健全な短編【単車】
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こんな関係をダラダラと引き摺るのは性に合わない。それ以上に自分の中にある誇りが許せない。
しかし現実は厳しく、雨風が強いのに寝床の確保すら出来なかった日には度々柚葉の家に足が向かってしまった。飼い犬に成り下がる気は更々無い為、なけなしのプライドで彼女に勧められた寝具での睡眠こそしなかったものの、朝起きるとブランケットが掛けられている現状はやはりどう見ても飼い犬のように思われた。
柚葉が、歳だってかなり離れている(ように見える)男の宿泊を快く承諾してくれる理由も既に分かりきっている。率直に言うと惚れているからだ。マル・ダムールでいつも情熱的な視線を向けられれば嫌でも分かる。間違いなくそれは人間の恋情だった。
「今度はいつ泊まりに来ますか...?」
「...今まで悪かったな。もう来ることは無いから、安心しろ」
「安心だなんて......むしろ寂しい、です」
彼女は今にも泣き出しそうな表情で俺を見つめた。──そんな顔にさせるつもりは、無かったんだがな。
「これからも、ずっと来てください...何なら、その...住んだって良いんですから」
「馬鹿言うな、ここはお前の家だ。本来なら俺みたいな奴が出入りしていい所じゃない」
「...私だって次狼さん以外の人なんて、泊めたことないです。あなただから......」
ス、と伸びた手は虚しく空を切った。彼女なりに感情を押し止めているのがよく分かる。育ちのいい女だとは思っていた。その女が、素性もよく知らない男を泊めるなんて本当に夢にも思っていなかったのだろう。ある意味、こうさせてしまった責任は俺にあるのかもしれない。
「...まあ、そのなんだ......お前に迷惑ばかりかけた償いくらいは、してやるが」
「...本当ですか」
「つまらない嘘を...ましてや女につくような男じゃないからな」
何を言うのかは大方見当がついていた。震える声で俺に求める償い方を呟き、「......駄目ですか?」などと了承まで得ようとする。本当に育ちのいい女だ。俺に出会わなければさぞ聡明で、教養のある良い女だっただろうに。──勿論、今の彼女が良い女じゃない、ということではないが。
「...お前はいいのか」
「当たり前です。私が、望んでるんですから...」
俺を見上げる人間の腰に手を回し、柚葉、と名前を呼ぶと彼女の体がピクリと震えた。望んでいても尚残る不安を振り払うように柚葉は俺に抱きつき、同じように次狼さん、と俺の名前を呟く。空いていた後ろ手で玄関のドアを閉めると、より一層彼女は身をくっ付けてきた。
「私...あなたに恋しているんです」
「ああ、痛い程感じる」
柚葉は俺に愛している、とは言わなかった。ただそれだけを言って、いつもの熱い視線を向けてきたその引き込まれそうな目で俺を見つめた。その瞳に映っているのは恋情よりも深い"何か"だった。
「...悪い人ですね。分かっていて、こんな態度をとるなんて」
何故彼女に麻生ゆりに対するような感情が湧かないのかは自分でもよく分からなかった。一族のことを考えれば、拘っていることも出来ない筈だということは自分がよく知っている筈なのに。
「...ひょっとしたら、」
「...?」
「いや...お前が余りにも綺麗だから、俺は手に入れて汚すことすら出来なかったんじゃないかと思ってな」
そう言うと、彼女はふっと微笑んだ。そうしてまた、「本当に悪い人」と言い、俺の手をとって奥の部屋へと導いた。
しかし現実は厳しく、雨風が強いのに寝床の確保すら出来なかった日には度々柚葉の家に足が向かってしまった。飼い犬に成り下がる気は更々無い為、なけなしのプライドで彼女に勧められた寝具での睡眠こそしなかったものの、朝起きるとブランケットが掛けられている現状はやはりどう見ても飼い犬のように思われた。
柚葉が、歳だってかなり離れている(ように見える)男の宿泊を快く承諾してくれる理由も既に分かりきっている。率直に言うと惚れているからだ。マル・ダムールでいつも情熱的な視線を向けられれば嫌でも分かる。間違いなくそれは人間の恋情だった。
「今度はいつ泊まりに来ますか...?」
「...今まで悪かったな。もう来ることは無いから、安心しろ」
「安心だなんて......むしろ寂しい、です」
彼女は今にも泣き出しそうな表情で俺を見つめた。──そんな顔にさせるつもりは、無かったんだがな。
「これからも、ずっと来てください...何なら、その...住んだって良いんですから」
「馬鹿言うな、ここはお前の家だ。本来なら俺みたいな奴が出入りしていい所じゃない」
「...私だって次狼さん以外の人なんて、泊めたことないです。あなただから......」
ス、と伸びた手は虚しく空を切った。彼女なりに感情を押し止めているのがよく分かる。育ちのいい女だとは思っていた。その女が、素性もよく知らない男を泊めるなんて本当に夢にも思っていなかったのだろう。ある意味、こうさせてしまった責任は俺にあるのかもしれない。
「...まあ、そのなんだ......お前に迷惑ばかりかけた償いくらいは、してやるが」
「...本当ですか」
「つまらない嘘を...ましてや女につくような男じゃないからな」
何を言うのかは大方見当がついていた。震える声で俺に求める償い方を呟き、「......駄目ですか?」などと了承まで得ようとする。本当に育ちのいい女だ。俺に出会わなければさぞ聡明で、教養のある良い女だっただろうに。──勿論、今の彼女が良い女じゃない、ということではないが。
「...お前はいいのか」
「当たり前です。私が、望んでるんですから...」
俺を見上げる人間の腰に手を回し、柚葉、と名前を呼ぶと彼女の体がピクリと震えた。望んでいても尚残る不安を振り払うように柚葉は俺に抱きつき、同じように次狼さん、と俺の名前を呟く。空いていた後ろ手で玄関のドアを閉めると、より一層彼女は身をくっ付けてきた。
「私...あなたに恋しているんです」
「ああ、痛い程感じる」
柚葉は俺に愛している、とは言わなかった。ただそれだけを言って、いつもの熱い視線を向けてきたその引き込まれそうな目で俺を見つめた。その瞳に映っているのは恋情よりも深い"何か"だった。
「...悪い人ですね。分かっていて、こんな態度をとるなんて」
何故彼女に麻生ゆりに対するような感情が湧かないのかは自分でもよく分からなかった。一族のことを考えれば、拘っていることも出来ない筈だということは自分がよく知っている筈なのに。
「...ひょっとしたら、」
「...?」
「いや...お前が余りにも綺麗だから、俺は手に入れて汚すことすら出来なかったんじゃないかと思ってな」
そう言うと、彼女はふっと微笑んだ。そうしてまた、「本当に悪い人」と言い、俺の手をとって奥の部屋へと導いた。