ヨシ!【爆上・玄蕃】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
またとある日の休日、柚葉は街で散歩とショッピングを楽しんでいた。本屋でファッション雑誌をチェックし、オシャレなカフェで可愛いスイーツを注文する。惹かれる雑貨があれば手に取り、気に入れば購入し、休みを満喫していた。
「うわあああ!!」
「助けてー!!」
しかしそんな時間も一瞬と化した。人々の悲鳴を耳にした彼女はまた体が勝手に駆け出し、苦魔獣がいるであろう現場に向かってしまったのだ。
階段を下りて開けた場所まで逃げてきた人々をネジレッタ達が襲っていた。壁際に追い込まれたり、腕を引き寄せられたりと振り回される人々を目にしてはすぐに柚葉の頭に血が上る。
ネジレッタ程度なら人間の姿でも十分戦えた。蹴り付け、時には殴り、壁に叩き付けて必死に人々をハシリヤンの脅威から守ろうとする柚葉。しかしそんな健闘も虚しく、高い場所に陣取った苦魔獣が「バリーッ!!」と叫んだ。
人々の頭に謎のアンテナが生えた。勿論、柚葉にも。「何だこれ!」「俺にも付いてる!?」と混乱が広がる中、柚葉は至極冷静にぺたぺたとアンテナを触った。
「アンテナ…?何の為に…」
「毒々電波ァ~ッ!!」
苦魔獣がまた叫ぶと、アンテナが付けられた者達は謎の動きをさせられた。体の制御が効かず、勝手に手や足が動いてしまうのである。珍妙な動きをさせられることへの不快感や羞恥心はギャーソリンとなり、苦魔獣に装填されていった。
エン人である柚葉にも適応されているということは、以前の苦魔獣とは違い他の種族にも効果が及ぶのだろう。そう判断したはいいが、体が思うように動かない。歯痒い思いをしながら苦魔獣の動きに付き合わされていると、苦魔獣がいる場所よりも後方の高台からサンシーターが姿を現した。
「良いザマだなァ地球人共!」
「オシャレよ~アンテナ人間の皆さ~ん!」
こんな屈辱を「オシャレ」と形容されたことに対して柚葉は腸が煮えくり返る思いだった。今すぐにでも元の姿に戻り、苦魔獣とハシリヤンの頭を引き千切って晒し首にしてやりたいくらいには腹が立っている。唇を噛んで耐えることしかできない無力感はギャーソリンをたっぷりと排出し、苦魔獣を更に調子に乗らせた。
「ギャーソリン受信!バリバリだぜぃ!」
調子づいてきたところで、ようやくブンブンジャーの面子(大也以外)がやって来た。「何がどうなっている」と現場の状況を把握しようとした射士郎に「出たなブンブンジャー!」とサンシーターが睨み付け、即座に苦魔獣が動いた。
「バーリバリ!アンテナ人間よか~かれ~!」
それが号令となり、アンテナ人間となった者達はブンブンジャーに襲い掛かることとなってしまった。一般人が殆どの為全員が無鉄砲な子供のような襲い方だったが、戦闘民族として経験を積んできた柚葉の蹴りは玄蕃の頬を掠め、人間の姿にしても相当な威力であることが掠っただけで分かった。
「柚葉!?」
「ご、ごめんなさい!私、こんなことしたい訳じゃ…!」
一般人の攻撃を受け流しつつ、暴れる柚葉に対応する。ただ無暗に向かってくる訳ではなく、姿勢を低くし足元を狙ったタックルや、隙を見つけては締め技を掛けようとする動きは戦い慣れている玄蕃を翻弄した。若干の違和感を抱きつつも何とか凌いだ玄蕃は、「相手が電波なら発信源を叩くのが定石だ。いくぞ」という射士郎の言葉を聞いて「オーライ」と返し、ブンブンブースターを手に持った。
『ブーン!ブンブーン!ブンブンブーン!』
「ブンブンチェンジ!」
『バクアゲタイヤ!GO!GO!GO!』
