お姉様ナンバーワン!【50・ブーケ】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
熊手を鎌の持ち手でツンツン、とつつく。へらへら笑うだけだった。本当にびっくりする程様子が変だ。
そういえば、いつも羽織っているローブが無い。もしかして、それが今の状態と何か関係があるのだろうか。もし、熊手がローブを着ていないだけでこんなことになるのだとしたら、ブライダンとしてはメリットだ。こんな状態では変身もろくに出来ないだろう。今なら倒せるかもしれない。しかし…。
「んふふ……」
こんな状態で痛めつけて何になるというのか。
一発殴り合ってやろうというくらいの気持ちでいたが、気が抜けてしまった。溜め息を吐いて鎌を直し、カウンターに腰掛ける。
「……この間。何をしてたのかは知らないけど…お姉様に、優しくしてくれてありがとう」
「ええ~…?俺にゃんそんなのしてないけど…」
「気付いてないなら別にいい。言いたかっただけだから」
「そお?」
お姉様は、確かにあの時熊手を頼っていた。記憶を取り戻して帰って来たときも、この男を認め、感謝していた。彼は…凄い奴なのだ。吠達よりも達観しているし、力だってある。今はこんな状態だが…本来は強い存在だ。体も、心も。
そこまで考えて、ハッとした。彼は敵だ。どれだけ人格が出来ていようとも、相対した時にはお姉様へ武器を向けることができる。願いの為なら、どこまでも戦える。
人類は好きでも嫌いでもない。でも、敵は…好意的に思っても、仲良くなんてなれない。吠もイーグルも、良い奴だ。熊手だって、多分良い奴。レオンは嫌い。ティラノとユニコーンはどうでもいい。
あたしは椅子から立ち上がり、寝転がっている熊手を見下ろした。相変わらず芋虫のようにクネクネしている。
「……君達とは、慣れ合えない」
「…」
「誰かが来る前にあたしは立ち去る。君は…まあ、大丈夫でしょ。相棒の熊によろしく」
*
城に戻って来ると、武器の手入れをしているファイヤキャンドルに出会った。
「お。意外と早かったな」
「…やる気がなくなったから、戻って来ただけ。お姉様は?」
「まだ戻ってきてねえ」
「そう…」
「…柚葉嬢は、あんま変わってねえな」
「え?」
武器を直し、ファイヤキャンドルは膝に手を置く。いつもの、どこかおどけたような雰囲気はなかった。以前お姉様を取り戻す為に乗り込んだ時と同じ目をしている。
「ずっとブーケ嬢を追いかけていて…ブーケ嬢以外目にないって感じで…」
「…何が言いたい」
「…俺やシャイニングナイフとスイートケークには結構優しいけどよ、クオンやブーケ嬢の妹分には随分厳しいじゃねえか。これから先も…ブライダンに新しい仲間が出来ても、ブーケ嬢に近付く奴なら敵対視するのか?」
「……」
「…柚葉嬢は、それで幸せなのか?」
あたしの、幸せ。そんなの…考えてもいなかった。だって、あたしにとってはお姉様か、それ以外か、敵か、だから。お姉様さえいればいい。それだけで、満たされている。私が死んでいても、お姉様が笑って生きていればそれでいい。
…それじゃ、駄目なの?
