ヨシ!【爆上・玄蕃】
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飴を舐めながら玄蕃が歩いていると、目前に柚葉が見えた。しかし以前会った時とは違い、今日の彼女は服装が大分変化している。初めて会ったときの彼女はTシャツを着たバイト用の姿だったが、今日は大也のようなレザージャケットの黒をさらりと着こなしている。ショートパンツからは長い脚が伸び、ショートブーツによく似合っていた。
「…これはこれは、また違った印象だねぇ」
柚葉はウィンドウショッピングを楽しんでいるのか、マネキンが着た服を眺めながら気に入った店を見つけては入っていった。余程熱心なのか何件もハシゴしており、手には紙袋を幾つも持っている。
いたずら心がわき、驚かしてやろうと思った玄蕃は足音を立てずに彼女に忍び寄る。そして柚葉がふっと気を抜いた瞬間を見計らい、「やあ」と肩を叩いた。
「わあっ!?」
柚葉は余程驚いたのか紙袋が手から離れ──全てを玄蕃がキャッチする。地面に落ちずに済んだ紙袋をはい、と差し出す玄蕃に彼女は少しむっとした表情をする。
「げ、玄蕃さん…。お、驚かさないでください…」
「すまない。そんなに驚くとは思わなくてね」
「もう…」
「それより、今日はまた一段と良い恰好をしているね」
そう言われた柚葉は自分の服装を確認し、「そんなに変でしょうか…」と呟く。どうやら彼女にとって、レザージャケットを着ることはそこまで特別な意味を持つものではないらしい。
「オシャレが好きなのかな?」
「!はい!私、可愛いものとかファッションが大好きなんです!だからお休みの日は、こうしてショッピングをしていて…」
「良ければ私も同行していいかな?」
「えっ」
「勿論、お邪魔なら遠慮するよ。だが、私もオシャレというものに少し興味が湧いてきた。良ければ君の思うファッションというものを見届けさせてほしい」
少し戸惑っていたようだが、「えーと」「うーんと」と呟いてモジモジした柚葉は玄蕃が差し出した桃色の包み紙の飴を受け取った。
「はい、構いませんよ」
「ありがとう。それじゃあ行こうか。荷物係は任せてくれ」
「えっ、そんな…申し訳ないです」
「気にしないでおくれ。それとも、勝手に触られるのは嫌かい?」
「…じゃあ、これだけお願いします」
一つ紙袋を手渡し、柚葉はぺこりと頭を下げる。二人で並んで歩くのを意識した彼女は「デートみたい」と一瞬思ったが、慌ててブンブンと首を振った。一瞬でもそんな発想をしてしまった自分を恥じたのだ。まだ出会って間もない玄蕃にそう思ってしまう程気が緩んでいたのか、それとも「そういうこと」に内心淡い期待や憧れを抱いていたのか。どちらにせよ、隣を歩く玄蕃に「申し訳ない」と心の中で謝った。
「玄蕃さんはいつも変わった服を着ていますね」
「これが一番良いんだ。勝負服というものなのかもしれないね」
「よくお似合いです。オレンジ色って、こんな風に格好よくも着れるんですね」
「…君は、普段はどんな服装を?」
「私は…色々着ますよ。可愛い服も、格好いい服も、綺麗めな服も…ファッションには色んな系統があるので、毎日何を着るか迷ってしまいます」
「ということは、君が歩く道は全てがランウェイのようなものだね」
「……な、何だか照れますね…」
ダークブラウンの髪をウルフカットにした柚葉は、内巻きになった髪の一房をいじって照れて赤くなった頬を隠した。しかし玄蕃にはお見通しのようで、ニコニコと笑っている。
「…げ、玄蕃さんも、普段のお洋服も素敵ですけれど…他のお洋服もきっとよくお似合いになると思いますよ」
「そうかい?もし良ければ、見立ててもらおうかな」
「任せてください!私、そういうのやってみたかったんです!」
