ヨシ!【爆上・玄蕃】
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明日、それなりの店に入るような恰好をしてきほしい──と急遽玄蕃から連絡が入った。
それなりの店、というのは格が高いという意味だろう。つまり普段の私服では駄目だ。何かしら品のある服を着なければならない。
船内に置いてあるクローゼットやタンスをひっくり返す勢いで探したが、それらしい服は見つからなかった。どうしたものかと頭を悩ませつつ店で仕事をしていると、いつものように玄蕃がやって来る。
「お困りのようだねぇ」
「えっ」
「はい、これ」
高そうなブランド──いや、私でも知っているくらい価格帯の高いブランドの紙袋を彼は差し出した。中をちらりと覗くと、ダークブラウンのワンピースが丁寧に梱包されている。明らかに普通の服ではない。
「え!?あの、なんですか…!?」
「調達してきたものだよ。明日着て来る服が見つからなくてお困りだっただろう?」
「で、でも!私こんなに払えませんし…」
「問題ない。そこは大也が買い取った店だからね」
「えっ、ええ!?」
急展開に頭が追い付かない。──ええと、だからこのブランドの店舗のオーナーは大也さんで。大也さんの店だから、代金は関係なくて。
玄蕃は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、「金額、聞きたいかい?」と言った。YESとは言えず、「無理です…」と私は腰を抜かしてしまう。
「じゃあ、明日これを着て来てくれ。時間はまた連絡するよ」
「は、はいぃ…」
*
指定された時間で指定された店に入ると、中にはいつもと違う身なりをしたブンブンジャーの方々がいた。しかも、紫色の服を着た知らない人までいる。皆どこか影のある顔付きで目の前にある飲み物と向き合っており、笑っているのは紫の人と大也だけだった。
「ええと…私、玄蕃さんに呼ばれて来たんですけど…」
「あ…柚葉。こっちこっち」
未来が手を振ってくれた為とりあえずそちらへ向かう。紫の人は「カオスな要素が増えたな」とだけ言って不敵に笑った。
未来はいつもと違い、大人の女性といった感じの服装になっていた。髪も下ろしており、いつも元気溌剌な彼女からは想像できない程落ち着いたイメージを持たせる。
「未来さん。…何だか皆さん、いつもと違いますね?それに、知らない人もいますし…」
「あー…そっか、柚葉は知らないもんね」
「柚葉。何か注文したいものはあるかい?」
「え?ええと…じゃあ、甘い飲み物をお願いします…」
「かしこまりました」
玄蕃はいつもと違い、前髪を上げてバーテンダーのような服装をしていた。ベストを着ていつもよりもかっちりした服装だが、鮮やかなオレンジ色のタイが差し色となっておりかっちりし過ぎない雰囲気を醸し出している。普段とはまた違う色気を感じさせられ──慌てて、ブンブンと顔を横に振った。熱くなる頬を手で隠し、悟られないように視線を逸らす。
「そっちのお嬢ちゃんは?なにモンだ?」
「すまない、私が呼んでいたんだ。ここに君が来るとは思っていなかったからね」
「成る程。つまり、今回はお前らにとって俺達がカオスな存在になったってことか」
よく見ると、紫の人の隣には大きな機械生命体がいた。確かこれは、所謂車型と分類される種族だった筈だ。ハシリヤンも、そういった種族が多かった気がする。
ただならぬ雰囲気に警戒を解かないでいると、怯えていると勘違いしたのか「大丈夫、あたし達ちょっと話してるだけだから」と未来が安心させるように言ってくれた。
「柚葉、その格好よく似合っているよ」
ドリンクを作りながら玄蕃はそう声をかけてくれた。ダークブラウンのAラインワンピースに、シルバーの靴。靴とお揃いでシルバーのアクセサリー。自分の中で精一杯考えた品のある服装だった。
彼の一言に心臓が自分でも驚くほど跳ね上がってしまい、思わず胸を押さえる。上手く言葉が出ず、「う、あの、」と小声で色々と呟き、「ありがとうございます…」と言っておいた。我ながら情けない。
「お待ちどおさま」
ブラウンにオレンジがかかったドリンクを差し出してくれた。オレンジジュースをベースにしているようだが、ブラウンの部分はよく分からない。
「……あの。私、もしかして場違いですか?」
「いや、そういうことはないんだが…」
玄蕃はちらりと周りを一瞥する。未来や錠はともかく、射士郎は完全に私に対して鋭い目線を送っていた。その目に恐れおののいて背を向けると、「ちょっと、ブンブンジャーの話をしているんだ」と玄蕃がフォローしてくれる。
「別に、俺は嬢ちゃんがいても構わないぜ。聞いて困る話でもないだろ」
「一般人の彼女に聞かせる話じゃない」
紫の人の言葉を遮るように大也はぴしゃりとそう言った。そして手で店の奥を示す。
「奥に階段がある。悪いが、二階で待っていてもらっても構わないか?」
「は、はい。大丈夫です。お邪魔しました…」
「私から誘ったというのに、すまないね、柚葉」
「い、いえ!タイミングはどうしてもありますから」
私はドリンクを持ってぺこぺことお辞儀をしながら奥に向かい、示された通り階段を上った。二階にも同じようにビリヤード台が真ん中に置かれており、それを取り囲むようにテーブルが雑多に配置されている。
話し始めたようだが、一階の声は聞こえなかった。防音性能はあるようだ。元の姿に戻れば聞き取れるかもしれないが、彼らにもプライバシーというものがある筈だ。
