おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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どうやったらソノイさんに会えるかなあ、とタロウ君に聞いてみたところ「おでんの屋台に行けばいい」と言われた。その為、私は異常な頻度で屋台に通うようになった。そして、本当に高頻度でソノイさんと出会えるようになったのだ。
「今日は満月ですね。非常に美しい月だ」
「はい。たまごみたいで、美味しそうです」
「…」
少し残念そうな視線をソノイさんと屋台のおじさんから感じた。が、そんなことは全く気にせず私はおでんを食べる。出汁が染み渡っていて美味しい。ソノイさんと食べているから、余計に。
「ソノイさん、知っていますか?月では、兎が餅をついているんですよ」
「…それは、本当に餅なのですか?」
「えっ」
「もしかしたら、きびだんごの可能性もありますよね?」
「…それは…そう、かも…」
兎が、きびだんご。月で?まあ、否定はできないというか…しようがない。私は月に行ったことがないし、餅やきびだんごを作る兎を見たこともないのだから。
「…少し、幼稚でしたか?」
「いえ!興味深いですよ。そういう新しい解釈、凄く好きです」
「それは良かった」
「ノイちゃん、柚葉ちゃん。はいこれ、お月さまのサービス」
おじさんがたまごを私とソノイさんの器に入れてくれた。
「わ~やったあ。ありがとうございます」
「どうも。…そういえば、あなたの出自をお聞きしていませんでしたね」
「私の出自…。ふふ、実は私、竹から生まれたんです」
「竹から…?」
「はい。私、本当の親を知らなくて…。だからいつもおじいちゃんとおばあちゃんが言ってたんです、あなたは竹の中にいたって。まあ、私を想って吐いてくれた嘘だと思いますけどね」
「…美しい嘘ですね。あなたが愛されて育ったことはよく分かりますし、さしずめかぐや姫といったところでしょうか」
竹の中にいて、老夫婦に育てられたからかぐや姫。ソノイさんって本当に、綺麗な話を作るのが上手だなあ。ただ孤児を老夫婦が引き取っただけの話なのに、そうして育った私をかぐや姫と言ってくれるなんて。
きゅ~ん…と、胸の奥が鳴った。そうなったとかじゃなくて、鳴った。今頃私の周りにはハートが飛び交っていて、一つくらいはソノイさんにぶつかっているのだろう。
「しかし、かぐや姫は月に帰る物語だ。あなたもいずれは、どこかに帰ってしまうのか」
「か、帰らないですよ!わっ私は、ソノイさんがいるところに帰ってきますから…!」
「?何故私の元に…?」
「…好きだから……」
そう言って上目遣いで彼を見つめたが、そっと視線を逸らされてしまった。ノーダメージである。
実をいうと、ソノイさん攻略の為に非常にくだらない恋愛指南書を読み漁ったのである。男の人には上目遣いが効く、と書いていた。
「…ダメかあ…」
「柚葉ちゃん。ノイちゃんを落とすのはおでんを美味く作るくらい難しいよ~」
「おじさんのおでんの味受け継いだら、落とせますかね?」
「いや…前も言ったように私は脳人で…」
「おでんの作り方練習します!絶対にソノイさんに美味しいと言わせてみせますから…!」
「…はあ…」
やれやれといった感じで溜め息を吐いたものの、ソノイさんは何だか楽しそうにはんぺんを口に運んだ。こういう姿が毎日見れたら幸せだろうなあ。
「…ああそれと…先日獣人についての警告をしましたが、もう一つ追加しておきます」
「?」
「…赤い服、口元に紅をさし…耳に金粉がついている人物を見たら、すぐに逃げてください」
「えっ…耳に…金粉?な、何ですかそれ…不審者じゃないですか…」
「名をソノシ…我々の観察官。所謂お目付け役ですが、最早ヒトツ鬼と変わらない傲慢さを持ち得ています。何をするか分からないので、こちらも十分に気を付けてください。我々脳人三人衆とも対立しています」
「な…何をするか分からないって…」
「極度の潔癖症です。消火剤のようなものを人間に向けて噴射する程の異常性があります」
「いやただの不審者ですよそれ!」
潔癖症…。なるほど。潔癖といえばソノイさんも近いかもしれないが、ソノイさんはそんな奇行をとる人ではない。…多分。
確かに他人にも清廉であることを望むが、押し付けることはしない。以前私に言った掟も、今の私からすればおまじないのようなものである。
「…お恥ずかしながら、私一人はおろか脳人三人衆でも太刀打ちは難しい相手です。あなたも、何かされる前に逃げて下さい」
「わ、わかりました。変な人ばかり出ますね、この街…」
「…脳人とは、人間には理解できない存在なのです。人間が存在することで成り立つ我々の世界、イデオンですが…人間の欲望次第で壊されかねない。人間と脳人は共生の関係でありながらも、多くの脳人にとって人間は下等な存在という扱いなのです」
「…ソノイさんは、どう思っているんですか?」
「…人間の命は素晴らしいものです。しかし、過ぎたる欲望を抱いた者は穢らわしいと思います。私は多くの人間を消去してきましたし…その点でドンブラザーズとは対立していますから」
仲良くはなれないのだろうか、という疑問は胸の内に留めた。それはきっと、私が言うことではないから。
