閃光【怪警・ノエル】
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アップした猫の欠伸写真の伸びは予想を下回った。最初は皆「可愛い」「癒される」と言っていたが、ルパンレンジャーとパトレンジャーの活躍が報道されると同時に反応の速度は落ちて行った。今は皆写真には見向きもせず、やれ「ルパンレンジャーがカッコいい」だの「パトレンジャーに助けてもらった」だのと好き勝手に喋っている。
「あんなに粘ったのに…」
うう、とカフェで項垂れたが現実は現実として受け止めなければならない。今後はアップするタイミングを見計らった方が良さそうだ。
パトレンジャーの写真の中にはパトレンエックスもいた。他の三人とは違いゴールドの装備に身を包んだ彼だけは優雅に手を振っており、SNSに上がっている動画でも一番ファンサービスが良かった。
高尾ノエル、と心の中で名前を復唱する。食えない男だと思う。蜂蜜のように蕩けた言葉と甘いマスクに気を取られてはいけない。私がギャングラ―に狙われる理由があるという確信を抱いている男だ。
彼にアルバムの中身を見られるのはマズイ。あれを見た上で鎌をかけてきたのだとしたら、性格が悪いとしか思えない。
カメラの中に収められた写真を眺めていく。満足のいくものもあれば、出来の悪い写真もあった。
「良い写真だね」
「!」
後ろにノエルが立っていた。モニターをのぞき見していた彼は軽くウインクをし、「相席しても?」と伺いを立てる。どうぞと手で示せば、前の席に足を組んで腰を下ろした。
「…そういえば、私のファンだって言っていましたよね」
「ウィ。大ファンさ」
ポストカード持ってるよ~と彼はどこからともなく取り出したカードを見せつけてきた。かなり初期に出したものだ。今はもう手に入る手段がないグッズの一つである。
「…ありがとうございます」
「柚葉さんの写真は、僕の心を様々な色に変えてくれた。勿論、猫ちゃんの写真もだよ」
”ただのSNS用の写真だから”という言葉をぐっと飲み込んだ。ノエルがそう感じたのなら、その気持ちを尊重するべきだ。鑑賞者の言葉を否定することは許されない。少なくとも、私はそういった芸術家ではありたくない。
「…ありがとうございます」
「…数字が気になるのかい?」
「…そういう訳では、ないんですけども」
宣伝として最も効果的なのはやはりSNSだ。展覧会に来る若い層は皆口を揃えて「SNSを見た」と言う。写真だけで食べて行くのなら、知名度は必須である。一応それなりの数の賞をとってきたつもりだが、それでも足りない。これだけでは難しい。
「そうだ!良かったら、僕のことも撮ってくれるかい?」
「えっ」
「一度プロのカメラマンに撮ってもらいたかったんだ。かっこよく撮ってほしいな」
そう言うなり、彼は「警察チェンジ!」と言って白い道具を回した。するとエンブレムが浮かび上がり、それを上から被ればゴールドの装備を纏ったパトレンエックスが完成する。「気高く輝く警察官!パトレンエックス!」と名乗り、ビシッと敬礼を決めた。
「い、良いんですか…こんな公衆の面前で…」
「こっちの姿なら、ね。ほら、よろしく頼むよ」
よろしくね~、と手を振るパトレンエックス。仕方なく私はカメラを手にし、シャッターを切っていく。被写体がノリノリの為非常に撮りやすい。こちらが指示をしなくとも勝手にポーズをとってくれるのは正直有難い。
腰に手を当てる。ボウ・アンド・スクレープ 。パルクール。武器を構える。何でもアリだ。全てが様になってしまう。
「…素晴らしい被写体ですね…」
「メルシー。少し恥ずかしいけれど、とっても楽しいね」
「恥じらいあるんですか…?ないように見えますけど」
何枚もパトレンエックスを撮った。フォルダが彼でいっぱいになる頃には日が暮れており、夕焼けにゴールドは眩し過ぎた。変身を解除し、国際警察の制服に戻ったノエルが「どうかな」と楽しそうに駆け寄ってくる。
「かなり良いのが取れましたよ」
「オーララ!それは良かった!」
「現像したらお渡ししますね」
「メルシー。楽しみにしているよ」
「期待しててください」
やはり、人目のあるところではルパンエックスにはならないらしい。それにしては、大胆に戦っている気もするが…。
ノエルはじっと私のカメラを見つめ、「使い込まれているね」と呟いた。目ざとい…というか、観察眼が鋭い。確かにこれは何年も使い続けており、最早相棒のような存在だ。
「昔、祖父母から頂いたんです。貴重なものだから大事にしなさいと言われていて…」
「ということは、この子は柚葉さんにとって家族のようなものなんだね」
「そうですね。特別なものではあります」
「…なるほど」
「…何か?」
「いいや、何もないよ。君とその子のエピソードが聞けて…良かった」
彼は微笑を浮かべたが、どこか憂いを秘めた表情だった。しかしすぐにその表情は消えた。ポケットから取り出したスマホを操作して「ふむ」と口元に手を当てる。
「…さあ、夜は冷えるよ。陽が落ちる前に帰らないと。良かったら、僕が送っても良いかい?」
「構いませんけど…良いんですか?制服を着ていたってことは、お仕事だったんじゃ…」