キラキラと目を輝かせ、柚葉は玄蕃の手をとった。触れ合う肌に玄蕃はびくりと肩が跳ねたが、彼女はそれに気付かなかった。
メンズ服の見立てというのは難しいものである。レディースなら何となく趣味や方向性が分かりやすいが、主張の激しくないメンズ服を似合うように着せていくのは素人には少し難しい。
だが、そんな高い壁に柚葉はワクワクしていた。どうやら玄蕃が思っていた以上に彼女はオシャレが好きだったらしい。今の彼女は、しっかりと自分のハンドルを握っていた。
*
「玄蕃さんなら、大人っぽい服が絶対似合いますね」
「大人っぽいものか…コートなら普段の服にも似ているし、着こなしやすそうだ」
「絶対良いと思います。茶色と黒、どっちが良いですか?」
「ふむ…。普段は黒ばかりだからね、たまには茶色も悪くないかもしれない」
メンズモノを扱う店に入った二人は、マネキンを見ながら首を傾げていた。秋服が並んでおり、トレーナーやコート、ジャケットが所狭しと並べられている。
「タートルネックとか似合うと思います」
「首のつまった服か…チクチクしたりしないだろうか」
「素材によりますね…。あ、でも苦手でしたら選ばないのは選択肢の一つですよ。オシャレは我慢なんて言いますけど、着心地の悪い服を我慢してまで着るかどうかは人それぞれですから」
「なるほど。じゃあそこは、私の感覚と要相談かな」
柚葉の持ってくる服を取捨選択しながら、幾つか目星をつけて試着室へと玄蕃は入った。暫くしてカーテンが開けられると、黒いタートルネックにダークブラウンのコートを羽織っている。普段の玄蕃からはあまり想像できない、色香の漂う装いだった。コーディネートした柚葉本人は勿論、周囲の客や店員までもが彼に釘付けだった。全員揃って頬を赤らめている。
「…そんなに変だったかい?」
「い、いえ…その、凄くお似合いで…ビックリしちゃって」
「それは良かった」
「……ポテンシャルの鬼ですね、玄蕃さんって…」
彼は再びカーテンの奥へと消えた。そして元の服装に戻って出て来た後、レジへと足を進めていく。慌てて柚葉も付いて行き、「わ、私が出しますから!」と懐からブラウンの三つ折り財布を取り出した。
「いや、これは私の買い物だ。君は関係ないだろう?」
「わ、私が出します。言い出しっぺは私ですから…!」
「気にしないでおくれ」
「で、でも…」
「…それなら」
玄蕃はスマホを取り出すと、自身の連絡先を画面に表示させた。それを彼女に見せ、「はいこれ」と微笑む。
「?え、えっと…?」
「私の連絡先だ。ここは私が払うから、その代わりこの服を着た私とデートをしてほしい」
「でっ、」
「折角調達した新しい装いだからね、誰かと出掛けないとタンスの肥やしになってしまうだろう?」
「……そんなの、私にとってはただのご褒美です……」
柚葉は目を逸らし、頬を真っ赤に染めた。玄蕃の目を見ることができず、長い睫毛を伏せている。心底楽しそうに眺めていた玄蕃だったが、名残惜しそうに離れるとすぐに会計を終えてしまった。柚葉が現実に戻ってくる頃には、紙袋を手に提げていた。
「あ…」
「だから、デートの予定を立てたい。電話は難しいかもしれないが、メッセージなら容易だ」
「……良いんですか。そんなことで…まだ知り合ってばっかりの私と、デートなんて…」
「出会いは大事にするべきだろう?それとも、君は私との出会ったことが嫌だったかい?」
「……ずるい…」
連絡先を追加し、彼女はほうと息を吐いた。熟れた林檎のように赤らんだ頬や憂いを帯びた溜め息に目を奪われたが、すぐに玄蕃は目を逸らす。
「…大也には内緒だよ」
「え?どうして…」
