ヨシ!【爆上・振騎玄蕃】
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ガレージでは柚葉を取り囲むように各々がそれぞれの場所にいた。その中心にいる柚葉は擬態を解いたままで、本来の姿でモジモジしている。
「にしてもまさか、嬢ちゃんがエン人だったなんてなあ」
「ねえ、その…エン人って何?」
先斗に未来が問いかけると、彼に代わって説明をするのかビュンディーが一歩前に進み出た。
「宇宙でもトップクラスの戦闘能力を持つ種族だ。彼らは非常に高い身体能力を持つが…」
「知能がない」
ビュンディーの言葉を遮るように柚葉が口を開いた。表情は硬く、自嘲気味に語り出す。
「私の故郷、エン星には高度な文明がありません。私達エン人は何億前年もの間戦いだけを行ってきました。それも、意味のない…同族同士の戦いです」
「…どうして、戦うの?」
「……闘争心が、本能に刻まれているんです。だから特に目的も無く、殺し合うんです。一つのグループを殲滅したら、また他のグループに戦いを挑みます。これを何度も繰り返してきたのが、エン星の歴史です」
「……そんなの、悲し過ぎるよ…」
未来の率直な感想は柚葉の心をやんわりと抉った。柚葉も戦いは好まないが、本能として闘争心を持っている。血のにおいを嗅げば目がすぐに充血し、呼吸が荒くなる。戦いなんて嫌いだと言いつつも、戦いや血から離れられない運命にあることを彼女は十分知っていた。
「噂には聞いていたが、戦闘能力が本当に高いな。まさかディスレースを相手にあそこまで奮闘するとは…」
「……これしか、取柄がないんです」
前髪で隠れているが、彼女の赤く腫れていた額には湿布が貼られている。ディスレースに頭突きをした際、出血まではいかなかったが腫れてしまったのだ。
彼女がもしあのままディスレースと戦っていれば、無事ではいなかった。彼女自身それを分かっていたからこそ、すぐにその場を離れたのだ。そもそも捕まえられた時点で格の差を理解させられていた。
「……玄蕃さん」
「…なんだい?」
「仇は…とれましたか?」
「……ああ。みんなのお陰で、私は一矢報いることができた。囚われた父も、乗っ取られた惑星ブレキも…いずれ必ず取り戻してみせる」
「…惑星ブレキ?」
玄蕃の正体を知らない柚葉はブレキという言葉に敏感に反応した。ここまでくれば言い逃れもできないかと玄蕃は観念し、彼女の前に立って彼も擬態を解く。
パーマの掛かっていた茶髪はさらりと伸びた白い長髪に変わり、瞳孔が細くなった。狐や猫のような耳が生え、人間の耳が消える。その姿を見た瞬間、柚葉は顔を真っ青にした。その反応を見た玄蕃はバツが悪そうに視線を床に落とす。
「あ………ぁ……」
「…私は、銀河通販王と名高い人物を父に持つブレキ人。本名は、ゲンバード・デ・リバリー二世だ」
「一般的には、若旦那とも言われているな。彼の御父上は惑星ブレキで宇宙通販を展開している大物だ」
「…それも、今は昔の話さ。ディスレースの策略に嵌った父は、今でも監獄に囚われている」
玄蕃の話を補足していくビュンディー。しかし、二人の言葉は柚葉にまるで届いていなかった。口元に手を当て、わなわなと震える彼女は驚愕の目で玄蕃の姿を見つめている。
「ワカ、ダンナ…若旦那…銀河通販……!」
脳裏には、優しく微笑む旧友の無惨な死体。共に宇宙へ出ようと誘ってくれた、優しいブレキ人。
玄蕃の姿と話は、過去の記憶もとい──封印していたトラウマを呼び覚ますには十分過ぎた。
「蜷咲┌縺嶺ココ……」
「…懐かしいな……。それは…惑星ブレキで使われている人名だ。でも、どうして君がそれを…?」
血に塗れた記憶。吐き気を催す程の、後悔と憎悪。
彼女が無意識に放つ殺意にあてられた玄蕃は立ち眩みを起こしたかのようにふらついた。一番近くにいた先斗がすぐに動き「おいおい、大丈夫か?若旦那」と彼の背中を支える。
「あ、ああ…。すまない、先斗…」
「……蜷咲┌縺嶺ココは、私の古い友人です。エン星に不時着した、銀河通販の社員でした。私が地球に乗って来た宇宙船も、元は彼の物です」
「…そういえば、一人営業に出た先で行方不明になった社員がいると父が言っていたな…」
「……彼は、丁度私達が対立していたグループに殺されました。今は、私の故郷の土の中で穏やかに眠っています」
「…そうか……」
「……良い人だったんです、本当に。故郷の習わしに嫌気がさしていた私に、外へ出ようと言ってくれた…どうしようもない程のお人好しだったんです」
拳を握り締め、悔しそうに顔を歪めた。何かを言おうとしてはやめる素振りを見せていたが、暫くしてようやく言葉を漏らす。
「……守れなかった…!」
「柚葉…」
「私なら、助けられたのに……!」
「…っ、柚葉のせいじゃないよ!そんなことになるなんて…誰にも予想できないから…」
