おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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私はあの日から、人とみだりに仲良くするのをやめた。家には呼ばない。行かない。二人きりでは遊ばない。特に、男の子とは。
ソノイさんへの誠意である。いつかソノイさんと会う為に、会った時恥ずかしくないように自分を戒める。少し辛いが、あの時のソノイさんが目に焼き付いていて…忘れられないから、続けられている。ソノイさんの為なら、全てを捨てる覚悟ができた。
「ねえ、マスター…。結局柚葉さんって、王子様とは会えたんですか?」
「会えたみたいだよ」
「ええ~っ!すごい!漫画みたい!柚葉さん、王子様って誰だったんですか!?」
「……」
ソノイさん…かっこよかったな…。ロマンチックで、顔が綺麗で、背が高くて、足も長くて…。
「柚葉さーん?」
「…」
「柚葉さーーん!!」
「……」
「…駄目だこりゃ…」
あんな人が…恋人だったら素敵だろうな…。
今まで、恋人がいる人生なんて考えたこともなかった。好きな人はあくまでも好きな人で、自分の手元に無くてもいいと思っていたのだ。
でも、ソノイさんがもし自分以外の人と恋愛関係を築いていたら…きっと、苦しくて仕方ない。死にたくなると思うし、本当に死んでしまうかもしれない。
「そんなの…そんなのやだー!!」
「うわっ何!?急に…」
「はるかちゃん…どうしよう!!」
「えっ!?な、何がですか!?」
「私…私、王子様に言われたの…。欲深くなったら駄目だって…。でも、私…あの人のこと考えると、どうしようもない程ワガママになっちゃうよ…!」
そう言って彼女の肩を掴むと、はるかちゃんはハッとした様子で手を口に当てた。持っていたお盆が床に落ち、ガタン!と大きな音を立てる。
「それは…恋です!!」
「恋……。でも、あの人は…欲深いのは駄目だって言ってた…。欲を捨てろって…」
「そんなことができるのはとんでもない聖人だけですよ!もし柚葉さんがその人への欲を無くそうとしてる間に、その人に恋人ができたらどうするんですか!?」
「…あの人に…恋人……」
私じゃない誰かに、愛を囁くソノイさん。そんなの、考えただけで悲しくなる。嫌だ。そんな、こと……。
「そんなの嫌だ!!ソノイさんに女ができるなんて!!一生私だけを想っててほしい!!私が死んだ後もしばらく…10年以上は引きずっててほしい!!」
「いや重ッ!!?」
「いや…僕はわかります、柚葉さんの気持ち!僕も、みほちゃんがそうなってしまうと思うと……耐えられません!」
「だよね!?雉野さんなら分かってくれると思ってた!」
「………ちょっと待って。今柚葉さん……ソノイって言った?」
「え…?言った、けど…」
「ソノイって…あの、何か妙にテカテカしてて羽ついた服着てる…”あの”ソノイ?」
「…何で、知ってるの…?」
緊張感が走る。何で…はるかちゃんが、ソノイさんのことを知ってるの?しかも、何だか訳知り顔って感じだし…。
…もしかして…元カノ……?
「ま、待って!!元カノじゃないです!そっち方面では何の関係もありません!」
「…タロウ君もソノイさんのこと知ってた…。もしかしてみんな、何か知ってる…?」
「……」
雉野さん、はるかちゃん、あとついでに居合わせた教授が顔を見合わせた。どうやらこの様子を見るからに、確定で良さそうだ。ここの人達は繋がっている。
「…柚葉さん。黙ってて…ごめんなさい。実は私達…タロウが率いるお供で、ドンブラザーズなんです」
「…」
「ヒトツ鬼に襲われる柚葉さんを何度も見てきました。それで…えっと、ソノイは敵なんです。正確には、あと二人いるんですけど…」
「…敵って…何?」
「脳人、っていう存在らしいです。私達も詳しくはまだ知らなくて…。でも、ソノイ達脳人がヒトツ鬼を倒すと…ヒトツ鬼になった人間は消去されてしまうんです」
「えっ……」
ソノイさんは今まで、何体もの怪物…いや、ヒトツ鬼を斬ってきた。それじゃあ、まさか…。
「…ソノイは、柚葉さんを襲うヒトツ鬼を斬る度に…人間を消しています。ヒトツ鬼は、私達ドンブラザーズが倒さないと元の人間に戻れないんです」
「…」
はるかちゃん達が言いたいことはわかる。そんな人に…安易に近付いてはいけない。言葉にしなくとも、目がそう物語っていた。それは、彼女達がソノイさんを嫌っているから…という訳ではないのだと思う。単に、危ないからだ。いつ私もヒトツ鬼になるか分からない。まさに今、ソノイさんに対しこんなに欲望を抱えているのだから。
「…心配させて、ごめんね」
「…柚葉さんが、ソノイのことを好きなのは凄く分かります。でも…ソノイは、平気で人間を消せるような奴なんです」
「…うん」
私はパフェを平らげ、スプーンを置いた。席から立ち上がってもう一度、ごめん、と謝る。
「…それでも、好きなの。私…ソノイさんがどんなに危ない人でも…人間じゃなくても、あの人が好き」
そう告げて喫茶どんぶらを出た。はるかちゃん達も好きだけど…あの人は、特別だから。
これだけ私と接触しても、何も求めてこない。ましてや、私を遠ざけようとする。禁欲主義者で…冷徹な一面もある。