人間と脳人の関係はともかくとして、ドンブラザーズとの関係に口出しはできない。私は所詮、ソノイさんとおでんを食べて、たまに助けてもらうだけの仲だ。
「ソノイさん、私がもしヒトツ鬼になったら…どんな理由だったとしても、すぐに消してくださいね」
「…ええ。約束しましょう」
「今日は満月ですね。非常に美しい月だ」
「はい。たまごみたいで、美味しそうです」
「…」
少し残念そうな視線をソノイさんと屋台のおじさんから感じた。が、そんなことは全く気にせず私はおでんを食べる。出汁が染み渡っていて美味しい。ソノイさんと食べているから、余計に。
「ソノイさん、知っていますか?月では、兎が餅をついているんですよ」
「…それは、本当に餅なのですか?」
「えっ」
「もしかしたら、きびだんごの可能性もありますよね?」
「…それは…そう、かも…」
兎が、きびだんご。月で?まあ、否定はできないというか…しようがない。私は月に行ったことがないし、餅やきびだんごを作る兎を見たこともないのだから。
「…少し、幼稚でしたか?」
「いえ!興味深いですよ。そういう新しい解釈、凄く好きです」
「それは良かった」
「ノイちゃん、柚葉ちゃん。はいこれ、お月さまのサービス」
おじさんがたまごを私とソノイさんの器に入れてくれた。
「わ~やったあ。ありがとうございます」
「どうも。…そういえば、あなたの出自をお聞きしていませんでしたね」
「私の出自…。ふふ、実は私、竹から生まれたんです」
「竹から…?」
「はい。私、本当の親を知らなくて…。だからいつもおじいちゃんとおばあちゃんが言ってたんです、あなたは竹の中にいたって。まあ、私を想って吐いてくれた嘘だと思いますけどね」
「…美しい嘘ですね。あなたが愛されて育ったことはよく分かりますし、さしずめかぐや姫といったところでしょうか」
竹の中にいて、老夫婦に育てられたからかぐや姫。ソノイさんって本当に、綺麗な話を作るのが上手だなあ。ただ孤児を老夫婦が引き取っただけの話なのに、そうして育った私をかぐや姫と言ってくれるなんて。
きゅ~ん…と、胸の奥が鳴った。そうなったとかじゃなくて、鳴った。今頃私の周りにはハートが飛び交っていて、一つくらいはソノイさんにぶつかっているのだろう。
「しかし、かぐや姫は月に帰る物語だ。あなたもいずれは、どこかに帰ってしまうのか」
「か、帰らないですよ!わっ私は、ソノイさんがいるところに帰ってきますから…!」
「?何故私の元に…?」
「…好きだから……」
そう言って上目遣いで彼を見つめたが、そっと視線を逸らされてしまった。ノーダメージである。
実をいうと、ソノイさん攻略の為に非常にくだらない恋愛指南書を読み漁ったのである。男の人には上目遣いが効く、と書いていた。
「…ダメかあ…」
「柚葉ちゃん。ノイちゃんを落とすのはおでんを美味く作るくらい難しいよ~」
「おじさんのおでんの味受け継いだら、落とせますかね?」
「いや…前も言ったように私は脳人で…」
「おでんの作り方練習します!絶対にソノイさんに美味しいと言わせてみせますから…!」
「…はあ…」
やれやれといった感じで溜め息を吐いたものの、ソノイさんは何だか楽しそうにはんぺんを口に運んだ。こういう姿が毎日見れたら幸せだろうなあ。
「…ああそれと…先日獣人についての警告をしましたが、もう一つ追加しておきます」
「?」
「…赤い服、口元に紅をさし…耳に金粉がついている人物を見たら、すぐに逃げてください」
「えっ…耳に…金粉?な、何ですかそれ…不審者じゃないですか…」
「名をソノシ…我々の観察官。所謂お目付け役ですが、最早ヒトツ鬼と変わらない傲慢さを持ち得ています。何をするか分からないので、こちらも十分に気を付けてください。我々脳人三人衆とも対立しています」
「な…何をするか分からないって…」
「極度の潔癖症です。消火剤のようなものを人間に向けて噴射する程の異常性があります」
「いやただの不審者ですよそれ!」
潔癖症…。なるほど。潔癖といえばソノイさんも近いかもしれないが、ソノイさんはそんな奇行をとる人ではない。…多分。
確かに他人にも清廉であることを望むが、押し付けることはしない。以前私に言った掟も、今の私からすればおまじないのようなものである。
「…お恥ずかしながら、私一人はおろか脳人三人衆でも太刀打ちは難しい相手です。あなたも、何かされる前に逃げて下さい」
「わ、わかりました。変な人ばかり出ますね、この街…」
「…脳人とは、人間には理解できない存在なのです。人間が存在することで成り立つ我々の世界、イデオンですが…人間の欲望次第で壊されかねない。人間と脳人は共生の関係でありながらも、多くの脳人にとって人間は下等な存在という扱いなのです」
「…ソノイさんは、どう思っているんですか?」
「…人間の命は素晴らしいものです。しかし、過ぎたる欲望を抱いた者は穢らわしいと思います。私は多くの人間を消去してきましたし…その点でドンブラザーズとは対立していますから」
仲良くはなれないのだろうか、という疑問は胸の内に留めた。それはきっと、私が言うことではないから。
人間と脳人の関係はともかくとして、ドンブラザーズとの関係に口出しはできない。私は所詮、ソノイさんとおでんを食べて、たまに助けてもらうだけの仲だ。
「ソノイさん、私がもしヒトツ鬼になったら…どんな理由だったとしても、すぐに消してくださいね」
「…ええ。約束しましょう」