がびっしょりと部屋着のTシャツに張り付いていた。
「……柚葉…」
彼女に惚れていることは彼も昔から自覚している。しかし、あくまでもそれは彼女の人間性についてだ。恋情を含んだ「惚れた」ではないと大也は思っている。
だが、それもあくまで表層真理でのことだった。深層心理──自覚が無いだけで、彼女に間違いなく恋情を抱いている。砂場で彼女に押し倒され、恋人繋ぎをしても不快感を覚えない程、惚れこんでいるのだ。それなのに、自覚がない。柚葉を恋愛的な話や意味でからかうのに、決定的なもの──恋情の自覚だけがない。本当に厄介な男だった。
ベッドから降り、カーテンを開ける。朝日に目が眩んだ。
*
「おはよー大也!」
「おはよう、ブンブン」
「今日はちょっと豪華にフレンチトーストにしてみたよ!」
「凄いな。良い匂いが部屋の外まで漂ってたぞ」
「柚葉のは特別バージョン!」
ホイップクリームや苺、キウイ等のフルーツが大量に乗っていた。朝から胃がもたれそうなメニューだが、柚葉は目を爛々と輝かせていた。
「これ、本当に食べていいの…?」
「もちろん!」
「ハシリヤンにいた時はブロックやゼリー状の食べ物ばかりだったから、本格的な食事をするのは…もう数十年ぶりになるの。いただきます」
切り分けてクリームやフルーツを乗せ、思い切り口に運ぶ。口に入れた瞬間更に目が輝き「んん~…!」と頬に手を当てて目を細めた。
「とにかく甘くて…美味しい…!」
「ホント!?良かったぁ~!」
「ブンブンとは、すっかり打ち解けたようだな」
「大也が起きて来るまでに色々話してたんだ。それから意気投合してさ」
「やっぱり、食事って大事よね…」
「うん、こんな感じで」
「はは、なるほど」
メープルシロップをかけ、大也も「いただきます」とフレンチトーストを食べ始めた。少し彼には甘すぎる味だったが、彼女が嬉しそうならいいかと気にせず黙って食事を進める。
「柚葉、今日会ってもらいたい人がいるんだ」
「?」
「俺の恩師で、Lightning Techの代表を務めている人だ。どうしても柚葉に会いたいらしくてな」
「別にいいけど…」
「良かった」
「大也の恩師って何なの?」
「俺が…中学生の時くらいかな、その時からの付き合いなんだ。俺に色んなことを教えてくれた人だ」
「ふーん…」
柚葉は大也の言葉を聞いていたが、それよりもまずは目の前のフレンチトースト優先といった感じだった。丁寧にクリームを乗せ、口に運ぶ度に幸せそうに口角を緩める。まさに「ほっぺたが落ちる程美味しい」という様子だった。
その様を満足気に大也は見守り、ブンドリオも料理を褒めてもらっているのが相当嬉しいのか終始ニコニコして彼女を見つめていた。