おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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喫茶どんぶらにもクリスマスはやって来る。街中がクリスマスの装飾で満たされ、いよいよシーズンもピークといった時期。カウンターでホットのミルクティーを飲んでいると、脳人三人衆がやって来た。
「それで…なんだ?相談とは…」
通路を挟んだ隣の席の椅子に腰掛け、タロウ君がソノイさんに相談?の内容を話すよう促す。しかし言い辛いのか、ソノイさんは珍しく口ごもっていた。普段はあんなに饒舌なのに…。
「それが…実は…」
「実は?なんだ?」
頭を抱えて非常に言い辛そうにしている。正直本人には絶対言えないが、彼が悩んでいる姿は珍しくて…可愛い。
「ソノイさん…頑張って…!」
「一体なんでしょう?そんなに言いにくいことって…」
「そうだよ。別に告白するってわけじゃないんだから」
「こッ、告白ゥ!?」
「ここで一句。”言葉より 俯く角度の 秋の恋”。これは俳句と言ってな…」
「教授うるさい!」
私がそう叫んだ瞬間、ソノニさんが教授の顔面にショートケーキをお見舞いした。ナイス、ソノニさん!
「すまない。言えない…。忘れてくれ」
「ソノイさん!?告白じゃないですよね!?ね!?ソノイさーーん!!」
告白なのかそうでないのかだけ確かめようとしたが、ソノイさんは返事をしてくれずどんぶらを出て行ってしまった。
「……こ、告白じゃないよね…?まさか、タロウ君のことが好きとか…ないよね…?」
「いや、タロウとソノイは因縁がある…。ライバル同士が実は好き合っていたなんて定番だし…。万が一のことはあるかもしれません…」
「うっ、嘘…!そうなったら私はタロウ君を迷いなく刺すよ!?」
「ええっそんな野蛮な…。暴力は駄目ですよ巴さん、穏便に議論で解決しないと…」
「君がそれを言うのか?」
私がオロオロしている間に、ドンブラザーズのみんなは脳人三人衆を追って出て行ってしまった。店内にはマスターと私が残され、私はミルクティーに致死量の砂糖を入れてしまう。
「こ、告白…ソノイさんが…タロウ君を…」
「ないよ」
「ないよね!?」
*
結局、真実は分からないまま夜になってしまった。何で変な心労を抱えたままクリスマスを迎えないといけないの!?とベッドで悶絶する。
ソノイさんがタロウ君を好きって言われたら…妙に納得してしまう自分がいるのは事実だ。実際これだけ焦っているというのは、それくらい信憑性があるからという訳で。タロウ君とソノイさん、二人の関係は特別で唯一無二だ。
「…まさか…もうチューとか……」
「してる訳ないでしょう」
「きゃっ!?」
扉を開けるような仕草で、ソノイさんが私の部屋に現れた。何故かサンタのコスプレをしており、白くて長い髭まで付けている。…それでも顔が綺麗であることは十分わかるのが凄い。
「…何でサンタ…?」
「実は…かくかくしかじかでして…」
「成る程…。かくかくしかじかですか…。今は配り終わったんですかね?お疲れ様です!でもどうしてうちに…?私もう大人ですよ?」
「……務めが終わったので、少し羽を休めさせていただこうかと」
確かに、手に持っている袋は空になっている。プレゼントは全て子供達に配り終えたのだろう。
「是非休んでいってください。お茶淹れますね」
「ありがとうございます」
とは言ったものの、ティーバッグと湯を合体させるだけである。日本茶は飲めるだろうかという不安は、彼がすぐに茶に口をつけた為杞憂に終わった。
日本茶の細くて長い香りが部屋を漂う。ソノイさん、熱々のおでんも平気で食べているから猫舌とかそういうのは無いのだろう。脳人にそういう概念があるとも思えない。
「柚葉は、サンタからプレゼントを貰ったことはありますか?」
「はい、色んな物を頂きました」
「例えば、どんな物を…?」
「インド製の食器、中国にいる鼠の毛で作ったカーディガン、オモチャの宝石で飾られた木の枝、パワーストーン、タカラガイ…」
「…そういった物を欲していたのですか?幼いあなたは…」
「……サンタ、うちには来ないと思ってたんです。だから絶対に用意できない物を欲しいと言って、サンタが本当に来なかった時に”無理なものを頼んでいたんだから仕方ない”って自分を納得できるようにしていました」
「しかし、欲した物は届いた…」
「……サンタは、わかっていたのかもしれません。私が欲しいものは…光る鉢でも、燃えない布でも、宝石が付いた枝でも、竜の宝玉でも、燕が産む伝説の貝でもないって。誰かが私のことを想って用意してくれたものなら、何だっていいって知ってるのに、無理難題に応えようとしたんです」
捻くれた要求を知ったときは、きっと大慌てだっただろう。しかしサンタは、応えようとしてくれたのだ。
「…良い話ですね」
「はい。欲しいと言った物とは違いましたけど…紛れもなく、私にとっては全て宝物です」
「今年私達にはサンタの役目が回ってきました。きっと、あなたのような子供がいたら…期待には応えられません」
「…そうでしょうか?私は…ソノイさんは、何とかしようと奔走すると思いますよ」
「何故、そう言える?」
「だってソノイさん、優しいですから」
微笑めば、彼は面食らった顔をした。彼は、彼が自分で思っている以上に人格者であることに気付いていないのだろう。
確かに出会った頃のソノイさんなら分からないが…今のソノイさんなら、難題にも応えようとするのではないかと、希望を抱いてしまう。
「それで…なんだ?相談とは…」
通路を挟んだ隣の席の椅子に腰掛け、タロウ君がソノイさんに相談?の内容を話すよう促す。しかし言い辛いのか、ソノイさんは珍しく口ごもっていた。普段はあんなに饒舌なのに…。
「それが…実は…」
「実は?なんだ?」
頭を抱えて非常に言い辛そうにしている。正直本人には絶対言えないが、彼が悩んでいる姿は珍しくて…可愛い。
「ソノイさん…頑張って…!」
「一体なんでしょう?そんなに言いにくいことって…」
「そうだよ。別に告白するってわけじゃないんだから」
「こッ、告白ゥ!?」
「ここで一句。”言葉より 俯く角度の 秋の恋”。これは俳句と言ってな…」
「教授うるさい!」
私がそう叫んだ瞬間、ソノニさんが教授の顔面にショートケーキをお見舞いした。ナイス、ソノニさん!
