おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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柚葉がソノイにデレデレしている間にタロウが余計なことを言ってしまい、おでん屋のおやじはヒトツ鬼になった。ドンブラザーズと脳人がヒトツ鬼を追った為柚葉が店に取り残されたが、やがて彼女も戦いが終わる前に帰ってしまった。
そして数日後。夏美と抱き合う犬塚を見て「いずれ傷だらけになる」「愛という名の血を流す」と予言したソノニ。それを聞いていたソノイは、柚葉の姿を思い出していた。
「…そういえば、ソノイ。以前ドンブラザーズではない女がお前に親しくしていただろう。あの女は何者だ?」
「…わからない。ただ…水面に映る月のような人間だ」
「は?」
訳が分からない、と言いたげな様子でソノニは首を傾げた。ソノイは彼女を無視して脳人レイヤーに存在する扉を開けてそこに入っていく。移動した先はどこかの屋上。眼下のカフェでは柚葉が男に絡まれている。
「何で連絡してこなくなったんだよ」
「もうそういうのしないって決めたの」
「はあ?お前男好きなんだから無理に決まってんだろ」
「私は男好きじゃないよ。人間が好きなだけ。あと、私はもう特別に好きな人が出来たから…その人への誠意の為にも、軽率なことはしない」
柚葉は厳しい口調であしらっているが、男の方は引き下がる気配がない。しつこく彼女を口説こうとしていた。
助けに行くべきか?という感情が湧き、そんなことを思った自分自身にソノイは驚いた。柚葉はドンブラザーズや脳人のことを知っているとはいえ、所詮は部外者だ。ヒトツ鬼に襲われている訳でもない彼女を助けて、どうするというのか。
扉を開いて帰ろうとしたとき、「やめてってば!」という柚葉の声が響いた。それを聞いた瞬間彼は扉に入り──柚葉を引っ張る男の腕を掴んだ。
「そっ…ソノイさん……」
「はあ?誰だよお前──」
ソノイに食ってかかろうとしたが彼の眼圧に負け、男は捨て台詞を吐くこともなく慌てて逃げて行った。呆然としている柚葉にソノイは向き直るが、少し気まずそうに視線を逸らす。
「…お怪我は?」
「な、ないです…ソノイさんのお陰で…」
「…なら良かった」
微妙な空気が流れる。片や、またしても想い人に助けてもらってしまった女。片や、おでん屋で親しげにしてしまった男。
沈黙を破ろうと柚葉が何か話そうとしたが、それを遮ってソノイが口を開いた。
「……以前私が言ったことは、貫いているようですね」
「え?あ…は、はい!」
「あなたの清い行いのお陰で、私達はこうしてまた出会うことができた」
「…本当に、嬉しいです。ソノイさんが元に戻って…また私の前に現れてくれて…」
「…私が脳人であり、どういう存在なのかはもうご存知でしょう。何故、人間ではない私にそこまで心を開くことができる?」
ソノイがそう問いかけると、「ええ?」と柚葉はぽかんとした。そして少し考える。やがて片手をグーにし、もう片方の手のひらにポンと置いた。
「好きだから、です!」
「…好き?」
「はい!私、ソノイさんが好きなんです。だからソノイさんがどんな人でも、構わないんです」
「…」
それは、自分で言っていて恥ずかしくないのだろうか…と訝しむ。しかし柚葉はそう答えるのが当たり前で、ソノイに対し好意をオープンにすることは当然であるかのようにぺらぺらと喋り始めた。
「ソノイさんの好きなところは~まず、ロマンチックなところ!言葉選びが凄く綺麗で、聴いているだけで夢を見ているような気分になります」
「それは…どうも」
「次はご飯を食べる時の姿です!」
「…?」
「あとは…見た目も、声も…全部が素敵です。かっこよくて、可愛いです」
言っちゃった~と照れ笑いをし、両手を頬に当てる柚葉。ソノイはふむと口元に手を当て、「普通は」と前置きをして語り始める。
「容姿だったり…性格が、最初に述べられるのでは?」
「…うーん…。私…ソノイさんの姿が変わっても、変わらず好きです。性格は…まだソノイさんがどんな人なのかよく知らないですから」
「…自分に執着しないところが良い、と言っていたのは?」
「あれは…今思えば、キッカケでした。今は…ソノイさんに求められたら、嬉しいなって思います」
「……」
人間を愛した結果人間と脳人の共存を唱えたドン家が処刑されたように、脳人が人間を想うことは許されない。脳人の掟でそう決まっている。どれだけ柚葉がソノイを好いていようとも、その掟がある限りソノイから行動をとることは許されない。
「……その想いには応えられない。私は脳人だ」