「今日は昼上がりだったんだ。でも、君に会えてとってもトレビアンな日になったよ」
「…それなら、お言葉に甘えさせていただきます」
「ウィ。エスコートは必要かい?」
「……それは、結構です」
「…オーララァ」
「あんなに粘ったのに…」
うう、とカフェで項垂れたが現実は現実として受け止めなければならない。今後はアップするタイミングを見計らった方が良さそうだ。
パトレンジャーの写真の中にはパトレンエックスもいた。他の三人とは違いゴールドの装備に身を包んだ彼だけは優雅に手を振っており、SNSに上がっている動画でも一番ファンサービスが良かった。
高尾ノエル、と心の中で名前を復唱する。食えない男だと思う。蜂蜜のように蕩けた言葉と甘いマスクに気を取られてはいけない。私がギャングラ―に狙われる理由があるという確信を抱いている男だ。
彼にアルバムの中身を見られるのはマズイ。あれを見た上で鎌をかけてきたのだとしたら、性格が悪いとしか思えない。
カメラの中に収められた写真を眺めていく。満足のいくものもあれば、出来の悪い写真もあった。
「良い写真だね」
「!」
後ろにノエルが立っていた。モニターをのぞき見していた彼は軽くウインクをし、「相席しても?」と伺いを立てる。どうぞと手で示せば、前の席に足を組んで腰を下ろした。
「…そういえば、私のファンだって言っていましたよね」
「ウィ。大ファンさ」
ポストカード持ってるよ~と彼はどこからともなく取り出したカードを見せつけてきた。かなり初期に出したものだ。今はもう手に入る手段がないグッズの一つである。
「…ありがとうございます」
「柚葉さんの写真は、僕の心を様々な色に変えてくれた。勿論、猫ちゃんの写真もだよ」
”ただのSNS用の写真だから”という言葉をぐっと飲み込んだ。ノエルがそう感じたのなら、その気持ちを尊重するべきだ。鑑賞者の言葉を否定することは許されない。少なくとも、私はそういった芸術家ではありたくない。
「…ありがとうございます」
「…数字が気になるのかい?」
「…そういう訳では、ないんですけども」
宣伝として最も効果的なのはやはりSNSだ。展覧会に来る若い層は皆口を揃えて「SNSを見た」と言う。写真だけで食べて行くのなら、知名度は必須である。一応それなりの数の賞をとってきたつもりだが、それでも足りない。これだけでは難しい。
「そうだ!良かったら、僕のことも撮ってくれるかい?」
「えっ」
「一度プロのカメラマンに撮ってもらいたかったんだ。かっこよく撮ってほしいな」
そう言うなり、彼は「警察チェンジ!」と言って白い道具を回した。するとエンブレムが浮かび上がり、それを上から被ればゴールドの装備を纏ったパトレンエックスが完成する。「気高く輝く警察官!パトレンエックス!」と名乗り、ビシッと敬礼を決めた。
「い、良いんですか…こんな公衆の面前で…」
「こっちの姿なら、ね。ほら、よろしく頼むよ」
よろしくね~、と手を振るパトレンエックス。仕方なく私はカメラを手にし、シャッターを切っていく。被写体がノリノリの為非常に撮りやすい。こちらが指示をしなくとも勝手にポーズをとってくれるのは正直有難い。
腰に手を当てる。ボウ・アンド・スクレープ 。パルクール。武器を構える。何でもアリだ。全てが様になってしまう。
「…素晴らしい被写体ですね…」
「メルシー。少し恥ずかしいけれど、とっても楽しいね」
「恥じらいあるんですか…?ないように見えますけど」
何枚もパトレンエックスを撮った。フォルダが彼でいっぱいになる頃には日が暮れており、夕焼けにゴールドは眩し過ぎた。変身を解除し、国際警察の制服に戻ったノエルが「どうかな」と楽しそうに駆け寄ってくる。
「かなり良いのが取れましたよ」
「オーララ!それは良かった!」
「現像したらお渡ししますね」
「メルシー。楽しみにしているよ」
「期待しててください」
やはり、人目のあるところではルパンエックスにはならないらしい。それにしては、大胆に戦っている気もするが…。
ノエルはじっと私のカメラを見つめ、「使い込まれているね」と呟いた。目ざとい…というか、観察眼が鋭い。確かにこれは何年も使い続けており、最早相棒のような存在だ。
「昔、祖父母から頂いたんです。貴重なものだから大事にしなさいと言われていて…」
「ということは、この子は柚葉さんにとって家族のようなものなんだね」
「そうですね。特別なものではあります」
「…なるほど」
「…何か?」
「いいや、何もないよ。君とその子のエピソードが聞けて…良かった」
彼は微笑を浮かべたが、どこか憂いを秘めた表情だった。しかしすぐにその表情は消えた。ポケットから取り出したスマホを操作して「ふむ」と口元に手を当てる。
「…さあ、夜は冷えるよ。陽が落ちる前に帰らないと。良かったら、僕が送っても良いかい?」
「構いませんけど…良いんですか?制服を着ていたってことは、お仕事だったんじゃ…」
「今日は昼上がりだったんだ。でも、君に会えてとってもトレビアンな日になったよ」
「…それなら、お言葉に甘えさせていただきます」
「ウィ。エスコートは必要かい?」
「……それは、結構です」
「…オーララァ」