おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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喫茶どんぶら。コーヒーショップに通うのをやめた私の憩いの場所。最近は色々と騒がしくなったが、そんなことが気にならないくらい私は惚けていた。
「マスター、ミックスジュースもう一杯追加で…」
本を読んでいたマスターにそう声をかけると、彼は頷いて空になったコップにジュースを注ぎ始めた。その様を見ながら、はあ、と大きな溜め息を吐く。
「…悩み事?」
「…わかる?」
「いや、聞いてほしそうだったから」
お待たせ、とコップをこちらに渡す。ストローでジュースを混ぜながら、私はもう一度溜め息を吐いた。
「ずっと会えないの…夢の人に……」
「夢の人?」
「夢っていうか、現実っていうか…」
「的を射ていないね」
「……私の、王子様?」
「うん…的を射ていないね」
再び本を開き、読書を再開しようとするマスター。本を取り上げて無理矢理会話させようとした瞬間、「王子様って誰のことですか!?」とアルバイトのはるかちゃんが参加してきた。
「柚葉さんって恋人いたんですか…!?」
「いないよ」
「え、でもこの前男の人と歩いてましたよね…?」
「?彼氏じゃないよ?」
「腕組んでましたよね…?」
「うん、彼氏じゃないよ」
「……意味がわかると怖い話ですか、これ?」
「世の中には、知らない方が良いこともあるということだ」
ほうじ茶を飲んでいた教授も参加してきた。彼は初対面の頃下の名前で呼んでいいかと聞いたところ、「ロクなことにならない気がするからやめてくれ」と断られている。一応、親しみを込めて、つまり敬意は込めずに「教授」と呼ばせてもらっている。
「まあ、それはどうでもいいんだけど」
「流された…」
「素敵な人がね…多分だけど、怪物から助けてくれたんだ。でも、名前は教えてくれなくて……私をお姫様抱っこして家まで送ってくれて…そのまま帰っちゃったの…」
きゃ~っ、と気持ちよくはしゃいでくれるはるかちゃん。対して、冷めた目をしている教授。本に視線を落としたままのマスター。
「…一応それは…そのまま帰るまでに、何も無かったという理解でいいんだな?」
「何かあったらここまで思いつめてないよ…」
「だろうな…」
「何かある仲になりたい…でも、そう簡単にはならなさそうなのが…良い…!」
「マスター、彼女の分の支払いを俳句でしてもいいだろうか?」
「勝手に払わないで。ていうか払ってないし」
「で、その王子様ってどんな人だったんですか?」
「…青い目の、人。絵本の王子様みたいにふわふわの髪で…背も高くて…声も良かった……」
「青い目で背が高い…あ、外国人とか!」
「んー…日本人っぽかったけどなあ…。でも、そういうのはどうでもいいかな。私は別に、あの人が男でも女でも何人でもいいから…」
「少女漫画…っていうより、レディコミかも、これは…」
どうやら漫画のネタを探していたらしい。残念なことに、私はもう少女漫画で連載されるようなヒロインの年齢じゃない。文字通り、夢見る少女じゃいられないのだ。
でも、あの人は私を夢見る人間にしてくれた。あの日の続きを探して、何度も夢を見た。でもどこにもいなかった。私が想えば想う程、遠い人になってしまったのだ。
「マスター。王子様の話もしたいから、今日うちでご飯とかどう?」
「…」
「関西流具沢山お鍋」
「えっ。冬でもないのに、鍋…?」
「…いいよ」
「やった~」
「いいんかい!」
何なのこの二人!とはるかちゃんは頭を抱えており、教授はガン無視だった。
関西、鍋、具材と調べてみる。この前の男の子が関西人で、関東とは違う鍋を披露してくれたからマネをしたかった。ついでに、料理もできるマスターに味見をしてもらいたい。いつか王子様に食べてもらうために。
