おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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ドンモモタロウがヒトツ鬼を斬ると、ヒトツ鬼は人間に戻った。他のお供達は元の場所へ戻って行き、現場にはドンモモタロウとヒトツ鬼だった人間、そして取り込まれていた柚葉が残された。
「…あんたか」
「…タロウ君…」
「あんた、本当にヒトツ鬼とよく出会うな」
柚葉は気絶している人間を一瞥し、「ごめんなさい」と謝る。タロウは謝られる理由が分からず首を傾げた。
「私が…今まで、こんな生き方してきたから…」
「何を言っている?」
「…私が、軽率な人間だったから…彼もヒトツ鬼になってしまった」
「こいつがヒトツ鬼になることと、あんたは関係ないだろう」
「火をつけたのは、私。私がヒトツ鬼に襲われるのは、罰なんだと思う。みんなやソノイさんには…迷惑をかけて、ごめん」
「ソノイへの心配なら無用だ」
「…ソノイさんは、人間を消してるから?」
「違う。ソノイは俺が倒したからだ」
彼女はタロウを見つめる。真実である。タロウは長い戦いの末ソノイと決着をつけ、彼を斬った。
「…どうして……」
「決着をつけただけだ。奴もそれを望んでいた」
「…ソノイさん、死んだの…?」
「奴の骸は動いたがな」
ソノイの変身形態であるバロンクロスと交戦し、力を吸い取られたことを思い出しながらタロウはそう語る。骸は動いた、という言葉に疑問を抱きながらも、柚葉はずるりと崩れ落ちて座り込んでしまった。地面に手を付き、「嘘」「どうして」と言葉を繰り返す。
「また会えるって…言ったのに……!」
ソノイにとっては、約束でも何でもない。ただ彼女を律しようと、言葉を押し付けただけだ。柚葉は勝手に縋って、彼女にとっての願いにした。ソノイの言葉を、自分で呪いにしたのだ。
タロウには、彼女を哀れむ気持ちはなかった。ソノイとは何の後腐れもなく決着をつけた。ただそれだけだ。そこには柚葉の感情など、入る余地もない。何故なら、タロウには関係が無いのだから。
「……私…ソノイさんのこと、何も知らないんだね…」
「…そうだな。ドンブラザーズではないあんたは蚊帳の外だ」
「…教えて、ほしい。ソノイさんに関するもの、沢山…」
「知ってどうする?ソノイはもう…」
「もう会えなくても…ソノイさんを知ろうとすることはできるから…」
「…そうか」
タロウは柚葉を立たせた。引きずる形で彼女をおでんの屋台へと連れて行き、無理矢理椅子に座らせる。ぽかんとしている彼女を見た屋台のおやじは、「今日は美人さんと一緒かい」とタロウをからかった。
「美人?どこにいる」
「そりゃあ、隣のお嬢さんだろう」
「…?」
「お嬢さん、何にする?うちは何でも美味いよ」
「えっと…じゃあ、たまごで…」
「はいよ。そっちは?」
「しらたきだ」
たまごとしらたきをそれぞれ掬い、差し出す。いただきます、と二人は仲良く並んでおでんを食べ始めた。
「……何で、おでん?」
「ソノイにおでんを教えたのは俺だ。まあ、一緒に食べることは現実では無かったが…」
「…そうなんだ…。うん…美味しいね、おでん…」
「ああ」
黙々と食べ進める。正直今の季節におでんは熱いくらいだが、その熱さが彼女の苦しみを紛らわした。様々な具を食べていくうちに育ての親である老夫婦を思い出し、ズズ、と鼻を啜る。
「…泣いてるのか?」
「……おばあちゃんのおでん思い出しちゃって…」
「そうか…」
勿論、祖父母はおろか両親すらいないタロウには共感のできないことだった。
「懐かしいなあ…。おばあちゃんね、いつもたまごは一個多く入れてくれてたの」
「たまごが好きなのか?」
「うん。たまごの中って、満月みたいで好き」
「月か…」
「満月を、ぱくりと食べちゃうの」
そう語りながら食べる柚葉の姿は、妙に婀娜っぽい。タロウは本当に何となくではあるが、彼女が人─主に男─をヒトツ鬼にする程狂わせる原因を察した。だが、タロウ自身は何も感じない。柚葉と接触しても、何の感情も湧かなかった。
「ソノイさんにも、おでん食べてもらいたかったなあ。そうしたら私、ソノイさんに自分のたまご一個渡したいし」
「…普通にソノイがもう一つ多く頼めばいいんじゃないのか?」