何もかもが初めての人だった。最初は狩る、だなんて意識を持っていたけど…狩られたのは私の方だ。ソノイさんは最初から、ヒトツ鬼に対しても人間に対しても、狩人だったのだ。
ソノイさんへの誠意である。いつかソノイさんと会う為に、会った時恥ずかしくないように自分を戒める。少し辛いが、あの時のソノイさんが目に焼き付いていて…忘れられないから、続けられている。ソノイさんの為なら、全てを捨てる覚悟ができた。
「ねえ、マスター…。結局柚葉さんって、王子様とは会えたんですか?」
「会えたみたいだよ」
「ええ~っ!すごい!漫画みたい!柚葉さん、王子様って誰だったんですか!?」
「……」
ソノイさん…かっこよかったな…。ロマンチックで、顔が綺麗で、背が高くて、足も長くて…。
「柚葉さーん?」
「…」
「柚葉さーーん!!」
「……」
「…駄目だこりゃ…」
あんな人が…恋人だったら素敵だろうな…。
今まで、恋人がいる人生なんて考えたこともなかった。好きな人はあくまでも好きな人で、自分の手元に無くてもいいと思っていたのだ。
でも、ソノイさんがもし自分以外の人と恋愛関係を築いていたら…きっと、苦しくて仕方ない。死にたくなると思うし、本当に死んでしまうかもしれない。
「そんなの…そんなのやだー!!」
「うわっ何!?急に…」
「はるかちゃん…どうしよう!!」
「えっ!?な、何がですか!?」
「私…私、王子様に言われたの…。欲深くなったら駄目だって…。でも、私…あの人のこと考えると、どうしようもない程ワガママになっちゃうよ…!」
そう言って彼女の肩を掴むと、はるかちゃんはハッとした様子で手を口に当てた。持っていたお盆が床に落ち、ガタン!と大きな音を立てる。
「それは…恋です!!」
「恋……。でも、あの人は…欲深いのは駄目だって言ってた…。欲を捨てろって…」
「そんなことができるのはとんでもない聖人だけですよ!もし柚葉さんがその人への欲を無くそうとしてる間に、その人に恋人ができたらどうするんですか!?」
「…あの人に…恋人……」
私じゃない誰かに、愛を囁くソノイさん。そんなの、考えただけで悲しくなる。嫌だ。そんな、こと……。
「そんなの嫌だ!!ソノイさんに女ができるなんて!!一生私だけを想っててほしい!!私が死んだ後もしばらく…10年以上は引きずっててほしい!!」
「いや重ッ!!?」
「いや…僕はわかります、柚葉さんの気持ち!僕も、みほちゃんがそうなってしまうと思うと……耐えられません!」
「だよね!?雉野さんなら分かってくれると思ってた!」
「………ちょっと待って。今柚葉さん……ソノイって言った?」
「え…?言った、けど…」
「ソノイって…あの、何か妙にテカテカしてて羽ついた服着てる…”あの”ソノイ?」
「…何で、知ってるの…?」
緊張感が走る。何で…はるかちゃんが、ソノイさんのことを知ってるの?しかも、何だか訳知り顔って感じだし…。
…もしかして…元カノ……?
「ま、待って!!元カノじゃないです!そっち方面では何の関係もありません!」
「…タロウ君もソノイさんのこと知ってた…。もしかしてみんな、何か知ってる…?」
「……」
雉野さん、はるかちゃん、あとついでに居合わせた教授が顔を見合わせた。どうやらこの様子を見るからに、確定で良さそうだ。ここの人達は繋がっている。
「…柚葉さん。黙ってて…ごめんなさい。実は私達…タロウが率いるお供で、ドンブラザーズなんです」
「…」
「ヒトツ鬼に襲われる柚葉さんを何度も見てきました。それで…えっと、ソノイは敵なんです。正確には、あと二人いるんですけど…」
「…敵って…何?」
「脳人、っていう存在らしいです。私達も詳しくはまだ知らなくて…。でも、ソノイ達脳人がヒトツ鬼を倒すと…ヒトツ鬼になった人間は消去されてしまうんです」
「えっ……」
ソノイさんは今まで、何体もの怪物…いや、ヒトツ鬼を斬ってきた。それじゃあ、まさか…。
「…ソノイは、柚葉さんを襲うヒトツ鬼を斬る度に…人間を消しています。ヒトツ鬼は、私達ドンブラザーズが倒さないと元の人間に戻れないんです」
「…」
はるかちゃん達が言いたいことはわかる。そんな人に…安易に近付いてはいけない。言葉にしなくとも、目がそう物語っていた。それは、彼女達がソノイさんを嫌っているから…という訳ではないのだと思う。単に、危ないからだ。いつ私もヒトツ鬼になるか分からない。まさに今、ソノイさんに対しこんなに欲望を抱えているのだから。
「…心配させて、ごめんね」
「…柚葉さんが、ソノイのことを好きなのは凄く分かります。でも…ソノイは、平気で人間を消せるような奴なんです」
「…うん」
私はパフェを平らげ、スプーンを置いた。席から立ち上がってもう一度、ごめん、と謝る。
「…それでも、好きなの。私…ソノイさんがどんなに危ない人でも…人間じゃなくても、あの人が好き」
そう告げて喫茶どんぶらを出た。はるかちゃん達も好きだけど…あの人は、特別だから。
これだけ私と接触しても、何も求めてこない。ましてや、私を遠ざけようとする。禁欲主義者で…冷徹な一面もある。
何もかもが初めての人だった。最初は狩る、だなんて意識を持っていたけど…狩られたのは私の方だ。ソノイさんは最初から、ヒトツ鬼に対しても人間に対しても、狩人だったのだ。