その時、玄蕃のブンブンブースターがランプが赤く光った。「ハシリヤン出現!」という声が響き、「すまない」と玄蕃は片合掌をする。そして紙袋を持ったまま、その場を走り去って行った。玄蕃がブンブンジャーであることを知らない柚葉は頭にはてなマークを浮かべたまま、その背中を見送ることになった。
「…これはこれは、また違った印象だねぇ」
柚葉はウィンドウショッピングを楽しんでいるのか、マネキンが着た服を眺めながら気に入った店を見つけては入っていった。余程熱心なのか何件もハシゴしており、手には紙袋を幾つも持っている。
いたずら心がわき、驚かしてやろうと思った玄蕃は足音を立てずに彼女に忍び寄る。そして柚葉がふっと気を抜いた瞬間を見計らい、「やあ」と肩を叩いた。
「わあっ!?」
柚葉は余程驚いたのか紙袋が手から離れ──全てを玄蕃がキャッチする。地面に落ちずに済んだ紙袋をはい、と差し出す玄蕃に彼女は少しむっとした表情をする。
「げ、玄蕃さん…。お、驚かさないでください…」
「すまない。そんなに驚くとは思わなくてね」
「もう…」
「それより、今日はまた一段と良い恰好をしているね」
そう言われた柚葉は自分の服装を確認し、「そんなに変でしょうか…」と呟く。どうやら彼女にとって、レザージャケットを着ることはそこまで特別な意味を持つものではないらしい。
「オシャレが好きなのかな?」
「!はい!私、可愛いものとかファッションが大好きなんです!だからお休みの日は、こうしてショッピングをしていて…」
「良ければ私も同行していいかな?」
「えっ」
「勿論、お邪魔なら遠慮するよ。だが、私もオシャレというものに少し興味が湧いてきた。良ければ君の思うファッションというものを見届けさせてほしい」
少し戸惑っていたようだが、「えーと」「うーんと」と呟いてモジモジした柚葉は玄蕃が差し出した桃色の包み紙の飴を受け取った。
「はい、構いませんよ」
「ありがとう。それじゃあ行こうか。荷物係は任せてくれ」
「えっ、そんな…申し訳ないです」
「気にしないでおくれ。それとも、勝手に触られるのは嫌かい?」
「…じゃあ、これだけお願いします」
一つ紙袋を手渡し、柚葉はぺこりと頭を下げる。二人で並んで歩くのを意識した彼女は「デートみたい」と一瞬思ったが、慌ててブンブンと首を振った。一瞬でもそんな発想をしてしまった自分を恥じたのだ。まだ出会って間もない玄蕃にそう思ってしまう程気が緩んでいたのか、それとも「そういうこと」に内心淡い期待や憧れを抱いていたのか。どちらにせよ、隣を歩く玄蕃に「申し訳ない」と心の中で謝った。
「玄蕃さんはいつも変わった服を着ていますね」
「これが一番良いんだ。勝負服というものなのかもしれないね」
「よくお似合いです。オレンジ色って、こんな風に格好よくも着れるんですね」
「…君は、普段はどんな服装を?」
「私は…色々着ますよ。可愛い服も、格好いい服も、綺麗めな服も…ファッションには色んな系統があるので、毎日何を着るか迷ってしまいます」
「ということは、君が歩く道は全てがランウェイのようなものだね」
「……な、何だか照れますね…」
ダークブラウンの髪をウルフカットにした柚葉は、内巻きになった髪の一房をいじって照れて赤くなった頬を隠した。しかし玄蕃にはお見通しのようで、ニコニコと笑っている。
「…げ、玄蕃さんも、普段のお洋服も素敵ですけれど…他のお洋服もきっとよくお似合いになると思いますよ」
「そうかい?もし良ければ、見立ててもらおうかな」
「任せてください!私、そういうのやってみたかったんです!」
キラキラと目を輝かせ、柚葉は玄蕃の手をとった。触れ合う肌に玄蕃はびくりと肩が跳ねたが、彼女はそれに気付かなかった。
