First Contact
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「ご、ごめん。変なこと言って…」
「いや!強そうに見えているなら良かった!鍛えている甲斐があるというものだ!」
目の前で必死に言い募る瀬尾の目が少し潤んできたように見え
これは千寿郎を揶揄いすぎた時と同じ目だな…と思い、
どうにか笑いを引っ込めて言葉を紡ぐ。
放課後、剣道部の練習に参加したものの
教室に忘れ物をしたことに気付いて取りに戻ると
何か急いだ様子でクラスメイトである瀬尾が教室に飛び込んできた。
その後、何やらじっと見つめられたので
(道着姿が珍しいのだろうか…?)と思っていると
瀬尾は『百戦錬磨の剣士みたい…』と呟いた。
道場を開いている父に、幼い頃より指導を受け
日々の鍛錬も欠かさずに剣道に邁進して来たが、
まさか会って間もない同級生の女子生徒にそのような評をされるとは思わず
しばらく固まってしまった。
そして、百戦錬磨どころか父から未だ1本も取れない状態なのに、
目の前の女子生徒にはそんな風に見えるのだと思うと可笑しくて笑ってしまった。
瀬尾はどうやらぼんやりしていて
無自覚に口に出してしまったようだ。
男女の違いなく、元気に走り回っていた小学生の頃と違って
制服を着ると誰でも少しは大人びて見えるな、とは思うが
それでもまだまだ「あどけない」という言葉が良く合うような生徒たちの中で
同じクラスの瀬尾澪はどこか違って見えた。
周りの生徒たちよりも1歩先に、大人になったような…
だが、今、目の前で目を潤わせて
焦った様子を見せる瀬尾は、とても初々しく、幼く見える。
(あぁ、いや、やはり…)
教室中を赤く染める、西日よりも柔らかな
桜色に染まる頬は
幼気さのない、女性らしさを感じさせ
やはり瀬尾澪は大人びたクラスメイトだな、と杏寿郎は思った。