「すまない。言えない…。忘れてくれ」
「ソノイさん!?告白じゃないですよね!?ね!?ソノイさーーん!!」
告白なのかそうでないのかだけ確かめようとしたが、ソノイさんは返事をしてくれずどんぶらを出て行ってしまった。
「……こ、告白じゃないよね…?まさか、タロウ君のことが好きとか…ないよね…?」
「いや、タロウとソノイは因縁がある…。ライバル同士が実は好き合っていたなんて定番だし…。万が一のことはあるかもしれません…」
「うっ、嘘…!そうなったら私はタロウ君を迷いなく刺すよ!?」
「ええっそんな野蛮な…。暴力は駄目ですよ巴さん、穏便に議論で解決しないと…」
「君がそれを言うのか?」
私がオロオロしている間に、ドンブラザーズのみんなは脳人三人衆を追って出て行ってしまった。店内にはマスターと私が残され、私はミルクティーに致死量の砂糖を入れてしまう。
「こ、告白…ソノイさんが…タロウ君を…」
「ないよ」
「ないよね!?」
*
結局、真実は分からないまま夜になってしまった。何で変な心労を抱えたままクリスマスを迎えないといけないの!?とベッドで悶絶する。
ソノイさんがタロウ君を好きって言われたら…妙に納得してしまう自分がいるのは事実だ。実際これだけ焦っているというのは、それくらい信憑性があるからという訳で。タロウ君とソノイさん、二人の関係は特別で唯一無二だ。
「…まさか…もうチューとか……」
「してる訳ないでしょう」
「きゃっ!?」
扉を開けるような仕草で、ソノイさんが私の部屋に現れた。何故かサンタのコスプレをしており、白くて長い髭まで付けている。…それでも顔が綺麗であることは十分わかるのが凄い。
「…何でサンタ…?」
「実は…かくかくしかじかでして…」
「成る程…。かくかくしかじかですか…。今は配り終わったんですかね?お疲れ様です!でもどうしてうちに…?私もう大人ですよ?」
「……務めが終わったので、少し羽を休めさせていただこうかと」
確かに、手に持っている袋は空になっている。プレゼントは全て子供達に配り終えたのだろう。
「是非休んでいってください。お茶淹れますね」
「ありがとうございます」
とは言ったものの、ティーバッグと湯を合体させるだけである。日本茶は飲めるだろうかという不安は、彼がすぐに茶に口をつけた為杞憂に終わった。
日本茶の細くて長い香りが部屋を漂う。ソノイさん、熱々のおでんも平気で食べているから猫舌とかそういうのは無いのだろう。脳人にそういう概念があるとも思えない。
「柚葉は、サンタからプレゼントを貰ったことはありますか?」
「はい、色んな物を頂きました」
「例えば、どんな物を…?」
「インド製の食器、中国にいる鼠の毛で作ったカーディガン、オモチャの宝石で飾られた木の枝、パワーストーン、タカラガイ…」
「…そういった物を欲していたのですか?幼いあなたは…」
「……サンタ、うちには来ないと思ってたんです。だから絶対に用意できない物を欲しいと言って、サンタが本当に来なかった時に”無理なものを頼んでいたんだから仕方ない”って自分を納得できるようにしていました」
「しかし、欲した物は届いた…」
「……サンタは、わかっていたのかもしれません。私が欲しいものは…光る鉢でも、燃えない布でも、宝石が付いた枝でも、竜の宝玉でも、燕が産む伝説の貝でもないって。誰かが私のことを想って用意してくれたものなら、何だっていいって知ってるのに、無理難題に応えようとしたんです」
捻くれた要求を知ったときは、きっと大慌てだっただろう。しかしサンタは、応えようとしてくれたのだ。
「…良い話ですね」
「はい。欲しいと言った物とは違いましたけど…紛れもなく、私にとっては全て宝物です」
「今年私達にはサンタの役目が回ってきました。きっと、あなたのような子供がいたら…期待には応えられません」
「…そうでしょうか?私は…ソノイさんは、何とかしようと奔走すると思いますよ」
「何故、そう言える?」
「だってソノイさん、優しいですから」
微笑めば、彼は面食らった顔をした。彼は、彼が自分で思っている以上に人格者であることに気付いていないのだろう。
確かに出会った頃のソノイさんなら分からないが…今のソノイさんなら、難題にも応えようとするのではないかと、希望を抱いてしまう。