健全な短編【船体】
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「だ、駄目です、熊手さん…」
「貰えるものは全部貰っておけ。俺様からの施しだ」
「か、返せません、こんなに沢山…お金…」
死んだ両親が残していった巨額の借金。それらを全て肩代わりしてニコニコ一括現金払いをした熊手さんは、それだけでは飽き足らず、私に札束を差し出してきた。ここだけ聞けば何だか少女漫画のイケメンお金持ちのようだが、熊手さんは与えた分だけ見返りを請求する人だ。ここで気軽に受け取ってしまっては本当に後がなくなる。
「別に、お前に金で返せとは言わねえよ」
「…じ、じゃあ、体…?」
「ほう、体で返す覚悟はあるのか」
「な、ないです!ごめんなさい!」
「冗談だ。お前が健康で元気に暮らしていればそれが見返りになるさ」
「え、ええ~…」
そんなこと言われても…と思い目を逸らすと、ペシペシと札束で軽く額を叩かれた。札束ビンタとはまさにこのことである。実際受けると、尊厳破壊という言葉の意味がよく分かる。財布も口座も空っぽの為、大金が欲しくないと言えば嘘になるのだが。
「…満更でもなさそうな顔はしてるな」
「……お金無いですもん…」
「なら素直に受け取れ。それとも、こういうプレイが良いのか?」
……正直嫌いでは、ない。むしろ安心するし、心地が良い。お金という絶対的な物と、それを差し出す熊手さんという男前。両方を見せられて悪い気になる人はいないだろう。
「……見返りナシでお金を頂くくらいなら、犬として飼ってもらった方が安心はします」
「……相当アレだな、お前…」
「…風俗行きをちらつかせる借金取りと会話してたら、そりゃこうもなりますよ」
「お前が風俗嬢になる前に拾えて心から安心したぜ」
「じゃあ、拾った犬の面倒見てください…わん」
冗談で言ったつもりだったのだが、私を二度見する熊手さんの目が「本気」だった。ふむと少し考え、懐からひょいと首輪を取り出す。何でそんな物を持ち歩いているんだ。
「よし。じゃあ俺様がお前を飼ってやる。ペットなんだから何でも主人に強請れ、食べ物でも金でも何でもいい」
「じゃ、じゃあ…今月の家賃欲しいです、わん」
「家賃?俺様の犬ならそんなものを払う必要はねえ。犬になった瞬間から、お前が帰る家は俺様のところだからな」
「わん!?」
衝撃の事実に驚いているうちに首輪を付けられた。わ、私が借りてるアパートの部屋もう家じゃない…ってコト!?
「大体あんなオンボロアパート…防犯は出来てねえ、日差しは入らねえ、家鳴りはするわで住めたところじゃねえ。神の犬なら上等な所に住む権利がある」
「熊手さんの家…行ったことないですけど、凄そうですね」
「まあ、玄関だけでお前の部屋の倍はあるな」
「えっ…私の部屋、玄関以下…?」
「庭もプールもある。欲しいならドッグランも作ってやる」
「ど、ドッグランはいいです…私室内犬なので…」
「室内犬でもドッグランには行くだろ。それに、室内犬でも散歩は必要だからな」
「さ、散歩!?」
この首輪にリードを付けてご近所を散歩!?というやけに生々しい絵面が想像出来てしまった。喜んで四つん這いになっている私と、やけに楽しそうな熊手さんと、その周りをふよふよ漂っているベアックマ。駄目だ。いくら本人が楽しかろうと、熊手さんが神だろうと、事案であることに変わりはない。
「安心しろ、家の敷地内だ」
「り、りり、リードを付けて!?四つん這いになるんですか私!?」
「流石に四つん這いはやらなくていい。俺様が変態だと思われる」
「十分アウトですよこの会話!」
「何だ、飼い主に逆らうのか?」
「……わん…」
「よし、言うことが聞けたら褒美をくれてやる」
札束を目の前でゆらゆらと振られた。無意識のうちに動きに合わせて視線を動かすと、服の隙間にお札を入れられた。いや、絵面的には夜のお店のおひねりのような感じではなく、差し込まれた札束の重みで服がたるむのだが。
「……神様がこんな下品なことしていいんですか…?」
「札束で殴るのは実際にやったからな。何なら、現金白刃どりは俺様の十八番だ」
「熊手さんにとってのお金って、無償で与えるものじゃないんでしょう…?矛盾してません?」
「ペットを飼うには定期的な出金が必要だろ?」
「そ、そんなものなんですかね…」
「犬が考えるな」
「あんっ…♡」
再び札束でペシペシ叩かれた。これ楽しい…。イケメンに尊厳を破壊されている感覚が癖になる。
私がこの行為に心地良さを感じているのを見抜いた熊手さんは、札束で叩きながら呆れたように大きな溜め息を吐いた。
「…お前、本当俺様に拾われて良かったな。本当にその内騙されて風俗嬢にさせられそうで肝が冷える」
「…風俗より稼げる仕事見つけたので、今はこのままで良いです」
