健全な短編【単車】
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「やだ~!やだやだやだやだ!結婚なんてしない!」
飛電或人が四代目として社長の座に就いた飛電インテリジェンスに乗り込んでどこからか持ち込んだサメのクッションを抱きしめ騒いでいる女が一人。
「だからってなんでうちに来るの!?うち会社なんだけど!?」
御もっともである。
「だってここでしか愚痴なんて言えないよ~!」
「お金持ちの考えることって俺にはわかんないなあ」
「お金持ちじゃない!ただの成金!あ~もうやだ~!知らない男と結婚なんてしたくないよ~!」
要するに、彼女は時代錯誤な政略結婚に嘆いているのだ。
友人である飛電或人と言えども、結婚問題となれば軽々しく口をはさむことは出来ない。勿論柚葉もそれを理解している為、彼に頼ろうなどとは考えていない。
「はあ…少女漫画みたいにさ、結婚式にすっごいイケメンが現れて花嫁を攫って行くなんてことないかなあ…」
「柚葉様、それは少し夢見すぎかと思われます」
「うわ~んイズちゃ~ん!」
「すっごいイケメンって、例えば?」
「ほら!たまに或人といるあの…」
「えっ、まさか不破さん!?」
コツコツという靴音がした。
「或人様、それでは柚葉様の仰られるイケメンの定義が変わってしまいます」
「ち、が、う!そうじゃなくて…ほら、ちょっと和服っぽい…」
靴音は近づいてくる。
「…滅~!?」
椅子から落ちそうな勢いで或人が驚くと、「ホロビさんって言うの!?かっこいい名前!」と柚葉は目を輝かせた。恋多き乙女の前で名前を呟くのは不味いということを友人である或人は何よりも理解している。そして靴音が止まった。
「…俺が、なんだ」
──社長室の入り口に、滅亡迅雷の面々が立っていた。
*
「…柚葉も嫌なら嫌って言えば良いんじゃないの?」
「言いたいことははっきり言えるようにならねえとな」
「はあ~!?迅君も雷さんも察してよ~!言える立場じゃないの!」
数分で打ち解けた迅と柚葉、雷はすっかり砕けた喋り方で意見を交わしていた。しかし議論は平行線を辿るだけである。
「あ~も~!私のこと結婚式会場から攫ってくれるイケメン募集中~!」
ヤケクソで柚葉が叫ぶと──スッ、と綺麗な挙手が上がった。
手を挙げたのは、亡だった。
「えっ…どうしたの、亡…?」
「?困っているというのなら、私で良ければ力になりますが」
意外なことに、一番驚いているのは柚葉自身だった。耳まで顔を赤くして、「ひえ…」と小さく肩を震わせている。
「ちょっ…ちょっと待って、柚葉は何で照れてんの!?滅がタイプなんじゃないの!?」
「いや…なんかここまでストレートに優しくされると、心が…」
「即落ちすぎない!?」
「イケメンに優しくされると本能には逆らえないっていうか…!」
キャパオーバーでショート寸前の柚葉の手を簡単に握ってしまうと、亡は「私はヒューマギアですが、それでも宜しいですか?」と言った。言われた当人はというと、了承の返事どころではなく固まっている。完全にノックアウトだった。
「ところで、結婚式会場から攫うとはどういう意味でしょうか」
「亡は少女漫画って読んだことある?」
「いえ、そのようなものをラーニングしたことはありません」
「そこからか~」
硬直したままの柚葉を迅が「おーい」とつついた。ハッとして覚醒したものの、火照りはまだ収まっていない。亡と目が合っただけで、まるで初恋をした純粋な少女のように慌てふためく。
「…でも珍しいね?亡がこういうことに首を突っ込むのって」
「家、つまり自身にもメリットのある結婚を拒否する彼女の心理を興味深く思いました」
「…ああ、そういう」
妙に納得した迅を横目に、柚葉は「亡さん!」と火照った顔はどこへやら、真剣な表情で亡を見つめる。今度は目が合っても逸らすようなことはしなかった。
「そんなの簡単だよ!結婚は損得だけで決めるものじゃないんだから!」
「…そういうものなのですか」
「そういうものです!」
「…では、私の協力に喜んだあなたは式場で私に”本当に”攫われても良いのですね?」
「…はい?」
至極真面目な返しのつもりだった。…亡にとっては。
「いや亡、それはちょっと違うような…」
「私は結婚に対する柚葉の考えに興味を覚えたからこそ、彼女に手を貸そうと思いました。つまり、ラーニングしたいのです。あなたの気持ちに、ハッキングして」
「亡!?それはもうプロポー…」
普通の人間なら、ここで亡と柚葉の提案の違いを指摘して正すだろう。
