健全な短編【船体】
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大也の基地に入ると、酒臭さが鼻をついた。嗅覚も鋭敏になるよう鍛えられてきた俺にとってはあまりにも辛く、わざとらしく鼻をつまんだ。どうせあの女だ、と呆れながら入ればテーブルの上に缶ビールを置いた女が我が物顔でソファに寝転がっている。
「ん?あ、シロ君じゃ~ん」
女はすぐに気が付き状態を起こした。ソファの背もたれに寄り掛かる彼女の頬は赤く火照っており、吐息は酒気を帯びている。
「シロ君はやめろ」
「え~なんでいいじゃん可愛いしさ~シロ君シロ君」
「大也は」
「ブンちゃんと整備中」
ソファに近付き横に腰掛けると、柚葉は猫のように擦り寄ってくる。かなり酒臭い。
「臭い、離れろ」
「ん~マーキング」
「また飲んでたのか」
「今日は勝ったからさ」
「珍しいこともあるんだな」
「3連単的中。さっすが私。だから今日はぱーっとね!」
それで昼から酒を飲んでいるらしい。流石はギャンブル中毒且つアルコール中毒の人間だ。やることがかなり「最悪」の部類に入っている。
柚葉はスンスンと俺のにおいを嗅ぎ、「シロ君のにおい好き」と舌足らずに喋った。そして両手を広げて思い切り抱き着き、ぎゅう、と俺の体を抱きしめる。
「っ、おい、」
「良いじゃん別に」
「そういう問題じゃない」
「だって私のハンドルを握っているのはシロ君じゃないもん」
「こんなことに大也の言葉を借りるな。自分の言葉で言え」
「ええ~」
じゃあ、と彼女は顔を上げた。そして抱き着いていた手を離し、口に当てる。恐らく、口臭を気にしているのだろう。そんなところに気を回す余裕があるのなら、自分自身にこびりついた酒の臭いをどうにかしてほしいのだが。
「シロ君は、お馬さんとお酒が好きなお姉さんは嫌い?」
「…」
「あっひどいそんな目で見ないで」
「……酒に飲まれる馬鹿は嫌いだ」
「…シロ君からのツンが強くてお姉さん泣いちゃう」
えーんしくしく、とウソ泣きをする柚葉。一体何歳だと思っているんだ。もういい歳をしている筈だろ。
「大体、大也も大也だ。何でこんな奴に惚れたんだ…」
「あー、あれね。なんか勝負屋って付けられたヤツ。大也君が私の贔屓してる馬の馬主なのウケるよね。そんで3連複当てて大興奮の私見て惚れたとか言ってきて」
「何を考えているんだアイツは…」
「だいじょ~ぶ!いざとなったらお姉さんが何とかするから任せて!勝負事には自信あるから!馬でもボートでもどーんとこい!」
「そんな状況は絶対に来ない」
「…シロ君冷た~い。真冬の北風みたい」
「悪かったな、冷たくて」
「でもあったかいからすき。だいすき」
スーツに頬擦りをされた。臭いがつくと仕事に支障が出る為非常に困るのだが、そんなことを言っても彼女が聞く筈がない。というか、既に何度も言ってきた。
「シロ君優しいから好きだよ」
「……俺は…」
「いい子いい子。いつも頑張ってて偉い偉い」
よしよしと頭を撫で、満足気に微笑んだ彼女はよっこらせと再びソファに寝転んだ。放り出した足は俺の膝に乗せてくる。
「じゃ、おやすみ~」
「おい、足を…」
「すぴー」
「……はあ」
これだから彼女は苦手なんだ、と心の中でひとりごちた。まるで嵐だ。好き勝手にこちらをかき乱して、あっという間に去ってしまう。
スーツからアルコールの臭いがする。レース場で貰って来たであろう煙草の臭いもついてしまった。一度クリーニングに出した方がいいかもしれない。
穏やかな寝顔を確認し、溜め息が出る。どうしていつも彼女に押されてしまうのか。何故こんな人間を好きになってしまったのか。自分でも全く分からない。──ただ、ただ。初めて会ったときの彼女に目を奪われただけなんだ。大也の横に立ってレース結果や配当をぺらぺらと喋る彼女に何故か気を取られてしまった。その後の個人的な飲みで酒に弱いというギャップを知ってしまったことがトリガーだったのだろう。
真面目な顔をしていると思ったら競馬の予想を見ていて、コンビニの安酒を前に何分も悩んでしまうような彼女を愛おしく思って仕方ないのだ。
足を乗せられて身動きがとれなくなった為、ソファに掛けてあったブランケットを彼女の方へ放ってやった。
「シャーシロ。今来たのか?」
「大也」
「柚葉はまたそんなところで寝て…」
「柚葉~、足ちょっと動かすよ~」
大也とブンドリオが入って来た。ブンドリオは彼女に負荷がかからないように足を俺の膝から退かし、「これでよし」とぐっと親指を立てる。早々に立ち上がり、放ったまま乱雑になっているブランケットを綺麗に被せてやった。
「……シャーシロは、柚葉には甘いな」
「…そんなことはない」
「…そうか?はは、そういうことにしておくか」