椅子に腰掛け、ちびちびとドリンクに口をつける。甘酸っぱい味は何だか玄蕃を思い出してしまった。そして今日の彼の服装が脳内を過り、ゴンゴンとテーブルに額を打ち付けることで自省した。
それなりの店、というのは格が高いという意味だろう。つまり普段の私服では駄目だ。何かしら品のある服を着なければならない。
船内に置いてあるクローゼットやタンスをひっくり返す勢いで探したが、それらしい服は見つからなかった。どうしたものかと頭を悩ませつつ店で仕事をしていると、いつものように玄蕃がやって来る。
「お困りのようだねぇ」
「えっ」
「はい、これ」
高そうなブランド──いや、私でも知っているくらい価格帯の高いブランドの紙袋を彼は差し出した。中をちらりと覗くと、ダークブラウンのワンピースが丁寧に梱包されている。明らかに普通の服ではない。
「え!?あの、なんですか…!?」
「調達してきたものだよ。明日着て来る服が見つからなくてお困りだっただろう?」
「で、でも!私こんなに払えませんし…」
「問題ない。そこは大也が買い取った店だからね」
「えっ、ええ!?」
急展開に頭が追い付かない。──ええと、だからこのブランドの店舗のオーナーは大也さんで。大也さんの店だから、代金は関係なくて。
玄蕃は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、「金額、聞きたいかい?」と言った。YESとは言えず、「無理です…」と私は腰を抜かしてしまう。
「じゃあ、明日これを着て来てくれ。時間はまた連絡するよ」
「は、はいぃ…」
*
指定された時間で指定された店に入ると、中にはいつもと違う身なりをしたブンブンジャーの方々がいた。しかも、紫色の服を着た知らない人までいる。皆どこか影のある顔付きで目の前にある飲み物と向き合っており、笑っているのは紫の人と大也だけだった。
「ええと…私、玄蕃さんに呼ばれて来たんですけど…」
「あ…柚葉。こっちこっち」
未来が手を振ってくれた為とりあえずそちらへ向かう。紫の人は「カオスな要素が増えたな」とだけ言って不敵に笑った。
未来はいつもと違い、大人の女性といった感じの服装になっていた。髪も下ろしており、いつも元気溌剌な彼女からは想像できない程落ち着いたイメージを持たせる。
「未来さん。…何だか皆さん、いつもと違いますね?それに、知らない人もいますし…」
「あー…そっか、柚葉は知らないもんね」
「柚葉。何か注文したいものはあるかい?」
「え?ええと…じゃあ、甘い飲み物をお願いします…」
「かしこまりました」
玄蕃はいつもと違い、前髪を上げてバーテンダーのような服装をしていた。ベストを着ていつもよりもかっちりした服装だが、鮮やかなオレンジ色のタイが差し色となっておりかっちりし過ぎない雰囲気を醸し出している。普段とはまた違う色気を感じさせられ──慌てて、ブンブンと顔を横に振った。熱くなる頬を手で隠し、悟られないように視線を逸らす。
「そっちのお嬢ちゃんは?なにモンだ?」
「すまない、私が呼んでいたんだ。ここに君が来るとは思っていなかったからね」
「成る程。つまり、今回はお前らにとって俺達がカオスな存在になったってことか」
よく見ると、紫の人の隣には大きな機械生命体がいた。確かこれは、所謂車型と分類される種族だった筈だ。ハシリヤンも、そういった種族が多かった気がする。
ただならぬ雰囲気に警戒を解かないでいると、怯えていると勘違いしたのか「大丈夫、あたし達ちょっと話してるだけだから」と未来が安心させるように言ってくれた。
「柚葉、その格好よく似合っているよ」
ドリンクを作りながら玄蕃はそう声をかけてくれた。ダークブラウンのAラインワンピースに、シルバーの靴。靴とお揃いでシルバーのアクセサリー。自分の中で精一杯考えた品のある服装だった。
彼の一言に心臓が自分でも驚くほど跳ね上がってしまい、思わず胸を押さえる。上手く言葉が出ず、「う、あの、」と小声で色々と呟き、「ありがとうございます…」と言っておいた。我ながら情けない。
「お待ちどおさま」
ブラウンにオレンジがかかったドリンクを差し出してくれた。オレンジジュースをベースにしているようだが、ブラウンの部分はよく分からない。
「……あの。私、もしかして場違いですか?」
「いや、そういうことはないんだが…」
玄蕃はちらりと周りを一瞥する。未来や錠はともかく、射士郎は完全に私に対して鋭い目線を送っていた。その目に恐れおののいて背を向けると、「ちょっと、ブンブンジャーの話をしているんだ」と玄蕃がフォローしてくれる。
「別に、俺は嬢ちゃんがいても構わないぜ。聞いて困る話でもないだろ」
「一般人の彼女に聞かせる話じゃない」
紫の人の言葉を遮るように大也はぴしゃりとそう言った。そして手で店の奥を示す。
「奥に階段がある。悪いが、二階で待っていてもらっても構わないか?」
「は、はい。大丈夫です。お邪魔しました…」
「私から誘ったというのに、すまないね、柚葉」
「い、いえ!タイミングはどうしてもありますから」
私はドリンクを持ってぺこぺことお辞儀をしながら奥に向かい、示された通り階段を上った。二階にも同じようにビリヤード台が真ん中に置かれており、それを取り囲むようにテーブルが雑多に配置されている。
話し始めたようだが、一階の声は聞こえなかった。防音性能はあるようだ。元の姿に戻れば聞き取れるかもしれないが、彼らにもプライバシーというものがある筈だ。
椅子に腰掛け、ちびちびとドリンクに口をつける。甘酸っぱい味は何だか玄蕃を思い出してしまった。そして今日の彼の服装が脳内を過り、ゴンゴンとテーブルに額を打ち付けることで自省した。