地面を擦ることでタイヤを回転させ、射士郎がブルーへと変身する。それに続いて未来はネジレッタの胴体でタイヤを回転させ、ピンクへと変身した。同じくネジレッタの胴体でペダルを押した錠がブラックへと姿を変える。ネジレッタの攻撃を受け流した玄蕃は「ブンブンチェンジ!」と叫ぶとネジレッタの背中でペダルを押し込み、蹴りを入れながらオレンジへと姿を変えた。
*
その後、ブンブンジャーによって苦魔獣が倒された為頭に付いたアンテナは自然と消えた。柚葉は何度も鏡を見て頭にアンテナが無いかどうかチェックし、ようやく安心する。
「良かったぁ~……このまま取れなかったら私、もう…」
死ぬほど恥ずかしいとはこのことだった。アンテナが付いているだけでも恥ずかしいのに、珍妙な動きをさせられてブンブンジャーに襲い掛かってしまうなんて最悪中の最悪である。
柚葉がよしよしと自分の頭を自分で撫でていると、戦いを終えた玄蕃がやって来た。やはり手には飴を持っている。
「災難だったねえ」
「げ、玄蕃さん…。さ、さっきはごめんなさい!」
「いや、操られていたなら仕方ないさ。それに、君の暴れっぷりも中々のものだったねぇ」
「…」
柚葉はあまり嬉しくないようで、視線を地面に落としそのまま俯いてしまった。戦いを嫌ってここまで来た筈なのに、体は戦いを覚えている。その事実が、嫌でも「自分は戦闘民族なのだ」という呪いとなって彼女を苦しめている。
しかしそんな事情を知らない玄蕃はただの軽口だったようで、「良い蹴りだったよ」と笑っている。ごめんなさい、と再度謝って柚葉は服の裾をぎゅっと掴んだ。
「古武術でもやっていたのかな」
「…あは、は……そんなところです…」
「じゃあきっと、君には才能があったんだろう」
「…そうなん、ですかね」
言葉を絞り出していく。果実を絞るように、その果汁で言葉を精一杯紡ぐ。
柚葉は戦いが嫌いだが、苦手ではない。実際こうして今まで生き残っているし、人間の姿に擬態していてもある程度の実力を発揮できているくらいには。しかしそれが素直に喜べなかった。それはきっと、地球での「普通」ではないから。
「もし君が戦うようなことがあったら、なんて考えたくはないが…その時はきっと、多くの人を助けることができるだろう」
「…私が、助ける?」
「ああ。力というのは、別に暴力だけではない。誰かを守る力は、優しい力だ。そして、君はその優しい力を持っているというだけなのだから」
玄蕃は柚葉の手を握り、ふふ、と笑みをこぼした。
気休め程度にしかならないかもしれない──という玄蕃の不安は杞憂となった。柚葉はその手を握り返すと、目を細め、じんわりと涙を浮かべて「ありがとうございます」と礼を言う。今までの人生を肯定してもらえたような気がして、救われたのである。
──例え私にあるものが暴力の才能だったとしても、それで誰かを助けることができるのなら。
それはきっと、ブンブンジャーが持つ「力」と同じ類のものなのだろう。
「勿論、戦うことは私達ブンブンジャーに任せてほしい。でも、万が一君にしかできないことがある状況になったら…可能な限りは、協力してほしい」
「…はい。私、頑張ります」
「…無茶をしてはいけないよ」
「は…はい。それも、頑張ります」
暫しの沈黙の後、二人は慌ててパッと手を離した。二人とも頬を赤らめており、何とも初々しい。
その気まずさを打ち破るように「そうだ」と玄蕃が柚葉に話しかけた。
「今度、店に仲間を連れて行ってもいいかい?」
「な、仲間ですか」
「ああ。私達ブンブンジャーの仲間でね、少し見た目は驚くかもしれないが…良い人物だよ」
「も、勿論です。玄蕃さん…いえ、ブンブンジャーの皆さんのお仲間さんなら是非喜んで!」
