ヨシ!【爆上・玄蕃】
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その日の玄蕃は運が無かった。
苦魔獣との生身の戦闘で水溜りにダイブした。そのせいでポケットに入れていた飴が殆ど駄目になったのである。バッグの中の飴も底をついており、貴重な糖分補給が出来なくなっていた。
フラフラと街中を歩く。近くにコンビニエンスストアやスーパーは見当たらず、手頃な駄菓子屋も見つからない。このままでは地球人の擬態が解けてしまう──そう思った矢先、玄蕃の目にある車が目に入った。
”アイスクリーム”。のぼりにはカラフルな色使いでそう書かれていた。黄色の移動販売車──要するにキッチンカーだった。アイスのキッチンカーが停まっていたのだ。応対をするカウンターには暇そうに頬杖をつく女がいる。
背に腹は代えられない。小銭入れを握りしめた玄蕃はやや走り気味にカウンターへと向かった。
「やあ、こんにちは」
話しかけられた女は気を抜いていたのかびくりと肩を震わせ、「はい!」と元気よく返事をした。
「いらっしゃいませ!」
「アイスクリーム、一つ頂いても良いかな」
「勿論です。味はどうされますか?」
「じゃあ…オレンジで」
「分かりました。出来上がるまで少々お待ちくださいー」
代金を受け取った彼女は奥で作業を始めた。前に立って急かすのも良くないと思い、車の前に用意されてある簡素な椅子に腰掛けた。機械が作動する音だけが響き、温かい日差しに疲れからウトウトしてしまう。
暫くすると、アイスクリームを持った女が車の中から出てきた。「お待たせしました」と手渡し、ニコリと微笑む。
「ありがとう。こんなところにキッチンカーがあったなんて驚いたよ」
「少し前から始めたんです。このキッチンカー、元々廃車になる予定だったところをオーナーが買い取ったそうで」
「どこぞの誰かみたいな人だねぇ」
「今日は凄く暇だったので、お客様が来てくださって助かりました」
「それなら良かった。私も、丁度甘い物を探していたところなんだ」
スプーンで橙色のアイスを掬い、口に運ぶ。さっぱりした程よい甘さが口に広がった。普段糖分としては飴ばかり食べている為、初めての甘さに玄蕃は少し驚く。
「アイスって美味しいですよね。私もこの星…じゃなくて、ここに来て初めて食べた時美味し過ぎてビックリしちゃいました」
「私も食べた経験はあまりなかったな…。うん、これは美味しいね」
「良かったです。私、いつもこの辺りで営業しているのでまたいらしてください」
「ああ。また必要になったら、是非寄らせてもらおうかな」
そこで会話が終わろうとしたところ、女が顔を上げて「あ」と呟いた。その視線の先を追うと、赤い車から降りてくる男がいる。
「あれ、多分オーナーです」
「彼が?」
「いつも凄い車に乗ってくるんです。たまに様子を見に来てくださるんですけど…」
見覚えのある…というか、先程まで一緒に戦っていた顔だった。大也である。あちらも玄蕃に気付き、「え?」という顔をしてこちらへやって来た。
「玄蕃?」
「成る程、オーナーは大也のことだったんだねぇ。どうしてここに?」
「いや、別れる前に飴が…って色々言ってたからその辺で買ってきたんだ。でも、心配いらなかったみたいだな」
彼女はきょとんとした顔で二人の顔を交互に見つめている。飴の大袋を渡す大也と、それはそれとしてと受け取りバッグに収める玄蕃。繋がりが見えず、頭の上にはてなマークを浮かべていた。
「ええっと…大也さん、お知り合いなんですか?」
「ん?ああ、コイツは玄蕃。俺の仲間だ」
「どうも」
「で、玄蕃。こっちは柚葉。俺が雇っている子だ」
「初めまして、巴柚葉です」
ぺこりと頭を下げ、柚葉と玄蕃はお互いに挨拶をする。大也はぎとこちない二人…というか、一方的にぎこちない距離感を出している柚葉を見て「ふは」と笑いを漏らした。
「も、もう。笑わないでください、大也さん」
「はは、悪い」
「私、結構人見知りするんですから…」
「さっきは普通に喋れていたし、そうは見えないけどねぇ」
「あれは…名前も分からないお客様だったからです。こうやってちゃんと知り合うと、ちょっと緊張しちゃって…」
「じゃあ、私と仲良くなるのはもう少し先かな」
「が、頑張ります…げ、玄蕃さん」
もじもじとした様子で柚葉はそう言い、やや恥ずかしそうにはにかんだ笑みを見せた。
