健全な短編【単車】
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久しぶりに店に入った。ピークは過ぎているのか、客は私以外いなかった。味は変わっていなかった。良い意味で。思えば、昔から何を作らせても上手な男だった。
「どう?それ、新作」
「うん…美味しい」
「やった。柚葉ちゃんこれ好きだろうなって思ってたんだ」
「え…私が来ること、わかってたの?」
「うん」
勘が良い。そういえば、勘も良かったな。第六感、というのだろうか。そういうのを、持っている人間だ。多分、普通の人間ではないのだと思う。彼みたいな人を、超人だの仙人だのと人は言うのだろう。
「翔一君、変わってないね」
「そうかなあ…。まあ…そう、かも」
「うん、そういうところ…」
変わってない、と言われて。すんなりと受け入れるところとか。
「柚葉ちゃんは変わったね」
「……そうかな。別に、変わってないよ。何も…」
「髪とか…短くなったし」
「うざったいから切っただけだよ」
「似合ってるよ」
「翔一君長い方が好きでしょ」
「えっ」
「髪が長くて…大人っぽい、清楚な人。あと、美人」
ええー、と翔一君は困った顔をしていた。恐らく図星なのである。そういう嘘が吐けないところも、昔から変わっていない。
「……長いの、似合ってないって言われたから」
「え、誰に?」
「男」
「あっ…」
「邪魔だったのもあるけど…変わろうと思って、切ったの。切ったんだよ、バッサリ…」
ハサミを入れる程、頭が軽くなった。そのまま悩みも無くなりそうな気持だった。仕上がりを見て、案外悪くないなと思った。なんだ私、ショートも似合うじゃん、と。
「…どこが、駄目だったのかな…」
「駄目じゃないよ」
「駄目だったんだよ。変わってないから、駄目だった」
「そんなこと…」
「…変わりたいよ、何もかも」
髪、体型、メイク、喋り方。必要なら、肉体の部位だって…そこにメスを入れることだって、出来るのに。何をしても出来上がるのは、「どうにかしようとした巴柚葉」。ただ、足掻いているだけ。バタバタと足や手を動かして、その場に留まっているだけの人。
空いた皿をぼうっと見つめていると、うーん、と言いながら翔一君が向かい側に座った。
「無理して変わろうとする必要はないんじゃないかな」
「…どういうこと」
「変わること自体は重要じゃないっていうか…柚葉ちゃんのまま、向き合っていけばいいと思う。その過程で柚葉ちゃんの心に良い変化があったなら、それは進化したことと同じだし」
「私のままじゃ駄目だったから、変わる必要があるんだよ!」
「見た目が変わっても、心は柚葉ちゃんだよ」
翔一君はなんてことのない顔でそう言った。なんて、ひどく、残酷なことを。軽々しく、さらりと言ってしまえるのだろう。
何をしても、私は柚葉。悪い意味でも、良い意味でも。
「俺は髪が長くても短くても、柚葉ちゃんが好きだよ」
「……あっそ…」
「照れてる」
「照れてないし」
そんなことを言っておきながら、彼からすれば変な意味なんて無いのである。思ったことを言っているだけ。なのに人を動かしたり、何かを気付かせる力がある。いや、別にそれは翔一君だけに限らないのだろう。誰にだって、何かを変える力はある。他者だったり、自分だったり。
私も…早く、そうなれたらいいな。
「そういえば翔一君、ミシュランのオファーきてるって聞いたけど」
「ああ~…」
「何その反応…」
「…断ったから…」
「断った!?」
「そういうの拘りないっていうか…普通がいいし」
「……変わってるね…」
「変わってるかなあ…そうかなあ…」
「どう?それ、新作」
「うん…美味しい」
「やった。柚葉ちゃんこれ好きだろうなって思ってたんだ」
「え…私が来ること、わかってたの?」
「うん」
勘が良い。そういえば、勘も良かったな。第六感、というのだろうか。そういうのを、持っている人間だ。多分、普通の人間ではないのだと思う。彼みたいな人を、超人だの仙人だのと人は言うのだろう。
「翔一君、変わってないね」
「そうかなあ…。まあ…そう、かも」
「うん、そういうところ…」
変わってない、と言われて。すんなりと受け入れるところとか。
「柚葉ちゃんは変わったね」
「……そうかな。別に、変わってないよ。何も…」
「髪とか…短くなったし」
「うざったいから切っただけだよ」
「似合ってるよ」
「翔一君長い方が好きでしょ」
「えっ」
「髪が長くて…大人っぽい、清楚な人。あと、美人」
ええー、と翔一君は困った顔をしていた。恐らく図星なのである。そういう嘘が吐けないところも、昔から変わっていない。
「……長いの、似合ってないって言われたから」
「え、誰に?」
「男」
「あっ…」
「邪魔だったのもあるけど…変わろうと思って、切ったの。切ったんだよ、バッサリ…」
ハサミを入れる程、頭が軽くなった。そのまま悩みも無くなりそうな気持だった。仕上がりを見て、案外悪くないなと思った。なんだ私、ショートも似合うじゃん、と。
「…どこが、駄目だったのかな…」
「駄目じゃないよ」
「駄目だったんだよ。変わってないから、駄目だった」
「そんなこと…」
「…変わりたいよ、何もかも」
髪、体型、メイク、喋り方。必要なら、肉体の部位だって…そこにメスを入れることだって、出来るのに。何をしても出来上がるのは、「どうにかしようとした巴柚葉」。ただ、足掻いているだけ。バタバタと足や手を動かして、その場に留まっているだけの人。
空いた皿をぼうっと見つめていると、うーん、と言いながら翔一君が向かい側に座った。
「無理して変わろうとする必要はないんじゃないかな」
「…どういうこと」
「変わること自体は重要じゃないっていうか…柚葉ちゃんのまま、向き合っていけばいいと思う。その過程で柚葉ちゃんの心に良い変化があったなら、それは進化したことと同じだし」
「私のままじゃ駄目だったから、変わる必要があるんだよ!」
「見た目が変わっても、心は柚葉ちゃんだよ」
翔一君はなんてことのない顔でそう言った。なんて、ひどく、残酷なことを。軽々しく、さらりと言ってしまえるのだろう。
何をしても、私は柚葉。悪い意味でも、良い意味でも。
「俺は髪が長くても短くても、柚葉ちゃんが好きだよ」
「……あっそ…」
「照れてる」
「照れてないし」
そんなことを言っておきながら、彼からすれば変な意味なんて無いのである。思ったことを言っているだけ。なのに人を動かしたり、何かを気付かせる力がある。いや、別にそれは翔一君だけに限らないのだろう。誰にだって、何かを変える力はある。他者だったり、自分だったり。
私も…早く、そうなれたらいいな。
「そういえば翔一君、ミシュランのオファーきてるって聞いたけど」
「ああ~…」
「何その反応…」
「…断ったから…」
「断った!?」
「そういうの拘りないっていうか…普通がいいし」
「……変わってるね…」
「変わってるかなあ…そうかなあ…」
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