「…あたしって、可笑しい?」
「え…」
「…お姉様を慕って…女王様の為に働けばいいと思ってるあたしって、不完全?」
「いや、不完全ではないけどよ…。一生片想いだってあり得るだろ、それ…」
永遠の片想い。ファイヤキャンドルの口からそんな内容が出てくるとは思わなかった。精々「同じ気持ちかどうかは置いといて、柚葉はブーケを慕っている」くらいの認識をされているものだと思っていた。
「幸せと片想いは…同時に存在するモンなのか?」
哲学的だ。恋愛が何たるものであるか語っている書籍にありそうなくらいには哲学者じみた言葉をしている。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。ううと胸を押さえて、うずくまる。
「…あたし、どうして”幸福”なんて異名を与えられたんだろう…。あたしは、自分の幸せすらわからないのに」
「いや、それを言い始めたら俺ももう”不敗”なんて名乗れねえよ…」
「お姉様はご自分の愛を見つけられた…。なら、あたしは……?」
幸福。あたしの異名。
あたしには分からないもの。
そういえば、いつも羽織っているローブが無い。もしかして、それが今の状態と何か関係があるのだろうか。もし、熊手がローブを着ていないだけでこんなことになるのだとしたら、ブライダンとしてはメリットだ。こんな状態では変身もろくに出来ないだろう。今なら倒せるかもしれない。しかし…。
「んふふ……」
こんな状態で痛めつけて何になるというのか。
一発殴り合ってやろうというくらいの気持ちでいたが、気が抜けてしまった。溜め息を吐いて鎌を直し、カウンターに腰掛ける。
「……この間。何をしてたのかは知らないけど…お姉様に、優しくしてくれてありがとう」
「ええ~…?俺にゃんそんなのしてないけど…」
「気付いてないなら別にいい。言いたかっただけだから」
「そお?」
お姉様は、確かにあの時熊手を頼っていた。記憶を取り戻して帰って来たときも、この男を認め、感謝していた。彼は…凄い奴なのだ。吠達よりも達観しているし、力だってある。今はこんな状態だが…本来は強い存在だ。体も、心も。
そこまで考えて、ハッとした。彼は敵だ。どれだけ人格が出来ていようとも、相対した時にはお姉様へ武器を向けることができる。願いの為なら、どこまでも戦える。
人類は好きでも嫌いでもない。でも、敵は…好意的に思っても、仲良くなんてなれない。吠もイーグルも、良い奴だ。熊手だって、多分良い奴。レオンは嫌い。ティラノとユニコーンはどうでもいい。
あたしは椅子から立ち上がり、寝転がっている熊手を見下ろした。相変わらず芋虫のようにクネクネしている。
「……君達とは、慣れ合えない」
「…」
「誰かが来る前にあたしは立ち去る。君は…まあ、大丈夫でしょ。相棒の熊によろしく」
*
城に戻って来ると、武器の手入れをしているファイヤキャンドルに出会った。
「お。意外と早かったな」
「…やる気がなくなったから、戻って来ただけ。お姉様は?」
「まだ戻ってきてねえ」
「そう…」
「…柚葉嬢は、あんま変わってねえな」
「え?」
武器を直し、ファイヤキャンドルは膝に手を置く。いつもの、どこかおどけたような雰囲気はなかった。以前お姉様を取り戻す為に乗り込んだ時と同じ目をしている。
「ずっとブーケ嬢を追いかけていて…ブーケ嬢以外目にないって感じで…」
「…何が言いたい」
「…俺やシャイニングナイフとスイートケークには結構優しいけどよ、クオンやブーケ嬢の妹分には随分厳しいじゃねえか。これから先も…ブライダンに新しい仲間が出来ても、ブーケ嬢に近付く奴なら敵対視するのか?」
「……」
「…柚葉嬢は、それで幸せなのか?」
あたしの、幸せ。そんなの…考えてもいなかった。だって、あたしにとってはお姉様か、それ以外か、敵か、だから。お姉様さえいればいい。それだけで、満たされている。私が死んでいても、お姉様が笑って生きていればそれでいい。
…それじゃ、駄目なの?
「…あたしって、可笑しい?」
「え…」
「…お姉様を慕って…女王様の為に働けばいいと思ってるあたしって、不完全?」
「いや、不完全ではないけどよ…。一生片想いだってあり得るだろ、それ…」
永遠の片想い。ファイヤキャンドルの口からそんな内容が出てくるとは思わなかった。精々「同じ気持ちかどうかは置いといて、柚葉はブーケを慕っている」くらいの認識をされているものだと思っていた。
「幸せと片想いは…同時に存在するモンなのか?」
哲学的だ。恋愛が何たるものであるか語っている書籍にありそうなくらいには哲学者じみた言葉をしている。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。ううと胸を押さえて、うずくまる。
「…あたし、どうして”幸福”なんて異名を与えられたんだろう…。あたしは、自分の幸せすらわからないのに」
「いや、それを言い始めたら俺ももう”不敗”なんて名乗れねえよ…」
「お姉様はご自分の愛を見つけられた…。なら、あたしは……?」
幸福。あたしの異名。
あたしには分からないもの。