おちたツキ【暴太郎・ソノイ】
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狩りの獲物は、別に王子様だけじゃない。
「介人、つくねもう食べていい?」
「まだダメ」
「ええ~」
「豚肉はすぐに火が通るから、そっちを食べて」
「はあい」
マスター、五色田介人。こっちもこっちで、謎の男。
喫茶どんぶらに通ったのは彼が主な理由だ。あそこには色々と謎の人物が集まるが、中でも一番謎が多いのはマスターだろう。狩りという意味では、殆どが守備範囲に入らない。タロウ君とはるかちゃんは若いし、教授と雉野さんは論外。一時は教授に非凡さを見出そうとしたが、むしろ俗人としての側面を見てしまった為不発に終わった。どれ程の人間を受け入れる私でも、正直アレは無いなと思ってしまった。
となれば、年齢不詳経歴不明のマスターにいくしかないのである。
「ねえ、介人って何者?」
「ただの人だよ」
「ふーん…」
さっと火が通って出来上がった豚肉を口に運ぶ。あっさりしているから食べやすいし、何よりマスターが奉行をしている鍋だからか特に美味しい。
「それで、王子様の話って?」
「ああ…えっと、あの時私怪物に襲われたんだけど…気が付いたらあの人がいて。多分助けてくれたんだとは思うんだけど…じゃあ怪物ってどうなったのかなって思って」
「…」
「介人は怪物のこと、なにか知ってる?」
「さあ」
「あ、はぐらかした」
「君が知りたいのは、そんなこと?」
「…」
バレたか。
本当は、怪物なんてどうでもいい。確信があったから、彼を誘い出した。
「……介人って多分、王子様のこと知ってるよね」
「どうかな」
「はぐらかしたままでいいんだけどさ…私、この通り一人暮らしの家に男を軽率に呼ぶような女なんだよね。王子様、そういうの嫌かなって…」
「だとしたら?」
「…王子様か趣味、どっちか捨てないといけないのかなあって…」
「そもそも、その人が君の物になる確証はないけど」
「仮定だよ」
「烏滸がましいね」
マスターは野菜を引き揚げてそう言った。そうだ、こういう人だった。恋愛漫画を読む割に、こういうキツい一言を言える人なのだ。
「…はあ…。王子様に会う方法、ないのかな…」
「あるよ」
「あるの!?」
「もっと気の向くまま過ごせばいい」
「…それ、諦めろってこと?」
「そのままの意味だよ」
ぐつぐつと煮込む音が部屋に響く。介人は涼しい顔をして熱々の具材を食べた。
味付けポン酢が染み入った野菜。皿で長くつけ過ぎたのか少し酸味がきつかった。
「野菜、クタクタじゃなくていいの?」
「シャキシャキ派~」
「取り過ぎないでね。野菜育ててるから」
まさか、祖父母に持って行けと押し付けられた鍋がこんなに役に立つとは思わなかった。ありがとうおじいちゃんおばあちゃん。労力をかけて持って来た分の元は十分過ぎるくらいとれてるよ。
「介人って何でもできるよね」
「何でも、はできないよ。できることだけだから」
「でもどんぶらには何でもあるし…」
「あるものはあるし、無いものは無いよ」
「ええ~…?」
「はい、つくね」
「ありがと~…」
箸で割って、少し冷ます。できたと思ってもすぐに食べられないのが、温かい料理のもどかしいところだ。人間関係だって同じ気がする。マスターは間違いなく鍋だし、冷めても食べれるようなものだとは思えない。
「介人、つくねもう食べていい?」
「まだダメ」
「ええ~」
「豚肉はすぐに火が通るから、そっちを食べて」
「はあい」
マスター、五色田介人。こっちもこっちで、謎の男。
喫茶どんぶらに通ったのは彼が主な理由だ。あそこには色々と謎の人物が集まるが、中でも一番謎が多いのはマスターだろう。狩りという意味では、殆どが守備範囲に入らない。タロウ君とはるかちゃんは若いし、教授と雉野さんは論外。一時は教授に非凡さを見出そうとしたが、むしろ俗人としての側面を見てしまった為不発に終わった。どれ程の人間を受け入れる私でも、正直アレは無いなと思ってしまった。
となれば、年齢不詳経歴不明のマスターにいくしかないのである。
「ねえ、介人って何者?」
「ただの人だよ」
「ふーん…」
さっと火が通って出来上がった豚肉を口に運ぶ。あっさりしているから食べやすいし、何よりマスターが奉行をしている鍋だからか特に美味しい。
「それで、王子様の話って?」
「ああ…えっと、あの時私怪物に襲われたんだけど…気が付いたらあの人がいて。多分助けてくれたんだとは思うんだけど…じゃあ怪物ってどうなったのかなって思って」
「…」
「介人は怪物のこと、なにか知ってる?」
「さあ」
「あ、はぐらかした」
「君が知りたいのは、そんなこと?」
「…」
バレたか。
本当は、怪物なんてどうでもいい。確信があったから、彼を誘い出した。
「……介人って多分、王子様のこと知ってるよね」
「どうかな」
「はぐらかしたままでいいんだけどさ…私、この通り一人暮らしの家に男を軽率に呼ぶような女なんだよね。王子様、そういうの嫌かなって…」
「だとしたら?」
「…王子様か趣味、どっちか捨てないといけないのかなあって…」
「そもそも、その人が君の物になる確証はないけど」
「仮定だよ」
「烏滸がましいね」
マスターは野菜を引き揚げてそう言った。そうだ、こういう人だった。恋愛漫画を読む割に、こういうキツい一言を言える人なのだ。
「…はあ…。王子様に会う方法、ないのかな…」
「あるよ」
「あるの!?」
「もっと気の向くまま過ごせばいい」
「…それ、諦めろってこと?」
「そのままの意味だよ」
ぐつぐつと煮込む音が部屋に響く。介人は涼しい顔をして熱々の具材を食べた。
味付けポン酢が染み入った野菜。皿で長くつけ過ぎたのか少し酸味がきつかった。
「野菜、クタクタじゃなくていいの?」
「シャキシャキ派~」
「取り過ぎないでね。野菜育ててるから」
まさか、祖父母に持って行けと押し付けられた鍋がこんなに役に立つとは思わなかった。ありがとうおじいちゃんおばあちゃん。労力をかけて持って来た分の元は十分過ぎるくらいとれてるよ。
「介人って何でもできるよね」
「何でも、はできないよ。できることだけだから」
「でもどんぶらには何でもあるし…」
「あるものはあるし、無いものは無いよ」
「ええ~…?」
「はい、つくね」
「ありがと~…」
箸で割って、少し冷ます。できたと思ってもすぐに食べられないのが、温かい料理のもどかしいところだ。人間関係だって同じ気がする。マスターは間違いなく鍋だし、冷めても食べれるようなものだとは思えない。