王子様、鍋は好きだろうか。フランス料理とかイタリア料理を食べていそうな優雅な見た目だったが。
何となく、おでんの方が好きだと言いそうな気がする。
「マスター、ミックスジュースもう一杯追加で…」
本を読んでいたマスターにそう声をかけると、彼は頷いて空になったコップにジュースを注ぎ始めた。その様を見ながら、はあ、と大きな溜め息を吐く。
「…悩み事?」
「…わかる?」
「いや、聞いてほしそうだったから」
お待たせ、とコップをこちらに渡す。ストローでジュースを混ぜながら、私はもう一度溜め息を吐いた。
「ずっと会えないの…夢の人に……」
「夢の人?」
「夢っていうか、現実っていうか…」
「的を射ていないね」
「……私の、王子様?」
「うん…的を射ていないね」
再び本を開き、読書を再開しようとするマスター。本を取り上げて無理矢理会話させようとした瞬間、「王子様って誰のことですか!?」とアルバイトのはるかちゃんが参加してきた。
「柚葉さんって恋人いたんですか…!?」
「いないよ」
「え、でもこの前男の人と歩いてましたよね…?」
「?彼氏じゃないよ?」
「腕組んでましたよね…?」
「うん、彼氏じゃないよ」
「……意味がわかると怖い話ですか、これ?」
「世の中には、知らない方が良いこともあるということだ」
ほうじ茶を飲んでいた教授も参加してきた。彼は初対面の頃下の名前で呼んでいいかと聞いたところ、「ロクなことにならない気がするからやめてくれ」と断られている。一応、親しみを込めて、つまり敬意は込めずに「教授」と呼ばせてもらっている。
「まあ、それはどうでもいいんだけど」
「流された…」
「素敵な人がね…多分だけど、怪物から助けてくれたんだ。でも、名前は教えてくれなくて……私をお姫様抱っこして家まで送ってくれて…そのまま帰っちゃったの…」
きゃ~っ、と気持ちよくはしゃいでくれるはるかちゃん。対して、冷めた目をしている教授。本に視線を落としたままのマスター。
「…一応それは…そのまま帰るまでに、何も無かったという理解でいいんだな?」
「何かあったらここまで思いつめてないよ…」
「だろうな…」
「何かある仲になりたい…でも、そう簡単にはならなさそうなのが…良い…!」
「マスター、彼女の分の支払いを俳句でしてもいいだろうか?」
「勝手に払わないで。ていうか払ってないし」
「で、その王子様ってどんな人だったんですか?」
「…青い目の、人。絵本の王子様みたいにふわふわの髪で…背も高くて…声も良かった……」
「青い目で背が高い…あ、外国人とか!」
「んー…日本人っぽかったけどなあ…。でも、そういうのはどうでもいいかな。私は別に、あの人が男でも女でも何人でもいいから…」
「少女漫画…っていうより、レディコミかも、これは…」
どうやら漫画のネタを探していたらしい。残念なことに、私はもう少女漫画で連載されるようなヒロインの年齢じゃない。文字通り、夢見る少女じゃいられないのだ。
でも、あの人は私を夢見る人間にしてくれた。あの日の続きを探して、何度も夢を見た。でもどこにもいなかった。私が想えば想う程、遠い人になってしまったのだ。
「マスター。王子様の話もしたいから、今日うちでご飯とかどう?」
「…」
「関西流具沢山お鍋」
「えっ。冬でもないのに、鍋…?」
「…いいよ」
「やった~」
「いいんかい!」
何なのこの二人!とはるかちゃんは頭を抱えており、教授はガン無視だった。
関西、鍋、具材と調べてみる。この前の男の子が関西人で、関東とは違う鍋を披露してくれたからマネをしたかった。ついでに、料理もできるマスターに味見をしてもらいたい。いつか王子様に食べてもらうために。
王子様、鍋は好きだろうか。フランス料理とかイタリア料理を食べていそうな優雅な見た目だったが。
何となく、おでんの方が好きだと言いそうな気がする。