ヨシ!【爆上・玄蕃】
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11時に集合、という約束を取り付けた二人──柚葉の方は、20分前には現地に着いていた。勿論、時間を間違えたのではない。楽しみ過ぎて早く着いただけである。
玄蕃の方はというと、大也への調達品を渡す仕事に追われていた。いつもと違う装いの玄蕃に疑問を抱きつつも大也は調達品を受け取り、「急に悪いな」と謝る。構わないさと受け流し、その足で玄蕃は待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所でスマホを見る柚葉は人目を引いていた。それはただ、彼女が可愛いからとかそういった理由ではない。画面の反射で髪を直している仕草があまりにも微笑ましかったからだ。白いブラウスに茶色のジャンパースカートを合わせ、白い靴下に黒いフラットシューズを履いていた。勿論、玄蕃は初めて見る服装である。
彼女の姿を視認した玄蕃は立ち止まって数秒惚けてしまった。しかし慌てて駆け寄り、「遅れてすまない」と頭を下げる。
「い、いえ!今来たところですから!」
嘘である。
「……まだ五分前じゃないか。本当は、もっと前からいたんだろう?」
「……玄蕃さんには、隠し事なんて通じませんね」
てへ、と笑って柚葉は到着時間を誤魔化した。20分も前からいたと知れば、玄蕃が気に病むと判断したのである。
「え、ええと。それで、今日はどこに連れて行って下さるんですか?」
「今日はこれを見に行こうと思ってね」
スマホを操作し、玄蕃はイベントの告知画面を見せた。そこには「ハンドメイド市」と書かれており、アクセサリーやちょっとした小物の写真が並んでいる。少し目を通しただけで柚葉は目を輝かせ、「可愛い…」とぽつりと呟いた。
「い、良いんですか。私だけが、楽しいかもしれません…」
「君となら、どこへ行っても楽しいからね」
「っ……な、なら…良いんですけど…」
「ああそれと。デート中に失礼なのは重々承知しているんだが、定期的に飴を舐めていてもいいかい?」
「?はい、構いませんよ」
「ありがとう。私はどうも、これから離れられなくてね。良ければ君もどうぞ」
鞄から飴を取り出し、玄蕃は柚葉に差し出した。素直にそれを受け取り、ポケットに仕舞う。玄蕃はもう既に舐め始めていた。
「それじゃあ行こうか」
「はいっ」
*
街中で行われるイベントだった為、少し歩けば会場に着いた。手作りの飲食物も売っているようで、会場には様々な匂いが漂っている。待てをされているかのような柚葉を見て吹き出した玄蕃は、「君に付いて行くよ」と彼女の背中を押す。
特に遠慮をすることもなく、柚葉は現場を色んな店に連れ回した。行く先々で可愛い可愛いとはしゃいで出店者達を笑顔にし、勿論代金も払って出店物を購入していく。紙袋の中にはすぐに雑貨や小物が溜まっていった。
「あ、これ」
「?」
「キャンディのキーホルダーですよ。しかも、玄蕃さんカラーです」
キャンディーのキーホルダーには何故かクリア樹脂の狐も付いている。勿論どちらもオレンジ色だった。
「…可愛いな、これは」
ふっと口元を緩めて微笑を浮かべる玄蕃。その表情に柚葉は目を奪われ、ポカンと口を開けてしまう。そして器用にも耳だけを赤く染め、「か、可愛いですよね、キーホルダー」と”キーホルダー”の部分を強調して復唱した。
「これのオレンジとブラウンを頂こう」
「えっ」
「お揃いは嫌かい?」
「そ、そんなことありません。でも私お金出しますし…」
「私がやりたいんだ。これくらいさせてほしいな」
そうこうしているうちに玄蕃は出店者と代金のやり取りを終え、白い包み紙に入れられたブラウンの方を柚葉に差し出した。
「…ありがとうございます」
「お安い御用さ。さて、そろそろお腹も減ったことだし何か食べようか」
「あ、そうですね。あっちに美味しそうなものがあった筈です」
人込みをかき分けて歩み出す。そんな二人の背中を、見守る者が二人。
「何かあるのかと思ったが…どうやら、玄蕃も玄蕃でバクアゲ中だったみたいだな」
「アイツのことだ。どうせ深い意味はないんだろう」
大也と射士郎である。大也はただの好奇心から付いてきたが、射士郎は勝手に付いてきたのだ。ワッフルを食べて笑い合う二人を微笑ましそうに見つめ、大也は「バクアゲだな」と呟く。彼の「バクアゲ」の範囲は広い。
「それにしても、玄蕃が柚葉とこんなに仲良くなっていたとは思わなかったな」
「巴柚葉、か」
「ん、どうしたんだシャーシロ」
「…いや、何でもない。確か、大也が雇っているバイトだろう」
「ああ。アイス屋だ」
射士郎は脳内のリソースを少しだけ柚葉に割いた。そういう人物がいる、と記憶した程度だが。
「見つからないうちに撤収するとしようか」
「そうだな。見つかると厄介だ」