居ても立っても居られなくなった未来が立ち上がり、柚葉の手を握る。未来の手に触れて少し理性を取り戻した彼女は、「すみません…」と心底申し訳なさそうに謝った。
「にしてもまさか、嬢ちゃんがエン人だったなんてなあ」
「ねえ、その…エン人って何?」
先斗に未来が問いかけると、彼に代わって説明をするのかビュンディーが一歩前に進み出た。
「宇宙でもトップクラスの戦闘能力を持つ種族だ。彼らは非常に高い身体能力を持つが…」
「知能がない」
ビュンディーの言葉を遮るように柚葉が口を開いた。表情は硬く、自嘲気味に語り出す。
「私の故郷、エン星には高度な文明がありません。私達エン人は何億前年もの間戦いだけを行ってきました。それも、意味のない…同族同士の戦いです」
「…どうして、戦うの?」
「……闘争心が、本能に刻まれているんです。だから特に目的も無く、殺し合うんです。一つのグループを殲滅したら、また他のグループに戦いを挑みます。これを何度も繰り返してきたのが、エン星の歴史です」
「……そんなの、悲し過ぎるよ…」
未来の率直な感想は柚葉の心をやんわりと抉った。柚葉も戦いは好まないが、本能として闘争心を持っている。血のにおいを嗅げば目がすぐに充血し、呼吸が荒くなる。戦いなんて嫌いだと言いつつも、戦いや血から離れられない運命にあることを彼女は十分知っていた。
「噂には聞いていたが、戦闘能力が本当に高いな。まさかディスレースを相手にあそこまで奮闘するとは…」
「……これしか、取柄がないんです」
前髪で隠れているが、彼女の赤く腫れていた額には湿布が貼られている。ディスレースに頭突きをした際、出血まではいかなかったが腫れてしまったのだ。
彼女がもしあのままディスレースと戦っていれば、無事ではいなかった。彼女自身それを分かっていたからこそ、すぐにその場を離れたのだ。そもそも捕まえられた時点で格の差を理解させられていた。
「……玄蕃さん」
「…なんだい?」
「仇は…とれましたか?」
「……ああ。みんなのお陰で、私は一矢報いることができた。囚われた父も、乗っ取られた惑星ブレキも…いずれ必ず取り戻してみせる」
「…惑星ブレキ?」
玄蕃の正体を知らない柚葉はブレキという言葉に敏感に反応した。ここまでくれば言い逃れもできないかと玄蕃は観念し、彼女の前に立って彼も擬態を解く。
パーマの掛かっていた茶髪はさらりと伸びた白い長髪に変わり、瞳孔が細くなった。狐や猫のような耳が生え、人間の耳が消える。その姿を見た瞬間、柚葉は顔を真っ青にした。その反応を見た玄蕃はバツが悪そうに視線を床に落とす。
「あ………ぁ……」
「…私は、銀河通販王と名高い人物を父に持つブレキ人。本名は、ゲンバード・デ・リバリー二世だ」
「一般的には、若旦那とも言われているな。彼の御父上は惑星ブレキで宇宙通販を展開している大物だ」
「…それも、今は昔の話さ。ディスレースの策略に嵌った父は、今でも監獄に囚われている」
玄蕃の話を補足していくビュンディー。しかし、二人の言葉は柚葉にまるで届いていなかった。口元に手を当て、わなわなと震える彼女は驚愕の目で玄蕃の姿を見つめている。
「ワカ、ダンナ…若旦那…銀河通販……!」
脳裏には、優しく微笑む旧友の無惨な死体。共に宇宙へ出ようと誘ってくれた、優しいブレキ人。
玄蕃の姿と話は、過去の記憶もとい──封印していたトラウマを呼び覚ますには十分過ぎた。
「蜷咲┌縺嶺ココ……」
「…懐かしいな……。それは…惑星ブレキで使われている人名だ。でも、どうして君がそれを…?」
血に塗れた記憶。吐き気を催す程の、後悔と憎悪。
彼女が無意識に放つ殺意にあてられた玄蕃は立ち眩みを起こしたかのようにふらついた。一番近くにいた先斗がすぐに動き「おいおい、大丈夫か?若旦那」と彼の背中を支える。
「あ、ああ…。すまない、先斗…」
「……蜷咲┌縺嶺ココは、私の古い友人です。エン星に不時着した、銀河通販の社員でした。私が地球に乗って来た宇宙船も、元は彼の物です」
「…そういえば、一人営業に出た先で行方不明になった社員がいると父が言っていたな…」
「……彼は、丁度私達が対立していたグループに殺されました。今は、私の故郷の土の中で穏やかに眠っています」
「…そうか……」
「……良い人だったんです、本当に。故郷の習わしに嫌気がさしていた私に、外へ出ようと言ってくれた…どうしようもない程のお人好しだったんです」
拳を握り締め、悔しそうに顔を歪めた。何かを言おうとしてはやめる素振りを見せていたが、暫くしてようやく言葉を漏らす。
「……守れなかった…!」
「柚葉…」
「私なら、助けられたのに……!」
「…っ、柚葉のせいじゃないよ!そんなことになるなんて…誰にも予想できないから…」
居ても立っても居られなくなった未来が立ち上がり、柚葉の手を握る。未来の手に触れて少し理性を取り戻した彼女は、「すみません…」と心底申し訳なさそうに謝った。