おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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「美味しいおでんの作り方、ですか?」
「うん。ソノイさんに食べてもらいたくて…花嫁修業っていうか…」
えへへ…と照れる柚葉に対し、はるかは──花嫁修業!?令和に!?有り得ない!と、漫画家として令和女子の価値観を爆発させていた。
しかし柚葉は時代錯誤なんて気にもしておらず、「ソノイさん…」と呟いて思い浮かべたソノイの記憶にハートを飛ばしていた。以前までは喫茶どんぶらで積極的に話す相手はマスターだったが、最早今はその影もない。
「何が良いかなあ。良い食材は当然として…鍋にも気を使うとか?でもソノイさん、いつも屋台のおでんで美味しいって言ってるし…。ねえマスター、秘伝のレシピとかないの?」
「いやあ…流石にそんな都合の良いものは…」
「あるよ」
「あるんかーい!」
「あるけど…作れるかは、君次第だよ」
モゾモゾとカウンターの下から「秘伝の書」と書かれた黒いノートを見せるマスター。奪うようにそれを取り、ページをペラペラと捲った彼女はあるページで手を止める。
「あ、ある…!秘伝のおでん…略して、”秘でん”の作り方!」
「オヤジギャグ!!しかも分かりにくい!!」
「マスター、私は作るから指南して!お願い!」
「いいよ」
「…頑張ってくださ~い……」
面倒毎の気配を察したはるかはお盆で自身の顔を隠し、そそくさと逃げようとした。が、「はるかちゃんはサポートよろしく!」と柚葉に腕を掴まれ、厨房へと引き摺られて行った。
*
そこからマスターによる、”秘でん”を巡る熾烈な修行が始まった。
「基本的な作り方は一緒だよ。重要なのは、どんな想いを込めるか」
「想いを、込める……」
「誰に作りたいのか。どんな気持ちを込めたいのか。相手を思い浮かべて、強く念じながら作ること」
ステレオタイプの受験生のように鉢巻を頭に巻く。鉢巻には「合格」ではなく「おでん」と書かれていた。そして鉢巻という和風な物に反し、フリルがふんだんにあしらわれた洋風のエプロンを身に着ける。台所に立つ昭和の奥様(新妻?)像と受験生のイメージが混濁されていた。
昆布と鰹節で出汁をとる。火を見つめている柚葉は、勿論ソノイのことを思い浮かべていた。
──ソノイさん、部外者の私に沢山忠告してくれたな…。やっぱり、人間を消去してるのはヒトツ鬼に対する脳人の価値観なだけで、ソノイさん自身は凄く良い人なんだろうな…。
「…柚葉さん固まっちゃいましたよ、マスター」
「…」
──思えばソノイさんって結局は正しいことしか言ってないし…。厳しいというよりかは、ストイックなだけなんだよね。自分を律してるって感じで、かっこいい…。他人にそれを強要しないのも、スマートで素敵……!
「柚葉さん!鍋!沸騰してます!」
「ソノイさん…素敵…おでん…」
「火止めてください!止めて…止めろーーッ!!!」
*
何やかんやで食べられるレベルには修正できた出汁の中に、大根やたまごといった火が通り辛い食材から入れていく。練り物なども加えて少し経った頃に、柚葉が口を開いた。
「さっきはごめんね。ソノイさんのこと考えたらぼうっとしちゃって…」
「…そんなに好きなんですか?ソノイって…人助けもしますけど、ドンブラザーズだったら平気で攻撃してくるような奴ですよ?」
「…ドンブラザーズは正義で、脳人の三人は悪なの?」
「え…」
はるかは考え込む。変人が殆どだが、ドンブラザーズは正義の味方である…と彼女は信じている。
しかし、脳人は悪なのか…と聞かれると、返答に困る。確かに彼らはドンブラザーズの邪魔をすることが多いが、共通の敵である獣人やソノシという存在はいる。特にソノシについては、脳人三人衆と手を組んで倒そうとした程だ。
何より、ソノザがいる。彼ははるかの漫画を心から楽しんでくれる読者であり、同時に容赦なく厳しいアドバイスをしてくれる編集長だ。彼の叱咤激励は、何度もはるかの心を動かした。
「いや…そういう、訳じゃ…」
「確かに…みんなの言葉を信じるのなら、ソノイさんは沢山の人間を消している。でも、ソノイさんがいなかったら…私はヒトツ鬼にやられていた場面が沢山あった」
「そうですね…」
「…もし、ソノイさんがいなかったら私は……」
「具、煮込み過ぎてる」
「えっ?」
マスターに言われて柚葉が鍋を見ると、具と具がぶつかって崩れていた。完全に煮過ぎである。
「ああーっ!やばいやばいやばい!どうしようこれ!?」