大也はいつもの車に乗り込むと、シャーシロもまるでそこが自分の席であるかのように助手席に座った。走り出した車のエンジン音は、幸せな時間を共有する二人には届いていない。
玄蕃の方はというと、大也への調達品を渡す仕事に追われていた。いつもと違う装いの玄蕃に疑問を抱きつつも大也は調達品を受け取り、「急に悪いな」と謝る。構わないさと受け流し、その足で玄蕃は待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所でスマホを見る柚葉は人目を引いていた。それはただ、彼女が可愛いからとかそういった理由ではない。画面の反射で髪を直している仕草があまりにも微笑ましかったからだ。白いブラウスに茶色のジャンパースカートを合わせ、白い靴下に黒いフラットシューズを履いていた。勿論、玄蕃は初めて見る服装である。
彼女の姿を視認した玄蕃は立ち止まって数秒惚けてしまった。しかし慌てて駆け寄り、「遅れてすまない」と頭を下げる。
「い、いえ!今来たところですから!」
嘘である。
「……まだ五分前じゃないか。本当は、もっと前からいたんだろう?」
「……玄蕃さんには、隠し事なんて通じませんね」
てへ、と笑って柚葉は到着時間を誤魔化した。20分も前からいたと知れば、玄蕃が気に病むと判断したのである。
「え、ええと。それで、今日はどこに連れて行って下さるんですか?」
「今日はこれを見に行こうと思ってね」
スマホを操作し、玄蕃はイベントの告知画面を見せた。そこには「ハンドメイド市」と書かれており、アクセサリーやちょっとした小物の写真が並んでいる。少し目を通しただけで柚葉は目を輝かせ、「可愛い…」とぽつりと呟いた。
「い、良いんですか。私だけが、楽しいかもしれません…」
「君となら、どこへ行っても楽しいからね」
「っ……な、なら…良いんですけど…」
「ああそれと。デート中に失礼なのは重々承知しているんだが、定期的に飴を舐めていてもいいかい?」
「?はい、構いませんよ」
「ありがとう。私はどうも、これから離れられなくてね。良ければ君もどうぞ」
鞄から飴を取り出し、玄蕃は柚葉に差し出した。素直にそれを受け取り、ポケットに仕舞う。玄蕃はもう既に舐め始めていた。
「それじゃあ行こうか」
「はいっ」
*
街中で行われるイベントだった為、少し歩けば会場に着いた。手作りの飲食物も売っているようで、会場には様々な匂いが漂っている。待てをされているかのような柚葉を見て吹き出した玄蕃は、「君に付いて行くよ」と彼女の背中を押す。
特に遠慮をすることもなく、柚葉は現場を色んな店に連れ回した。行く先々で可愛い可愛いとはしゃいで出店者達を笑顔にし、勿論代金も払って出店物を購入していく。紙袋の中にはすぐに雑貨や小物が溜まっていった。
「あ、これ」
「?」
「キャンディのキーホルダーですよ。しかも、玄蕃さんカラーです」
キャンディーのキーホルダーには何故かクリア樹脂の狐も付いている。勿論どちらもオレンジ色だった。
「…可愛いな、これは」
ふっと口元を緩めて微笑を浮かべる玄蕃。その表情に柚葉は目を奪われ、ポカンと口を開けてしまう。そして器用にも耳だけを赤く染め、「か、可愛いですよね、キーホルダー」と”キーホルダー”の部分を強調して復唱した。
「これのオレンジとブラウンを頂こう」
「えっ」
「お揃いは嫌かい?」
「そ、そんなことありません。でも私お金出しますし…」
「私がやりたいんだ。これくらいさせてほしいな」
そうこうしているうちに玄蕃は出店者と代金のやり取りを終え、白い包み紙に入れられたブラウンの方を柚葉に差し出した。
「…ありがとうございます」
「お安い御用さ。さて、そろそろお腹も減ったことだし何か食べようか」
「あ、そうですね。あっちに美味しそうなものがあった筈です」
人込みをかき分けて歩み出す。そんな二人の背中を、見守る者が二人。
「何かあるのかと思ったが…どうやら、玄蕃も玄蕃でバクアゲ中だったみたいだな」
「アイツのことだ。どうせ深い意味はないんだろう」
大也と射士郎である。大也はただの好奇心から付いてきたが、射士郎は勝手に付いてきたのだ。ワッフルを食べて笑い合う二人を微笑ましそうに見つめ、大也は「バクアゲだな」と呟く。彼の「バクアゲ」の範囲は広い。
「それにしても、玄蕃が柚葉とこんなに仲良くなっていたとは思わなかったな」
「巴柚葉、か」
「ん、どうしたんだシャーシロ」
「…いや、何でもない。確か、大也が雇っているバイトだろう」
「ああ。アイス屋だ」
射士郎は脳内のリソースを少しだけ柚葉に割いた。そういう人物がいる、と記憶した程度だが。
「見つからないうちに撤収するとしようか」
「そうだな。見つかると厄介だ」
大也はいつもの車に乗り込むと、シャーシロもまるでそこが自分の席であるかのように助手席に座った。走り出した車のエンジン音は、幸せな時間を共有する二人には届いていない。