【前編】お悩み相談はcafé ampleへ
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澪がcafé ampleを開くと同時に、キメツ学園高等部の新任教師として着任したのが
澪と同い年の従兄妹である不死川実弥、
そしてキメツ学園時代の同級生かつ大学の同窓生でもあった
伊黒小芭内と冨岡義勇だった。
伊黒と冨岡は、キメツ学園時代も澪を見知ってはいたが
特に女子生徒と親しくするタイプでもなかった上
澪は当時学園三大美女として(本人には不本意ながら)目立つ存在でもあったため
特に交流は無かった。
だが、同じ大学の教育学部で同窓生となり、
同じ高校出身者という距離感の近さがあったのか
澪の飾らず自然体な言動に2人が警戒を解いたのか
同じ授業を受けたり、同じ時期にキメツ学園で教育実習を行ったりした結果
親しい間柄になったのだ。
伊黒は元々女性アレルギーを自称するほどの女性嫌いだったにも関わらず
澪とは普通に話すことができたし、
言葉足らずのせいで人とコミュニケーションを取るのが苦手(本人は自覚していないが)な冨岡を澪がフォローすることで、冨岡は澪に分かりやすく気を許してみせていた。
結局、澪は英語の教職免許を取ったものの、
教師として関わるよりももっと、より身近で生徒の力になりたいという思いが強く
教師になることなく、この場所にカフェをオープンさせたため
3人と同僚になることは無かった。
最初の客であり、最初の常連客であった蜜璃が
澪もまたキメツ学園の卒業生であり、
新任教師3人と親しい間柄であることを知るのに時間はかからなかった。
在学中は、それぞれの教師の授業ぶりや何かを
楽しそうに話してくれていた蜜璃が
キメツ学園を卒業して数年、まさかあの女性嫌いの伊黒と付き合い始めたと知った時
澪は、度肝を抜かれるとはこういうことか…と思ったものだ。
それ以降、澪は蜜璃からも伊黒からも
何かあるごとに相談を受けるようになった。
元々、分かりやすく懐いてくれていた蜜璃とは、
それをきっかけに以前よりも更に深く、
姉妹のような友人のような関係を築いている。
試験期間だということを知って、
伊黒から返事が来ないことを納得したらしい蜜璃は
最近大学で受けた授業の話や、以前伊黒と行った美味しいご飯屋さんの話などをしながら
お気に入りのケーキをホールで平らげ
涙目で入って来た時とは真逆の、輝かしい笑顔を振り撒いて帰って行った。
「…さて。一旦店じまいをして、準備しようかな。」
朝は、ご近所のおばあちゃん
その後は、赤ちゃん連れのお母さん
お昼には玄弥を含めたキメツ学園生
そして夕方は蜜璃
それぞれの悩みや、話を聞いた澪は
ググっとひとつ背伸びをすると
チリンッ
カフェ入口のドアを開け、“Open”の札を“Closed”へ変える。
この後、数時間もすれば
採点祭りの初日をどうにか区切りが付くまでやり切って
ぐったりしたキメツ学園教師陣が空腹を抱えながらドアを開くだろう。
ここ数年ですっかり澪の生活のルーティンになったほどの試験前後の風物詩である。
(採点祭りは初日だからまだ、胃に優しいものより精がつくガッツリ系がいいかしらね…)
「なぁ~お」
「…あぁ、きなこ。そうね、お前のご飯の方が先ね。ふふっ」
先ほどドアを開けた際に、店の中へ入ったきなこが
自分の存在を主張するかのように鳴いた。