メンズ服の見立てというのは難しいものである。レディースなら何となく趣味や方向性が分かりやすいが、主張の激しくないメンズ服を似合うように着せていくのは素人には少し難しい。
だが、そんな高い壁に柚葉はワクワクしていた。どうやら玄蕃が思っていた以上に彼女はオシャレが好きだったらしい。今の彼女は、しっかりと自分のハンドルを握っていた。
*
「玄蕃さんなら、大人っぽい服が絶対似合いますね」
「大人っぽいものか…コートなら普段の服にも似ているし、着こなしやすそうだ」
「絶対良いと思います。茶色と黒、どっちが良いですか?」
「ふむ…。普段は黒ばかりだからね、たまには茶色も悪くないかもしれない」
メンズモノを扱う店に入った二人は、マネキンを見ながら首を傾げていた。秋服が並んでおり、トレーナーやコート、ジャケットが所狭しと並べられている。
「タートルネックとか似合うと思います」
「首のつまった服か…チクチクしたりしないだろうか」
「素材によりますね…。あ、でも苦手でしたら選ばないのは選択肢の一つですよ。オシャレは我慢なんて言いますけど、着心地の悪い服を我慢してまで着るかどうかは人それぞれですから」
「なるほど。じゃあそこは、私の感覚と要相談かな」
柚葉の持ってくる服を取捨選択しながら、幾つか目星をつけて試着室へと玄蕃は入った。暫くしてカーテンが開けられると、黒いタートルネックにダークブラウンのコートを羽織っている。普段の玄蕃からはあまり想像できない、色香の漂う装いだった。コーディネートした柚葉本人は勿論、周囲の客や店員までもが彼に釘付けだった。全員揃って頬を赤らめている。
「…そんなに変だったかい?」
「い、いえ…その、凄くお似合いで…ビックリしちゃって」
「それは良かった」
「……ポテンシャルの鬼ですね、玄蕃さんって…」
彼は再びカーテンの奥へと消えた。そして元の服装に戻って出て来た後、レジへと足を進めていく。慌てて柚葉も付いて行き、「わ、私が出しますから!」と懐からブラウンの三つ折り財布を取り出した。
「いや、これは私の買い物だ。君は関係ないだろう?」
「わ、私が出します。言い出しっぺは私ですから…!」
「気にしないでおくれ」
「で、でも…」
「…それなら」
玄蕃はスマホを取り出すと、自身の連絡先を画面に表示させた。それを彼女に見せ、「はいこれ」と微笑む。
「?え、えっと…?」
「私の連絡先だ。ここは私が払うから、その代わりこの服を着た私とデートをしてほしい」
「でっ、」
「折角調達した新しい装いだからね、誰かと出掛けないとタンスの肥やしになってしまうだろう?」
「……そんなの、私にとってはただのご褒美です……」
柚葉は目を逸らし、頬を真っ赤に染めた。玄蕃の目を見ることができず、長い睫毛を伏せている。心底楽しそうに眺めていた玄蕃だったが、名残惜しそうに離れるとすぐに会計を終えてしまった。柚葉が現実に戻ってくる頃には、紙袋を手に提げていた。
「あ…」
「だから、デートの予定を立てたい。電話は難しいかもしれないが、メッセージなら容易だ」
「……良いんですか。そんなことで…まだ知り合ってばっかりの私と、デートなんて…」
「出会いは大事にするべきだろう?それとも、君は私との出会ったことが嫌だったかい?」
「……ずるい…」
連絡先を追加し、彼女はほうと息を吐いた。熟れた林檎のように赤らんだ頬や憂いを帯びた溜め息に目を奪われたが、すぐに玄蕃は目を逸らす。
「…大也には内緒だよ」
「え?どうして…」
その時、玄蕃のブンブンブースターがランプが赤く光った。「ハシリヤン出現!」という声が響き、「すまない」と玄蕃は片合掌をする。そして紙袋を持ったまま、その場を走り去って行った。玄蕃がブンブンジャーであることを知らない柚葉は頭にはてなマークを浮かべたまま、その背中を見送ることになった。