「ええ!?いやもうそのままいくしかないんじゃないですか!?」
「それでいいの!?マスターどうするのこれ!助けて!介人ッ!!」
「うん。ソノイさんに食べてもらいたくて…花嫁修業っていうか…」
えへへ…と照れる柚葉に対し、はるかは──花嫁修業!?令和に!?有り得ない!と、漫画家として令和女子の価値観を爆発させていた。
しかし柚葉は時代錯誤なんて気にもしておらず、「ソノイさん…」と呟いて思い浮かべたソノイの記憶にハートを飛ばしていた。以前までは喫茶どんぶらで積極的に話す相手はマスターだったが、最早今はその影もない。
「何が良いかなあ。良い食材は当然として…鍋にも気を使うとか?でもソノイさん、いつも屋台のおでんで美味しいって言ってるし…。ねえマスター、秘伝のレシピとかないの?」
「いやあ…流石にそんな都合の良いものは…」
「あるよ」
「あるんかーい!」
「あるけど…作れるかは、君次第だよ」
モゾモゾとカウンターの下から「秘伝の書」と書かれた黒いノートを見せるマスター。奪うようにそれを取り、ページをペラペラと捲った彼女はあるページで手を止める。
「あ、ある…!秘伝のおでん…略して、”秘でん”の作り方!」
「オヤジギャグ!!しかも分かりにくい!!」
「マスター、私は作るから指南して!お願い!」
「いいよ」
「…頑張ってくださ~い……」
面倒毎の気配を察したはるかはお盆で自身の顔を隠し、そそくさと逃げようとした。が、「はるかちゃんはサポートよろしく!」と柚葉に腕を掴まれ、厨房へと引き摺られて行った。
*
そこからマスターによる、”秘でん”を巡る熾烈な修行が始まった。
「基本的な作り方は一緒だよ。重要なのは、どんな想いを込めるか」
「想いを、込める……」
「誰に作りたいのか。どんな気持ちを込めたいのか。相手を思い浮かべて、強く念じながら作ること」
ステレオタイプの受験生のように鉢巻を頭に巻く。鉢巻には「合格」ではなく「おでん」と書かれていた。そして鉢巻という和風な物に反し、フリルがふんだんにあしらわれた洋風のエプロンを身に着ける。台所に立つ昭和の奥様(新妻?)像と受験生のイメージが混濁されていた。
昆布と鰹節で出汁をとる。火を見つめている柚葉は、勿論ソノイのことを思い浮かべていた。
──ソノイさん、部外者の私に沢山忠告してくれたな…。やっぱり、人間を消去してるのはヒトツ鬼に対する脳人の価値観なだけで、ソノイさん自身は凄く良い人なんだろうな…。
「…柚葉さん固まっちゃいましたよ、マスター」
「…」
──思えばソノイさんって結局は正しいことしか言ってないし…。厳しいというよりかは、ストイックなだけなんだよね。自分を律してるって感じで、かっこいい…。他人にそれを強要しないのも、スマートで素敵……!
「柚葉さん!鍋!沸騰してます!」
「ソノイさん…素敵…おでん…」
「火止めてください!止めて…止めろーーッ!!!」
*
何やかんやで食べられるレベルには修正できた出汁の中に、大根やたまごといった火が通り辛い食材から入れていく。練り物なども加えて少し経った頃に、柚葉が口を開いた。
「さっきはごめんね。ソノイさんのこと考えたらぼうっとしちゃって…」
「…そんなに好きなんですか?ソノイって…人助けもしますけど、ドンブラザーズだったら平気で攻撃してくるような奴ですよ?」
「…ドンブラザーズは正義で、脳人の三人は悪なの?」
「え…」
はるかは考え込む。変人が殆どだが、ドンブラザーズは正義の味方である…と彼女は信じている。
しかし、脳人は悪なのか…と聞かれると、返答に困る。確かに彼らはドンブラザーズの邪魔をすることが多いが、共通の敵である獣人やソノシという存在はいる。特にソノシについては、脳人三人衆と手を組んで倒そうとした程だ。
何より、ソノザがいる。彼ははるかの漫画を心から楽しんでくれる読者であり、同時に容赦なく厳しいアドバイスをしてくれる編集長だ。彼の叱咤激励は、何度もはるかの心を動かした。
「いや…そういう、訳じゃ…」
「確かに…みんなの言葉を信じるのなら、ソノイさんは沢山の人間を消している。でも、ソノイさんがいなかったら…私はヒトツ鬼にやられていた場面が沢山あった」
「そうですね…」
「…もし、ソノイさんがいなかったら私は……」
「具、煮込み過ぎてる」
「えっ?」
マスターに言われて柚葉が鍋を見ると、具と具がぶつかって崩れていた。完全に煮過ぎである。
「ああーっ!やばいやばいやばい!どうしようこれ!?」
「ええ!?いやもうそのままいくしかないんじゃないですか!?」
「それでいいの!?マスターどうするのこれ!助けて!介人ッ!!」