大也はふっと笑い、テーブルに置いてある柚葉の馬券を手に取った。
「3連単、当てたそうだ」
「流石勝負屋。俺の惚れたものに間違いはないな」
「……大也も相当、コイツを甘やかしていると思うぞ」
「ん?あ、シロ君じゃ~ん」
女はすぐに気が付き状態を起こした。ソファの背もたれに寄り掛かる彼女の頬は赤く火照っており、吐息は酒気を帯びている。
「シロ君はやめろ」
「え~なんでいいじゃん可愛いしさ~シロ君シロ君」
「大也は」
「ブンちゃんと整備中」
ソファに近付き横に腰掛けると、柚葉は猫のように擦り寄ってくる。かなり酒臭い。
「臭い、離れろ」
「ん~マーキング」
「また飲んでたのか」
「今日は勝ったからさ」
「珍しいこともあるんだな」
「3連単的中。さっすが私。だから今日はぱーっとね!」
それで昼から酒を飲んでいるらしい。流石はギャンブル中毒且つアルコール中毒の人間だ。やることがかなり「最悪」の部類に入っている。
柚葉はスンスンと俺のにおいを嗅ぎ、「シロ君のにおい好き」と舌足らずに喋った。そして両手を広げて思い切り抱き着き、ぎゅう、と俺の体を抱きしめる。
「っ、おい、」
「良いじゃん別に」
「そういう問題じゃない」
「だって私のハンドルを握っているのはシロ君じゃないもん」
「こんなことに大也の言葉を借りるな。自分の言葉で言え」
「ええ~」
じゃあ、と彼女は顔を上げた。そして抱き着いていた手を離し、口に当てる。恐らく、口臭を気にしているのだろう。そんなところに気を回す余裕があるのなら、自分自身にこびりついた酒の臭いをどうにかしてほしいのだが。
「シロ君は、お馬さんとお酒が好きなお姉さんは嫌い?」
「…」
「あっひどいそんな目で見ないで」
「……酒に飲まれる馬鹿は嫌いだ」
「…シロ君からのツンが強くてお姉さん泣いちゃう」
えーんしくしく、とウソ泣きをする柚葉。一体何歳だと思っているんだ。もういい歳をしている筈だろ。
「大体、大也も大也だ。何でこんな奴に惚れたんだ…」
「あー、あれね。なんか勝負屋って付けられたヤツ。大也君が私の贔屓してる馬の馬主なのウケるよね。そんで3連複当てて大興奮の私見て惚れたとか言ってきて」
「何を考えているんだアイツは…」
「だいじょ~ぶ!いざとなったらお姉さんが何とかするから任せて!勝負事には自信あるから!馬でもボートでもどーんとこい!」
「そんな状況は絶対に来ない」
「…シロ君冷た~い。真冬の北風みたい」
「悪かったな、冷たくて」
「でもあったかいからすき。だいすき」
スーツに頬擦りをされた。臭いがつくと仕事に支障が出る為非常に困るのだが、そんなことを言っても彼女が聞く筈がない。というか、既に何度も言ってきた。
「シロ君優しいから好きだよ」
「……俺は…」
「いい子いい子。いつも頑張ってて偉い偉い」
よしよしと頭を撫で、満足気に微笑んだ彼女はよっこらせと再びソファに寝転んだ。放り出した足は俺の膝に乗せてくる。
「じゃ、おやすみ~」
「おい、足を…」
「すぴー」
「……はあ」
これだから彼女は苦手なんだ、と心の中でひとりごちた。まるで嵐だ。好き勝手にこちらをかき乱して、あっという間に去ってしまう。
スーツからアルコールの臭いがする。レース場で貰って来たであろう煙草の臭いもついてしまった。一度クリーニングに出した方がいいかもしれない。
穏やかな寝顔を確認し、溜め息が出る。どうしていつも彼女に押されてしまうのか。何故こんな人間を好きになってしまったのか。自分でも全く分からない。──ただ、ただ。初めて会ったときの彼女に目を奪われただけなんだ。大也の横に立ってレース結果や配当をぺらぺらと喋る彼女に何故か気を取られてしまった。その後の個人的な飲みで酒に弱いというギャップを知ってしまったことがトリガーだったのだろう。
真面目な顔をしていると思ったら競馬の予想を見ていて、コンビニの安酒を前に何分も悩んでしまうような彼女を愛おしく思って仕方ないのだ。
足を乗せられて身動きがとれなくなった為、ソファに掛けてあったブランケットを彼女の方へ放ってやった。
「シャーシロ。今来たのか?」
「大也」
「柚葉はまたそんなところで寝て…」
「柚葉~、足ちょっと動かすよ~」
大也とブンドリオが入って来た。ブンドリオは彼女に負荷がかからないように足を俺の膝から退かし、「これでよし」とぐっと親指を立てる。早々に立ち上がり、放ったまま乱雑になっているブランケットを綺麗に被せてやった。
「……シャーシロは、柚葉には甘いな」
「…そんなことはない」
「…そうか?はは、そういうことにしておくか」
大也はふっと笑い、テーブルに置いてある柚葉の馬券を手に取った。
「3連単、当てたそうだ」
「流石勝負屋。俺の惚れたものに間違いはないな」
「……大也も相当、コイツを甘やかしていると思うぞ」