おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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気の向くままに、という言葉通り、私は特に何のアクションも起こさず日々を送った。
カフェでちらちらと周りの様子を窺う。いつもなら声を掛けられるのだが、今日は何だか反応が悪い。何でだろうと思っていると、原因がわかった。とんでもない美女がいる。
白い服を着た美女は「お前の愛を語れ」と言って若い男の子達を口説いていた。いや、あれは口説いているのか?どちらかというと脅しに見える。しかし、美女からの逆ナンということもあって男の子達は喜んで口説き文句を並べていた。それを全てくだらないと一蹴し、私の隣に来る。一瞥された。
「…女か。女は別にいい…」
「どういう意味かなあ、それ。狩りの場に狩人は二人もいらないんだけど」
「狩人?お前、獣人か…?」
ジロジロと私を眺め、「それはないか」と呟き、彼女は歩いて行ってしまった。それを慌てて追いかける男の子。見覚えがある。
「待ってよ!物足りないなら何度でも言うからさ!」
「つまらないと言った筈だ。失せろ」
「そんなあ…」
「……──君?」
「え……柚葉ちゃん?」
顔を見合わせる。何度か遊んだ子だった。
「……」
「久しぶり。逆ナンされるなんてすごいね~。今の人凄い綺麗だったし」
「い、いや…誤解で…」
「何が?」
「お、俺は柚葉ちゃん一筋だから!今の子は魔が差したっていうか…その…」
「ええ…?──君とはそんなに遊んでないし…別にそこまで気にしてないっていうか…」
「はあ!?」
あの青い人と会ってしまった今となっては、殆どの男の子はどうでもいいのである。ある程度遊んで分かったが、尻軽と呼ばれる女の所に通う男の子は大した思考を持っていない。
しかし何故か相手を怒らせてしまったようで、彼は拳を握り締めてわなわなと震えた。
「何で誰も…俺の女にならないんだよ!!」
そう絶叫して、彼も怪物へと姿を変えてしまった。またか。一度見ている為正直述べられる感想が無い。
でも、もしかしたら。また、あの人が来てくれるかもしれない。今度は怪我をしてない為余裕がある。
「俺の女になれ~!!」
「だ、誰か助けて~…!」
怖がって腰を抜かしているフリをしていると、コツコツと足音が聞こえてきた。その方向を見ると──あの時の、青い人が歩いている。今度は姿がよく見えた。
「あ……」
「また会いましたね」
あの人が腕に付けたブレスレットのようなものに触れると、彼は青と白の騎士のような姿になった。怪物のようだが、なんというか、悪そうなものには見えない。だが、ヒーローらしい姿をしている訳でもない。善でも悪でもなさそうな…その狭間にいるようなスタイルだ。
「散れ」
騎士が剣で怪物を斬り捨てると、怪物は爆炎と雄叫びを上げて消えてしまった。すぐに騎士から人間の姿に戻り、青い瞳が私を一瞥する。
「……あの時も、そうやってあなたが助けてくれたんですか…?」
「助けたつもりはありませんが…そうなりますね」
「…あの、お名前…やっぱり教えていただけないんですか?」
私に手を差し伸べて立たせたあと、彼は視線を泳がせた。そして暫く思案したあと、口を開く。
「ソノイ……と申します」
「そのい…。ソノイ、さん……。わ、私、巴柚葉って言います。ずっと、ソノイさんのことを探してたんです…」
「何故?」
「…あなたを…夢の中だけの人にしたくなくて…」
どうも、この人といると詩的な言葉選びになってしまう。今まで、人と話すときにこんな表現をしたことなんてないのに。恥ずかしいという感情は一切出てこない。もっと、そういう浪漫的な世界を感じたいと思う。
「夢追い人ですね」
「…でも、夢じゃなかった。ソノイさんは、本当にいた……」
「では、あなたの夢はここまでということで。この先は、何を追うんです?」
「…ソノイさん自身を、追います」
「…困りましたね。私は、あなたが追うような者ではありませんから…」
それは、先程騎士の姿に変わったのと何か関係があるのだろうか。
だとしても、私はソノイさんを理解したい。何故丁寧に接してくれるのに、私と触れ合うことは避けているのか。禁欲主義なのだろうか。そうだとしても、私は話をするだけでも十分なのに。
「あなたは、どうか夢の中にいてください。夢から覚めては、きっと辛い思いをするだけです。茨の道は、靴を履いて歩こうとも堪えます」
「そんな…」
「それでは失礼します。また会う時は、現実ではなく夢の中でお会いしましょう」
「ソノイさん…!」
手を伸ばしたが、彼は背を向けて行ってしまった。今度はちゃんと現実で会えたのに、また会えなくなってしまった。