「…」
「あなたを助けるのは…好意があるからではない。ヒトツ鬼は、我々にとっても邪魔な存在です」
「…じゃあどうして、さっき私を助けてくれたんですか…?」
「…」
その真意は、ソノイにすら分からなかった。
そして数日後。夏美と抱き合う犬塚を見て「いずれ傷だらけになる」「愛という名の血を流す」と予言したソノニ。それを聞いていたソノイは、柚葉の姿を思い出していた。
「…そういえば、ソノイ。以前ドンブラザーズではない女がお前に親しくしていただろう。あの女は何者だ?」
「…わからない。ただ…水面に映る月のような人間だ」
「は?」
訳が分からない、と言いたげな様子でソノニは首を傾げた。ソノイは彼女を無視して脳人レイヤーに存在する扉を開けてそこに入っていく。移動した先はどこかの屋上。眼下のカフェでは柚葉が男に絡まれている。
「何で連絡してこなくなったんだよ」
「もうそういうのしないって決めたの」
「はあ?お前男好きなんだから無理に決まってんだろ」
「私は男好きじゃないよ。人間が好きなだけ。あと、私はもう特別に好きな人が出来たから…その人への誠意の為にも、軽率なことはしない」
柚葉は厳しい口調であしらっているが、男の方は引き下がる気配がない。しつこく彼女を口説こうとしていた。
助けに行くべきか?という感情が湧き、そんなことを思った自分自身にソノイは驚いた。柚葉はドンブラザーズや脳人のことを知っているとはいえ、所詮は部外者だ。ヒトツ鬼に襲われている訳でもない彼女を助けて、どうするというのか。
扉を開いて帰ろうとしたとき、「やめてってば!」という柚葉の声が響いた。それを聞いた瞬間彼は扉に入り──柚葉を引っ張る男の腕を掴んだ。
「そっ…ソノイさん……」
「はあ?誰だよお前──」
ソノイに食ってかかろうとしたが彼の眼圧に負け、男は捨て台詞を吐くこともなく慌てて逃げて行った。呆然としている柚葉にソノイは向き直るが、少し気まずそうに視線を逸らす。
「…お怪我は?」
「な、ないです…ソノイさんのお陰で…」
「…なら良かった」
微妙な空気が流れる。片や、またしても想い人に助けてもらってしまった女。片や、おでん屋で親しげにしてしまった男。
沈黙を破ろうと柚葉が何か話そうとしたが、それを遮ってソノイが口を開いた。
「……以前私が言ったことは、貫いているようですね」
「え?あ…は、はい!」
「あなたの清い行いのお陰で、私達はこうしてまた出会うことができた」
「…本当に、嬉しいです。ソノイさんが元に戻って…また私の前に現れてくれて…」
「…私が脳人であり、どういう存在なのかはもうご存知でしょう。何故、人間ではない私にそこまで心を開くことができる?」
ソノイがそう問いかけると、「ええ?」と柚葉はぽかんとした。そして少し考える。やがて片手をグーにし、もう片方の手のひらにポンと置いた。
「好きだから、です!」
「…好き?」
「はい!私、ソノイさんが好きなんです。だからソノイさんがどんな人でも、構わないんです」
「…」
それは、自分で言っていて恥ずかしくないのだろうか…と訝しむ。しかし柚葉はそう答えるのが当たり前で、ソノイに対し好意をオープンにすることは当然であるかのようにぺらぺらと喋り始めた。
「ソノイさんの好きなところは~まず、ロマンチックなところ!言葉選びが凄く綺麗で、聴いているだけで夢を見ているような気分になります」
「それは…どうも」
「次はご飯を食べる時の姿です!」
「…?」
「あとは…見た目も、声も…全部が素敵です。かっこよくて、可愛いです」
言っちゃった~と照れ笑いをし、両手を頬に当てる柚葉。ソノイはふむと口元に手を当て、「普通は」と前置きをして語り始める。
「容姿だったり…性格が、最初に述べられるのでは?」
「…うーん…。私…ソノイさんの姿が変わっても、変わらず好きです。性格は…まだソノイさんがどんな人なのかよく知らないですから」
「…自分に執着しないところが良い、と言っていたのは?」
「あれは…今思えば、キッカケでした。今は…ソノイさんに求められたら、嬉しいなって思います」
「……」
人間を愛した結果人間と脳人の共存を唱えたドン家が処刑されたように、脳人が人間を想うことは許されない。脳人の掟でそう決まっている。どれだけ柚葉がソノイを好いていようとも、その掟がある限りソノイから行動をとることは許されない。
「……その想いには応えられない。私は脳人だ」
「…」
「あなたを助けるのは…好意があるからではない。ヒトツ鬼は、我々にとっても邪魔な存在です」
「…じゃあどうして、さっき私を助けてくれたんですか…?」
「…」
その真意は、ソノイにすら分からなかった。