ここで問題だったのは、柚葉の方が満更でもない顔をしていたことである。
飛電或人が四代目として社長の座に就いた飛電インテリジェンスに乗り込んでどこからか持ち込んだサメのクッションを抱きしめ騒いでいる女が一人。
「だからってなんでうちに来るの!?うち会社なんだけど!?」
御もっともである。
「だってここでしか愚痴なんて言えないよ~!」
「お金持ちの考えることって俺にはわかんないなあ」
「お金持ちじゃない!ただの成金!あ~もうやだ~!知らない男と結婚なんてしたくないよ~!」
要するに、彼女は時代錯誤な政略結婚に嘆いているのだ。
友人である飛電或人と言えども、結婚問題となれば軽々しく口をはさむことは出来ない。勿論柚葉もそれを理解している為、彼に頼ろうなどとは考えていない。
「はあ…少女漫画みたいにさ、結婚式にすっごいイケメンが現れて花嫁を攫って行くなんてことないかなあ…」
「柚葉様、それは少し夢見すぎかと思われます」
「うわ~んイズちゃ~ん!」
「すっごいイケメンって、例えば?」
「ほら!たまに或人といるあの…」
「えっ、まさか不破さん!?」
コツコツという靴音がした。
「或人様、それでは柚葉様の仰られるイケメンの定義が変わってしまいます」
「ち、が、う!そうじゃなくて…ほら、ちょっと和服っぽい…」
靴音は近づいてくる。
「…滅~!?」
椅子から落ちそうな勢いで或人が驚くと、「ホロビさんって言うの!?かっこいい名前!」と柚葉は目を輝かせた。恋多き乙女の前で名前を呟くのは不味いということを友人である或人は何よりも理解している。そして靴音が止まった。
「…俺が、なんだ」
──社長室の入り口に、滅亡迅雷の面々が立っていた。
*
「…柚葉も嫌なら嫌って言えば良いんじゃないの?」
「言いたいことははっきり言えるようにならねえとな」
「はあ~!?迅君も雷さんも察してよ~!言える立場じゃないの!」
数分で打ち解けた迅と柚葉、雷はすっかり砕けた喋り方で意見を交わしていた。しかし議論は平行線を辿るだけである。
「あ~も~!私のこと結婚式会場から攫ってくれるイケメン募集中~!」
ヤケクソで柚葉が叫ぶと──スッ、と綺麗な挙手が上がった。
手を挙げたのは、亡だった。
「えっ…どうしたの、亡…?」
「?困っているというのなら、私で良ければ力になりますが」
意外なことに、一番驚いているのは柚葉自身だった。耳まで顔を赤くして、「ひえ…」と小さく肩を震わせている。
「ちょっ…ちょっと待って、柚葉は何で照れてんの!?滅がタイプなんじゃないの!?」
「いや…なんかここまでストレートに優しくされると、心が…」
「即落ちすぎない!?」
「イケメンに優しくされると本能には逆らえないっていうか…!」
キャパオーバーでショート寸前の柚葉の手を簡単に握ってしまうと、亡は「私はヒューマギアですが、それでも宜しいですか?」と言った。言われた当人はというと、了承の返事どころではなく固まっている。完全にノックアウトだった。
「ところで、結婚式会場から攫うとはどういう意味でしょうか」
「亡は少女漫画って読んだことある?」
「いえ、そのようなものをラーニングしたことはありません」
「そこからか~」
硬直したままの柚葉を迅が「おーい」とつついた。ハッとして覚醒したものの、火照りはまだ収まっていない。亡と目が合っただけで、まるで初恋をした純粋な少女のように慌てふためく。
「…でも珍しいね?亡がこういうことに首を突っ込むのって」
「家、つまり自身にもメリットのある結婚を拒否する彼女の心理を興味深く思いました」
「…ああ、そういう」
妙に納得した迅を横目に、柚葉は「亡さん!」と火照った顔はどこへやら、真剣な表情で亡を見つめる。今度は目が合っても逸らすようなことはしなかった。
「そんなの簡単だよ!結婚は損得だけで決めるものじゃないんだから!」
「…そういうものなのですか」
「そういうものです!」
「…では、私の協力に喜んだあなたは式場で私に”本当に”攫われても良いのですね?」
「…はい?」
至極真面目な返しのつもりだった。…亡にとっては。
「いや亡、それはちょっと違うような…」
「私は結婚に対する柚葉の考えに興味を覚えたからこそ、彼女に手を貸そうと思いました。つまり、ラーニングしたいのです。あなたの気持ちに、ハッキングして」
「亡!?それはもうプロポー…」
普通の人間なら、ここで亡と柚葉の提案の違いを指摘して正すだろう。
ここで問題だったのは、柚葉の方が満更でもない顔をしていたことである。