苦魔獣との生身の戦闘で水溜りにダイブした。そのせいでポケットに入れていた飴が殆ど駄目になったのである。バッグの中の飴も底をついており、貴重な糖分補給が出来なくなっていた。
フラフラと街中を歩く。近くにコンビニエンスストアやスーパーは見当たらず、手頃な駄菓子屋も見つからない。このままでは地球人の擬態が解けてしまう──そう思った矢先、玄蕃の目にある車が目に入った。
”アイスクリーム”。のぼりにはカラフルな色使いでそう書かれていた。黄色の移動販売車──要するにキッチンカーだった。アイスのキッチンカーが停まっていたのだ。応対をするカウンターには暇そうに頬杖をつく女がいる。
背に腹は代えられない。小銭入れを握りしめた玄蕃はやや走り気味にカウンターへと向かった。
「やあ、こんにちは」
話しかけられた女は気を抜いていたのかびくりと肩を震わせ、「はい!」と元気よく返事をした。
「いらっしゃいませ!」
「アイスクリーム、一つ頂いても良いかな」
「勿論です。味はどうされますか?」
「じゃあ…オレンジで」
「分かりました。出来上がるまで少々お待ちくださいー」
代金を受け取った彼女は奥で作業を始めた。前に立って急かすのも良くないと思い、車の前に用意されてある簡素な椅子に腰掛けた。機械が作動する音だけが響き、温かい日差しに疲れからウトウトしてしまう。
暫くすると、アイスクリームを持った女が車の中から出てきた。「お待たせしました」と手渡し、ニコリと微笑む。
「ありがとう。こんなところにキッチンカーがあったなんて驚いたよ」
「少し前から始めたんです。このキッチンカー、元々廃車になる予定だったところをオーナーが買い取ったそうで」
「どこぞの誰かみたいな人だねぇ」
「今日は凄く暇だったので、お客様が来てくださって助かりました」
「それなら良かった。私も、丁度甘い物を探していたところなんだ」
スプーンで橙色のアイスを掬い、口に運ぶ。さっぱりした程よい甘さが口に広がった。普段糖分としては飴ばかり食べている為、初めての甘さに玄蕃は少し驚く。
「アイスって美味しいですよね。私もこの星…じゃなくて、ここに来て初めて食べた時美味し過ぎてビックリしちゃいました」
「私も食べた経験はあまりなかったな…。うん、これは美味しいね」
「良かったです。私、いつもこの辺りで営業しているのでまたいらしてください」
「ああ。また必要になったら、是非寄らせてもらおうかな」
そこで会話が終わろうとしたところ、女が顔を上げて「あ」と呟いた。その視線の先を追うと、赤い車から降りてくる男がいる。
「あれ、多分オーナーです」
「彼が?」
「いつも凄い車に乗ってくるんです。たまに様子を見に来てくださるんですけど…」
見覚えのある…というか、先程まで一緒に戦っていた顔だった。大也である。あちらも玄蕃に気付き、「え?」という顔をしてこちらへやって来た。
「玄蕃?」
「成る程、オーナーは大也のことだったんだねぇ。どうしてここに?」
「いや、別れる前に飴が…って色々言ってたからその辺で買ってきたんだ。でも、心配いらなかったみたいだな」
彼女はきょとんとした顔で二人の顔を交互に見つめている。飴の大袋を渡す大也と、それはそれとしてと受け取りバッグに収める玄蕃。繋がりが見えず、頭の上にはてなマークを浮かべていた。
「ええっと…大也さん、お知り合いなんですか?」
「ん?ああ、コイツは玄蕃。俺の仲間だ」
「どうも」
「で、玄蕃。こっちは柚葉。俺が雇っている子だ」
「初めまして、巴柚葉です」
ぺこりと頭を下げ、柚葉と玄蕃はお互いに挨拶をする。大也はぎとこちない二人…というか、一方的にぎこちない距離感を出している柚葉を見て「ふは」と笑いを漏らした。
「も、もう。笑わないでください、大也さん」
「はは、悪い」
「私、結構人見知りするんですから…」
「さっきは普通に喋れていたし、そうは見えないけどねぇ」
「あれは…名前も分からないお客様だったからです。こうやってちゃんと知り合うと、ちょっと緊張しちゃって…」
「じゃあ、私と仲良くなるのはもう少し先かな」
「が、頑張ります…げ、玄蕃さん」
もじもじとした様子で柚葉はそう言い、やや恥ずかしそうにはにかんだ笑みを見せた。
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