柚葉の目にもう涙は浮かんでいない。そのことだけが気がかりだった玄蕃はそれを確認すると、「お困りが解決したようだねぇ」とだけ呟いてその場を去って行った。
「うわあああ!!」
「助けてー!!」
しかしそんな時間も一瞬と化した。人々の悲鳴を耳にした彼女はまた体が勝手に駆け出し、苦魔獣がいるであろう現場に向かってしまったのだ。
階段を下りて開けた場所まで逃げてきた人々をネジレッタ達が襲っていた。壁際に追い込まれたり、腕を引き寄せられたりと振り回される人々を目にしてはすぐに柚葉の頭に血が上る。
ネジレッタ程度なら人間の姿でも十分戦えた。蹴り付け、時には殴り、壁に叩き付けて必死に人々をハシリヤンの脅威から守ろうとする柚葉。しかしそんな健闘も虚しく、高い場所に陣取った苦魔獣が「バリーッ!!」と叫んだ。
人々の頭に謎のアンテナが生えた。勿論、柚葉にも。「何だこれ!」「俺にも付いてる!?」と混乱が広がる中、柚葉は至極冷静にぺたぺたとアンテナを触った。
「アンテナ…?何の為に…」
「毒々電波ァ~ッ!!」
苦魔獣がまた叫ぶと、アンテナが付けられた者達は謎の動きをさせられた。体の制御が効かず、勝手に手や足が動いてしまうのである。珍妙な動きをさせられることへの不快感や羞恥心はギャーソリンとなり、苦魔獣に装填されていった。
エン人である柚葉にも適応されているということは、以前の苦魔獣とは違い他の種族にも効果が及ぶのだろう。そう判断したはいいが、体が思うように動かない。歯痒い思いをしながら苦魔獣の動きに付き合わされていると、苦魔獣がいる場所よりも後方の高台からサンシーターが姿を現した。
「良いザマだなァ地球人共!」
「オシャレよ~アンテナ人間の皆さ~ん!」
こんな屈辱を「オシャレ」と形容されたことに対して柚葉は腸が煮えくり返る思いだった。今すぐにでも元の姿に戻り、苦魔獣とハシリヤンの頭を引き千切って晒し首にしてやりたいくらいには腹が立っている。唇を噛んで耐えることしかできない無力感はギャーソリンをたっぷりと排出し、苦魔獣を更に調子に乗らせた。
「ギャーソリン受信!バリバリだぜぃ!」
調子づいてきたところで、ようやくブンブンジャーの面子(大也以外)がやって来た。「何がどうなっている」と現場の状況を把握しようとした射士郎に「出たなブンブンジャー!」とサンシーターが睨み付け、即座に苦魔獣が動いた。
「バーリバリ!アンテナ人間よか~かれ~!」
それが号令となり、アンテナ人間となった者達はブンブンジャーに襲い掛かることとなってしまった。一般人が殆どの為全員が無鉄砲な子供のような襲い方だったが、戦闘民族として経験を積んできた柚葉の蹴りは玄蕃の頬を掠め、人間の姿にしても相当な威力であることが掠っただけで分かった。
「柚葉!?」
「ご、ごめんなさい!私、こんなことしたい訳じゃ…!」
一般人の攻撃を受け流しつつ、暴れる柚葉に対応する。ただ無暗に向かってくる訳ではなく、姿勢を低くし足元を狙ったタックルや、隙を見つけては締め技を掛けようとする動きは戦い慣れている玄蕃を翻弄した。若干の違和感を抱きつつも何とか凌いだ玄蕃は、「相手が電波なら発信源を叩くのが定石だ。いくぞ」という射士郎の言葉を聞いて「オーライ」と返し、ブンブンブースターを手に持った。
『ブーン!ブンブーン!ブンブンブーン!』
「ブンブンチェンジ!」
『バクアゲタイヤ!GO!GO!GO!』
地面を擦ることでタイヤを回転させ、射士郎がブルーへと変身する。それに続いて未来はネジレッタの胴体でタイヤを回転させ、ピンクへと変身した。同じくネジレッタの胴体でペダルを押した錠がブラックへと姿を変える。ネジレッタの攻撃を受け流した玄蕃は「ブンブンチェンジ!」と叫ぶとネジレッタの背中でペダルを押し込み、蹴りを入れながらオレンジへと姿を変えた。