私の気持ちや態度が迷惑だったのだろう。だから私を傷付けない言い方で遠ざけて、距離をとられてしまった。優しい人だから。ソノイさんが私を求めることはないから、そういう態度をとるのが誠実だと判断したのだと思う。
誠実さは、痛い。
カフェでちらちらと周りの様子を窺う。いつもなら声を掛けられるのだが、今日は何だか反応が悪い。何でだろうと思っていると、原因がわかった。とんでもない美女がいる。
白い服を着た美女は「お前の愛を語れ」と言って若い男の子達を口説いていた。いや、あれは口説いているのか?どちらかというと脅しに見える。しかし、美女からの逆ナンということもあって男の子達は喜んで口説き文句を並べていた。それを全てくだらないと一蹴し、私の隣に来る。一瞥された。
「…女か。女は別にいい…」
「どういう意味かなあ、それ。狩りの場に狩人は二人もいらないんだけど」
「狩人?お前、獣人か…?」
ジロジロと私を眺め、「それはないか」と呟き、彼女は歩いて行ってしまった。それを慌てて追いかける男の子。見覚えがある。
「待ってよ!物足りないなら何度でも言うからさ!」
「つまらないと言った筈だ。失せろ」
「そんなあ…」
「……──君?」
「え……柚葉ちゃん?」
顔を見合わせる。何度か遊んだ子だった。
「……」
「久しぶり。逆ナンされるなんてすごいね~。今の人凄い綺麗だったし」
「い、いや…誤解で…」
「何が?」
「お、俺は柚葉ちゃん一筋だから!今の子は魔が差したっていうか…その…」
「ええ…?──君とはそんなに遊んでないし…別にそこまで気にしてないっていうか…」
「はあ!?」
あの青い人と会ってしまった今となっては、殆どの男の子はどうでもいいのである。ある程度遊んで分かったが、尻軽と呼ばれる女の所に通う男の子は大した思考を持っていない。
しかし何故か相手を怒らせてしまったようで、彼は拳を握り締めてわなわなと震えた。
「何で誰も…俺の女にならないんだよ!!」
そう絶叫して、彼も怪物へと姿を変えてしまった。またか。一度見ている為正直述べられる感想が無い。
でも、もしかしたら。また、あの人が来てくれるかもしれない。今度は怪我をしてない為余裕がある。
「俺の女になれ~!!」
「だ、誰か助けて~…!」
怖がって腰を抜かしているフリをしていると、コツコツと足音が聞こえてきた。その方向を見ると──あの時の、青い人が歩いている。今度は姿がよく見えた。
「あ……」
「また会いましたね」
あの人が腕に付けたブレスレットのようなものに触れると、彼は青と白の騎士のような姿になった。怪物のようだが、なんというか、悪そうなものには見えない。だが、ヒーローらしい姿をしている訳でもない。善でも悪でもなさそうな…その狭間にいるようなスタイルだ。
「散れ」
騎士が剣で怪物を斬り捨てると、怪物は爆炎と雄叫びを上げて消えてしまった。すぐに騎士から人間の姿に戻り、青い瞳が私を一瞥する。
「……あの時も、そうやってあなたが助けてくれたんですか…?」
「助けたつもりはありませんが…そうなりますね」
「…あの、お名前…やっぱり教えていただけないんですか?」
私に手を差し伸べて立たせたあと、彼は視線を泳がせた。そして暫く思案したあと、口を開く。
「ソノイ……と申します」
「そのい…。ソノイ、さん……。わ、私、巴柚葉って言います。ずっと、ソノイさんのことを探してたんです…」
「何故?」
「…あなたを…夢の中だけの人にしたくなくて…」
どうも、この人といると詩的な言葉選びになってしまう。今まで、人と話すときにこんな表現をしたことなんてないのに。恥ずかしいという感情は一切出てこない。もっと、そういう浪漫的な世界を感じたいと思う。
「夢追い人ですね」
「…でも、夢じゃなかった。ソノイさんは、本当にいた……」
「では、あなたの夢はここまでということで。この先は、何を追うんです?」
「…ソノイさん自身を、追います」
「…困りましたね。私は、あなたが追うような者ではありませんから…」
それは、先程騎士の姿に変わったのと何か関係があるのだろうか。
だとしても、私はソノイさんを理解したい。何故丁寧に接してくれるのに、私と触れ合うことは避けているのか。禁欲主義なのだろうか。そうだとしても、私は話をするだけでも十分なのに。
「あなたは、どうか夢の中にいてください。夢から覚めては、きっと辛い思いをするだけです。茨の道は、靴を履いて歩こうとも堪えます」
「そんな…」
「それでは失礼します。また会う時は、現実ではなく夢の中でお会いしましょう」
「ソノイさん…!」
手を伸ばしたが、彼は背を向けて行ってしまった。今度はちゃんと現実で会えたのに、また会えなくなってしまった。
私の気持ちや態度が迷惑だったのだろう。だから私を傷付けない言い方で遠ざけて、距離をとられてしまった。優しい人だから。ソノイさんが私を求めることはないから、そういう態度をとるのが誠実だと判断したのだと思う。
誠実さは、痛い。