【後編】café ampleでお夜食をどうぞ
お名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
歳の離れた弟や妹たちの面倒を見るために
急速に大人にならなければいけなかった不死川が唯一、気を張らずに
接することができるのが澪だった。
だから澪への想いは、家族のようで家族とは違う愛おしさだ。
隣のこの男のように、恋人になりたいだとかいう気持ちが強くあるわけではないが
そこらの馬鹿な男に引っかかるのは絶対に許せないし、
澪に恋人や旦那が出来ず、澪が1人で生きていくくらいだったら
自分の嫁にしよう、とは思っていた。
だが、3年前。自分がキメツ学園に就職した1年後に、
澪の“杏ちゃん”がキメツ学園に着任してから
しばらく同僚として一緒に過ごしてみて、こいつなら…まぁいいかと思ったのだ。
裏で澪に近付く男どもをしっかり牽制していることも知っているから
裏表の無い…とは言い難いが
それでもこの男の真っ直ぐさを彼は好ましく感じたし、
澪を想う気持ちの強さとブレなさは時に呆れるほどであったから。
それなのに。
長年、幼馴染として過ごしてきたせいか
澪と杏寿郎の関係は一向に進歩せず、苛立ちが募るばかりだ。
「そうだ。あの阿呆はハッキリ言わなきゃ分からんぞ。お前のせいであいつの恋愛経験はゼロで、自分は誰かに好きになってもらえるような人間じゃないと思い込んでいる勘違い女でもあるんだからな。お前のせいで。」
「う…、」
「あぁ、お前のせいで、いつまで経っても玄弥のやつが諦めやがらねェ。」
玄弥の初恋は澪だった。
年上のお姉さんに憧れる分かりやすいヤツである。
だが、玄弥が諦めていないのは自分が澪の相手になることではなく
澪と自分の兄である実弥が結ばれる未来だ。
言葉にすると、『んなくだらねェこと言ってないで勉強しろォ』と
兄にしこたま絞められるので言葉にはしないが
澪と実弥が一緒にいるところを見る時の玄弥の目はいつも期待に満ちている。
「それは千寿郎だって同じことだ!」
「なぁに、兄弟あるあるトーク中なの?」
「っ、澪!」
「はい、小芭内くん。実弥も。お待ちどおさま。」
「サンキュ。」
「…こんなに食えんぞ。」
「余ったら杏ちゃんが食べるから、食べれるだけ食べてよ。」
伊黒、不死川と一緒にここへ来た教師たちへはすでに配膳し終わったらしく
澪もその場に腰を落ち着けた。