*
その後、ブンブンジャーによって苦魔獣が倒された為頭に付いたアンテナは自然と消えた。柚葉は何度も鏡を見て頭にアンテナが無いかどうかチェックし、ようやく安心する。
「良かったぁ~……このまま取れなかったら私、もう…」
死ぬほど恥ずかしいとはこのことだった。アンテナが付いているだけでも恥ずかしいのに、珍妙な動きをさせられてブンブンジャーに襲い掛かってしまうなんて最悪中の最悪である。
柚葉がよしよしと自分の頭を自分で撫でていると、戦いを終えた玄蕃がやって来た。やはり手には飴を持っている。
「災難だったねえ」
「げ、玄蕃さん…。さ、さっきはごめんなさい!」
「いや、操られていたなら仕方ないさ。それに、君の暴れっぷりも中々のものだったねぇ」
「…」
柚葉はあまり嬉しくないようで、視線を地面に落としそのまま俯いてしまった。戦いを嫌ってここまで来た筈なのに、体は戦いを覚えている。その事実が、嫌でも「自分は戦闘民族なのだ」という呪いとなって彼女を苦しめている。
しかしそんな事情を知らない玄蕃はただの軽口だったようで、「良い蹴りだったよ」と笑っている。ごめんなさい、と再度謝って柚葉は服の裾をぎゅっと掴んだ。
「古武術でもやっていたのかな」
「…あは、は……そんなところです…」
「じゃあきっと、君には才能があったんだろう」
「…そうなん、ですかね」
言葉を絞り出していく。果実を絞るように、その果汁で言葉を精一杯紡ぐ。
柚葉は戦いが嫌いだが、苦手ではない。実際こうして今まで生き残っているし、人間の姿に擬態していてもある程度の実力を発揮できているくらいには。しかしそれが素直に喜べなかった。それはきっと、地球での「普通」ではないから。
「もし君が戦うようなことがあったら、なんて考えたくはないが…その時はきっと、多くの人を助けることができるだろう」
「…私が、助ける?」
「ああ。力というのは、別に暴力だけではない。誰かを守る力は、優しい力だ。そして、君はその優しい力を持っているというだけなのだから」
玄蕃は柚葉の手を握り、ふふ、と笑みをこぼした。
気休め程度にしかならないかもしれない──という玄蕃の不安は杞憂となった。柚葉はその手を握り返すと、目を細め、じんわりと涙を浮かべて「ありがとうございます」と礼を言う。今までの人生を肯定してもらえたような気がして、救われたのである。
──例え私にあるものが暴力の才能だったとしても、それで誰かを助けることができるのなら。
それはきっと、ブンブンジャーが持つ「力」と同じ類のものなのだろう。
「勿論、戦うことは私達ブンブンジャーに任せてほしい。でも、万が一君にしかできないことがある状況になったら…可能な限りは、協力してほしい」
「…はい。私、頑張ります」
「…無茶をしてはいけないよ」
「は…はい。それも、頑張ります」
暫しの沈黙の後、二人は慌ててパッと手を離した。二人とも頬を赤らめており、何とも初々しい。
その気まずさを打ち破るように「そうだ」と玄蕃が柚葉に話しかけた。
「今度、店に仲間を連れて行ってもいいかい?」
「な、仲間ですか」
「ああ。私達ブンブンジャーの仲間でね、少し見た目は驚くかもしれないが…良い人物だよ」
「も、勿論です。玄蕃さん…いえ、ブンブンジャーの皆さんのお仲間さんなら是非喜んで!」
柚葉の目にもう涙は浮かんでいない。そのことだけが気がかりだった玄蕃はそれを確認すると、「お困りが解決したようだねぇ」とだけ呟いてその場を去って行った。