風俗嬢より犬の方が稼げるなんて良い時代だ。…犬も夜職と変わらないと言われれば、反論できないのだが。
「貰えるものは全部貰っておけ。俺様からの施しだ」
「か、返せません、こんなに沢山…お金…」
死んだ両親が残していった巨額の借金。それらを全て肩代わりしてニコニコ一括現金払いをした熊手さんは、それだけでは飽き足らず、私に札束を差し出してきた。ここだけ聞けば何だか少女漫画のイケメンお金持ちのようだが、熊手さんは与えた分だけ見返りを請求する人だ。ここで気軽に受け取ってしまっては本当に後がなくなる。
「別に、お前に金で返せとは言わねえよ」
「…じ、じゃあ、体…?」
「ほう、体で返す覚悟はあるのか」
「な、ないです!ごめんなさい!」
「冗談だ。お前が健康で元気に暮らしていればそれが見返りになるさ」
「え、ええ~…」
そんなこと言われても…と思い目を逸らすと、ペシペシと札束で軽く額を叩かれた。札束ビンタとはまさにこのことである。実際受けると、尊厳破壊という言葉の意味がよく分かる。財布も口座も空っぽの為、大金が欲しくないと言えば嘘になるのだが。
「…満更でもなさそうな顔はしてるな」
「……お金無いですもん…」
「なら素直に受け取れ。それとも、こういうプレイが良いのか?」
……正直嫌いでは、ない。むしろ安心するし、心地が良い。お金という絶対的な物と、それを差し出す熊手さんという男前。両方を見せられて悪い気になる人はいないだろう。
「……見返りナシでお金を頂くくらいなら、犬として飼ってもらった方が安心はします」
「……相当アレだな、お前…」
「…風俗行きをちらつかせる借金取りと会話してたら、そりゃこうもなりますよ」
「お前が風俗嬢になる前に拾えて心から安心したぜ」
「じゃあ、拾った犬の面倒見てください…わん」
冗談で言ったつもりだったのだが、私を二度見する熊手さんの目が「本気」だった。ふむと少し考え、懐からひょいと首輪を取り出す。何でそんな物を持ち歩いているんだ。
「よし。じゃあ俺様がお前を飼ってやる。ペットなんだから何でも主人に強請れ、食べ物でも金でも何でもいい」
「じゃ、じゃあ…今月の家賃欲しいです、わん」
「家賃?俺様の犬ならそんなものを払う必要はねえ。犬になった瞬間から、お前が帰る家は俺様のところだからな」
「わん!?」
衝撃の事実に驚いているうちに首輪を付けられた。わ、私が借りてるアパートの部屋もう家じゃない…ってコト!?
「大体あんなオンボロアパート…防犯は出来てねえ、日差しは入らねえ、家鳴りはするわで住めたところじゃねえ。神の犬なら上等な所に住む権利がある」
「熊手さんの家…行ったことないですけど、凄そうですね」
「まあ、玄関だけでお前の部屋の倍はあるな」
「えっ…私の部屋、玄関以下…?」
「庭もプールもある。欲しいならドッグランも作ってやる」
「ど、ドッグランはいいです…私室内犬なので…」
「室内犬でもドッグランには行くだろ。それに、室内犬でも散歩は必要だからな」
「さ、散歩!?」
この首輪にリードを付けてご近所を散歩!?というやけに生々しい絵面が想像出来てしまった。喜んで四つん這いになっている私と、やけに楽しそうな熊手さんと、その周りをふよふよ漂っているベアックマ。駄目だ。いくら本人が楽しかろうと、熊手さんが神だろうと、事案であることに変わりはない。
「安心しろ、家の敷地内だ」
「り、りり、リードを付けて!?四つん這いになるんですか私!?」
「流石に四つん這いはやらなくていい。俺様が変態だと思われる」
「十分アウトですよこの会話!」
「何だ、飼い主に逆らうのか?」
「……わん…」
「よし、言うことが聞けたら褒美をくれてやる」
札束を目の前でゆらゆらと振られた。無意識のうちに動きに合わせて視線を動かすと、服の隙間にお札を入れられた。いや、絵面的には夜のお店のおひねりのような感じではなく、差し込まれた札束の重みで服がたるむのだが。
「……神様がこんな下品なことしていいんですか…?」
「札束で殴るのは実際にやったからな。何なら、現金白刃どりは俺様の十八番だ」
「熊手さんにとってのお金って、無償で与えるものじゃないんでしょう…?矛盾してません?」
「ペットを飼うには定期的な出金が必要だろ?」
「そ、そんなものなんですかね…」
「犬が考えるな」
「あんっ…♡」
再び札束でペシペシ叩かれた。これ楽しい…。イケメンに尊厳を破壊されている感覚が癖になる。
私がこの行為に心地良さを感じているのを見抜いた熊手さんは、札束で叩きながら呆れたように大きな溜め息を吐いた。
「…お前、本当俺様に拾われて良かったな。本当にその内騙されて風俗嬢にさせられそうで肝が冷える」
「…風俗より稼げる仕事見つけたので、今はこのままで良いです」
風俗嬢より犬の方が稼げるなんて良い時代だ。…犬も夜職と変わらないと言われれば、反論できないのだが。