「こういうのは気持ちなの。でも…私の愛は、たまご一個じゃ足りないな。おじさん、たまごもう一個お願いします。渡すのは、タロウ君で」
「何故俺に渡すんだ」
「たまご一個でお礼したいから」
タロウへの気持ちは、今のところたまご一つだった。
「…あんたか」
「…タロウ君…」
「あんた、本当にヒトツ鬼とよく出会うな」
柚葉は気絶している人間を一瞥し、「ごめんなさい」と謝る。タロウは謝られる理由が分からず首を傾げた。
「私が…今まで、こんな生き方してきたから…」
「何を言っている?」
「…私が、軽率な人間だったから…彼もヒトツ鬼になってしまった」
「こいつがヒトツ鬼になることと、あんたは関係ないだろう」
「火をつけたのは、私。私がヒトツ鬼に襲われるのは、罰なんだと思う。みんなやソノイさんには…迷惑をかけて、ごめん」
「ソノイへの心配なら無用だ」
「…ソノイさんは、人間を消してるから?」
「違う。ソノイは俺が倒したからだ」
彼女はタロウを見つめる。真実である。タロウは長い戦いの末ソノイと決着をつけ、彼を斬った。
「…どうして……」
「決着をつけただけだ。奴もそれを望んでいた」
「…ソノイさん、死んだの…?」
「奴の骸は動いたがな」
ソノイの変身形態であるバロンクロスと交戦し、力を吸い取られたことを思い出しながらタロウはそう語る。骸は動いた、という言葉に疑問を抱きながらも、柚葉はずるりと崩れ落ちて座り込んでしまった。地面に手を付き、「嘘」「どうして」と言葉を繰り返す。
「また会えるって…言ったのに……!」
ソノイにとっては、約束でも何でもない。ただ彼女を律しようと、言葉を押し付けただけだ。柚葉は勝手に縋って、彼女にとっての願いにした。ソノイの言葉を、自分で呪いにしたのだ。
タロウには、彼女を哀れむ気持ちはなかった。ソノイとは何の後腐れもなく決着をつけた。ただそれだけだ。そこには柚葉の感情など、入る余地もない。何故なら、タロウには関係が無いのだから。
「……私…ソノイさんのこと、何も知らないんだね…」
「…そうだな。ドンブラザーズではないあんたは蚊帳の外だ」
「…教えて、ほしい。ソノイさんに関するもの、沢山…」
「知ってどうする?ソノイはもう…」
「もう会えなくても…ソノイさんを知ろうとすることはできるから…」
「…そうか」
タロウは柚葉を立たせた。引きずる形で彼女をおでんの屋台へと連れて行き、無理矢理椅子に座らせる。ぽかんとしている彼女を見た屋台のおやじは、「今日は美人さんと一緒かい」とタロウをからかった。
「美人?どこにいる」
「そりゃあ、隣のお嬢さんだろう」
「…?」
「お嬢さん、何にする?うちは何でも美味いよ」
「えっと…じゃあ、たまごで…」
「はいよ。そっちは?」
「しらたきだ」
たまごとしらたきをそれぞれ掬い、差し出す。いただきます、と二人は仲良く並んでおでんを食べ始めた。
「……何で、おでん?」
「ソノイにおでんを教えたのは俺だ。まあ、一緒に食べることは現実では無かったが…」
「…そうなんだ…。うん…美味しいね、おでん…」
「ああ」
黙々と食べ進める。正直今の季節におでんは熱いくらいだが、その熱さが彼女の苦しみを紛らわした。様々な具を食べていくうちに育ての親である老夫婦を思い出し、ズズ、と鼻を啜る。
「…泣いてるのか?」
「……おばあちゃんのおでん思い出しちゃって…」
「そうか…」
勿論、祖父母はおろか両親すらいないタロウには共感のできないことだった。
「懐かしいなあ…。おばあちゃんね、いつもたまごは一個多く入れてくれてたの」
「たまごが好きなのか?」
「うん。たまごの中って、満月みたいで好き」
「月か…」
「満月を、ぱくりと食べちゃうの」
そう語りながら食べる柚葉の姿は、妙に婀娜っぽい。タロウは本当に何となくではあるが、彼女が人─主に男─をヒトツ鬼にする程狂わせる原因を察した。だが、タロウ自身は何も感じない。柚葉と接触しても、何の感情も湧かなかった。
「ソノイさんにも、おでん食べてもらいたかったなあ。そうしたら私、ソノイさんに自分のたまご一個渡したいし」
「…普通にソノイがもう一つ多く頼めばいいんじゃないのか?」
「こういうのは気持ちなの。でも…私の愛は、たまご一個じゃ足りないな。おじさん、たまごもう一個お願いします。渡すのは、タロウ君で」
「何故俺に渡すんだ」
「たまご一個でお礼したいから」
タロウへの気持ちは、今のところたまご一つだった。